日本初の預金型ステーブルコイン「トチカ」サービス ~インハウスデザイナーとしてプロジェクトを率いた若手社員の軌跡~<地方銀行×自治体×ベンチャー企業によるデジタル地域通貨プロジェクト>Part3
2024年4月1日、北國FHDグループの北國銀行が、Digital Platformerと共同で、日本初(※1)の預金型ステーブルコイン(※2)「トチカ」のサービス提供を開始。2023年10月には、石川県珠洲市にて、デジタル地域通貨サービス「トチツーカ」のアプリ内で自治体が発行するポイント、「トチポ」の先行リリースを行った。
*1 2024 年 4 月時点。当社調べ。ブロックチェーンを利用した預金資産を裏付けとするデジタルマネーとして
*2 銀行の承諾・関与の下に発行される預金移転可能なデジタルマネー
▼「トチカ」リリースに関する詳細はこちら
本プロジェクトは2023年1月に本格始動し、現在総勢75名ものメンバーが携わっている。その中で、「トチツーカ」に関わるすべてのデザインは、インハウスデザイナーの柴田 和希によって手がけられた。
本記事では、デザイン面でチームを率いた柴田の軌跡に迫った。
北國FHDへの入社は2023年2月。
キャリア採用で入社した柴田は富山県出身。東京のデザイン専門学校へ進んだ後、金沢のデザイン会社に就職した。北國FHDに入社するまで、2社のデザイン会社での勤務経験を持つ。
「デザイン会社での勤務ももちろん充実していましたが、サイト公開後の運用に携わることができない点にもどかしさを感じていました。制作して終わりではなく、一ヶ所に腰を据え、制作した媒体を育てていきたいとの想いから、転職を決意しました。」
一般的に、デザイナーが勤務しているイメージがない地方銀行グループへの入社。どのような経緯で選択したのか。
「あらゆる会社の募集要項を見ていく中で、北國銀行をはじめとする北國FHDグループの各社サイトや発刊物などから、ブランディングに力を入れようとしている印象を受けました。また、いわゆる銀行という形にとらわれず、先進的な取組みを行っていることを知り、新たなことに挑戦していくことへの敷居が低そうだなと、好感を持ったことがきっかけです。」
デジタル部グループ長の今津は、当時どのような想いで新たなデザイナーを募集していたのか。
「顧客接点のデジタル化が進み、今後さらに加速していくことが予想される中、社内において、外に発信するクリエイティブのクオリティー向上が急務でした。ターゲットや媒体を整理するだけでなく、”ユーザーに届くもの”を制作できる人材が必要だと考えていましたね。そういった人材がチームに参加することで、議論が有意義かつ生産性の高いものへと一段階レベルアップできるかもしれないとも期待していました。
そのようなタイミングで新たなデザイナーの採用が始まり、それまでにインハウスデザイナーとして採用されたメンバーにもかなり活躍いただいていましたが、案件や課題が山積みで、さらに目の前には今回のプロジェクトがそびえ立っていたので(笑)、”どうしようか...”という時に、柴田さんがエントリーしてくれました。」
サービスのリリースに向けて本格稼働していく中、会社が求めていたデザイナーとして柴田は採用され、2023年2月に入社した。
「まずは、サービスネーミングを。」 任されたデザイン業務のすべて。
サービスネーミング・ロゴ、アプリやサイトデザイン、そしてコーディング。サービス加盟店やユーザーに向けた説明用チラシからのぼり旗の制作に至るまで、サービスの“顔”となるものすべてのデザイン面で関わってきた柴田。
入社後から、“即戦力”としてあらゆるデザインを任されたが、自分がデジタル地域通貨プロジェクトに携わることは、全く予想していなかったという。
2023年3月、「まずはサービスのネーミングを考えてほしい。」上司の今津に告げられた。
世の中に出ている地域通貨やマネーは「○○ペイ」というネーミングがほとんど。「ペイ」をつけるべきか、つけずに独自性を出すべきか、プロジェクトメンバーで議論して方向性を絞っていくのが大変だったという。
入社当時から、各種デザインを含めサービス全体のプロデュースに携われることへの充実感が大きかったと当時を振り返る柴田。その一方、少なからずプレッシャーも感じていた。
「今考えると、入社したばかりというのもあり、“すべて自分一人で進めなければ”と思い込んでいました。これはどこの部署に聞けばよいのか?アイデアの方向性は間違っていないか?いろんな不安があったのは事実で、“どうしよう”という焦りもありました。」
そう語る柴田だが、不安を打ち消す北國FHDの“働きやすさ”に助けられたという。
「とにかく部署、社内すべてにおいて“フラット”だと感じました。入社前から働きやすさの先進性は知っていたつもりでしたが、プロジェクトを進める中で身をもって実感しました。一般社員、チーフ、グループ長、部長という役職の垣根が無く、プロジェクトメンバーとしてそれぞれがスキルを発揮し、全員で前に進めている感覚を持てたことが、とても印象的でした。」
新たな環境に身を置きながらも、すぐにチームの中心として活躍した柴田。
プロジェクトメンバーとのディスカッションを重ね、銀行口座からチャージして、この土地(トチ)で使う通貨(ツーカ)として『トチカ』、それぞれの自治体が発行主体となり、その土地(トチ)の活性化のために使用されるポイントを『トチポ』、そしてサービスの総称を『トチツーカ』と名付けた。
