子どもたちが空を見上げて星を見つけたくなる、最新科学と珠玉の物語が融合した星空図鑑の決定版
Gakkenが生み出す、数々の個性的で魅力的な商品・サービス。その背景にあるのはクリエイターたちの情熱です。(株)Gakken公式ブログでは、ヒットメーカーたちのモノづくりに挑む姿を「インサイド・ストーリー」として紹介しています。今回は6年ぶりの改訂となる『学研の図鑑LIVE 星と星座 新版』の編集を担った藤井 彩です。
学研の図鑑LIVEシリーズの中でも“星と星座”は他の図鑑とは一線を画す。自然科学の分野である天文学の要素と、人がつくりあげてきた星座という人文学的な要素が共存しているからだ。その奥深さゆえに人気も高く、多くの本が出ているなか、藤井は、天文学をはじめ、最先端で活躍する各分野のスペシャリストとタッグを組み、子どもたちが“星を見つけたくなる図鑑”を目指した。
■星や星座を知る上で欠かせない「神話」
「“星と星座”は、まるで、科学と文学が融合しているような、独特の魅力があると思っています」――こう話す藤井が手がけた『学研の図鑑LIVE 星と星座 新版』。その表紙は、いわゆる図鑑のイメージとは少し異なる。
▲左が現行版の『学研の図鑑LIVE 星・星座』、右が新版の表紙デザイン。
中央にはギリシャ神話を想い起こさせる神獣ペガススが大きく描かれ、その背景には 天の川や、黄道十二星座をはじめとする様々な星座のイラストを配置。星に関する図鑑というより、神話の物語本のような雰囲気を醸している。
「“星と星座”というテーマは、老若男女問わず受け入れられる、親しみのあるテーマだと思っています。そのため表紙は、思わず手にとりたくなるようなビジュアルにもこだわったデザインにしています」
図鑑には、“情報を調べる・学ぶ”というイメージがあるが、“星と星座”の場合は、神話や背景のわかりやすさ、イラストの親しみやすさなどによって、子どもたちが星や星座を知るきっかけになればいいと藤井は考えた。そのため、紙面に掲載するイラストのビジュアルにも強くこだわっている。
「いまの子どもたちの心に、すっと入り込めるようなテイストのイラストについて、すごく悩みました。アニメやゲームの影響でものすごく目が肥えているんですよね。ファンタジーすぎても、リアルすぎても違う…。わかりやすく具体的に、神話の場面の情景を思い浮かべられるようなイラストを考えていました」
追求を重ねた結果、特に見どころだという巻頭の「ペルセウスの大冒険」を含む3つの神話は、映画の一場面を切り取ったかのような大迫力のイラストとなった。クオリティの高さゆえ、完成していた文章をあえて改稿し、内容はそのままに、文章表現をイラストのタッチに寄せて調整することもあったという。
■地上から見た星座の写真に、星座絵を描き、解説を執筆したスペシャリストたち
この図鑑に登場する星空写真には、実際に撮った場所にある地上の森や木、大地などが多く写り込んでいる。その理由は“直感的なわかりやすさ”にあるという。
「実際に星空を見るときって、見たい部分だけがいきなり目に入ってくるわけではないですよね。まず地上の何かを見たあとで、目線をあげて空を見る。そうすることで位置や星座同士の距離感などがわかります。その感覚を図鑑で感じてもらうために、地上の物を写し込んだ星空写真を採用しました。
地上物が写っていることで、子どもたちが実際に星座を探すときにも、星座のスケール感や位置の情報を感覚的に知るためのヒントになるようにしています」
今回の星座の写真は、天文写真家の沼澤茂美さんをはじめとする写真家の方々に協力を仰いだ。
「美しくわかりやすい写真を掲載するために、地上の木や大地が写っている星空写真を、新たに撮りおろしていただくこともありました。また、これらの星空写真に合わせて、リアルイラストレーター・橋爪義弘さんに美麗な星座絵を描いていただいています。あれが〇〇座だよ、と言われても、いまいちピンとこない子どもたちにも、橋爪さんの星座絵が重なることで、イメージしやすくなっていると思います」
さらに執筆陣も個性的だ。たとえば、東京の渋谷にあるコスモプラネタリウム渋谷で、“癒やしの星空解説員”と呼ばれている永田美絵さんは、本書の巻頭神話「ペルセウスの大冒険」をはじめ、四季の星座の神話を執筆している。
「私は、小学校で、図書室の本を“一番読んだ人表彰”を受けたことがあるくらいの本の虫、でした。もちろんいまも本を読むのが好きで、物語を“魅せる”ということにはこだわりがありました。
今回も永田さんの著書を読み、実際にプラネタリウムで解説を聞き、どうしても永田さんに書いていただきたく、執筆をお願いしました。永田さんはDVDにも登場してくださっているので、子どもたちにもわかりやすく、かつ興味を惹きつける永田さんの解説や物語を存分に楽しんでいただけると思います」
■“宇宙ってすごい”――ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による最新画像で伝える
星座については、美麗なイラストや引き込まれる物語とリンクさせて表現した。その一方、図鑑として天文学的な見地から迫る「星」は、最新の技術を用いた見せ方にこだわった。肉眼では見えない、地球から遥か彼方にある星や天体の画像は、アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した画像も採用している。
▲それぞれ左がハッブル望遠鏡、右がジェイムズ・ウェッブ望遠鏡で撮影された
「創造の柱」
(提供:NASA, ESA, CSA, STScI, Joseph DePasquale, Anton M.Koekemoer,
