防災スタートアップが立ち上げた新サービス。「パーソナル防災サービス #pasobo」誕生の裏側
私たちKOKUAは「人々が自然と防災に取り組める社会」を目指して活動している防災ベンチャーです。代表の泉勇作が2020年に起業しました。東日本大震災での被災地で出会い、以降全国各地の被災地支援を続けているメンバーで構成されています。現在は防災のきっかけを負荷なく提供するために、防災とギフトを掛け合わせた「いのちをまもる防災カタログギフト"LIFEGIFT”(ライフギフト)」を展開しています。NHKやラジオでも取り上げれたこともあって、徐々に手にとっていただける機会が増えてきました。
このストーリーではLIFEGIFTに続く新サービスである、パーソナル防災サービス「#pasobo」の誕生の裏側について、代表が振り返ります。
(株式会社KOKUA)
防災の原体験。阪神淡路大震災で家が半壊
僕は兵庫県神戸市で生まれ育ちました。阪神淡路大震災が発生した時は東灘区に住んでおり、そこで被災しました。(東灘区は兵庫県でも特に被害が大きかった地域でした。)
家は半壊し住む場所も変わりましたが、当時僕は2歳になる前だったので地震の記憶はほとんどありません。
でも、歳の離れた兄や姉、そして両親から当時の話を聞く機会があったので、普通の人よりも地震というキーワードに敏感になったのはここからだと思います。とはいえ、この時点では「ちょっと地震に敏感」程度で、まだ自分が何かアクションを起こすまでの気持ちは生まれていなかったように思います。
防災の原体験〜東日本大震災〜
2011年3月11日、大学の入学式まで残すところあと数日。何の気なしにテレビを見ていると、見たこともない規模の地震と津波の様子が報道されていました。
そんな中、行われた大学の入学式も、当然自粛ムードだったのですが、会場の入り口の前で募金活動に声をあげる大学生を見つけました。声を一生懸命にあげて、自分にできることを一生懸命やる姿に心を打たれ、僕は自分の大学生活を災害救援に注ごうと決めました。それからはIVUSAという学生NPOの会員となり、募金活動から東北での復興活動、全国各地で発生する様々な災害に対し、被災された地域でのボランティアを続けていきました。
仕事の経験から起業へ
ボランティアを通して防災や災害について、色々なことを感じたものの、僕にはそれを仕事にするなんて考えは浮かびませんでした。無作為に、ビジネスマンとして成長したいという気持ちが強く、人材ベンチャー企業に新卒として就職し、その後転職をして新規事業の立ち上げに携わることになりました。
この時、自分が考えた仕組みやモデルで、人や会社に喜んでもらえることがとても嬉しく、自分のアイディアで、誰かに価値を提供できる喜びと自分でもできるんだという自信が生まれてきました。そしてこの頃から、自分が関わり続けてきた防災という分野をビジネスの力で何か変化を起こせないかと考えるようになりました。
防災を仕事にする上での苦悩
防災を変革するビジネスを立ち上げようと思い立ってからは、様々なアクションをはじめました。防災の偉大な先駆者である"防災ガール"のアクセラレータープログラムに参加し、様々な知見を吸収させていただきながら、日々防災の事業を考えました。
たくさんの事業アイディアを考えては、調査やヒアリングを行い、1年以上試行錯誤を繰り返しました。防災は大切なものだけれども、いつ起こるかわからないが故に、優先順位が低くなりがちで、そこにお金をかけることは企業にとっても一般の方にとっても難しいということが、最も大きな障壁でした。もう自分には無理なのではないか、自分がやる必要なんてないんじゃないか、色々マイナス思考が頭を巡り諦めかけていました。
防災ベンチャーを諦めなかった理由
1つ目は、防災の先駆者達の意志や行動を繋いでいきたいと思ったこと
2つ目は、防災を通して自分の人生に意味を持ちたいと思ったこと
3つ目は、自分の大切な人たちを守りたいと思ったこと
この3つがあったから、僕は防災で起業することを諦めませんでした。
まず1つ目について、僕は防災ガールやIVUSAなど、防災や災害という社会課題に対して取り組む人たちを肌で感じてきました。僕は社会の変革は、何事も一人の力で成し遂げられるものではないし、仮に誰か一人の力で大きな変化が起こったように見えても、その人の思考を構成し行動を後押しするものは、それまでの先人達が積み上げたものであると思っています。僕は防災という分野で様々な人たちの挑戦や覚悟を見てきました。だからこそ、僕はその意志を受け止め、繋いでいく一人になりたいと考えたことが、今でも大きな原動力の一つとなっています。
