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荒川のごみ問題を多くの人に知ってもらうために。河川敷に堆積したマイクロプラスチックを使用したアクセサリーブランド「aid to」誕生の背景とは

著者: 特定非営利活動法人荒川クリーンエイド・フォーラム

荒川クリーンエイド・フォーラムは、河川/海洋ごみ問題と向き合い、自然と共に生きる社会を目指すNPO法人。30年近くにわたって荒川河川敷などの清掃をしています。しかし、ただごみ拾いをするだけでは、増え続ける河川/海洋ごみ問題を根本から解決することはできません。


そこで荒川クリーンエイド・フォーラムがごみ問題を啓発するための挑戦として、マイクロプラスチックを使ったアクセサリーブランドの「aid to(エイド トゥ)」。なぜ、ごみ問題の解決のためにアクセサリーブランドを立ち上げたのか、そのプロジェクトの裏側に迫ります。


海洋プラスチックごみの多くは陸地で発生している

近年、地球環境への関心が高まる中で注目を集めているのが海洋ごみ問題。海洋ごみの5〜8割は陸で発生したごみが河川を通って海へと流出しているものであり、言い換えると人間は自分たちが出したごみを海に漏出してしまっているのです。



こちらは荒川の河川敷。大量の人工系ごみが漂着・堆積していることが一目で分かり、この約300㎡エリアに漂着したペットボトルの数は推計5万本にもおよびます。


環境中に流出した大きさ5mm以下のプラスチックごみを総称して「マイクロプラスチック」と呼びます。マイクロプラスチックは海中で有害化学物質を高濃度で吸着し、有害物質の運び屋となり、食物連鎖を通して魚介類の体内に入り込み、私たちの食卓にまで届いているかもしれません。また、ごみが水中で生き物に絡みついたり、生き物がごみを誤食してしまったりすることもあります。


(荒川で回収したマイクロプラスチック:洗浄済)


私たちは、河川敷の様々な場所で、様々な人たちが、河川ごみや水質汚濁などの問題を考えて、豊かな自然を取り戻そうとする活動を続けています。活動範囲は、上流の秩父市から東京湾の葛西海浜公園東まで広がり、年間で150会場以上で開催、約1.3万人が参加しています。


参加者はごみを数えながら拾い、どんな種類のごみがどれくらいあるのかを調べたデータを集計。ごみの種類と数を見える化することで、参加者一人ひとりに気づきをもたらし、市民の環境保全意識を高める狙いもあります。

河川/海洋ごみ問題を、新たな層にも伝えたい

いずれは海の魚の量より、海洋プラごみの量の方が多くなると言われています。そのような待ったなしの状況の中で訪れたコロナ禍。多くの人が集まってごみを拾う現場活動はなかなかできず、もどかしい日々。そんな中でも何かできることはないかと模索していました。


また、普段から実施するごみ拾い活動は、体力的にハードという側面もあり、参加者が男性に偏りがちという課題がありました。一方で、参加した女性からは口々に「自分が親になって初めて子どもたちが育っていく環境が大切と考えるようになった」といったようなコメントをもらうことが多かったのです。


だからこそ、女性や若い人にももっと河川/海洋ごみ問題について知ってほしい。荒川クリーンエイドの活動を知ってほしいと考えていたところ、スタッフから荒川河川敷に堆積しているマイクロプラスチックを使ってアクセサリーを作るアイデアが上がりました。コロナ禍で「おうち時間」が増え、ハンドメイドへの注目が高まっていたことも後押しとなり、マイクロプラスチックのアクセサリーブランド立ち上げへと動き出しました。

アクセサリーを作る中での葛藤

マイクロプラスチックについて知ってもらうためには、まず「aid to」のアクセサリーを手に取って使ってもらう必要があります。マイクロプラスチックを紫外線硬化樹脂(レジン)で固め、日常使いできるアクセサリーとして形にすることに。しかし、アクセサリーの製作を進める中での葛藤もありました。


ごみ拾い活動とは異なり、「aid to」のアクセサリー製作は、それ自体が環境に良いかといえばそうではありません。製作に使う紫外線硬化樹脂もプラスチックの一種であるほか、製作・流通の過程でCO2を含めた一定量のごみは必ず発生してしまいます。


