「里山の環境保全と地域経済への貢献」に向き合う企業とその理念に共感した企業。2社の技術で誕生した竹紙配合のレジロール紙
1948年創業の株式会社小林について
株式会社小林は1948年、東京都台東区鳥越にて前会長・小林利郎の父である小林伝平が「小林紙店」として創業。主に銀行向け帳簿用紙、小切手用紙を手がけていました。1963年に小林利郎が社長就任、株式会社小林に改組します。この時期に深川工場・矢板工場を開設、レジ用ロールペーパー、電車・バス乗車券等の製造を開始します。1999年、小林浩が社長就任。クラフト部門であるとじ郎倶楽部の立ち上げ、駐車券・入場券・自着テープ・防滑紙など製造ラインナップを増やしていきました。2020年に現社長である小林裕子が社長に就任。竹紙サーマルロールの登場です。
営業部「ニュービジネス推進」のメンバーが立案
当社営業部に所属する「ニュービジネス推進」。新しい素材や面白そうな製品・用途・機械・販売先…と様々な新規開拓に取り組む部署があります。
最近だと紙製テープの糊面のみが接着する「自着テープ」、表面加工により高い防滑性を誇る「防滑紙」といった機能紙の問い合わせが増えています。なかでも自着テープは通常の自着テープを販売後、園芸向けに改良をしたものを農業園芸業界に販路を開拓・拡大しています。
「自着テープ」
紙の原料である木材パルプに異素材を混ぜた「混抄紙」と呼ばれる紙に以前から興味を持っていたニュービジネス推進担当営業が、弊社も混抄紙で商品を作れないかと本格的に動き始めました。
世の中には植物の種皮・衣類・端材・食品加工の際にでたカス・・・と様々な混抄紙があります。最近だと先日広島で開催されたG7広島サミットの記念品に平和記念公園の折鶴をリサイクルした紙が使用されていることも話題になりました。これも混抄紙のひとつと言えます。
異素材が目に見えることが混抄紙の魅力だと考えている担当営業ですが、弊社が製造する商品はレジロールです。だとすると混抄紙であっても滑らかな均一の紙が好ましい。このことから竹配合の紙(通称竹紙)が良いのでは?と考えました。
中越パルプ工業(株)の社会的課題への取り組みに共感。我々にできることは何だろうか?
日本の放置竹林問題をご存知でしょうか。かつては食用のタケノコや生活用品の材料として重用されていた竹ですが、生活様式の変化や生産者の高齢化に伴い管理されなくなり、繁殖力の高い竹は増殖し放置竹林として里山の生態系を脅かす要因となっています。
この社会的問題に早くから取り組んでいるのが中越パルプ工業株式会社です。竹林の多い鹿児島県薩摩川内市に工場を持つ同社は、1998年から国産竹の有効活用に取り組み始めました。同社はタケノコ農家からの伐採した竹の買取り、チップへの加工と試行錯誤を重ねます。現在では年間2万トンを超える竹の集荷体制を築いており、この集荷量は日本で一番とのことです。2009年には国産竹100%の紙を製造販売し始めています。
この中越パルプ工業の里山保全・地域経済へといった社会的課題への取り組みに感銘を受けた当社は、そうしてできた竹紙を使用して何か協力できないか、我々の得意分野でできることは何だろうかと考えました。
日本で唯一の竹紙製造企業と当社の思いが一致
20年程前からある中越パルプ工業の竹紙ですが、企業などで使われる封筒や名刺といったBtoBが主な用途であり、一般の認知は高いとは言えないものでした。それを、BtoCやビジネス用途以外でも広めたい。弊社の商品であるロール紙は、レジロールや発券機のチケットなど一般の方が日常的に目にするもの。広く竹紙を知ってもらうきっかけになる。ひいては放置竹林問題をはじめとする環境について興味を持ってもらえたら、と考えました。中越パルプ工業と弊社小林、両社の思いが一致したのです。
ニュービジネス担当営業が中越パルプ工業の放置竹林問題への取組を社内で発表し、竹紙を使用した商品の製造を提案したところ、アウトドア派であり毎年タケノコ掘りにでかける社長がその社会的な問題を受け止め、我々の技術で少しでも社会の役に立てるのであれば、と竹紙配合のサーマルロールの開発がスタートしました。
感熱ロール紙に向いている竹紙は?