2つ目は自分主語になってしまいますが、それは防災事業への挑戦を通して、自分自身の人生に、自分が死ぬときに誇れるような意義や意味を見出したいということでした。
「ちっぽけな自分だけれども、防災の事業ができれば一人でも多くの人の命を救うことができるかもしれない。それができれば、何よりも自分自身が自分のことを認めてあげれるんじゃないか、そしてそう感じられることを見つけられたのであれば、諦めちゃダメだ。」と考えることができました。
最後に3つ目ですが、これが一番大きな理由でした。僕にとっての防災は、隣にいる大切な人の幸せが続くようにと思って起こす行動です。学生時代の友人、会社の同僚、先輩、上司、バレーボールサークルの仲間、そして家族、僕にはずっと幸せでいて欲しいなと思う人がたくさんいます。その人達に防災の話をしても、なんだかどこか伝わらない、また、言葉で伝わっても行動してもらうことは難しいと感じる機会が、たくさんありました。でもその人達がもしも被災し、事前に防げたはずの事象を防げずに何かあったら本当に悲しいし後悔する。だからこそ、自分がどうにかしたいと思いましたし、そんな顔の思い浮かぶ人たちのためと思えたからこそ、諦めずに進んでこれたのだと思います。
新サービス「パーソナル防災サービス#pasobo」β版を開発
防災は大切だとはわかっているけれど何から準備すればいいのか分からない。そんなお悩みを持っている方に、住所や家族構成を含めた、いくつかの質問に答えるだけで、100万通りの診断内容をもとに、自分に必要な防災対策が、簡単にわかるサービスです。
なぜパーソナル防災は大切なのか?
「パーソナル防災」とは、「一人ひとりの環境(立地・住居スタイル・家族構成など)に寄り添った防災」と私たちは定義しています。ホームセンターやネットショップでも販売している「防災バッグ」。しかし、実際に被災し、避難生活をするにあたり「高齢者のいる家庭の防災対策」と「乳幼児を育てる家庭の防災対策」では、用意するものや、準備物は異なってきます。
家の近くに、河川があれば浸水被害の可能性が生まれ、山があれば土砂災害被害の可能性がある。災害が起これば、避難所に行くというイメージが強いかもしれませんが、実際は、在宅避難をする方が圧倒的に多いというデータもあります。
被災した際、心身ともにダメージを最小限に留めるには、正しい知識と対策が最重要であると私たちは考えています。東日本大震災で亡くなった方の半数以上が60歳以上というデータもあり、超高齢化社会の日本において、防災対策は命に直結する大切なもの。
一人ひとり、各家庭の環境やニーズに合った防災をお届けするべく、私たちはパーソナル防災サービス「#pasobo」を開発しました。
#pasobo起案の経緯。「警戒すべきリスク情報が可視化されて、防災対策を提案してくれるようなツールがあったら」
代表の泉は、「LIFEGIFT」の販売を通じて、防災に関する事業をしていく中で、友人や身の回りのひとから「防災って何から始めればいい?」と質問されることが増えていました。命に関わることなのでしっかり答えたい一方で、「どう防災したらいい?」と質問されても、住んでいる場所や、家族構成、一軒家なのかマンションなのか、マンションだとしたら何階に住んでいるのかによって、アドバイスする内容が違ってくる点が課題でした。
例えば、ハザードマップ上で住所を確認して、洪水浸水想定区域に住んでいれば浸水のリスクがああり、土砂災害警戒区域に住んでいれば土砂災害のリスクがあるなど、住む場所によっって特に注意すべき災害は異なります。
他にもご高齢の方がいるご家庭ではマットや折り畳みの椅子を用意した方がいいですし、乳児がいるご家庭では、オムツやミルクを………など、100人いれば100通りの防災対策があります。
実際に被災地ボランティアを続ける中で、現地の方から被災時に本当に必要だったものや災害時に課題となることを聞いてきた経験から、「○○したらいいですよ」と短時間で答えるのがどうしても難しく、泉は歯がゆさを感じていました。
そんなときに、必要項目を入力したら、警戒すべきリスク情報が可視化されて、防災対策を提案してくれるようなツールがないかなあ、と考えたのが、#pasobo開発のきっかけです。
