「福岡県CXOバンク」を活用し、大学発のバイオ系ベンチャー・ハインツテック社が外部人材とのマッチングを実現。事業をドライブさせる外部人材活用とは?
近年、日本でもベンチャー企業やスタートアップ企業が成長する土壌が整ってきています。その中で、これらの企業の成長フェーズで課題となるのが、CXO(業務における最高責任者)人材の確保です。
国内でも有数のベンチャー企業数を誇る福岡県は、昨年7月に地元の九州大学と連携して「福岡県CXOバンク」事業を立ち上げ、大学発ベンチャー及びスタートアップ企業の事業拡大に必要なCXO人材をデータベース化し、企業等とマッチングすることで、企業成長の促進に取り組んでいます。
パーソルキャリアが運営する、副業・フリーランス人材 マッチングプラットフォームサービス「HiPro Direct(ハイプロダイレクト)」では、福岡県CXOバンクに対し、プロ人材の登録支援を行なっています。
福岡県ベンチャービジネス支援協議会(事務局:福岡県商工部新事業支援課)と、運営を受託しているパーソルテンプスタッフが2023年に開催したオンラインサロンでは、福岡県CXOバンクにおいて、第1号となるマッチングが成立しました。
今回、第1号となるマッチングを果たしたハインツテック株式会社 代表取締役社長・青木氏、そして福岡県CXOバンク 事業担当者・堀氏へのインタビューを実施。ハインツテック社が福岡県CXOバンクを活用するに至った背景、マッチングしたCXO人材と進めているプロジェクト内容などについて詳しくお聞きすることで、ベンチャー企業やCXO人材が同事業に参画する魅力やメリット、マッチングによって生まれる新たな可能性に迫ります。
福岡県と九州大学の連携によって生まれたベンチャー企業の支援事業
―2022年7月に誕生した福岡県CXOバンクの設立経緯について教えてください。
堀氏:福岡県内には様々なベンチャー企業が存在していますが、多くの企業で事業を成長させる人材(CXO人材)が不足している状況がありました。とくに大学発ベンチャーでは、創業から黒字化までの「死の谷」を乗り越えられない研究シーズが少なくないと聞いています。県としても「技術はあるのに経営のノウハウがない」という理由だけで、福岡で生まれた素晴らしい技術を世界に広めていくことができない状況に課題感を持っていたため、以前から包括連携事業を進めていた九州大学と連携し、外部CXO人材とベンチャー企業のマッチング支援を行う福岡県CXOバンクを立ち上げる運びとなりました。現在、登録いただいているCXO人材と県内のベンチャー企業が、互いに知り合うためのオンラインサロンを開催したり、イベントに登壇して福岡県CXOバンクについて説明したりしています。
―立ち上げから現在までの状況や実績についてはいかがでしょうか?
堀氏:本日お越しいただいている青木さんのハインツテック社が、福岡県CXOバンクのマッチング成立第一号の企業です。オンラインサロンをきっかけに、最適なCXO人材とのマッチングを実現されたと伺っています。また、ハインツテック社の他にも10社ほどの企業がマッチングを進めている最中であり、今年度中には多くのマッチング事例が生まれると期待しています。
―福岡県にはどのような分野のベンチャー企業が多いのでしょうか?
青木氏:当社は北九州市のバイオ系ベンチャーですが、北九州市には環境、DX、そして半導体関連のスタートアップが多いですね。それに対して福岡市内はIT系や、DX関連の会社が多い印象です。また、福岡県は地理的に「アジアの玄関口」でもあるため、日本の他の地域と比べてもグローバルな協業や共創が生まれやすい地域であると考えています。
会社に足りないバイオ領域の専門家を探すべく福岡県CXOバンクを活用
―それでは改めて青木さんにお伺いします。ハインツテック社の事業内容や現在のフェーズについて教えてください。
青木氏:当社は北九州市内の学研都市に入居する、早稲田大学大学院の研究室で生まれた技術シーズを事業化するために立ち上げた会社です。2021年7月の創業から3年目を迎え、フェーズとしてはシード期にあたります。先ほど申し上げたようにバイオ系のベンチャーではありますが、入口はマテリアルサイエンスであり、出口である応用先がバイオロジー分野というイメージです。
具体的には半導体の微細加工技術を用いて細胞への物質導入・抽出のためのツール・システムを開発・製造しており、ここに当社の独自の「秘伝のタレ」的な強みがあります。特に再生医療や細胞治療などの分野で、例えば遺伝子編集などにおける細胞加工に関して、これまでの技術では困難だった加工技術の研究開発およびその技術を活用するためのツール開発や製造をしているほか、その技術を活用した大学や研究施設、企業などへのサービス提供も行っています。
―かなり専門的な知識が求められる事業分野ですが、福岡県CXOバンクの活用を決断するに至った背景や経緯について教えていただけますか?
