ブラザーがミシンの新たな価値を届けるためにYouTubeで配信中の「動画で『見る』漫画」に協賛する理由 兄弟が運営するミシン教室が舞台の「SEWING BROTHERS」誕生秘話
ブラザー販売株式会社は、2021年12月から株式会社GATOONが制作する「SEWING BROTHERS」に協賛している。「SEWING BROTHERS」は、漫画素材を映像演出で動画化した『GA!TOON』という手法で制作された「動画で『見る』漫画」で、さまざまな世代や性別の登場人物たちがミシン教室「白薔薇館」を運営している兄弟と出会い、ミシンで何かを紡ぐことに魅せられていく物語だ。
「SEWING BROTHERS」の制作秘話や、ブラザーが協賛することになった理由について、株式会社GATOONの茂木とブラザー販売株式会社の若山と山本に聞いた。
株式会社GATOON代表
『SEWING BROTHERS』製作総指揮者
茂木 崇史
ブラザー販売株式会社
マーケティング推進部 広報グループ
若山 勝
ブラザー販売株式会社
DX推進部(2021年3月までマーケティング推進部所属)
山本 宗平
茂木さんは人材育成業界からコンテンツ業界に転職されたそうですが、もともとアニメや漫画がお好きだったのでしょうか?
G茂木:小さい頃からアニメや漫画が好きでしたが、周囲の期待に応えるために大好きなアニメや漫画を我慢して勉強やスポーツで結果を出そうとする自分がいました。その延長で大学に入りコンサルティングや人材育成の業界に就職し、さまざまな出会いや貴重な経験もできましたが、心のどこかで何かが取り残されていることも感じていました。
転職を考えたきっかけはありますか?
G茂木:人材育成業界での仕事を長年続ける中で、人が持つ価値観や考え方のベースが小さい頃に見たアニメや漫画に強い影響を受けているなと感じることが多かったんですよね。それに、何かメッセージを伝える上でも、アニメや漫画から自分で共感・納得したことなら素直に受け入れられるということもあると思います。社会に対して何かメッセージを伝える手段として、アニメや漫画が言語や世代を超えてメッセージを広く伝えられる可能性にあふれていると思ったのがコンテンツ業界への転職を決めた直接的なきっかけですね。
(株)GATOONに入社して、小さい頃から好きだったアニメの制作に携わることになったのですね。
G茂木:私のような40歳の未経験者がアニメ業界の制作サイドで入れることはあまりないと思います。しかし、(株)GATOONのファウンダーチームのリーダーで、アニメ制作会社(株)アスラフィルム社長の望月さんが、制作サイドで挑戦する機会をくれたんです。望月さんからしたら、ビジネスサイドで関わってほしいというのが本音だったと思うのですが、制作について一から経験を積ませてほしいという私の願いを受け入れてくれました。本当に感謝しかないですね。(株)GATOONでは『GA!TOON』という独自の手法で作品を作っています。『GA!TOON』とは、漫画の"画=GA"とCARTOONの"TOON"を組み合わせた造語で、モバイルデバイス向けに最適化された、新たな漫画の表現手法です。だからアニメではなく、「動画で『見る』漫画」なんですよ。アニメ制作の考え方をベースにしていますが、制作工程はアニメに比べるとシンプルです。私のようなキャリアの人間も含めて、コンテンツ制作に関わる人の裾野を広げる可能性のある作り方ではないかなと思います。
茂木さんが初めて制作に携わった「SEWING BROTHERS」の企画アイデアができるまでのお話を聞かせてください。
G茂木:人材育成業界での経験から、社会における居場所やコミュニティーの大切さを表現したいと考えていました。また、「学びの場」が持つ可能性を感じていたので、そんなテーマのストーリーを漠然と考えていましたが、具体的な題材を決めあぐねていました。そんな時に、友人の若山さんと偶然話す機会がありました。言葉ではなかなか伝えられない想いを伝える手段としてのモノづくりやミシンの可能性についていろいろと話が盛り上がって、どんどん企画のアイデアが広がっていきました。
ブラザーは当初、制作協力を、2021年12月からは協賛もしていますね。どのような経緯があったのでしょうか。
B若山:茂木さんとは元々交流があったのですが、知り合ったときは人材育成業界で大手クライアントを多数お持ちの有名な方でしたので、「コミュニティーの大切さを表現するオリジナルストーリーを考えている」というお話を聞いたときは驚きました。さらに「アニメではない、スマホに最適化された『見る』漫画を作るんです」と説明されて、頭の中に「?」が続いたのを覚えています。
G茂木:そうですよね(笑)。たくさんの人に「なんで?」と言われて説明に苦労しました。
