ファッションにおける持続可能な未来を育む、環境と人にやさしいニット原料、マテリアルリサイクルPET100%使用の”ECOLILY”
「ユニークな糸でニットの明日をひらく」を合言葉に50年以上、繊維の街・泉大津よりニット原糸の企画開発、ニット製品のOEM事業を行い、糸選びからお客様のお手元に届くまでのニットプロダクトづくりをトータルにサポートしている澤田株式会社。
アパレル商品に限らず店頭にも環境保護を考えた商品が並ぶようになり、SDGsはより人々の身近なものとなりつつあります。
澤田株式会社も同様に、かつてから再生原料を使用した糸を取り扱っていますが、日本では供給チェーンにおいて工程が企業ごとに分業されていることによるトレーサビリティ問題(※)でサステナビリティや安心・安全性を証明することが難しい現状です。
しかしながら、商品へと生まれ変わりエンドユーザーに届くまでサステナビリティや安心・安全の不透明性をなくすのが川上産業である私たちの使命と感じていました。
幾度となくニット原糸企画チームで議論を重ね、誕生したのがマテリアルリサイクルPET100%使用の【ECOLILY(エコリリー)】です。
ストレッチ性とバルキー性を兼ね備えた特徴のある糸をベースに企画を進める
起案にあたり、より多くの方々へ届けることができる商品作りを念頭に置くということが大前提でした。
そこで採用したのがECOLILYの前身商品でもある【ES HIGH STRETCH LILY】をプロダクトのベースにすること。
ES HIGH STRETCH LILYは某大手シューズメーカーや大手国内ブランドなど、すでに多く供給しているリリヤン糸で、「AIR SPONGE PROCESS™」という特殊加工を施している商品です。
「AIR SPONGE PROCESS™」とは長さを20%以上縮ませ、糸形状を膨らませることで、空気層を持たせる特殊加工です。ひと手間かけて加工を行うことで、ストレッチ性とバルキー性を兼ね備えた特徴のある糸に仕上がりました。
この加工がクッション性の高い素材感を生み出し、保護素材へ使用、また太めの糸に仕上げることによりアパレル向けでは軽くてやわらかい心地よさと奇抜なデザインを表現するのに最適なのです。
とにかく手間と時間をかけた、他社が真似しにくい優秀な当社自慢の商品です。
効率的な生産を求めるがゆえに、細かい工程管理をしたくない糸メーカーが多いため、当社はそういうニッチなところに勝機があるのはないかと考え、生まれました。この商品ならば、より多くの人へ私たちの思いを糸に乗せて届けることができると率直に思ったのです。
モノ・サービスを「どこにもないところまで、はみ出すようにしよう」という方針で開発を開始
開発時はコロナ禍真っ只中でアパレル業界には逆風が吹いており、後ろ向きな考え方に陥りがちな状況でしたが、だからこそあえて「もっと手間をかけ、もっと他社が真似できないことに挑戦」することを決めました。
企画段階では安心安全なものへアップグレードすることとサステナビリティの両立に加え、番手と呼ばれる糸の太さのラインナップを充実すること、そしてサステナビリティを追求するがゆえに取り組まなければならない糸の染色方法の変更について考えました。
番手のラインナップを増やすことで比例して在庫は増え、染色方法の変更で売れ残りが出た際の在庫リスクへの懸念が生じます。
新商品開発のチャレンジへの熱意とは裏腹に、売上も低迷しているなかで在庫リスクを抱えることは企画チームでもなかなか腰が上がらない状況でした。
通常の染色方法では原糸と呼ばれる真っ白な糸を在庫し、売れ行きによってどの色に染色するかハンドリングできますが、今回取り組んだ染色方法の変更では原液着色糸(後述)という原材料を作る段階で染色する方法となっています。
つまり24色展開する場合は24色分の在庫を持つしか術はなく、他の色に染めることもできないため、自由にハンドリングができない在庫となります。
新商品の具体化が進むにつれ、リスクを考えてしまいがちでしたが澤田株式会社の「モノ・サービスをどこにもないところまではみ出すようにしよう」という全社方針から"リスクを取ってでも新しい良いモノを作るチャレンジをしよう"とチーム一丸で決めました。
お客様が使いやすい番手を用意するため、これまでの他商品の売れ行きやヒヤリングで調査しながら、より使用いただきやすい番手を取り扱えるよう1年近い試作を重ねました。