また、既存サービスである「LIFEGIFT」を販売していく中で、LIFEGIFTの商品はギフト向けなので、自分買いとしては予算面でハードルが高くなってしまうと思っていたんです。そこで「もっと手軽に、防災を始めるサポートができないか」、「LIFEGIFTできっかけを生み出せたなら、次は実行のサポートをしたい」という想いから、一人ひとりに寄り添ったパーソナル防災サービス「pasobo」をつくろうと考えました。
膨大なデータによってどんな災害にも対応する診断を
<ポイント1> 誰でもひとめでわかる、分かりやすさ
システム開発にあたり僕たちは、カンタンに理解ができて、必要なものがひと目でわかるを重要視しています。診断結果も、文章が長すぎると、とっつきづらく、短いとわからない。皆さんにお伝えする「危険度」だけでも被災する確率を出すのか、地盤の揺れやすさを示すのか……。文言や表現、アルゴリズム、診断結果については、専門家や防災士、防災の専門機関にご確認いただき、丁寧にチェックしたものを反映しています。
<ポイント2> どんな災害にも対応する診断コンテンツ
そして何より、pasoboは日本で発生するどんな災害にも、網羅的に対応できるように診断結果をご用意しています。災害の準備をはじめようと思ったときに、地震と台風だと準備するものも、意識すべきことも変わってきます。在宅避難を考える方、長期的に避難しないといけない方など、どの災害でも一定数のリスクを紹介できるように気を付けています!
<ポイント3> 行政データの使用と専門家のチェック
診断のもととなるデータは、すべて国⼟交通省や各自治体など行政機関が持っているデータなどを使用しています。行政機関によってもデータの粒度や充足度にばらつきがあるため、文言の表現と同じく、正確性も含め、外部パートナーである宮崎先生や、奥村さんなど複数の専門家と何度も議論を行い、チェックを通った診断内容をお届けします。
今年の3月で、12年目となる東日本大震災。
未曾有の大災害の当時も、現場では乳児のミルクが不足したり、障がいのある方や高齢者など、個人の属性に対応する支援物資が足りない等の深刻な問題が多く発生していました。市場で販売されている防災バッグを買えば、防災対策は万全ではありません。
防災は一人ひとり必要なものが異なるからこそ、多くの方の意見をいただきたいと考えています。たとえば
・日頃から防災の活動をされている方には、防災対策の情報や診断結果に足りていない点がないか。
・被災経験のある方には、被災して困ったことや対策しておいたほうがよかったこと。
・災害時に配慮が必要な方(女性や子ども、ご高齢の方がいるご家庭の方など)には、災害時に不安に感じることや悩んでいること。
・まだ何も防災対策していない方には、サービスを使う上でわかりにくい点や、疑問に思ったこと。
など、多くの方の視点や立場から様々な声をいただきたいと思っています。
防災に「これさえやっておけば、大丈夫」なんて答えはないかもしれません。でも、私たちはこのサービスを通じて、誰も取り残さない、一人ひとりに寄り添った防災対策を届けたいと考えています。
「あなたの無事が いちばん大事」
読んでくれた人に、伝えたいことは、防災は遠いものでもなく、他人事でもなく、「あなたと、あなたの大切な人のためのもの」であるということです。
災害はいつ起こるか、誰にもわかりません。起こった時に正しい行動が何かも絶対的な正解はありません。そして、完璧な準備なんてものもありえません。
しかし、災害による被害を、少しでも減らすことはできます。
私たちの商品、"LIFEGIFT"は、「あなたの無事が いちばん大事」というコンセプトを掲げています。
今、あなたに思い浮かぶ大事にしたい人の幸せがずっと続くように、防災のことを考えていただければ幸いです。
代表取締役CEO 泉 勇作
幼少期に神戸市にて阪神淡路大震災で被災。大学の入学式直前に発生した東日本大震災をきっかけに、NPOで災害ボランティアを始める。2019年に一般社団法人防災ガールのアクセラレータープログラムに参画し、防災事業の立ち上げに向けて取り組む。一人の力ではなく協力し合うことで防災を解決することを信念に、協力するという意味がある「KOKUA」という名前で創業。事業企画や全体の意思決定を担う。
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