今の立ち位置を常に疑い、変化し続ける企業であるために。お客様1人ひとりの希望に寄り添うことからビジネスを考える。【鎌倉新書CEOが語る】
<鎌倉新書について>
葬儀・お墓・仏壇など終活関連のポータルサイトの運営や、オーダーメイドのお別れ会や社葬のプロデュース、終活関連の冊子・印刷物、専門誌等の出版を通じて、高齢者とそのご家族の課題解決に取り組み、豊かな社会づくりに貢献します。
今回インタビューしたのは、代表取締役会長CEOの清水 祐孝。
清水祐孝 プロフィール
1963年生まれ、東京都出身。慶応義塾大学を卒業後、証券会社勤務を経て1990年に父親の経営する株式会社鎌倉新書に入社。
鎌倉新書は、1984年に仏壇仏具業界向けの書籍の出版を目的として設立。
その後、2000年には全国の葬儀社検索、お葬式のマナーや葬儀に関する総合情報サイト「いい葬儀」を開始し、インターネットを通じた情報提供をはじめました。
出版業からWeb上での情報提供、さらにインターネットを活用したお墓や葬儀の販売促進へと、そして供養領域から終活領域へと、時代や人々のニーズの変化に合わせて、鎌倉新書は常に変化をしてきました。なぜこのように大きく変化することができたのか、その理由を聞きました。
ーー鎌倉新書は、なぜここまで変化し続けることができているのでしょうか?
最初は、変化をせざるをえなかったというのが実態です。変化する必要性に迫られたから、変化をしていって、それがカルチャーじゃないけど、体質のようなものになっていったというところだと思います。
鎌倉新書は、もともと仏教書みたいなものをつくっていましたが、仏教書はなかなか売れないし、食えないというのがあったので、変化せざるをえなかったのです。仏教書で扱っていた仏壇や仏具の近くのマーケットにも手を広げていった方がいいんじゃないかというのがあって、葬儀やお墓といった供養のマーケットに向けた出版も始めました。
それから、出版社出版社っていうけれども、出版ってよく考えたら、お客さんは別に紙とインクでできたモノが欲しいわけではなくて、書いてある内容が知りたいから本を買うんだなと。出版というのは、情報を届ける方法論を言っているにすぎないのではないか、という気づきがありました。
であれば、本質は出版ではなくて、情報を届けることなわけだから、届け方にこだわる必要はないんじゃないのというふうに思ったということなんです。
つまり、紙に書いたら4ページだけのような内容を、1日かけて話したらセミナーになるし、その会社のためだけに情報を届けるとコンサルティングになるというわけです。それを情報加工業と呼んでいます。
自分が入社した時のスタートから変化せざるを得ない状況だったから、常に今いる立ち位置に対してクエスチョンマークをもつ癖みたいなものが身についていました。常に今の立ち位置に対して、なにか変わっていかなきゃいけないっていうような、危機感っていうほど強烈なものじゃないかもしれないけれども、そういうものが生まれながらにしてあったっていうことは、言えるかもしれないなとは思いますね。
例えば出版業でいうと、昔は銀座でおいしいイタリアンを食べたいと思ったときに、HANAKOっていう雑誌を見てペラペラめくりながら「ここおいしそうとか言いながら行ったりしてたわけです。それがどんどんインターネットが広がっていくと、だれもHANAKOを見なくなって、食べログやぐるなびをみんなが見るようになって。今度はそれもまた変化していきます。
つまり、社会が変化していけば、我々の嗜好とかニーズだとかそういうものっていうのは、おのずと変化していくわけだから、そこに対して、会社が変化していかないっていう手はないと思うのです。世の中変化していくのに、会社が変化しないっていうことはありえないと思います。
鎌倉新書では、新規事業が積極的に立ち上げられています。
それらは、供養の領域にとどまらず、相続や看取りなど終活の領域まで広がっています。
ーー供養から終活へと、変化していった経緯についても教えてください。
これまで、鎌倉新書はお墓やお葬式など、いわゆる供養という世界で、出版社になり、それからセミナー、コンサルティングをやり、そこからネットビジネスっていうように、事業内容を変化させてきました。
供養という立ち位置に立ってみると、家族が亡くなって、お葬式をしなきゃならない、お墓を買わなきゃならないっていう人たちのお手伝いをしているわけだけれども、彼らがやらなきゃならないことは、よく考えたらそれだけではありません。
家族が亡くなったとき、お葬式をやったら終わりではなくて、仏壇もお墓も買う。それ以外にも、数ヵ月以内に、必要な人は相続の申告書を提出しなきゃならないだとか、遺言書がなかったら、遺族の遺産分割協議書を作成しなきゃならないだとか。
あるいは、田舎のおふくろを一人置いといたら不安だから、老人ホームなどの介護施設に入った方がいいんじゃないかと思ってみたり、あるいは自分の近くに呼び寄せることを考えてみたり。そうすると今度は家が空くから不動産を片付けるとか、売却するだとか。それにともなって、お墓をどうしようだとか。
要するに、誰かが亡くなったときにしなきゃならないことや、したいことっていうのは、供養の領域にとどまらないっていうことが分かったのです。分かった以上、「そこは我々はやりますけど、あとは知りません」っていうんじゃなくて、同じ動機で生まれた悩みや課題に対して、できる限り我々がお手伝いをするというのは重要なことであるし、また我々がやるべき務めだというふうに思っています。そうなると、供養だけじゃなくて、終活全体のところにまた変化していくっていうことにつながっていきました。
鎌倉新書は、葬儀やお墓などを取り扱い、供養の領域で事業を展開していますが、葬儀社や石材店ではありません。つまり、ユーザーさんに直接サービスや商品を提供する会社ではないのです。では、終活の領域で鎌倉新書が果たす役割とは、いったい何なのでしょうか?
