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大量消費される使い捨てスリッパこそ、環境配慮型に。国際興業がバイオマス原料80%以上のスリッパを共同開発した経緯とは

著者: 国際興業株式会社

バス、ホテル事業などを展開する国際興業株式会社(以下、国際興業)は、7月より木材パルプを主成分にした環境配慮型「バイオマススリッパ」を新発売しました。スリッパ生地には、王子グループの王子キノクロス株式会社(以下、王子キノクロス)が今回の企画スリッパ用に新開発した「キナリトLEAF」を使用しており、同原料は80%以上が植物由来でバイオマスマーク80※を取得しています。


毎日大量に使い捨てスリッパを消費するホテル業界がメインターゲットになります。現状は石油由来系のプラスチック原料を主成分にした輸入品がシェアのほとんどを占めており、環境に配慮したスリッパは流通していない状況でした。国際興業と王子キノクロスは、環境にやさしく履き心地の良い使い捨てスリッパの開発でタッグを組み、発売までに約1年半を要した経緯と製品へのこだわりや新商品の魅力をお伝えします。



展示会で王子キノクロス社と出会い、素材について知る

2021年12月、幕張メッセで行われたサステナブル・マテリアル展に王子キノクロスが王子グループの1社として出展していたところに、国際興業・商事部の花岡と野々浦が立ち寄り、その日、会場に説明員として来ていた王子キノクロス・開発研究所の宮崎氏が対応したのがきっかけでした。


王子キノクロスは世界で初めて木材パルプを主材料とした乾式パルプ不織布の生産に成功し、クッキングペーパーやおしぼり、コスメ用等のエアレイド不織布の製造発売を手掛けるメーカーです。


一方で、国際興業はグループに箱根の富士屋ホテルチェーンやハワイのシェラトンワイキキ、ロイヤルハワイアン等のホテルを所有する企業体の中核会社で、同社商事部はホテル業界におけるアメニティサプライヤーとして、外資系ホテルや国内大手ホテルチェーンを含め数々のホテルにスリッパをはじめとしたアメニティ類を供給する商社部門です。


      国際興業株式会社            王子キノクロス株式会社

   (左)花岡貴 (右)野々浦秀治     (左)宮崎さくら (右)石田健輔


アメニティの中でもプラスチック消費量の多い、使い捨てスリッパに使えないか。開発協議が始まった


花岡と野々浦は、日々大量に使い捨てられるホテルのアメニティにも使える、環境にやさしい素材を求めて展示会に来場していましたが、最大の目的は、アメニティの中でもプラスチックの消費量が多い、使い捨てスリッパに転用できる素材探しでした。「特に植物由来のセルロース素材はもともと注目していて、美容マスクなどにも使われるので肌に優しく弾力もあり、環境に優しいイメージがあったので、スリッパ素材としての可能性について聞いてみたんです」と野々浦は当時の話を振り返ります。


王子キノクロスはセルロースが主成分の木材パルプを主原料とした商品を得意としており、厚手の生地を軽くて柔らかに仕上げるエアレイド製法も同社の強みでした。展示会では、今回のスリッパ生地に繋がる素材であるセルロースとPLA(バイオマス由来の生分解性樹脂)から成り、熱成型加工ができる不織布素材を、プラスチックに代わる新素材として出品していました。


そんな両社の思惑がぴったり合致し、展示会場で話が膨らみ、2週間後には静岡県富士市にある王子キノクロスの本社工場へ国際興業が訪問、翌月2022年1月からは王子キノクロス東京営業部の石田が加わり2社で具体的な開発協議がはじまりました。


