大人気絵本シリーズ最新刊『ばけばけばけばけ ばけたくん ゆうえんちの巻』の編集者が振り返る、「ばけたくん」シリーズの誕生秘話
「ばけばけばけばけ ばけたくん」シリーズが、「ゆうえんちの巻」で10冊となりました。1作目の刊行から約13年。シリーズとして続けてこられた理由は? 10作目刊行を記念して「ばけたくん」ワールドを改めてお披露目します。
「ばけたくん」ってどういう絵本?
主人公の「ばけたくん」は、著者の岩田明子さんのお子さんがモデルです。「ばけたくん」はなんでもよく食べる「くいしんぼう」で、名前の終わりに「た」がつくのも、お子さんと共通しています。
おはなしは、お子さんがまだ小さいころ、通っている幼稚園には夜になるとおばけが来てるんだよと、夜寝る前におはなししていた内容がもとになっています。
絵本の「ばけたくん」は食べたものに化けるのが特徴で、その特徴を中心に、シリーズではさまざまな展開をしていきます。絵本製作のときに気をつけているのは、おもわず笑ってしまうユーモラスな絵、ことばのリズム、ページのめくり、展開、どれも欠くことのないように仕上げています。
「ばけたくん」を読むとムズムズしちゃいます
岩田さんは「作品のアイデアは絵から生まれる」作家です。そして「ばけたくん」についてこんなふうにおっしゃっています。
「ばけたくん」は食べものが描きたいと思った絵本です。そして体が変化する、ムズムズするような感覚を表現したかった。読者が絵本を読んだときに、ばけたくんが食べるもので、自分の体の感覚も違ってくるということが伝わればいいなと思って描いています。子どもって、たとえば泥遊びとか、ダイレクトに皮膚から伝わってくる感覚が鮮明。なので、ばけたくんが納豆を食べてばけたときに、ネバネバ感とか、そういうのを一緒に体感してほしいなと思ったんです。そして笑って、楽しんでほしいなあと。
このお話は、編集者としてとてもよくわかります。
納豆のシーンもですが、スパゲッティーのケチャップの感じや、いくらのツブツブ感や…おもわず、ゾクゾクッと体が震えるような感覚が、原画を見た瞬間に訪れますので。でも決していやな感じではなく「ああ、わかる、わかる!」という感覚です。そこがきっと、子どもたちには理屈ではなくダイレクトに響いて、フィクションだけれどもリアルなんだろうなあ、と。きっと何度もページを開いて、その感覚を無意識に楽しんでいるのではと思っています。
1冊の「ばけたくん」ができあがるまで
絵本は、絵と文章がセットです。それぞれのページにどんな絵を描いて、どんな文章をおさめるか、それを確定させるまでが、たぶん一番大変なことだと思います。岩田さんもこんなふうにおっしゃっていました。
編集者さんとのやりとりで、作品はだいぶ変わっていきます。やはり一人ではアイデアに限界もありますし、描きたいことを浮かび上がらせるために、他を削ぎ落とす作業でもあります。ラフが進むごとに確実に良くなりますから。「ばけたくん」シリーズでは「おみせの巻」が5冊、「おまつりの巻」は12冊もやってましたね! 自分でも驚きました(笑)
シリーズなのでだんだん楽になるでしょうと言われたことがあるんですが、むしろ逆ですね。
読者、特に「ばけたくん大好き!」という子どもたちが増えてきて、期待の声が聞こえてくると、その期待を裏切らないように、というプレッシャーを感じます(笑)でもまずは、どんな展開にしようかと岩田さんが考えてくださるので、岩田さんが「こんどはこれで描きたい」という内容で進めるようにしています。
編集者としては、細かいことですが、ばけたくんが食べるものや、オノマトペがすでに登場したものではないかをまずは確認します。チェックするために一覧表も作りました。岩田さんの手元にも置いていただいて、新作のときに確認しながらラフを作成していただいています。最初は覚えていられたんですが、だんだん危なくなってきて、岩田さんと「あれ? このオノマトペ使ってた?」ということがあったもので(苦笑)
それと、ばけたくんの表情ですかね…。おはなしの文章を読んだときに、ばけたくんの表情がピタッときているかどうか。このあたりは特に、岩田さんと相談しながら進めます。
そして表紙。「ばけたくん」は、タイトルの『ばけばけばけばけ ばけたくん』はすべての絵本に共通していて、「◯◯の巻」というようにしてタイトル分けをしています。「◯◯の巻」の部分で、今度はこんなおななしだよ、とわかるように、そして絵でも表すように、岩田さんが描かれているわけです。最新刊の「ゆうえんちの巻」では、表紙の「ばけたくん」の目の色が、今までと違います。それは内容と連動しているからです。ぜひ読んでみてください、理由がわかりますよ(笑)
でもなにより一番大切なのは、全体を通しておもしろいと感じられるかどうかだと思っています。おもしろさは主観的なものですが、ページをめくった瞬間に「わー!」という感じが訪れるかどうか、読者の感覚と同じになれるかどうか、でしょうか。シリーズで10作品になったということは、そのあたりはクリアできているのかなと思います。
絵本づくりでおもしろいこと
絵本はだいたい、24ページか32ページで展開しています。そのなかに、作家が描きたいことをピタッとおさめることが第一歩だと思います。その「ピタッ」というのが、作家の腕の見せどころでしょうか。岩田さんはこんなふうにおっしゃってますね。
描きたいことを際立たせるために、背景もシンプルにすることが多いですね。「ばけたくん」は最初から黒の背景にするつもりでしたが、例えば『とんねるとんねる』(大日本図書刊行)は、最初は背景に鮮やかな色をつけていました。薄い色をつけたり何色かに統一したりする案も出ましたが、最終的に地上の背景は白になりました。一番見せたいのは、とんねるの形の面白さなので、取れるものはなるべく取っていったんですよね。
実際の生活で見られないものが見られる、描けるのが楽しくて、絵本を作る過程で一番好きです。1枚の絵と違って、読む方が自分の意思でめくって進めていく、世界を広げていくというのが面白い構造だし、絵本ってすごい媒体だと思います。
途中でやめちゃってもいいじゃないですか。それを、次をめくるという動作をしてもらうためには、どうしたらいいのかというところを一番考えますよね。いつ本を放り出してどこかへ行っちゃうかもしれない子どもに、「次をめくらせてやるぞ!」みたいな(笑) そこがアイデアの出しどころだし、絵画を描くのとは違ってスリリングで、面白いと思いますね。
すばらしい考えですよね。ページをめくりたくなる、めくらないではいられない、「ばけたくん」シリーズはまさにそういう絵本だと思います。
読者の声
シリーズが進むにつれて、多くの子どもたちから読者ハガキをいただいています。
ワークショップを希望される声もあり、岩田さんが会場のリクエストに応えて、即興で「ばけたくん」を描いてくれることもあります。
描いた「ばけたくん」は、みなさん欲しいとおっしゃるので、最後にじゃんけんをして差し上げる方を決めますね(笑)
2009年に最初の『ばけばけばけばけ ばけたくん』が刊行になったのですが「それからずーっと読んでます」「子どもに何度も読まされて覚えちゃいました」という声もいただき、とても嬉しいですね。これからも「ばけたくん」を楽しんでいただければと思います。
書名:ばけばけばけばけ ばけたくん ゆうえんちの巻
著者:岩田明子
出版社:大日本図書
ISBN:978-4-477-03436-2
定価:1,430円(本体1,300円+税)
発売日:2023年7月3日
商品詳細ページ:https://www.dainippon-tosho.co.jp/books/product/03436/
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