きっかけは「初めて旦那さんからもらったお花を長持ちさせたい」。開発に2年をかけた花器「ウォーターキープベース」のストーリー
オークス株式会社(以下、当社)は、創業から77年、新潟・燕三条で主にキッチン雑貨や家庭用品を企画販売しています。当社は生産設備を持たないメーカー、いわゆる「ファブレス企業」です。「こんなの欲しい!」の声や暮らしを便利にするアイデアを、商品ごとに最も得意とする地元の職人さんとカタチにしています。「ちょっとした感動」を覚えてもらう新製品を次から次へと市場に発信しています。
当社は2023年6月16日にクラウドファンディングサイト「Makuake」でプロジェクト開始した新製品の(抗菌機能付き)花器「ウォーターキープベース」(特許出願中)が好評です。
このアイテムは、開発者が「旦那さんから贈られたお花を少しでも長く、キレイなまま飾りたい…」そんな想いから生まれました。キッチン雑貨を主に販売してきたオークスはもちろん、開発者にとっても初めての商品ジャンルでした。試行錯誤とさまざまな苦労を重ね、2年の開発期間を経て、ようやく納得のいくモノを完成させることができました。
銀めっき加工をした抗菌ホルダーと容器がセットになっている花器。
抗菌ホルダーは花立(はなたて)であると同時に、銀めっきの抗菌効果で水中の雑菌の増殖を抑え、水をキレイに保つサポートをします
「生けながら、お水をキレイに。お花の美しさキープ。」
ちょっと不思議で、魔法のような商品がどうやって生まれたのか?
「ウォーターキープベース」の開発のストーリー、誕生秘話を当社の開発者と共に振り返ります。開発担当は、社内きっての「お悩み解決のプロ」アイデアパーソンの小坂井里美です。
商品開発課 リーダー 小坂井里美
夫にもらった花束を長持ちさせたかった・・。初めての商品ジャンルに挑戦することになったきっかけ
小坂井は、同期入社の同僚が、旦那さんから毎年誕生日にブーケを贈ってもらっていると聞きました。「うらやましい!私ももらってみたい…。」
花束をもらったことがない彼女は勇気を出して、旦那さんに「私も花束をもらってみたいんだけど…。」とお願いしました。すると結婚記念日に大きな花束をもらうことができました。家にあった様々な容器にお花を生けましたが、その時は猛暑。連日部屋の温度は30℃以上になりました。
水はすぐに濁り、茎はぬめってしまいました。すぐに枯れてしまったお花もありました。
「せっかく旦那さんがプレゼントしてくれたお花。なるべく長持ちさせたい…。」
日中、エアコンをつけて出社した日もありましたが、「電気代がもったいない。どうにかならないか…」と思ったことが開発のきっかけでした。
「抗菌性のある花瓶」とは。商品化へのヒントとアイデア
キッチンの排水口やゴミ受けにアルミホイルを丸めて入れておくと、ぬめりが軽減されることは知られています。
小坂井はコップにアルミホイルをうずまき状に丸めて入れ、お花を生けてみました。
すると、水のぬめりが抑えられ、お花が長持ちしたように感じました。
(この時すでに抗菌性に加え、花留めの機能も持たせようとしていたそうです。)
夏場の室温の高さでお花が持たないことに困っている人は多いのではないかと思い、新製品として研究しようとアイデア会議で提案、初めての商品ジャンルでしたが開発を進めることとなりました。
「おうち時間」の増加という時代背景も開発を後押し
コロナ禍でテレワークが普及し、「おうち時間」が増えました。
家で手軽にお花を楽しみたい人が増え、定期的にポストにお花を届けてくれるサービス「お花のサブスク」も人気、市場が急成長しています。フラワーショップでも手軽に買えるミニブーケが売れています。
ところが一般的な花瓶は大きすぎて、そんな手軽なサイズのブーケ丈にちょうどいい花瓶は、あまりありません。
切り花が日持ちしない原因は、雑菌の繁殖
小坂井は切り花の専門書を読み漁りました。
分かったことは、早く枯れてしまう原因のひとつは水の雑菌の増殖でした。
お花を生けていると、だんだん水がぬめってきます。このぬめりの正体は雑菌で、茎の導管を詰まらせて、お花が水を吸えなくなります。すると、お花の水分量が減り、しおれてしまいます。室温が高く、雑菌が繁殖しやすい夏場は、特に日持ちしない傾向があります。
水を抗菌することは、お花の状態を保つ上で効果的だということがわかりました。
抗菌性の実証に苦労した、研究開発の日々
アルミホイルを入れた時のように、水を抗菌することは効果的だったのです。
商品化するためにはそれ(抗菌性による花保ち効果)を実証しなければいけません。
ステンレス製のワイヤー形状で花を支え、表面に施しためっきで水を抗菌する仕様で試作し、実験することにしました。ここからが苦労の連続でした…。
花も菌も生き物。
花の種類や品種によって寿命は異なり、個体差もあります。
室温や湿度等、環境によっても大きく変化。
実験結果の要因を特定することは容易ではありません。
小坂井:「こうなったのは、こういう理由かもしれないけど、そうじゃないかもしれません。」
部長:「・・・結局、どうするの?」
開発前半は、こんなやり取りばかり。
仮説を立てて検証を繰り返すも、工業製品ではないため、検証が難しいことを痛感します。
少しでも試験環境を一定にするため、ついには社内の倉庫内に実験用の温室を設置しました。
たどり着いた、「銀めっき」による抗菌性
「抗菌性が弱すぎるのはダメだが、強すぎても花に悪影響。早くしおれてしまう…。」
水中での抗菌効果を測定しながら、花保ちも検証。
ほどよい抗菌性、効果を探す日々。
めっきの金属の種類や、めっき面積比較のため、ワイヤーの側面の本数や太さをさまざまなパターンで試作、検証しました。