開発に踏み切った社会的背景は二つ。素材のサステナビリティ向上と、サプライチェーンの問題解決


ちょうど世の中はSDGs達成に向けた取り組みがクローズアップされ、脱プラや減プラ等でプラスチックごみを減らす動きが活発化しはじめた時期でした。2022年4月にはプラスチック資源循環促進法が施行され、ホテル業界でも毎日大量に消費されるハブラシ、ヘアブラシ、カミソリ等のアメニティ類が対象品目に指定され、プラスチック使用量の削減が急務となりました。対象から外れたスリッパですが、アメニティ類の中でもゴミの量が多いアイテムの為、近い将来、規制対象になる可能性も考えられました。


現状、ホテル業界に出回るほとんどの使い捨てスリッパは中国をはじめとした海外から輸入される製品で、化石資源由来プラスチックが主原料です。製造時や焼却時に温室効果ガスとなるCO₂を多量に排出し、化石資源は原料としてのサステナビリティも低いと言われます。



ホテル業界で流通量が多い一般的な「使い捨てスリッパ」


これらの課題を解決するため、スリッパを作る生地の主原料を木材パルプに代えることが出来れば、化石資源由来のプラスチックの使用量が削減でき、温室効果ガスとなるCO₂排出量も減らせるのではないか、木材は計画的な植林が可能だから原料としてのサステナビリティが高いと言えるのではないか、との考えから開発に踏み切りました。


加えて、中国依存のサプライチェーンからの脱却も狙いの一つでした。コロナ禍で中国内における都市のロックダウンや港湾封鎖などで輸入ルートは度々ダメージを受け、計画的な製造、輸入が不能になり日本国内の安定供給が阻害されたことも数回ありました。

その度に、顧客ホテルへの在庫切れについてのお詫びと、代用品供給対応に追われる状況となったのです。王子キノクロスから素材提供を受け、国内加工すればサプライチェーンが短縮され、メイド・イン・ジャパン製品が実現できるとの思惑もありました。


プロダクト開発の過程で、ホテルの使用に耐えうる機能やグレードを追求


開発当初、熱圧着の加工方法を目指し、協力会社である縫製工場に、試作用の生地を持ち込み、幾つかの厚みの素材で熱圧着を試みたのですが、スリッパの履き心地を確保するためにある程度の厚みが必要で、どうしても圧着が弱くなり剥がれてしまいます。圧着ができるように薄くペラペラな生地にしてしまうと、どうしても耐久性や吸水性等の機能が劣り、何よりも「紙のスリッパ」という安っぽい印象を与えてしまいます。


その為、ホテルの客室使用に耐えうる機能性やグレード感を出すため、熱圧着を断念し、ミシンで縫製する加工方法に変更を余儀なくされましたが、そこで一工夫を施し、スリッパのつま先部分を繋げた状態で裁断し一枚生地で縫製工場に持ち込み、つま先部分を折り曲げて縫製することで、耐久性を向上させ、効率的な加工を実現したのです。


縫製工場の一つである福島縫製福祉センター(社会福祉法に基づく第1種社会福祉事業や障害者総合支援法に基づく第2種社会福祉事業による就労支援B型を基準該当で実施する事業者)では、障害者の方々が同商品の縫製作業を担っています。


生地の仕様確定までには、同センターで働く方々から縫いやすい形を提案頂いたり、生地の抜型を調整したり、ロスの少ない面付の検討をしたりするなど、生地メーカーの王子キノクロス、ホテル業界を熟知した国際興業、縫製加工する福島縫製福祉センターがそれぞれの知恵と経験で協業し、製品化に向けて取り組んできました。王子キノクロスとの展示会で出会ってから商品販売までに約1年半の歳月がかかりました。


[福島縫製福祉センターでの縫製作業]





「アメニティのサステナビリティは業界全体の課題」。開発担当者たちの思いとは


これまでのホテルアメニティは、見た目の豪華さやグレード感を優先させるあまり、環境負荷がかかるサステナビリティが低い商品が多いと感じていました。外資資本のホテルや上場企業の系列ホテル等、一部のホテルで、環境経営の意識が高いところもありますが、業界全体でみると出遅れ感が否めません。コロナ禍の影響を大きく受けた業界でもある為、当然コスト意識もシビアであり、良いものでも価格が高ければ採用してくれないケースが大半です。


