ニッポンで一番昆虫を食べてきたNAGANOから。地元の蜂の子とカイコを使った「ミックスナッツ」を、新たな信州名物に育てたい。
信濃毎日新聞の題字。地紋には桑(カイコの唯一の食料)が描かれており、蚕糸王国信州を感じさせるデザインとなっている
信濃毎日新聞社は1873(明治6)年に創刊した、国内で3番目に古い歴史を持つ地方新聞社。今年は創刊150周年の節目にあたるという。長野県内で圧倒的なシェアを有している同紙だが、人口減やメディアの多様化、若者の活字離れ等の影響と無縁でなく、発行部数はじわじわと減少傾向にある。そんな中、従来の新聞発行以外の領域の新規事業に取り組み、収益化を目指しているのが2019年に立ち上げた「ビジネス開発室」だ。同室の数ある事業の内の一つが、昆虫食の可能性を探る「昆虫みらいプロジェクト」。元々長野では古くから昆虫食が親しまれ、県内のスーパーでも当たり前にイナゴや蜂の子といった昆虫の佃煮が並ぶほどの日本一の「昆虫食王国」だ。そんな信州の新聞社ならではの取り組みとして、信濃毎日新聞社では「信州発の昆虫食で世界を笑顔に」をモットーに、22年春からおいしくて食べやすい、脱ゲテモノとしての昆虫食商品を開発、販売している。
長野県佐久市の五郎兵衛新田でのイナゴ捕り
今回は同社が地元長野市の人気パン店「粉門屋仔猫」とコラボレーションし、手軽な価格で信州ならではの味を楽しめる商品「信州産蜂の子入りミックスナッツ(メープルジンジャー味)」、「国産カイコ入りミックスナッツ(カレー味)」を新発売。「お酒によく合い、おつまみにぴったり」「知り合いへのちょっとした手土産に重宝」「昆虫、正直苦手だったけど意外とイケる」といった声が早くも上がっている。昆虫食といえば佃煮と相場が決まっている中、ワイナリー系のパン店ならではのレシピにより、本品もお酒も止まらなくなるような、食べやすくて新感覚の一品に仕上がった。本商品に関わった担当者の二人に話を聞いた。
信濃毎日新聞社ビジネス開発室 菊池毅 次長(以下、菊池次長)
粉門屋仔猫 小林千鶴店長(以下、小林店長)
昆虫食がネガティブに扱われる状況で起案。すがる思いで相談をもちかけ、地元の協力者と開発に着手したアマゾンの料理人・太田哲雄シェフ(写真右)との2ショット。
菊池次長 これまでの商品づくりに関しては、「アマゾンの料理人」として名高い太田哲雄シェフに監修から製造に至るまで担っていただいており、太田さんとの協働は今現在も進行中です。「値は張るけど、昆虫食と思えないほどおいしい」など好評を得ています。パリ発のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」に出しているのと同じチョコレートを使っていたりと、世界のどこに出しても恥ずかしくない真っ当なお菓子です。
PICO SALVATORE アマゾンカカオ×イナゴ タブレットチョコレート
ただ、一流のシェフだけに、日常的に手が届くような価格帯の商品というのは少し難しい部分もあります。太田シェフの手による完成度の高い昆虫菓子は今もファーストラインとして位置付けていますし、県産材料にこだわった安心安全な昆虫食商品という軸はまったく変わりません。ただその一方で、気軽に食べていただけるような商品を増やしたいと思っていたのも事実です。また、同シェフがチョコレート、お菓子の世界で特に有名なこともあり、商品の種類としてもチョコレート菓子や、クッキー等といった焼菓子が中心でした。今年1月頃からこうしたチョコレートや焼菓子以外の商品化も検討を進めようという矢先、ちょうど折悪しく1月下旬頃からSNSを中心に「コオロギ」をはじめとした昆虫食への強烈なバッシングが起き、連日ネットばかりかテレビにまでネガティブに扱われる辛い状況が続いたのです。