ーー鎌倉新書が終活の領域において担う役割について教えてください。
鎌倉新書はたまたま、供養という領域をやっているうちに、仏教書の出版をしているところからどんぶらこどんぶらこと流れて、ITのメディアであり、高齢社会×ITサービスというような立ち位置を得ることができて、それには大きな可能性があると思います。
一方でシニアに向けたマーケットには、プレイヤーはたくさんいるわけですよね。介護事業者もいれば、金融機関もいれば、不動産会社もいれば、生命保険会社もいる。たくさんプレーヤーはいるんだけども、そのほとんどの会社が、最初に商品やサービスありきで、自社の商品やサービスをシニアの人たちに売るために、いろんな手立てを講じるわけです。みなさん最初に売りたい物をもっていて、それを売るためのアプローチをしている。
ところが、ユーザーからみたら、問題は1つではありません。保険があったほうがいいかもしれないけれども、お葬式のことの問題解決もしてほしいし、それから申告のお手伝いもしてほしいという風にいろいろな問題を抱えています。それらを全部まとめて解決できるような、ユーザーの課題解決が先にありきという視点で動いている会社がないということに気付いたということなんですよね。
我々はいわば、人々を河の対岸に渡す船頭さんみたいなものです。葬儀が必要な人を船に乗せて葬儀社さんに連れてってあげる、お墓が必要な人を墓地に連れてってあげる、仏壇が欲しい人を仏壇店に連れてってあげる。あくまでもユーザーサイドのしたいことだったりやらなきゃいけないこと、一般的な言い方をするとニーズやウォンツを叶えるのが我々の仕事なんです。
今シニア向けのマーケットにいるプレイヤーは、保険・葬儀・仏壇といった自社の商品やサービスが先にありきで、それを欲しい人を集めるというビジネスですが、我々はユーザー一人ひとりのニーズを聞いて、そこの希望をかなえてあげるっていう視点でやっています。そういう事業者さんがこれまでなかったということに、この終活のことをやりだして気が付きました。
やっぱり、そこが大事です。例えば、「相続の申告は私たち専門だからお手伝いします。」と。ところがそれに伴って、親がなくなったんで、墓じまいをしたい、墓を移動させたいというときには、「それは私たちは分かりませんから、そういうの専門家のところにいってください」と。そういうことをやっていたら、ユーザーはあっちこっちの会ったこともない専門家を自分たちの力で見つけなきゃならないので、大変なわけですよね。1つ1つ専門じゃないから、分からないことだらけ。それらを我々が専門性を持って、それぞれのユーザーや専門家と相対できれば、このユーザーの課題、ニーズやウォンツを解決してあげることができるんじゃないかと。これを実現するのが、鎌倉新書の役割だと思うし、そこに社会的な意義があります。
例えば、製造業で高い収益を上げているキーエンスっていう会社は、もともと工場でつくっているものが先にあるんじゃなくて、この工場の問題解決が先にありき。問題を解決するために、工作機械を据え付けて、そこに歩留まりを防ぐためにセンサーをくっつけて、ほかのものをいろいろくっつける。そうすれば、工場の効率がすごく上がりますよねという、その工場の生産性の改善を実現する会社というわけです。一方、多くのメーカーは、先にどんどこどんどこ工場の生産ラインからモノができてきてるわけですよね。「この工作機械を買ってください」って言うのか、「あなたの工場の問題は何ですか」って問題解決をするのかという違いがあるんじゃないかなと思います。
問題解決が先にありきのビジネスを、シニア向けのサービスという領域で実現することには、大きな可能性と大きな社会的な意義があります。そういうことによって、一人ひとりが充実した人生を送るお手伝いをすることができるという意味で、重要な意義がある仕事じゃないかなと思うのです。
人々の終活のお手伝いをしていくと、中にはなかなかお金にならないようなニーズやウォンツに出会うこともあります。鎌倉新書は、たとえお金にならなかったとしても、やるべき仕事にはいつも向き合ってきました。
ーー社会的意義の大きい仕事を成し遂げることと、株式会社として利益を上げること。その間にはギャップがあるように感じる方もいらっしゃると思うのですが、清水さんご自身はどのようにお考えでしょうか?