実際、バイオマススリッパは、海外輸入品に比べてまだまだ価格が高く、ホテル側は採用すればコスト増となります。このままでは販売しても売れないのではないかとの不安もよぎりました。一方で、最近少しずつかもしれませんが、「環境」や「社会貢献」といったキーワードが確実に存在感を増してきており、「環境経営」や「社会福祉」の意識が高い客層が一定数存在していることも実感しています。このニーズこそが、アメニティサプライヤーとして我々が応えなければいけない部分であり、ビジネスチャンスにも繋がると考えています。


化石資源由来プラスチックの使用量削減、CO₂排出量削減、障害者の方々との協業、生地メーカーとの協業など、バイオマススリッパのビジネスが育てば、環境や社会に貢献できる。小さな1歩かもしれないがSDGs達成に向けた取り組みになることにも期待したい。そういう思いで共同開発を進めてきました。


2023年2月、プロトタイプの展示。改良を経て7月に発売


国際興業は、2023年2月、東京ビックサイトで開催されたホテルレストランショーに出展し、プロトタイプを参考展示しました。来場したホテル関係者からの反応は予想以上のもので、「これまでに見たことがないスリッパだ」、「ふかふかで履き心地がよさそうだ」、「本当に木材が原料なのか」、「バイオマスマーク80は本当か」、などの声が上がる一方、「シワになり易い」、「価格が高い」、「導入したいがコスト高は避けたい」などの声もありました。


展示会出展後、シワ予防に関しては、王子キノクロスからの提案で表面にエンボス加工を加えることで改善出来ましたが、どうしても海外輸入品に比べて単価が高いという課題は残ったままでした。しかし、「環境経営」や「社会福祉」の意識が高い一部のお客様のニーズに応えるべく、たとえ少量であっても、まずは販売してみようとの結論に至り、この7月から発売を開始しました。


発売して早速、幾つかのホテルがバイオマススリッパをご評価いただき、新規採用してくれました。環境配慮型のコンセプトを謳うホテル様や、都内ビジネスホテル様でユニバーサル仕様の客室に導入した事例が出始めたのです。価格が高くても価値を認めて頂けるのだと改めて実感しました。ホテルにお泊りになる方々から「環境や社会に貢献しているホテルだ」と感じてもらえれば、コスト増以上の価値を見出してくれるのだと思います。


今後は、ホテルをはじめ、エアライン、列車、客船・フェリー、高速バス、スパ施設等、バイオマススリッパのコンセプトや意義にご賛同いただけそうな業界やお客様が一定数、確実に存在するはずと考えていますので、流通量を増やすことで、「環境」と「社会」に貢献していきたいと考えています。


導入事例【川崎キングスカイフロント東急REIホテル】



      川崎キングスカイフロント東急REIホテル      総支配人 岡部久子


当ホテルは、「ETHICAL URBAN SLOW LIFE」をコンセプトに掲げたウェルビーイングを実現する次世代のライフスタイルホテルで様々な地球環境保護活動を行っております。


ホテルから出るゴミに関して何とかできないかと色々考えていたところ、この「バイオマススリッパ」のご提案をいただきました。試してみたところ、素足で履いた際の肌触りが良く、このホテルの活動やコンセプトにもあっていると感じ、導入を決定いたしました。まだ配置客室数は少ないですが、プラスチック使用量およびCO₂発生量の削減に貢献していきたいと思います。

(プレミアムツイン、プレミアムラージツインの部屋タイプで先行導入)




備え付けのスリッパと、使い捨てスリッパを併用してご用意し、宿泊されるお客様にご選択いただいている設置例です。


バイオマススリッパの特徴




スリッパの個包装にも、カートン内にもOPP袋は一切使わず、プラスチック使用量低減に向けた仕様を徹底しています。




エンドユーザーへの商品説明としてプレートPOPもご用意しています。




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