最近は良くも悪くもあまり話題にされなくなり、静かな感じに落ち着いてきた印象です。でもその頃は製造委託の問い合わせに対しても及び腰の反応が多くなるなど、悩ましいところでした。でも、捨てる神あれば拾う神ありとはよくいったもので(笑)、以前よりイベントを通じて縁のあった坂城葡萄酒醸造(埴科郡坂城町)のオーナー・成澤篤人さんにすがるような思いで相談を持ちかけたところ、ご自身がオーナーを務めるワインとパンの店「粉門屋仔猫」(長野市)の小林千鶴店長を紹介してくださったんです。小林さんは県北部・飯山市の出身で、子どものころからイナゴや蜂の子に親しんできた経験があり、昆虫食に抵抗がなく、むしろ面白そうなのでやってみたいと意外とすんなりと商品開発を引き受けてくれたんです。今思えば非常にラッキーなことでした。さすがは昆虫食王国!という感じでしょうか。
坂城葡萄酒醸造・成澤篤人さん。玉村豊男氏の後を継ぎ、信州ワインバレー構想推進協議会の新会長に就任。シニアソムリエとしても活躍し、長野のワイン界を牽引している
ただ、信州であまり馴染みのないコオロギだけは勘弁してほしい、ということではありました(笑)。私としてもあくまでも郷土食としての昆虫食という観点で商品ラインアップを増やしたいと考えていたところだったので、コオロギがマストという訳でもなく、その点においても大まかな方向性や考え方が一致しました。
信州人として馴染みがあり懐かしい食材を、飽きのこない味付けに
小林店長 最初話があったときは、正直「えっ?」という感じでした。確かに北信地方出身でイナゴや蜂の子は祖父母に食べさせられた記憶もありますし(笑)、決して忌み嫌ってはいませんでしたが。信州人として馴染みもあり、なんだか懐かしいなというのはありましたよね。信州人のアイデンティティーのなせる業かもしれません。とはいえ長野県民全てが昆虫食好き!という訳ではないので、抵抗感のある人でもおいしく食べられる味付けや食感、特に後味をどうしたらよいかについては悩みましたね。ワインなどのお酒に合う商品を作るのは得意なので、そういうレシピの引き出しも結構持っているつもりです。そんな訳で、お酒のお供として、今回は脇役にあたるナッツだけでなく、主役である昆虫も食べやすく、飽きのこないフレーバーにしたいとまず考えました。
また、味付け以前においしく食べるための下処理がとても重要です。オーブンで蜂の子やカイコをローストするのですが、十分に乾燥させる必要があるのと同時に、火を入れすぎるとエグみや苦みが出てしまうことがあるのでそこは一番苦労しました。何度も試作を重ね、最終的にはちょうど頃合いの加減がわかり、特にカイコの方はサクサクというよりシュワッとした「ミルフィーユ」のような絶妙な食感が生まれ、自分でも驚きました。満足のいく出来になったと思います。カイコはどちらかというとエビや小魚のような味わいで、意外と食べやすいですよ。多種類の香り高いカレースパイスを利かせ、シードルやビールのおつまみに向いています。
栄養面ではタンパク質とオメガ3脂肪酸が豊富なのが特長です。一方の蜂の子は濃厚な味わいで必須アミノ酸が豊富。おいしさの点では昆虫界で一番かもしれません。なんといっても超が付くほどの高級食材ですから。殺虫剤を一切使わず、養蜂家が危険を冒してまで採集したキイロスズメバチですので、とても価値があります。メープルシロップやジンジャーでコーティングしてあり、ほどよく上品な甘さと生姜のさわやかな風味が売りです。
長野県須坂市内でオオスズメバチを巣ごと捕獲する鈴木養蜂場のスタッフ
蚕糸王国・信州においても数えるほどまで少なくなった養蚕家(茅野市内)
カイコだって農薬不使用の桑の葉だけを食べて育った訳ですから、安心な食材ですよね。安心安全な信州ならではの食材をつかった両商品ですので、NAGANOワインやビール、そして昆虫ナッツの「やめられない、止まらない」無限ループをぜひ楽しんでほしいですね。私自身もすっかり無限ループから抜け出せないようになりました(笑)。それくらい、思い入れのあるとってもお気に入りの商品です。
