可能な限り素材のバイオ化を追求したい。循環型素材にこだわるバッグブランドFUMIKODAの挑戦
環境に配慮したものづくりを続けるバッグブランド「FUMIKODA(フミコダ)」を展開する株式会社FUMIKODA(東京都目黒区・代表取締役 幸田フミ)は、竹・貝殻・りんごを素材に使用したコンパクト財布「IVY」(アイビー) を販売しています。
このストーリーでは私たちがブランドを立ち上げた経緯から、バイオマス素材を用いたプロダクト開発のプロセスを振り返ります。
高品質なビジネスバッグブランド「FUMIKODA」立ち上げの経緯
FUMIKODAは、ウェブデザイン会社の代表も務めるクリエイティブディレクターの幸田フミが「パソコンや書類を入れて持ち歩く際に、快適なビジネスバッグを作りたい」という想いから立ち上げたブランドです。
仕事で使いやすく、軽くてデザイン性の高いバッグがないと悩みを抱えていたところ、多くの友人も「ビジネスシーンで使えるバッグがない」と悩んでいることが分かりました。
探しても出会えなかったバッグを自ら生み出したいと考え、ものづくりの世界に一歩足を踏み入れたとき、動物の皮を鞣(なめ)す際に環境に負荷がかかっていること、そして日本の優れた技術によって生み出された「人工皮革」という高品質な素材の存在を知りました。
機能性にこだわり、更に人工皮革の素材でメーカーに製作を頼みましたが、従来の縫製技術では考えられない裁断や、扱いが慣れていない素材に門前払いが続きました。全国行脚の末、無理難題に理解を示した工房を見つけ、構想から約 2年かけて商品化。
機能性だけではなくサスティナビリティにこだわり、事業を通じて社会課題の解決に取り組むブランドの姿勢が共感を呼び、首相経験者のご家族や大手企業の経営者が愛用するなど、多くのセレブリティ・ビジネスパーソンの支持を集めています。
FUMIKODAの使用する素材について
FUMIKODAは、「地球にも、動物にも、ひとにも優しく」というコンセプトの元、創業以来、動物の皮革を一切使用してきませんでした。製品には高級車の内装にも採用されている高耐久の日本製人工皮革を使用しています。
FUMIKODAのバッグに使用している人工皮革は、一般的な合成皮革とは異なるものです。動物皮革の機能と構造を人工的に再現しており天然の革により近い風合いを持った素材です。
コラーゲン繊維構造によく似た三次元極細不織布に樹脂を絡ませたものをベースとしており、表面にポリウレタンを染み込ませた合成樹脂を塗ることでより動物皮革に近い風合いに仕上げることができます。
また本革同様に「漉き」や「コバ塗り」などの処理も施せるため、出来上がった製品の印象からはほとんど本革と見分けがつきません。
一般的な合成皮革は、布地をベースにポリウレタン樹脂や塩化ビニールなどの合成樹脂を塗って加工することによって、表面層のみを動物皮革に似せた素材です。耐久性が乏しいものも多く、加工を施しても動物皮革の手触りを再現することは難しいのが現状です。
ビジネスシーンでの利用を想定してバッグを開発しているため、スーツにも合う高級感と長く使用していただくための耐久性を重視していることから高耐久の日本製人工皮革を使用しています。
竹・貝殻・りんごなどを使用した国産のバイオマス素材を使用した製品開発
今世界中で注目を集めているのが「バイオマス素材」です。まだ耳慣れない言葉ですが、マッシュルーム、りんご、サボテンなど、石油に由来しない植物素材で作られた原料を含有した素材を指します。
FUMIKODAも更なる環境配慮を目指し、石油ではなく植物由来の原材料含有率が高い人工皮革でしかも国内で製造されたものを探していました。既に海外で製造されていたものは流通していましたが、海外から輸送した素材を使用して本当に環境にやさしい素材と言えるのか疑問がありました。国内で、そして更に環境を破壊しないプロセスで製造されていたものを採用したいと考えていました。
そうした想いを数年がかりでお取引先企業様に伝えていたところ、創業以来お世話になっていた素材メーカーである共和ライフテクノ株式会社の担当者様が賛同してくださいました。2年ほどかけて社内を説得しながら「国産での製造」と「高い品質」へこだわりを持ってバイオマス素材を原材料に使用した人工皮革の開発に取り組まれ、ついに成功されました。
こうしたメーカー様の協力もと、FUMIKODAは2023年4月、放置竹林の「竹」や、食品加工後に廃棄される「貝殻」、ジュースの絞りカスの「りんご」などを使用した国産のバイオマス素材を使用した製品を発表する事が出来ました。
素材メーカー担当者様の情熱により、構想から2年かけて実現
今回の素材を開発を担当された担当者様からは、バイオマス素材を活用した製品開発にあたり、まずは社内の技術部門の方に理解を得るために尽力されたと伺っています。技術部門からすると、既に品質高く完成されている商品に違うものを混ぜる事自体が当初は理解が難しかったのです。消費者が何を求めているのか、1年半ほどかけて現場に出向いて繰り返し様々な形で伝えていただきました。