青木氏:先ほどお話した通り、当社の事業は半導体の微細加工を入口としながらもアウトプットはバイオロジーとなります。私や共同創業者である早稲田大学の先生は、いずれも微細加工に関わる材料系の領域を専門としており、会社として事業を軌道に乗せるために必要なバイオ領域のノウハウが不足していました。また、シードフェーズのベンチャーである当社には、バイオ領域の専門家を新たにフルタイムで雇用するほどの体力もなかったのです。
そんなときにご紹介いただいたのが福岡県CXOバンクでした。当社としては高い専門性を持った希少な人材を探していたため、当初はそれほど期待していなかったのですが、マッチングのためのオンラインサロンに参加した際に、私たちが求める理想的な人材と出会うことができたのです。
―外部人材と協業を進めるにあたり、技術情報の流出を懸念される企業も少なくありません。青木さんはそのようなリスクをどのように考えていましたか?
青木氏:当社の扱っている技術はかなり特殊であり、バイオ領域のアイデアや技術だけを抽出したところで何かが実現できるわけではありません。融合領域の事業であったことが大きいかもしれませんが、その点で懸念を感じることはありませんでした。
CXO人材の協力を得たことで新たな実証実験のプロトコルが完成
―マッチング成立から3カ月が過ぎましたが、CXO人材と進めているプロジェクトや取り組みについて教えてください。
青木氏:福岡県CXOバンクを通じて出会った沢井さんには、当社が検討していた新しい実証実験の設計に携わっていただいています。この3カ月間の協業によって実験の全体像が完成しつつあり、あとは実験を進めるだけという状況です。今後は沢井さんと契約している半年間のうちに実証実験の成果を形にしていきたいと考えていますが、沢井さんのご尽力がなければここまでスムーズに進まなかったと思います。
また、沢井さんはバイオ領域の専門家であると同時に特許技術者としてもご活躍されているため、上記の実証実験以外でも契約関係の書類をチェックいただくなど、様々な形でアドバイスやサポートをいただいており、私たちとしては本当に助かっています。
―わずか3カ月の間に強固な信頼関係を構築されていますが、外部人材である沢井さんとのコミュニケーションに関して心掛けていること、意識されていることはありますか?
青木氏:沢井さんは関東圏にお住まいなので、実はまだ対面でお会いしたことがないんです。現状、沢井さんとは2週間に1度のペースでオンラインミーティングを行っており、2週間のうちに進んだ業務や調査について互いに報告し合い、次の2週間に向けてのネクストステップを決めていくという流れで協業しています。すべてを沢井さんにお願いするのではなく、沢井さんの知見を活かして担当いただきたいタスクを適切な形で切り出してご依頼することを心掛けています。それでも沢井さんには「何か他にできることありますか?」と聞いていただけるので、私たちとしては本当にありがたいですし、良好な関係性の中で協業できていると感じています。
副業を通してCXOの経験を段階的に積んでいくチャンスが得られる
―続けて青木さんにお伺いします。企業として福岡県CXOバンクを活用するメリットをどのように感じていますか?
青木氏:やはり高度な専門性を持った人材と出会えることが大きいですよね。福岡県CXOバンクを活用する前には、沢井さんのような方とは出会えませんでした。また、当社は福岡県CXOバンクを通じて資金調達の専門家とも出会いました。最終的には契約周りの課題でマッチング成立とはなりませんでしたが、アメリカ西海岸で大学発ベンチャーをはじめとするディープテック領域へのキャピタリストとしてご活躍されている魅力的なキャリアの持ち主でした。日本国内のみならず海外の人材にもアプローチできるチャンスがあることは福岡県CXOバンクの大きな魅力の一つだと思います。
―福岡県CXOバンクとしては、どのような方に登録いただきたいと考えていますか?
堀氏:特にニーズが高いのはCFOやCMO、知財関係の領域ですが、福岡県には多くのベンチャー企業があり、ベンチャー企業が求める専門性も様々ですので、多種多様なキャリア、技術、専門性をお持ちの方にご登録いただけると嬉しいです。また、現時点では女性の登録者が少ないため、今後はダイバーシティの観点も踏まえ、広く登録いただける取り組みを行なっていきたいと思っています。
青木氏:「CXO」と聞いてしまうとハードルの高さを感じる方も多いと思いますが、個人のキャリアアップにとってもメリットの大きい仕組みだと思います。私のように脱サラをしてCEOを始める方法もありますが、福岡県CXOバンクに登録すれば、副業を通してCXOとしての経験を段階的に積むことができますからね。
(文:佐藤 直己)
■ 九州キューテック 募集URL
https://talent.direct.hipro-job.jp/talent/issue/1106/
■ 9/13開催! HiPro Direct Networking Day
NTTドコモ、セイコーエプソン、積水化学工業などがプロ人材活用術を大公開
~各領域のプロ人材に自社の課題を相談できるブースも設置~
福岡県CXOバンクに関連するセッションもございます。
https://direct.hipro-job.jp/event/hipro-networking-day/
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