飲料業界の老舗サカイキャニングが独立独歩の経営を実現できている理由とは?背景の取り組みと阪井克行社長の理念を探る
サカイキャニング株式会社は清涼飲料の受託製造会社として知られる老舗で、大手メーカーやプライベートブランドの製品製造・開発を手掛けています。
ミネラルウォーターとしては国内で先駆けとなるオリジナルのペットボトル製品を製造・販売するなど、人々の暮らしに深く浸透しています。
このストーリーでは、サカイキャニングが追い求めている「飲料のロマン」と、それを支える理念や取り組みを紹介していきます。
創業のきっかけは高野山参拝者への飲料製造・販売
サカイキャニングの創業は1912(大正元)年で、日本仏教の一大聖地である高野山の参拝者向けに瓶詰めのラムネやサイダー、みかん水を製造・販売したのが始まりです。和歌山県発の小さな飲料メーカーが、なぜ受託製造会社として日本有数の地位を築くことができたのか、阪井克行社長の言葉から会社の歩みを紐解いていきます。
昭和前期には数多くの新分類飲料を開発し、製造・販売するようになったサカイキャニングは、昭和中期にも乳飲料や果汁飲料の製造・販売に着手。数々の自社ブランド商品を自動販売機や街の商店、スーパーなどに卸していました。オリジナルで開発した「サカイコーヒー」は当時まだ珍しかった缶コーヒーで、大ヒット商品になりました。
1981年には、ペットボトル入りのミネラルウォーター「霊峰高野山大師の水」の製造・販売を開始し、「水を買う」という習慣が定着していなかった日本人のライフスタイルを大きく変化させました。
「霊峰高野山大師の水」は世界最長の歴史を誇る国際食品コンテスト「モンドセレクション」において、2007年の初出品から16年連続で最高金賞に輝いています。さらに、ITI(旧名iTQi・国際味覚審査機構)による「Super Taste Award(優秀味覚賞)」では3年連続で最高位の三ツ星を獲得するなど、品質管理と味の素晴らしさを世界中に轟かせています。
飲料の容器は時代とともに瓶、缶、ペットボトルへと移り変わってきましたが、飲み物そのもののロマンを脈々と受け継いでいるのがサカイキャニングの遺伝子です。添加物を使わず、素材そのものを活かすという自然志向、健康志向の考え方は受託製造を主とする現在も変わらず、自然の味を活かしてきた開発努力が抽出や調合の技術を磨いたと言えます。
現在はお茶系の飲料製造が中心ですが、完全発酵茶から不発発酵茶まで、発注先の要望に合わせた抽出・調合が可能です。また、発酵バイオ製法や無添加・無着色・無糖にこだわった製品作りもでき、幅広いニーズに応える体制を整えています。
プライベートブランドや小ロット多品種の製造を重視
飲料業界は大手メーカーと受託生産工場に分かれ、大きな受託生産工場は大手メーカーから製造を受託しています。
しかし、阪井社長は次のように話します。
「弊社はどちらかと言うと、プライベートブランドや小ロット多品種の製造に軸足を置き、現在は8割くらいがプライベートブランドからの受託です。ただし、決まった製品を黙って作るだけではありません。飲料の知見がない業界の方にも開発から流通の仕組みまで積極的にノウハウを出すのが我々の特色であり、強みです。そうして多方面から新しい商品をたくさん生み出し、地方のご当地飲料の製造も引き受けています」
大小合わせて多数のメーカーがしのぎを削る飲料業界では合理化が進行し、工場は大規模化しています。サカイキャニングの事業戦略は時代の商流に逆行しているかのように見えますが、小ロットの生産や製品企画・開発なども担っていることが顧客の支持を集めているのです。
阪井社長は「もちろん、大きいロットの製造を受けないということではありませんが、大量生産を積極的に追うつもりはありません。高い品質を維持するためには、会社を大きくし過ぎてもいけないと考えています」と言い切ります。
地元の人々に愛され、長く取引してもらえる会社に
その言葉通り、サカイキャニングは生産性向上などの目標こそ設定しているものの、売上や規模などの目標は立てていません。自社の強みを活かしながら地元を中心とした人々に愛され、長く取引してもらえる会社であり続けることを目指しています。
営業活動も無制限に増やしていくのではなく、少ない営業でも長く顧客を担当し、相手の懐に深く入っていくことをイメージしています。阪井社長は「大手のお客様だと、担当者の方が頻繁に変わることもあるので、弊社から先方に取引状況などを説明することもあります。業界とお客様のことを深く理解し、これからも有益な提言をしていくつもりです」と力を込めます。