発売後、昆虫食を懐かしんで買う顧客が多く、反応は上々
菊池次長 まさに信州の味、ですね。NAGANOワインやシードルとのペアリングという贅沢な時間!信州らしさ、土地の味を多くの人に味わってほしいです。昆虫食の話に戻って恐縮ですが、蜂の子やカイコは信州では佃煮、甘露煮として県内で一般的に売られており、伝統食とされています。甘辛く煮含める調理法は、食べ方として理にかなっている訳ですが、それではあまり進歩がないので、もっと新しい食べ方、そしてワインやシードルなどのお酒に合うおつまみとしての商品を小林さんに考えていただきました。望み通り、新しく、かつ想像を超えるものを小林さんに生み出していただき感謝です!「粉門屋仔猫」の名前の通り、パンやクッキーなどの「粉もの」がメインの同店ですが、ナッツ類の商品も元々得意とされており、小林店長の職人としてのインスピレーションにより、ミックスナッツと昆虫という絶妙な組み合わせによる逸品に仕上げていただいたと思っています。お酒のおつまみとしてだけでなく、お子さまの健康的なおやつとしてももちろんおすすめです。
小林店長 おかげさまで特に女性や、昆虫食を懐かしんで買ってくださる方が多く、店頭での反応は上々です。単に珍しいというだけでなく、昆虫食をフックに、驚くほど会話やコミュニケーションが盛り上がるんですよね。子どもの頃の昆虫食に絡む思い出だったり、ちょっと勇気がいるけど試してみたら思ったより食べやすくておいしかったとか-。人にも勧めてみたい、県外の知人へのちょっとした手土産として重宝するね、と言ってくださるお客さまも多いです。
菊池次長 これまで昆虫食って、あまり日常的な存在でもなかったですし、リピートが難しいジャンルだと感じていました。今回の蜂の子ナッツ、カイコナッツは一度試した人が意外とおいしかったから知人にもプレゼントしたいという声が聞けたのが何よりうれしかったです。渡したときの会話のネタにもなりうるのかと思って。信州は近年、ワインやシードル、日本酒やクラフトビール等のレベルがすごく上がっているので、そうした信州のおいしいお酒のお供として、日常的に気軽に味わっていただくことを期待しています。
今後、世間で言われているように昆虫食が人類を救う存在になるかどうかは正直わかりませんが(笑)、信州の郷土食の位置づけで、意外とおいしいじゃん、面白いじゃんというところから始まって、新たな嗜好品としての選択肢の一つになればいいなと考えています。そのうえで、今回の商品が将来的に信州の定番のおみやげ品として認知されればうれしいですね。もちろん、先の長い道のりになると思いますし、たやすいことではないと認識していますが。
【販売所】
両商品は信毎カフェ(信濃毎日新聞本社1F 長野市南県町657)、信毎メディアガーデン(松本市中央2-2-2)、MADRE(北佐久郡軽井沢町発地348-68)、粉門屋仔猫(長野市長野市南石堂町1279-6)、Vino della Gatta SAKAKI(埴科郡坂城町坂城9586-47)のほか、amazon等で販売中。
信州発の昆虫食を、ニッポンへ、世界へ。
昆虫食王国・信州の新聞社として、信濃毎日新聞社は、美味しくて食べやすい「上手物(じょうてもの)」としての昆虫食を提案します。
生の魚を食べる習慣のなかった諸外国の人々が、今や「ヘルシーでおいしい!」と当たり前に食べられるようになったお寿司のようにー。
カラダに良くて美味しいから選ばれる、未来食のスタンダードを目指します。
昆虫よ、SUSHIになれ。
お問い合わせ
信濃毎日新聞社 ビジネス開発室 昆虫みらいプロジェクト
長野市南県町657 TEL.026-236-3075(平日9:00~17:00)
Eメール
公式HP
オンラインショップ
https://www.amazon.co.jp/dp/B0C7Q16S8W
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