ユーザーの対象が幅広いため、誰が見ても理解でき、柔らかい印象をもたらすように工夫したという。
当時の柴田の働きぶりを、上司の今津はどのように捉えていたのか。
「入社してすぐに柴田さんのデザイン力、インプット・アウトプットのスキルが非常に高いと感じました。単に描く力ということではなく、当社の考えや業務の意図を自ら吸収していく理解力と行動力、そして制作物のあるべき姿を具現化する力に長けていましたね。
入社後間もないチームへの参加でしたが、プロジェクトに込められた意図、地域の課題、ビジネスの目的を速やかに読み取って形にしてくれたと思っています。
スケジュールがタイトな中、デザインの優先順位を考慮し、全体のクオリティにメリハリをつける判断も柴田に任せることができ、難しい条件下でベストを尽くしてくれたと絶賛する。
“プロジェクトそのものをデザインする”柴田が感じる仕事の面白さとは。
「プロジェクトに入ってから、ずっと楽しく仕事ができています。」と笑顔を見せる柴田。
入社するまでの業務では、お客さまのニーズと予算に合わせた提案が求められることが多かったが、現在は「こういった事もできるのでは?」といった発想を大切にしているという。プロジェクトメンバーに対しても、“ここを変えたらどうか”という意見が言いやすい環境だという。
チームでのブレストを起点に、サービスの方向性や目標・役割など、プロジェクトそのものをデザインしている感覚に近いのだとか。
「なによりも、プロジェクトメンバーとの議論が楽しいです。Webサイトやプロモーションツールなど、創っている媒体はこれまでと変わっていないのですが、できることが大きく広がっていて、仕事が面白い!と感じています。」
これまでと異なる職場環境での1年は、総じて大変さよりも面白さが勝っていたという。
デザインルールを設けること、プロジェクトをコントロールすることなど、組織体制やゴールに向けた全体的な工程を学ぶことができたと振り返る。
一方で、2,000人を超える社員が所属する会社の中で、デザイナー業務を担うのは現在7名。キャリア採用で、経験と実力を兼ね備えた人材の採用を強化しているものの、人数としてはまだ少ない。
デザインのクオリティチェックなど、デザインチームとして今後改善すべき点にも気づけたという。
「デジタル部には、私の入社時点で3名、現在は6名のデザイナーが在籍しています。それぞれ得意分野やこれまでの経歴は異なり、全員がキャリア採用です。今回のプロジェクトに関わったデザイナーは私1人ですが、やはり同じ部署に共通の知識を持つ人がいるというのは、とても心強かったですね。個々が担っている業務は違いますが、今後デザインチームとして、全員でレベルアップしていきたいと感じています。」
では、デザインの基礎を知らないデザイナー以外の社員と仕事を進める上で、大変さは感じないのだろうか。
「“デザインに関する基礎知識“を共通で持ち合わせないことは、全く問題ありません。それよりも、何を創りたいのか分からないという方がデザイナーとしては悩みます!
その点で言うと、プロジェクトメンバーは何をしたい、何を創りたいという想いが明確で、より良いものにしていくためのディスカッションに時間を割くことができ、どのミーティングも充実感がありますね。
何より、”ここからはデザイナーの役割“と線引きされないのも嬉しいです。とにかく一緒に創り上げている感覚で、すべてを全員で考えていける雰囲気が、本当にありがたいです。」
プロジェクトについて語る柴田の表情は明るく、チームの“よい雰囲気”がクリエイティブの原動力になっているのだと感じさせられる。
2024年4月1日、石川県全域で『トチカ』がリリースに。
現在プロジェクトをデザイン面で率いる柴田も、1年前はプロジェクトの規模が大きく、理解が全く追い付かなかったと苦笑いする。他の決済サービスとどう差別化を図るのか、上司の今津に度々質問を繰り返していたという。
「詳しくサービスの仕組みを理解するにつれて、お金が地域内で循環する仕組みの凄さに気づきました。特に、私たち北國銀行だけでなく、地域の他金融機関や自治体と協働したサービスという点が強みだと思っています。」
“土地の通貨で地域を活性化、人・町・地域がより豊かになるデジタル地域通貨アプリ”をテーマに掲げるトチツーカ。
「いつでも」「どこでも」「誰でも」安心してキャッシュレス決済ができる北陸地域を、トチツーカが目指す未来としている。
では、今後さらにサービスを普及していくために、デザイナーとして何が必要だと考えているのか。
「2023年10月に石川県珠洲市の珠洲トチポ、2024年4月に石川県全域のトチカをリリースしました。まずは、リリースできたことにホッとしていますが、機能改善の面で言えば、これからが始まりだと思っています。私が転職を決意した理由でもお話しましたが、ユーザーの皆さまのお声を反映し、機能強化していくことこそがミッションです。使いにくい、分かりにくいなどのネガティブなご意見は、サービス改善につながる知見として、どんどん吸収し、ブラッシュアップにつなげていきたいと思っています。」
加えて、まずは“使ってみよう”と思ってもらえることがユーザー増加の一歩とも語る柴田。
地域をより便利に、そして豊かにするためのツールを生み出す背景で、デザイナーの工夫と趣向が凝らされている。
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