新商品開発が決まってからは、ニュービジネス推進のメンバーは加工や販売面での協力会社探し、営業や広報は竹紙や竹をとりまく環境についての知識を増やすための勉強会の開催といった社をあげての開発体制に入りました。
日本の竹100%の竹紙、晒していないものは色味や質感など竹の風味を感じ人気がある…この100%竹紙を原紙としてロール紙を作ることができたら弊社の目的の一つである環境的にも一番良いのですが、
- コストが非常にかかる。
- レジロール=レシートは消耗品であるためコストをかけられないユーザー様がほとんどである。
- 今回製造するものは感熱ロール紙であり、レジロールとして印字するためには文字が 見やすい必要がある。
このことから10%国産竹配合の紙を原紙とすることに決定しました。10%配合品なら通常している上質紙と変わらずに加工ができます。あとは感熱塗工された原紙を弊社工場でレジロールに仕上げて新商品「竹紙サーマルロール」の完成です。
竹紙サーマルロール
初めてのプレスリリースを配信、新聞の取材を受ける
現社長になってからの初めての新商品であり、広報を強化しはじめたタイミングと展示会を控えていたこともあり、初めてプレスリリースの作成配信にもチャレンジしました。
当社で初めてのプレスリリース
弊社は東京下町のBtoBかつ中小企業。PRは未経験であり、リリース配信の効果は半信半疑でしたが、教わったばかりのPRを試してみたい。・・・ちょうど1年前に前職がPR会社である社員の伝手で、社内で初心者向けのPR勉強会があり、PRプランナーさんからPRの大切さを教わったばかりでした。中小企業だからこそやるべき!との助言でPRTIMESでリリース配信することになりました。
配信後はPV数(反響)を気にしたりモチベーションアップになったりはもちろんですが、掲載先リストや自社リリースを営業ツールとして利用するという新しい営業スタイルができたことは、コツコツと「まじめに」営業をしてきた下町の企業としては大きな変化だと思います。
そのリリースを配信したことにより弊社が所属する協会の機関紙にも掲載してもらい、それを見た新聞社(ブロック紙)から社長インタビューの記事化というお話をいただき4月に掲載がありました。
TOKYOPACK2022 弊社ブース 竹紙サーマルロール初お披露目
新聞記事を見た他社から激励のメッセージが届く
また、そのWEB版新聞記事を目にした鹿児島県の会社(鹿児島県はタケノコ生産量1位。中越パルプ工業も鹿児島にある)から弊社に「東京に放置竹林問題に取り組む企業があることがうれしくて思わず激励を社長に」と電話があり商品サンプルの交換をしました。
同じ台東区内の会社の社長さんからも「来年は所有する山のタケノコ掘りに招待します」というありがたいお話をいただきました。
商品の見せ方売り方を変えたらこんな出会いが広がるんだ、弊社を知らない人に知ってもらう手段があるんだ、という大きな気づきになった出来事でした。もちろん売上増が最終的な目的ではありますが、まずは認知です。良い商品を作ってもそれを求めている人やビジネスの可能性のある場所に情報が届かなければ意味がない。リリース配信というPRの一歩を踏み出したことで商品・企業の認知拡大の大切さを学べたことは弊社にとって収穫だと思っています。
お買い物、レストラン、銀行・・・レシートや紙の消耗品など手にしているものをふと見た時、それが竹紙配合のものかもしれません。
それを見た方が日本の放置竹林が抱える問題を思い出していただければ、そんな日常が来れば、そう願っています。
竹紙サーマルロール
https://www.kabukoba.co.jp/product/roll/thermal-takegami.php
【会社概要】
社名:株式会社 小林
本社所在地:東京都台東区鳥越2-10-4
電話番号:03ー5833ー5884
代表取締役:小林 裕子
設立:1948年
社員数:約50名
事業内容:紙加工販売、カード発行システム販売、手作り製本キット販売
WEBサイト:https://www.kabukoba.co.jp/
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