こうして素材の開発が動き出しましたが、魅力的に消費者に伝わる意匠も必要です。技術の力で環境に配慮した素材ができても、消費者にワクワク楽しんでもらえるものでないと手に取ってもらえないからです。共和ライフテクノ株式会社は「質」と「魅力」の両輪が揃って初めて開発が成功すると考えており、どのブランドに商品化してもらうかという点にもこだわられていました。
FUMIKODAの「地球や動物、そして人々が持続可能な社会で心地よく暮らせることを願ったものづくり」というコンセプトに深く共感いただいていた事から、ありがたいことに素材が完成した際の製品化第一号にFUMIKODAを選んでいただきました。
国内の廃棄となる素材をアップサイクルした人工皮革
共和ライフテクノ株式会社は、製品開発をする上で「繋げていくこと」、「創り続けること」、「日本製にこだわること」の3つを軸にして、ものづくりに取り組んでいます。バイオマス素材を使用した商品はメジャーになりつつありますが、多くが海外製であったため何としても日本製で商品開発を実現したい。という思いから長い期間をかけて開発されたのが「LeNaシリーズ」です。
(竹・りんご・貝殻を素材に使用した人工皮革のコンパクト財布「IVY」の販売開始リリース)
FUJIKODAのコンパクト財布「IVY」の生地に使用している3つの原材料をご紹介いたします。
1. アプレナ(りんごを使用した人工皮革)
青森県のふじのりんごジュースの絞りカスを使用したアプレナは、CO2の排出を軽減する特別な機械を使用するなど、原材料の製造段階でも環境に配慮した取り組みが実施されています。
コンパクト財布「IVY」のレッドにアプレナが用いられています。
2. バンブレナ(竹を使用した人工皮革)
徳島県の竹を使用したバンブレナは、竹の成長スピードの早さによる原材料としての継続供給可能性と、間伐した竹を使用することで放置竹林問題(※)の解決に寄与できる点に着目しました。
※竹は繁殖力が高く、根を浅くはる特徴があるため周囲へと浸食し、他の樹木の成長に大きな影響を及ぼします。
徳島県の企業と協業し生地の開発に取り組み、日本で初めて竹を原材料に含んだ人工皮革を製品化することに成功しました。
コンパクト財布「IVY」のブラック、ベージュ、イエローグリーンにバンブレナが用いられています。
3. シェレナ(貝を使用した人工皮革)
シェレナは原材料に福島県の「ほっき貝」を使用しています。水産加工業の中で、日々大量に貝殻が産業廃棄物として処分されており、その中でもホッキ貝は大きな2枚貝のため、加工性に富むことから原料元様と協業し開発に挑みました。PVCを製造する際に使用する工業用化学原料から、自然由来原料へとシフトさせることができると考えたためです。PVCは原料の60%は塩でできており、さらにシェレナはCO2排出量が少ないエコマテリアルとして誕生しました。
コンパクト財布「IVY」のスカイブルーにシェレナが用いられています。
これら、竹・貝殻・りんごを素材に使用した人工皮革のコンパクト財布「IVY」は日本経済新聞社が運営するクラウドファンディングサイト「未来ショッピング」で販売を開始しました。2023年6月末までのクラウドファンディングを終えた後は公式サイト等で通常販売をして行く予定です。
そして次なる挑戦「マッシュルームレザー」の製品化
実は、竹・貝殻・りんごなどを使用した国産の人工皮革を使用した製品と同時並行で長野県小諸市にある企業様と「マッシュルームレザー」の製品化も進めていました。
動物性の革の代用品として人工皮革が活用されてきましたが、従来の製品は石油に由来する素材が使用されている事から、より環境に優しい素材としてキノコの菌糸体(※)をもとに作られた新素材が世界中で注目されています。
※菌糸体=土の中に張る根のような細胞のこと。
見た目はもちろん、質感や品質も動物性の革と変わらない事から家具や小物などに活用が広がっており、2022年にはHERMÈSが支援するバイオテクノロジー企業が約142億円の資金調達をして工場を建設するというニュースもありました。
一方、日本ではキノコ栽培の技術はあるものの食用以外で新たな価値を生み出す事ができていませんでした。この度採用した素材は、キノコ生産日本一の長野県にて「新たな信州の特産品を作りたい。」という想いから開発された新素材「KINOLI™」です。
今回、共に製品を開発したMYCL JAPAN(マイセルジャパン)株式会社様(以下、MYCL JAPAN)は、100%国産のキノコの菌糸体を元にして出来た新素材である「KINOLI™」の開発に約1年前から取り組んできました。石油由来成分の一部を植物性に置き換えるのではなく、素材全てを国産のマッシュルームで製作することに挑戦しています。
日本とシンガポールで共同開発した循環型の新素材への注目
MYCL JAPANは、キノコ栽培コンサルタントの専門である「株式会社SALAI International Japan」、キノコ種菌の開発販売する「株式会社千曲化成」、キノコ用栽培袋・装置の製造販売する「株式会社サカト産業」、シンガポールで製造の特許を持つ「Mycotech Lab」の4社で設立されました。