Alyssa Pagan (STScI), ESA/Hubble and the Hubble Heritage Team)
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、ハッブル宇宙望遠鏡の後継機として2021年から運用が開始された最新の望遠鏡だ。ハッブルよりも圧倒的に優れた解像度をもつのが特徴である。かつて、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影し大きな話題となった、M16(わし星雲)の中心部に見られる暗黒星雲の柱状の先端部、通称「創造の柱」も、より鮮明に立体的にみることができる。格段にクリアになった画像があることで、さらに宇宙の広がりも伝わってくるのだ。
新版では、200点以上の写真を刷新し、最新の星と宇宙に関する情報を盛り込んだ。校了直前まで新しい画像への差し替えを行ったという。
■星と星座探しの冒険にでかけよう! 子ども心をくすぐる“観察ページ”
新版の「学研の図鑑LIVE」シリーズのスローガンは“図鑑体験を、あたらしく”。“体験”と聞いて、「星と星座」を担当していた藤井は、すぐに「天体観測」を連想した。
「小学生の頃、理科の教師だった父に、何度も天体観測に連れて行ってもらっていました。このときの、星を見つけたときのうれしさを、子どもたちにも感じてもらいたいと思いました」
そこで、新版では“星空の観察” ページを32ページに大幅に増やした。
▲観察ページより「ペルセウス座流星群を観察しよう」
「基本的な観察ページでは、天体観測に使う道具の選び方も含めて、星の観察方法を、初歩から丁寧に解説しています。“スマート望遠鏡”やネット配信による“ライブカメラ”での観察など、最新の観察方法も紹介しています」
自由研究でもそのまま使えるように、準備からノートの取り方、まとめ方の例まで紹介する特集ページも掲載した。さらに、天体や星座の“見つけやすさ”を難易度で表し、レベルをつけた“星空観察チェックシート“のページもある。他にはない独自のアイディアだ。
「レベルが高い天体や星座は、見つけるのがちょっと大変かもしれません。でも、子どもたちはハイレベルに挑戦し、クリアすることが好きだったりします。あそび感覚で、天体や星座を集める=見つけていくようなワクワクするような体験ができれば、そういうところから天体に興味を持ってもらえるではないかと思ったんです」
難易度レベルは★から★★★★★まであり、星の数が多いほど見つける難易度が上がる。気軽にできる新しい天体観測だ。天文写真家の沼澤茂美さんや、総監修の大内正己先生と話し合って内容やレベルを決定したという。
東京大学宇宙線研究所教授や国立天文台教授を兼任する大内先生は、古代天体「ヒミコ」の発見ほか、国内外で活躍する気鋭の天文学者だ。従来の概念にとらわれない、さまざな視点から新版の監修に力を注いだ人物のひとりでもある。
「実際に先生のいらっしゃる研究所にうかがい、先生と夜空を見上げながら話し合ったこともありました。先生は、『この本を、どこよりも、今までの何よりも、“最良の”星・星座の図鑑にしましょう』といつもおっしゃってくれていました。そのために、情報の質や正確性だけでなく、子どもたちが夜空を見上げてみたくなるような情緒面の工夫をちりばめています」
■図鑑の役割は事実や情報の発信だけはない。子どもたちが星を見つけたくなる“体験”をサポートしたい
「一昨年、中学生が流星群を観察して、すごい発見をしたというニュースがあったんですよね。流星群の極大日(最も活発に活動する日)が、実は別の日だったっていう。
宇宙って、まだ解明されていないことが多いので、子どもたちでもそういう新しい発見ができる可能性があるんです。だからぜひ、夜空を眺めて星や星座を身近に感じてほしいなと思います」
今回の『学研の図鑑LIVE 星と星座 新版』では、掲載天体数が約360と大幅に情報量がアップした。しかし、だから“最良”というわけではない。絵本や童話は好きだが、科学的なことや図鑑にそれまであまり興味関心がなかった子どもたちも、手にとって見たくなる、そんな意味での“最良”を目指した一冊に仕上がっている。
「いろんな図鑑がありますが、この図鑑をはじめての図鑑に選んでもらえたらなと期待しています。この図鑑には、星に関する情報はもちろん、たくさんの物語も載っているので、いろいろな楽しみ方があります。星にまだあまり興味がなくても、まず物語を楽しんでもらい、それをきっかけに星と星座、そして図鑑を好きになってほしいなと思っています。
なぜなら、図鑑って、自分の世界、世のなかの見え方が変わる存在だと信じているからです」
スマホやSNSの普及で、大人も子どもも、空より画面を見つめる時間が増えたかもしれない。
だが空には、おもしろい世界が広がっている。ドラマティックな神々の愛憎劇や、いにしえの物語を知れば、夜空を見あげ、どの星座が主人公なのかを、探したくなるかもしれない。ぜひ、空を見上げて楽しさを見出してほしい。
“星と星座 新版”には、藤井のそんなささやかな願いも込められている。
クリエーター・プロフィール
藤井彩(ふじい・あや)
山口県出身。高校卒業後に2年間アメリカに留学。2014年学研教育出版(現・Gakken)に入社し、ファッションブランドとコラボした異色の参考書『セシルマクビー スタディコレクション』シリーズを手掛ける。
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