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「現代の名工」の後継者として、めっき技術開発と同時に環境問題や省エネに取り組む。運用改善のキーは「電力の見える化」

著者: 株式会社EnergyColoring

株式会社東電工舎は大正13年に創業され、100年の歴史をもつ会社です。歴史に裏付けられた信頼性と同時に、特異な依頼にも応えられる高い技術力をもち、代表取締役の山田英佐夫さんは2006年に「現代の名工」に認定されました。今回は山田英佐夫さんの後継者でいらっしゃる山田伊佐夫さんに、会社を受け継いでいく思いや、めっき業界を取り巻く事業環境、環境問題や電力対策などについてお話を伺いました。



大正創業の歴史


筆者:まず始めに、自己紹介と会社の概要をご説明いただけますか?


山田伊佐夫(以下、山田):

私は入社してまだ9ヶ月なんです。10年以上、別の仕事をしていましたが、会社社長である父が70歳を超えて高齢になったことから世代交代ということで後継者として戻ってきました。今は一つに特化せずに会社全体のことをやっています。

多少、化学に携わっていましたので、全く解らない訳ではないのですが、前職はめっきと関係ないところでしたので、めっきについては一から勉強しているところです。


筆者:御社はかなり歴史があると伺っていますが?


山田:そうですね。創業が大正13年で、私で4代目になります。株式会社となってからも60年を越えました。


筆者:それはすごいですね。社屋を拝見していると本当に歴史を感じます。ところで、めっきと言ってもいろいろなものがありますが、御社の場合、メインとなるお仕事はどのようなものですか?


山田:うちは工業用クロムめっきがメインで、様々な機械部品や金型など、1個単位から数十個単位まで対応しています。一番多いのが装置の中に組み込まれる部品の一部にめっきする仕事で、30cm~1メートル位の、比較的大きな部品が多いです。


筆者:「少量多品種」を強みとされていますが、具体的にはどのようにされているのですか?


山田:今までの経験値から、ある程度のことは見当がつきますが、新しい品物になると形も変わりますので、社長、工場長とコミュニケーションをとりながら進めています。常に創意工夫を続けることで専門性も高まってきて、幅広い対応ができるようになりました。


筆者:後継者として入社された時の思いを聞かせていただけますか?


山田:「今、働いている社員を守る」ということが第一です。父の代で終わらせてはいけない、という思いがあります。

また、これまでの実績や培ってきた技術をベースに、もっと幅を広げていろいろな物に対応していきたい、現状維持だけではなく、新しい品物についても挑戦したい、という思いがありました。



現代の名工に認定


筆者:代表取締役の山田英佐夫様が2006年に「現代の名工」に認定されましたが、認定されたことによって、代表ご自身や会社に変化はありましたか?


山田:名工になったことで記事にも掲載され、評判も立って仕事は増えたと思います。


筆者:英佐夫様はめっき業界で指導的な立場にいらっしゃると伺っていますが、技術研修などもされているのですか?


山田:めっき組合が開いている、めっき学校(高等専門訓練学校)で長年、指導員をしています。そこでの指導は名工になる前からやっていました。


筆者:もともと指導する立場でいらっしゃって、日本のものづくりに貢献されていたのですね。そういう技術や知識を見込んで、お客様から指名で依頼されることもあるのですか?


山田:品物によっては「東(あずま)さんにお願すればできるのでは?」というのがあったと思います。


筆者:「東電工舎さんならできる」と最後の砦のような会社になっているんですね。


(代表取締役 山田 英佐夫 様 / 山田 伊佐夫 様)



めっき業界を取り巻く厳しい事業環境


筆者:昨今、電気料金の高騰や環境規制などがありますが、めっき業界はどのような事業環境に置かれているのでしょうか?


山田:めっきの種類にもよりますが、うちがメインとしているクロムについては環境規制が特に厳しくなっています。めっき作業後の排水は下水に流すために、かなりの処理が必要です。今後、さらに環境規制が厳しくなる予定があるので、流す前の分析も徹底しています。まためっき液は高温になるため、身体によくない蒸気が出てしまいます。それについても外部に測定依頼して厳しく対策しています。


筆者:それにはコストがかかると思うのですが、日本のものが思うように売れなくなっているなかで価格に転化できているのですか?


山田:微妙なところですね。材料費も値上がりしていて、それについては値上げが対応できていますが、業界全体でみると、うちだけが大きく価格を上げることができない状況なので、より一層のコストダウンが必要になっています。



めっきの工程と、電力の問題


筆者:この記事の読者には、めっきについて詳しくない方も多いので、簡単にめっきをしていく工程を教えていただけますか?


