バットがフライパンに!?町工場がミズノの木製バット不適格材をアップサイクルしてつくった「SWING PAN」の開発秘話
藤田金属株式会社は大阪府八尾市で1951年に開業した町工場です。四代に渡って受け継がれる高い技術力を活かし、フライパンをはじめ、鍋やヤカン、コップなど、ふだんの生活を支える金属製品を数多く作り続けています。
2023年、ミズノ製のベースボールバットの不適合材を取手に使用したオリジナルフライパン「SWING PAN」を開発しました。本来球場でプロ野球選手に振ってもらうはずだった木製バットが、台所でフライパンを振るための道具に生まれ変わったアップサイクル商品です。このストーリーでは、「SWING PAN」開発の背景と商品に込める想いをお伝えします。
伝統の技術を活かし新たな商品開発にも取り組む大阪の町工場
わたしたち藤田金属は、1951年の創業以来、鉄フライパンやアルミタンブラー、アルミの急須や風呂桶など、金属を使った様々な日用品を製造してきた小さな町工場です。毎日使う身近な道具だからこそ、職人の技術と創意工夫を最大限に盛り込み、便利さだけでなく日常を楽しくするような道具づくりを目指してきました。
事業はずっと順調だったわけではなく、2010年頃には倒産の危機も訪れます。当時、量販店やホームセンターがメインの取引先だったため、競合他社との価格競争に疲弊していました。新製品をつくってもすぐに類似製品が出るという悪循環に陥り、経営は赤字続きに。非常に厳しい時期でした。
そこから脱却できたのは、技術を活かした自社ブランド・製品の開発に舵を切ったことです。長年培った職人技を活かし、鉄フライパン製品の開発に注力するようになりました。オーダーメイド品をカスタムする「フライパン物語」の開発や、展示会への出展、ネットショッピング「FRYINGPAN VIKKAGE」の開設などを行い、販路も拡大しました。
新たな方向性を確立する中、2019年にプロダクトデザインユニットTENTさんとのコラボレーションで生まれた「フライパンJIU」は、とても大きな反響がありました。多くの方に手に取っていただけたことはもちろん、世界的なプロダクトデザイン賞である「Red Dot Award 2021」や「iF design award 2021」を受賞し、世界からも注目を集めています。
現在は、会社の柱をもう一つつくるために、キッチン用品に限らず、LEDライト(テーブルライトイチ)や植物の鉢(プラントポットハチ)など、生活を彩る製品開発も手掛けています。
野球選手用の木製バットを使ったフライパンづくりへの挑戦
ある日、「フライパンJIU」を通じ弊社のことを知ってくださったスポーツメーカーのミズノ株式会社さんから「何かコラボレーションできないか」と相談の連絡をいただいたことがきっかけで、野球選手用の木製バットの不適格材を使った商品を作るというないかという話になりました。
多くのプロ野球選手が愛用するミズノの木製ベースボールバットは、熟練の職人の手によって1本1本ミリ単位で削りながら製造されています。しかし、一見問題がない木材でも削っていけば木の節(ふし)が現れることがあります。節があるとバットが折れやすくなってしまうため、商品として販売できないのだそうです。
木材であれば弊社でも扱える上、使えなくなったバットの素材をアップサイクルできる点にも魅力を感じました。弊社の鉄フライパンも長く使っていただくために一つひとつ丁寧につくっていますが、サステナブルの視点から見ても取り組む意義があると思ったのです。打ち合わせの中で、ミズノの担当者さんが言った「バットもフライパンも、振る、だよね」というフレーズにも心を動かされ、これしかないと思いました。
持ち手をそのままバットの形にした新たなフライパンづくり
さっそく製品化に取り組み、バットの木材を取手・ハンドル部分に使用した新たな「フライパンJIU」が完成。この商品と私たちの想いに賛同してくれたアパレルメーカーのアーバンリサーチさんも共同で、地域の魅力を発信する「JAPAN MADE PROJECT」の一環として販売することになりました。
その後、さらなるコラボレーションアイデアとして生まれたのがバットの形状をそのまま残したフライパンです。持ち手がそのままバットの形をしていればアップサイクル商品としてもわかりやすく、面白いと思ったのです。そこから一気に試作品をつくり、ミズノさんと協議しつつ製品化を進めました。
しかし、バットをそのままフライパンに取り付けるのは簡単ではありませんでした。バットを持ち手として使うには、バット本体の真ん中に穴をあける必要があります。しかし木製バットは一本一本の太さがバラバラなので、真っすぐ穴があけられないのです。知り合い含め一緒に開発を進めてくれる木工屋さんを日本全国から探しまわり、ようやく山形県のある企業を見つけ、完成までこぎつけました。開発期間は約半年かかりましたが、プロジェクトメンバー全員が納得いくフライパンになりました。
職人技術を活かして長く使える良質なものづくりを
こうして完成したのが「SWING PAN」です。バットのように手に馴染む無垢木材のハンドルは、使えば使うほどに経年変化を楽しむことができます。本来球場でプロ野球選手に振ってもらうはずだった木製バットが、台所でフライパンを振るための道具へ。役割は変わりますが、人の手に馴染む取手として生まれ変わった木製バットを味わいながらご使用いただけたらうれしいです。
「SWING PAN」は発売後、さまざまなメディアに取り上げられたこともあり、たくさんのご注文をいただきました。現在は、約3ヶ月待ちになっている状態です。「バットのグリップに使われているからか持ちやすく振りやすいです」といった購入者の声もいただき、つくってよかったと心から思います。
長く使える良質なものを選んでもらうことはサステナブルにもつながり、私たちがつくる製品の大きなテーマになっています。そのため、木製バットの不適格材をアップサイクルして使用するという今回のチャレンジは非常に意義あるものだと考えています。
ただ面白い製品として世の中に出すのではなく、再利用できる素材をベースに長く使っていける製品を生み出すことが大切だと私たちは考えます。そして、伝統の職人技で長く使える良質な製品をつくり続ける企業として、藤田金属が世の中に広く知ってもらえることを願っています。
■「SWING PAN」商品情報
・商品名/SWING PAN
・サイズ/20cmと26cm
・材質/ 鉄製
・表面加工/ハードテンパー加工
※オール熱源(IH・ガス・シーズヒーター・ハロゲンヒーター等)対応!
・グリップ/木製(メイプル材)
・販売ページ:https://frypan-village.com/press/new-arrival/14-1
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