実際、「河川/海洋ごみ問題の解決に向けて活動をしている組織がやるべき活動ではない」と厳しいコメントをもらうことも何度もありました。ガラスを融解させて製作することも検討しましたが、その工程において電気を使いすぎることから、別の環境負荷が生まれることがネックになりました。



荒川クリーンエイド・フォーラムのメンバーは、「aid to」の活動を続けるか悩みながらも、「女性や若い人にも河川/海洋ごみ問題を知ってほしい」という思いに従って、活動を続けました。加えて、私たちが清掃活動で回収するごみの量と新たに生み出してしまうプラスチックの量を天秤にかけ、あくまで啓発ツールであり、大量生産でないことやaid to自体が環境に良くはないことを明示しています。


新たに作り出してしまう量のプラスチックよりもたくさんのごみを自然界から除去しながら、廃棄物を最小にすることを常に意識して製作。製作の過程でマイクロプラスチックが排水に混じって流出しないよう、素材を洗浄する際は何重にも目の細かいネットを敷くなど、細心の注意を払っています。販売の際も、緩衝材は使い回しのものを、台紙にはできるだけ不要な紙を。できる限り環境負荷を少なくする努力も怠っていません。

荒川の現状を伝える「Arakawaモデル」

荒川のごみ問題を伝えるために、活動地域ならではのデザインは何かないか、とも考えていました。河川敷に堆積しているマイクロプラスチックを見ていると、白や黒のレジンペレットが多いことに気づいたのです。


河川敷の土に含まれるマイクロプラスチックは、成形前の原料であるレジンペレットと、プラスチック製品が紫外線や風や波などの物理的な影響で細かくなったものの2種類に分けられます。荒川の河川敷のマイクロプラスチックは、白や黒のものがほとんどでした。


そこで、現状を伝えるために、白と黒のマイクロプラスチックをメインに使用したモノトーン基調のアクセサリーを「Arakawaモデル」として製作・販売しています。



立上げ当初はヘアアクセサリだったものの、お客様からArakawaモデルのピアスが欲しいという要望がありました。その声を反映する形でピアスやイヤリングを製作。クリアにグラデーションするデザインは「いつか荒川からごみが消えて、きれいになりますように」という想いを込めています。


「Arakawaモデル」は、aid toの代名詞となるデザインに仕上がりました。シックで大人っぽいデザインにすることでどんなファッションにも合うようになっています。


加えて、ジェンダーに囚われず、想いを届けるためにキーホルダーなどジェンダーレスなアイテムも製作してきました


「aid to」が存在しない未来を目指して

「aid to」というブランド名には、「1人の力では解決できないことがあっても、小さな力が積み重なれば大きな力になる」「みんなで支え合い課題を解決していくのが大切」という意味が込められています。「aid to」を立ち上げてから葛藤や厳しい声もあった一方で、男性の参加がメインだった活動には変化が現れています。


「aid to」に関わりたいという女性からの問い合わせが増え、Z世代を中心に荒川クリーンエイド・フォーラムやaid toの運営サポートに関心を持つ人も増えました。今までよりも幅広い年代・性別の人に、河川/海洋ごみ問題がしっかり届くようになったと感じています。



「aid to」デザイナーの竹村さんは、「私自身もかつては、仕事と子育てで忙しい毎日を過ごしていると、環境問題は自分にはあまり関係のない遠いことのように感じていました。だからこそ、『aid to』のアクセサリーを手に取ることで、

子育て世代の人がごみ問題や環境問題について親子で話し合うといった機会が増えればいい」と語ります。


荒川クリーンエイド・フォーラムが目指すのは、「aid toが存在しない未来」。アクセサリーの材料であるマイクロプラスチックが自然界から姿を消せば、「aid to」は存続できなくなります。そんな未来を目指して、これからも多くの人に河川/海洋ごみ問題を伝えていきます。


■「aid to」公式ホームページ

https://aid-to.cleanaid.jp/


■「aid to」公式Instagram

https://www.instagram.com/aidto_acf/

※インスタショップでダイレクトに購入が可能になりました。






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