《めっき別 経過テスト》 ※5日経過後の様子
抗菌ホルダー(銀めっき仕様) 経過テスト ※温室内3日経過後の様子
左:抗菌ホルダーなし/右:抗菌ホルダーあり
「銀めっき」は抗菌性に優れ、他のめっきと比べ、花保ちに優れていました。
現在の形状や「銀めっき」仕様にたどり着くまでに1年半もの月日を費やしました。
花の美しさを際立たせる形状にもこだわり
機能性はもちろんですが、よりお花の美しさを際立たせる形状やデザインにもこだわりました。
フラワーショップや「お花のサブスク」のミニブーケを試作品に生けて検証、高さと直径を決めました。
高いとブーケがギュッと真っ直ぐに差さって可愛いらしくありません。
逆に低いと扇状に広がりすぎて、上手くスタイリングできません。
ホルダーの直径によっても、お花の広がり方が変わります。
それぞれをミリ単位で調整して、最適な設定にしています。
お花の量を選ばず、見映えよく生けることができます。
丈20㎝くらいのミニブーケをそのまま生けるのはもちろん、ホルダーはサイドにも差せる形状なので、切り戻しでお花が短くなっても生けることができ、最後まで楽しめます。
サイドを活かしたボリューム感あるアレンジも楽しめます。
抗菌ホルダーをセットし、水を入れる容器にも、こだわりました。
素材は「Tritan™ (トライタン)」樹脂を採用。
ガラスのように透明度が高く、お花の美しさを引き立ててくれます。その上、ガラスと違って軽くて丈夫。台形で倒れにくいので、小さなお子さんやペットを飼っている方には特におすすめできます。
底部にはくぼみを設けました。一輪挿しも倒れすぎず、お好みの角度で生けることができます。くぼみがストッパーになるので、思い通りのスタイリングができます。
容器を清潔に保つのも、お花長持ちのコツ。
一般的な花瓶は口が狭いので、水を入れにくく、スポンジが入らず洗いにくいのも気になる点。この容器は間口がとても広いので、水を入れたり、洗うのがラクにできます。
異なる素材の抗菌ホルダーと容器、それぞれをトップメーカーに依頼、協力生産
この製品は抗菌ホルダーと容器の2つのパーツで構成されています。抗菌ホルダーは銀メッキを施したステンレスワイヤー製、容器は高品位な樹脂製。
それぞれの素材を最も得意とするトップメーカーに製造を依頼しました。
《 抗菌ホルダー製造担当 》 ササゲ工業株式会社
様々な金属加工を得意とするササゲ工業株式会社。以前に別商品を製造委託。技術力の高さで今回も依頼しました。
ササゲ工業株式会社 代表取締役社長 捧 大作氏
抗菌ホルダーの試作品は、すべて捧代表の手作り。ベストな抗菌性を探るため、ワイヤーの本数や太さを変えて、多数製作していただきました。
「このホルダーは溶接が簡単なようで量産ベースだと難しい。もちろん量産は治具を使います。精度、作業効率などを考慮し治具も私がつくりました。」(一般的に治具制作は外注)
「(容器との嵌合は)曙さん(容器製造担当)を信頼しているので全く心配はなかった。樹脂成形では型抜きできない難しいカタチだと思うけど、さすがだなと思う。仕上げがとてもキレイ。ホルダーとの嵌合が治具制作してから合うようになった。どちらも精度が出ないとピッタリ合わないんだよ。」
《 容器 製造担当 》 株式会社 曙産業
樹脂製品の商品企画から設計、金型製造、成型、商品化に至るまで社内一貫生産を行う株式会社 曙産業。様々な難題をアイデアと技術力でカタチにするプラスチック総合メーカー。
株式会社 曙産業
専務取締役 池田 隆行氏(左) 金型部 部長 乾 康之氏(右)
「この容器形状は口が狭くなっているので、通常は金型から抜けず、製造できません。従来は部品別に(胴体部・底部)を2つの金型で成形し、次工程で超音波溶着しますが、今回は特殊な成型機で2つの部品を同じ金型内で成形し、さらに金型内で完全に熱溶着しています。」
「液体を入れるものなので、水漏れがないか丁寧に全品検査しています。」
「シンプルな形状に見えますが、プラスチックはシンプルなものほど粗が目立って、一番難しい。特殊な成形機を使いこなし、試行錯誤を繰り返しカタチにしました。」
~おわりに~ 「その花が、長く咲きますように。」
好きな人からもらった花。
たいせつな人にあげた花。
すぐに枯れてしまうのは、なんともせつない。
Haana(ハーナ)は、家の中で咲く花を
ちょっとでも長く生かしたいのです。
花が咲く時間が、
しあわせが咲く時間でありますように。
私たちオークスはキッチン雑貨を中心に燕三条の職人さん達とアイデアをカタチにしています。今回はキッチンから離れ、初めての分野にチャレンジ、新ブランド【 Haana(ハーナ)】を立ち上げ、プロダクト第一弾の花器「ウォーターキープベース」をリリースしました。
たくさんの職人さんからアドバイスをいただきながら、数え切れないお花とも向き合い、カタチになるまで2年を要した自信作。このアイテムで、大切な人、大切な想いが詰まったお花が少しでも長く、キレイが続いたら嬉しいです。
【 Makuakeプロジェクトページ 】 ※8月10日(木)までプロジェクト挑戦中!
https://www.makuake.com/project/aux-ltd6/
【 オークス株式会社 公式ホームページ 】
【 オークス株式会社 公式オンラインストア 】
【 オークス株式会社 公式Instagram 】
https://www.instagram.com/aux.co.ltd/
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