山田:まず前処理として、めっきする品物についている油などの汚れを洗い落すところから始まります。前処理でめっき処理ができる状態にしてから表面に金属をつける、というのがめっきの工程です。


筆者:その表面につけるところで、電気分解を使うんですね。


山田:電気を使わないめっきもありますが、うちは電気を流し電気分解を利用して品物に金属をつけています。


筆者:そうなると、電気代の高騰はクリティカルにコストに反映されてしまいますね。


山田:そうなんです。


筆者:電気代はこの2~3年でどのくらい上がっていますか?


山田:ウクライナの戦争によるダメージが一番大きくなっています。コロナによる影響はそれほど受けていないんですが、この戦争の影響で3~4割、上がってしまいました。


筆者:電気代高騰への対策として、測定、数値化などはされていたのですか?


山田:数値化はしていません。電気料金の明細表を見て従業員に確認したり、必要最低限のことしか出来ていませんでした。直流電源を利用しますので、多くの電気を使っていますが、機械ごとの電力使用量などは把握できていませんでした。



電力の見える化で、さらなる運用改善


筆者:今回、EnergyColoringのセンサーを設置していただきましたが、いかがでしょうか?設置はどうでしたか?


山田:設置は簡単で、時間もかかりませんでした。


(実際のダッシュボード画面)


筆者:設置して直ぐに、ダッシュボード上でデータをグラフで見られるのですが、「見える化」されたことによって、良かったことはありますか?


山田:「見える化」していただいたおかげで、電力使用量の多いところや、多い時間帯が分かったので、今後の対策の参考になりました。


筆者:グラフでは場所や各装置、直流電流などが、いろいろな切り口で見られますが、ここまで分析できると思われていましたか?


山田:さすがに、ここまできれいにとは思っていませんでした。もっと大雑把で、大体のことがわかるのだと思っていました。こんなに細かく分析できるとは思っていませんでした。今後の対策や運用改善を考えるための良いヒントになります。


筆者:1日あたりの平均値として647キロ程度の電力を使っているということが分かりましたが、それによって月の電気料金への意識は変わりましたか?


山田:もともと気にしていましたが、さらに意識が高まりました。


筆者:やっぱり、「見える化」はとても重要だと言うことですね。「見える化」したことで現状把握ができたことで、どのような取り組みをされましたか?


山田:使っていない時に切った方がよい電気については、ブレーカーを落とすことを検討しています。また、夜間の待機電流が多いことも分かったので、夜間、切れるところはブレーカー遮断も検討議題に上がっています。


筆者:今回、EnergyColoringによって「見える化」ができたわけですが、すでに昨年中にも省エネ活動をされたと伺っています。具体的にはどんな活動をされたのですか?


山田:可能なめっき槽を変更して、めっき作業の場所を2カ所から1カ所に集約することで、結果的に電気代を半分程度に抑えられました。


筆者:半分はすごいですね。そういった取り組みもされたうえで、夜間の待機電流に気づかれたのですね。運用改善は費用をかけずにできますが、そのためには「気づく」ことが大切ですね。「見える化」されたことによって、会社の雰囲気は変わりましたか?


山田:これまでも社内で協力しながらやってきましたので、特別に変わったということはありませんが、今回の「見える化」は省エネしていくための根拠になりますので、これからは、どんどん改善していきたいと思っています。



環境への配慮


筆者:御社のホームページを拝見すると、環境にも配慮されているように思いますが、環境に対する活動は脱炭素や省エネにもつながっているのですか?


山田:もちろん、つながっていると思います。排水や蒸気に対する対策のほかに、めっきの電気を流す機械は大きくて騒音問題もありますので、それを抑えるための取り組みもしています。


筆者:昨今、脱炭素経営と言われていますが、この点についてはいかがでしょうか?


山田:なかなか難しいです。電気代は工夫で抑えられると思いますが、脱炭素への対策としては、将来的に、排気ガスの排出が少ない機械への変更を検討したいと思っています。



今後の展望


筆者:今後の展望を伺えますか?


山田:今後もこれまでも、お客様あっての商売ですので、お客様のニーズにあったものをご提供することを一番に考えていきたいと思っています。ただ今後、20年、30年と続けていくためには現状維持だけでは限界がありますので、高機能や特性のあるめっきや、全く新しいものを開発していきたいと思います。お客様の求めるものを開発していくのか、お客様の興味を引くことができるものを開発するのか?というところだと思います。


筆者:とても興味深いお話を聞かせていただきました。本日はどうもありがとうございました。




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