国内有数の受託製造会社に相応しい技術力
売上や規模をあえて追わないというユニークな経営を可能にしているのは、創業112年の歴史を通して培った高い技術力の賜物です。
サカイキャニングは、2種類の抽出器から最適な方法で抽出・濾過した液体を殺菌し、高温充填するホットパック方式を導入し、高度な品質管理で顧客に満足してもらえる製品作りを実現しています。充填後も最新鋭の検査機器できめ細かく検査を行い、出荷に至るまで1本ずつの製品を大切にする万全の体制を整えています。
小ロットから大ロットまで、顧客のあらゆるニーズに応える姿勢は、製品開発にも通じるものがあります。商品開発室では最新の機器を駆使し、専門のスタッフが味や香り、色を調整します。成分分析も綿密に行い、レシピ通りの完璧な製品を生み出しています。お茶やコーヒーなど飲料に関する製品作りのノウハウは、すべてここに揃っているのです。
長年に渡って培った飲料作りの技と知恵は、既存製品の製造や新商品の開発に十分活かされています。サカイキャニングの基本精神は「ハートを込めて他社にない魅力ある商品づくりを行い、消費者の皆様が店頭に並ぶ無数の商品の中から自然とサカイキャニング製造のものに手が伸びる、そういう仕事を積み重ねていく」ことです。真摯な精神はロットの大小を問わず、求められている飲料を手間暇かけて仕上げていく姿勢に表れています。
本人の希望を尊重したキャリア形成を叶える会社
飲料業界のプレイヤーはそれほど多いわけではなく、非常にニッチであると言えます。そのため、飲料関係の仕事でしか活かせないスキルも多く、この業界の中でステップアップしていくのが一般的です。
サカイキャニング株式会社では、社員一人ひとりの経歴とスキル、人となりを把握した上で、本人の希望も可能な限り尊重したキャリア形成を叶えるようにしています。入社後はOJTで実務能力を養い、ヒアリングの内容を踏まえて適材適所に正式配属されます。その後のキャリアはさまざまな道が開けており、初期配属でスペシャリストになるケースや、異動を経てゼネラリストになるケースもあります。
もちろん、フォークリフトの運転技能など汎用的なスキルに加え、資材の受発注をはじめとする事務作業や製品の発送など全体を俯瞰して運用する能力も身につけることが可能です。開発部隊では製品の味だけでなく、マーケティング的な観点でも企画ができるようになります。
また、年間1億本を超える飲料を製造していることから、多くの人々の日常生活を支えられるのもサカイキャニングで働く魅力です。家族などが何気なく買ってきた飲料が、実はサカイキャニング製だったということも多々あります。機械の力を借りるとは言え、自分が作った大量の飲料が世の中の役に立っていることを実感できるのが魅力です。
阪井社長は「機械などが好きな方、希望的観測を入れず事実に基づいた判断ができる方が向いています」と話します。また、「常に事実確認や物事に疑問を持ち、さまざまな計画を同時並行で進められる方や、業務のリ・スケジュールや延期といった不測の事態にも一喜一憂せず前向きに動ける方を歓迎します」と強調しています。
飲料業界の未来を切り開く仕事
サカイキャニング株式会社では、自信を持って製品を作り、それをお客様に届けているという強い想いで仕事に取り組む社員を採用しています。
例えば、「製品開発/品質管理」では自社の良質な水を活かしたオリジナル製品からプライベートブランド、依頼があったご当地飲料の製品提案・開発を行っています。また、食品安全に関わる検査やQCサークル活動(小集団改善活動)に取り組んでいます。
「製造技術・管理」は国際基準を満たした最新設備が揃うクリーンな工場内での製品製造の管理、機械オペレーション、製造技術などを担当し、あらゆる種別の製品製造が円滑に進められるよう管理しています。
「物流管理/資材管理」は各製品が納期までにお客様の手元に届くよう配送を手配し、清涼飲料を作るための材料の管理・仕入れも行います。150社ほどの仕入先から、飲料の種別や製造量を見て適切な量の材料を調達します。
しかし、どの職種も「ハートを込めて他社にない魅力ある商品づくりを行う」という基本姿勢を体現することに変わりはありません。人々の生活に欠かせない飲料製造の担い手として、1世紀を超える歴史を積み重ねてきたサカイキャニング。次の100年を支える仕事は、飲料業界の未来を切り開く仕事でもあるのです。
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