ES HIGH STRETCH LILYと同様、多くの工程を通って完成するまで時間がかかる糸であること、競合他社が在庫リスクを避けるためにできないことを当社がやること、このニッチさとオリジナリティで勝負していくことを決断。
在庫リスクがあろうとも当社では自社で編地作成を出来る環境があり、優秀な編地作成チームが作る編地での直接提案ができるからこそ、この糸を自信もって販売できると確信しました。
安心安全性の証明とサステナビリティの両立、アップグレードした新商品
ES HIGH STRETCH LILYを新しい価値観を持つ糸へアップグレードし、安心安全と本質的なサステナビリティを謳うため、私たちはECOLILYを作るために3つの課題を掲げました。
1.再生原料への置き替え
原料にはマテリアルリサイクルPET100%のポリエステルを採用しました。廃棄物の削減に加え、新たな原材料の生産資源やエネルギー使用の削減に繋げていくためです。
そして、マテリアルリサイクルによる循環型社会の創造にも寄与します。
また再生プロセスによって生成された高品質なポリエステル繊維は耐久性があり、摩耗や色あせに強い特性があります。アパレル製品や家庭用品など、さまざまな製品に使用することができます。
2.水の使用量を減らす染色方法
海に囲まれた日本では水不足はあまり身近に感じないかもしれませんが、アパレル業界や海外では深刻な問題として捉えられています。一般的な後染め工程では”精錬(糸を染める前に不純物や汚れなどを除去する)→染色→染色後の洗い”の流れの中で大量の水を使用します。
ECOLILYは原着糸(原液着色糸)というプラスチック原材料の生成時点で顔料や染料を混ぜ、着色を行う方法をとりました。原着糸は染色・染色後の洗いが不要になるため3つの工程で1工程分の水の量で済み、各工程で消費される数千リットルの水の節約に大きく効果がでます。
染色後洗い工程で発生する染料廃液が出ないことでも水質保全・生態系破壊に寄与します。原着糸は水資源の節約だけでなく色の耐久性を示す堅牢度が良く、後染めと比べても変色や退色がしにくいです。染料と繊維が一体化していることで、染料が外に出ることも起きにくいため色移りも起きにくくなります。非常にポテンシャルの高い染色方法です。
3.安心・安全性の証明
再生原料の置き替えや染色方法の変更には安心・安全の第三者機関認証を取る目的もありました。冒頭でも述べたように、日本では供給チェーンにおいて工程が企業ごとに分業されていることによるトレーサビリティ問題でサステナビリティや安心・安全性を証明することが難しい現状です。
ですが、上記で述べた糸の制作工程により使用原料が環境に寄与する証明である【エコマーク】、350種類以上の有害物質を対象とした世界最高水準の安全性証明【OEKO TEX® STANDARD 100】の認証を取得することができました。
【エコマーク】
製品全体(繊維部分)に対してリサイクル繊維(ポリマーリサイクルPET繊維、ケミカルリサイクルPET繊維など)を50%以上使用している必要がありますが、ECOLILYの原料はマテリアルリサイクルPET100%ポリエステルであり、エコマークを取得しています。
【OEKO TEX® STANDARD 100】
350種類以上の有害物質を対象とした世界最高水準の安全性証明。
OEKO TEX® STANDARD 100では製品の用途によって、求められる安全性のレベルは異なり、乳幼児のような敏感肌であったり、肌との接触が大きい製品ほど、規制値の基準は厳しくなります。
ECOLILYは36か月までの乳幼児、幼児期に触れる繊維製品の基準をクリアした最高位の「製品クラスⅠ / Annex6」を取得しました。
手芸業界初の安全性認証商品、DtoC手芸糸展開により消費者様に安心安全をより身近に感じてもらう
ECOLILYは手芸用の糸としても販売開始しました。
手芸業界初のエコマーク・OEKO-TEX®️の認証商品です。
社内で作ったECOLILYを消費者様にもお届けしたいという思いで、4種類ある太さの一つを当社の手芸ブランド「sawada itto(サワダイット)」から【puny eco(プニーエコ)】という商品名で販売しています。
「SAWADA MARCHE(サワダマルシェ)」という当社オンラインショップに加え、有名手芸チェーン店でも取り扱っています。