キノコの栽培技術を活かして、食用以外の製品を製造できないか日本側の3社で考えていた時に、インドネシアでキノコの菌糸体を活用した素材を生産していた「Mycotech Lab」と出会われました。海外ではキノコ栽培の技術に課題があったため、日本のノウハウを提供して一緒に国内で研究・生産を始めることになったのです。
キノコの菌糸体を元にして出来た新素材である「KINOLI™」は、菌糸体がそのまま生地になり、最低限のなめし工程のみで出来上がる皮革のような風合いを持つ素材のことです。
動物由来の皮革の腐敗や劣化を防ぐために施される「なめし」の工程では、水を大量に消費します。更に発展途上国における革製品の製造では、使用される薬品や獣毛、石炭などが混入した汚染水が川や海に流出する事例があり、深刻な水質・土壌汚染が問題となっています。また、合成皮革の製造には大量の石油由来原料が使用されており、廃棄しても土壌中で分解されることはありません。
「KINOLI™」は、土壌中での生分解性も備えるため、環境への負荷を大きく軽減する循環型の新素材として期待されています。なめし工程を含め皮革製造の1/4の水量で作られていたり、製造工程で出る廃棄物(副産物)は、壁面パネルやブロック・オブジェなど建築に再利用できるなど、さらなる環境負荷の低減、サステナビリティにも繋がります。
「KINOLI™」を用いた製品の誕生
2023年5月、FUMIKODAは国産のマッシュルームレザーを用いた製品としては日本で初めて、コンパクト財布「IVY」とトートバッグ「GINAbaby」を製品化することができました。
研究開発が現在進行形で進んでいる100%国産のキノコの菌糸体を元にして出来た新素材である「KINOLI™」を用いて国内で製品を生産するにあたり、MYCL Japanの研究者、FUMIKODAの生産担当、縫製発注先の工房の職人さんとが連携しながら製作を進めました。
具体的には、縫製発注先の都内の工房の職人さんに製品サンプルを作成してもらい、商品を縫った感想や仕上がり具合など細かなフィードバックをもらい、FUMIKODAを通じて長野県のMYCL Japanの研究者に伝えるなど連携を密に取り進めました。
当初は生地の柔軟性や厚みに、製品化に向けて課題も発生しましたが、工房の職人さんからの意見を元にスピーディーにMYCL Japanの方で改良版の生地が開発されました。改良版の生地を長野から東京の工房に至急送っていただいて最終仕上げに使用したりするなど、今できる最新の技術で最良のものを3社で連携して創り上げました。
FUMIKODAでの試作品打ち合わせの様子
(左:FUMIKODA 幸田フミ、右:MYCL JAPAN 乾馨太社長)
新素材「KINOLI™」を使ったコンパクト財布「IVY」(アイビー)
使用素材:マッシュルームレザーMYCL、コットン
カラー:ナチュラル
サイズ:W9.5cm(広げたサイズ19.5cm)x D3.5cm x H7cm
価格:59,000円
※中目黒のFUMIKODA SHOPにて展示販売(受注生産)
「KINOLI™」を使ったミニトート「GINAbaby」
外装はすべて「KINOLI™」を使用しており、1点1点違った仕上がりです。
内装にはコットンを使用しており、バッグに使用される素材全てにおいてサスティナビリティにこだわりました。全面のバーに使用されているべっ甲調のアクセサリーは、コットンセルロースという、綿花(コットン)と高純度パルプから作られた植物繊維で出来ています。鯖江の眼鏡工房で職人の手によってひとつずつ磨かれてたコットンセルロースは、水に濡れたような艶と透き通るような透明感を生み出しています。
素材:【外装】KINOLI™、【内装】コットン、【アクセサリーバー】コットンセルロース
カラー:ナチュラル
サイズ:W20cm x D11.5cm x H16cm (持ち手含む26.5cm)付属チェーン102cm
※中目黒のFUMIKODA SHOPにて展示販売(受注生産)
「可能な限り素材のバイオ化を目指してゆきたい」
現在の技術では100%バイオマス素材で耐久性など質を維持した素材を作ることは難しいのが現状ですが、可能な限り環境負荷低減を目指してバイオ化を検討していきたいと考えています。
FUMIKODAは「サステイナブルな選択」をもっと身近にするため、こうした環境に優しい新素材を積極的に製品化し、機能的で楽しめるデザインでお客様に届けています。
また、素材以外でもバッグ製造で余った生地を使用したアップサイクルアイテムの制作や、使用済みのバッグを学生に寄付する取り組みなど、持続可能な社会の実現に向けて積極的に取り組んでいます。
素材や生産プロセスに徹底してこだわる事で、お使いになる方が自信と誇りを感じられるアイテムをこれからもプロデュースしたいと考えています。
・FUMIKODAのSDGsへの取り組み:https://fumikoda.jp/pages/concept#sdgs
・Instagram:https://www.instagram.com/fumikoda.official/
・Facebook:https://www.facebook.com/FUMIKODA.official/
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