そもそも会社というのは、売っている商品やサービス自体が世の中に役立つっていうのが、まず1つ大事だと思っています。それは今話したように、我々がユーザーの問題解決、あるいはやりたいこと、やらなきゃいけないことのお手伝いをしているということ自体が、一番目の社会貢献です。
その次に、会社が発展すること自体が社会貢献だという考え方があります。
例えば、うちの会社が印刷物をたくさん作るような会社になったとしたら、印刷会社への発注が増えます。それによって印刷会社さんはまた紙の発注を増やしたり、インク屋さんへの発注を増やしたり、機械を発注したりするわけですよね。そしたら、紙が売れた会社がまた同じようなことをしたり、あるいは人をもっと採用したりということになるわけです。
そうなると、会社の売り上げが増えるっていうことは、要するに経済の循環がよくなるっていうことなのです。循環が良くなると、雇用を増やすっていうことにつながり、雇用を増やすっていうことは、社会をよくするということにつながります。社会を安定して発展させていって、豊かな人、豊かに暮らしていける人を増やすっていうことにもなるのです。雇用を増やしたら、結果その人たちが、所得税を払ったり、あるいは買い物をして消費税を払います。そのように納められた税金がまた世の中に戻ってきて、インフラの整備に回ったり、あるいは網の目からこぼれるような人たちを支援する福祉的なことに回ったりするのです。
つまり、会社が売り上げを増やす、雇用を増やす、利益を増やすってことは、イコール社会貢献だという考えをしています。時々、会社や企業っていうのは、なんだか悪いことをしているみたいなイメージを持たれることがありますが、そうではなくて、会社は発展することによって、社会を豊かにしていく装置みたいなものだと思うのです。意味のあることをやって、会社が発展するということは、大きな社会貢献だというふうに思っています。それが2番目の社会貢献です。
その上で、事業をやっていくなかで、これは金もうけにはつながらないけれども、我々がやるべきだよねっていうことがあれば、それはまた別の社会貢献としてやっていきます。
例えば、鎌倉新書では、いろいろな団体の活動を紹介するガイドブックを作ったりしています。
それは、あるとき、寄付をしたいと考えている高齢のご夫婦と話したときにアイデアが生まれたんです。子供もいなくて、親もなくなっている、親戚たちもいない。その人たちが亡くなったら、財産を相続する人がいないから、国に召し上げられてしまうわけです。そこで夫婦で話し合って、自分たちの残りの人生の分ぐらいは残して、ほかは寄付しようと思ったそうなんです。それで役所に行ったら、社会福祉協議会かなにかを紹介されて、寄付は歓迎されたのだけど、寄付金を何に使うのかと聞いたら、高齢者福祉に回ると聞いて愕然としたというのです。寄付をしたら、子供たちや青少年の何かの活動に活かされるだろうというぐらいの意識でいったら、高齢者福祉に回りますと聞いて驚いたと。彼らはあんまり深く考えてなかったと言っていました。
それを聞いて、今後は人の生きざまに応じて、ある特定の活動に対してお手伝いをしたいとか、そういうのが増えてくるんじゃないかなということで、いろんな活動をしている団体を取材して、ガイドブックを作りました。そういうのも、仕事をしていくなかで、これは金もうけにはならないんだけれど、我々がやらなきゃいけない、社会貢献活動だよねっていうことでやったことなんです。
そういうのを3つのCSR社会貢献活動として考えています。1つは、事業自体が、提供しているサービスや商品を売っている活動自体が世の中に貢献すること。2つ目が、企業が発展するということが社会貢献につながっていくということ。最後に自分たちの専門領域の中で民間企業の活動としては不向きだけどもやるべき社会貢献活動みたいなもの。
よく、ボランティアや、NPO団体で働いている人たちから、「あなたたちは金もうけでしょ、私たちは社会貢献活動なんです」と言われることがあります。でも、それは違います。NPO団体は、小児がんの子供の支援や、犬の保護など、ある特定の分野に絞り込んだ社会貢献活動をしていますよね。
私たちは、社会全体に対する貢献活動をやっていると考えています。だからやっていることは同じなんだという話をするのですが、そこをしっかり理解してくれる人は少ないなと思います。オレオレ詐欺で売り上げを上げているのではなくて、意義のあることをやっている以上、会社を発展させる、利益を出すっていうことは、とても大事な活動だと思います。そういうことに共感してくれる人がどんどん増えるといいなと思うんですよね。
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