puny ecoの素材がポリエステルなので、春夏秋冬問わず年間使っていただけるような風合いです。通常の新商品が出たとき以上に商品の売れ行きは良く、手芸好きの消費者様からはご好評をいただいています。sawada ittoでは新作の糸を出したタイミングで、糸のキットを同時販売する流れになっており、そちらもお客様からご好評いただきました。
今回認証を取ったpuny ecoの前身商品に「puny(プニー)」という商品がありますが、こちらはES HIGH STRETCH LILYを使用しており、販売開始から継続的に好評をいただいているベストセラー商品となっています。
puny発売当初も手芸糸業界ではこれほど「ストレッチ性・目の立ち・軽さ・洗える」という機能を兼ね備える手芸糸はなく、瞬く間にヒット商品となりました。糸を染めるときは、染料を使うので、赤ちゃんにとって成分的にきつい規制物質があります。
puny ecoに関しては、赤ちゃんの肌に触れても全く問題がなく、OEKO-TEX® の中でも一番高いクラスの認証を取れている安心な糸です。
例えば、お母さんが赤ちゃんのものを編んでいても無害なので、そういう点もセールスポイントだと思います。
BtoBだけでなく、DtoCでもSDGsを推進すると同時に環境に寄り添ったブランドを今後も展開していきたいと思います。
ECOLILYプロジェクトリーダーとして、そして糸商としての思い
ECOLILYプロジェクトリーダー: 南川真之(みなみがわ まさゆき)
素材開発においてSDGsを意識しはじめたのが、2018年でした。この頃はSDGsという言葉さえほとんど国内では認知がされていない状況で、積極的に社内展開をした際も、「SDGsは、日本のお客様には響かない」、「SDGsよりもコスト面」という意見が多く、社内に浸透させるのも大変でした。
また「モノ(商品)」を売るのではなく、「コト(商品に込められた思いや生産背景)」を売って欲しいという内容にもなかなか共感を得ることができませんでした。
それから年月が経ち、海外からの情報も継続して収集していくうちに、当社の営業チームも日本のお客様もSDGsを意識しはじめるようになってきました。
しかし、実売ではまだまだ「コスト面」や「モノ」が優先されている部分もあるかもしれません。
当社が得意とする分野は、「ファンシーヤーン」です。このファンシーヤーンを使って、ニッチなポイントで「ファッション×SDGs」を実現したく、他にない糸でSDGsを表現するのには、これだと思い、もともと販売していた「ES HIGH STRETCH LILY」をアップグレードし「ECOLILY」をデビューさせました。
日本のマーケットでは、まだまだ「コスト面」を重視されるお客様が多いですが、SDGsを意識されるお客様も着実に増えてきています。
そのため、当社としてもSDGsを意識されるお客様に響くようなモノづくりを継続させていきたく思いますし、興味はあるけれどもコストが合わないから使用できないお客様にも使用していただける様な工夫をこれからも考えていきたいです。
当社が販売している「糸」で、当社の想いが一人でも多く伝わる様にこれからもSDGsを意識したモノづくりに取り組んで参ります。
※トレーサビリティ問題…製品や原材料の供給チェーンにおいて、その経路や流通過程を正確に追跡できない状況。トレーサビリティは、製品の起源や品質管理、安全性、環境への影響などを確保するために非常に重要。
会社概要
会社名 :澤田株式会社
代表者 :代表取締役社長 澤田 誠
設 立 :1969年7月1日
所在地 :大阪府泉大津市千原町2-2-19
事業内容 :ニット用原糸、及びニット製品の企画研究開発、並びに販売。
Webサイト:https://www.sawada-co-ltd.co.jp/
オンラインショップ:https://sawadamarche.com/
ニット産地大阪府泉大津に本社を置く創業54年のニット原糸メーカー。
ニット原糸の開発、ニットウェアのOEM・ODM生産、ニット製品の自社ブランド展開など、ニットに関するあらゆることに携わっています。大阪府泉大津市を本拠地とし、東京、上海、香港に拠点展開。
世界でいちばんのニットカンパニーを目指しています。
【お問い合わせ】
澤田株式会社
info@sawada-co-ltd.co.jp
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