B若山:最初は「?」となりましたが、その後のオンライン会議で「いい話だ!多くの人に見てもらいたい。そしてミシンLOVEになってほしい」という想いが先に働き、その場で延々と意見交換を始めてしまいました。 このような企画を検討するときはマーケティングの観点が欠かせないのはもちろんですが、「自分が見たい。周りの人に薦めたい!」と思えることを大事にしています。
G茂木:あの打ち合わせは、マーケティングとかそういう打算的な話は一切なくて、こんなミシン教室があったらいいよね!というお互いの想いが爆発していましたね(笑)。
B若山:話の中で、役所広司さん主演の『Shall we ダンス?』という映画を見た人がダンスをやりたくなり、社交ダンス教室に人が殺到するという社会現象に触れて「そんな作品になって、みんながミシンに夢中になってくれればうれしいです」と冗談めいて話していましたね。
G茂木:『Shall we ダンス?』は私も好きな作品です。どこか満たされない抑圧された日常を送っていた中年男性が趣味に没頭することを通じて新たな仲間も生まれて人生に彩りが生まれていくストーリーは今回表現したいテーマに近いストーリーだったので、とてもヒントになりました。ソーイングティーチャーを男性にすることで、また違った視点を表現できるということもあり、キャラクターアイデアも広がっていきました。
B若山:制作協力については、茂木さんのお人柄や実行力を信頼しているということが第一でした。その後、関係部署と相談して、ブラザーとして正式に協賛させていただく形となりました。 協賛する段階で山本に引き継ぎましたので、この後は山本から説明させていただきます。
B山本:むちゃぶりされたような感じで引き継ぎましたが、制作協力は、ミシンの画像提供から始まり、ミシン講師の方への取材協力の取り付け、ミシンの縫製音を収録して提供などもしましたね。 制作風景も見させていただきましたが、アフレコで声優さんや制作チームの皆さんが作品について真剣に相談されているのを見て感心していました。
G茂木:私自身も初めてプロのクリエイターの皆さんと仕事をしましたが、作画・音響・声優・撮影・編集それぞれのチームのスタッフがより良いものを作ろうと妥協なく進める熱量やプロ意識にとても刺激を受けました。アニメや漫画は、自分一人では完成させられないので、スタッフのモチベーションを上げるのも自分の仕事だととても強く思い、丁寧なコミュニケーションを大切にしながら進めていきました。声優さんの収録現場に通常は同席することが少ない作画チームやブラザーさんのような協賛企業の方にもオンラインで参加してもらうなどの工夫もしました。
ブラザーが「SEWING BROTHERS」に協賛するにあたって、この作品のどこが一番魅力的だったのですか?
B山本:ミシンはかつて生活必需品でしたが、今は趣味でのご利用に大きくシフトしており、ミシン市場のトレンドは長く微減傾向が続いてきました。趣味の領域ではスマホをはじめとした可処分時間の取り合いに参加しているという感覚を日頃から持っています。 生活必需品は価格や性能が重視されると思いますが、趣味となるとライフスタイルを含めて楽しみ方をご提案すること、ひいては私たちがお客様にどういう想いでミシンを使ってほしいと思っているかをお伝えすることが大切だと考えています。 今回の「SEWING BROTHERS」で茂木さんが表現したいとおっしゃった内容は、その想いにピッタリとはまりました。
G茂木:ミシンの機能的価値ではなく心理的価値は何かということを改めて考えた結果、単にモノを作る道具ではなく、素直には言葉にしにくい想いを、モノを作って贈るコトを通じて伝える手段があるということを表現したいなと思いました。家族など身近な存在であればあるほど、なかなか素直になれないことってありますよね。ミシンは、大切な家族への愛情を伝える表現手段でもあったんじゃないかなと思いました。
B山本:また、私たちは何を伝えるかだけでなく、どうやって伝えるかも大事だと考えています。 よくスマホで漫画を読むのですが、「動画で『見る』漫画」というコンセプトが「今の時代にあっているな」と思いました。
G茂木:読む時間を自分でコントロールできるのがスマホで読む漫画のメリットだと思います。でも、ずっとスマホで活字を見るのって疲れるなと感じます。年齢的になのかもしれませんが(笑)。一方で音の入ったアニメも本当は見たいのですが、アニメは集中して見たい自分がいて、移動中にスマホで見るのは難しい。そうなると、移動中に見る動画はミュージックビデオなどの比較的短い動画でした。ミュージックビデオって、わかりきった話ですが音だけで楽しいんですよね。そして、音を聴いていると、絵も気になってくる。絵と音でさらに楽しい。そこで気が付いたのが、スマホで楽しむコンテンツは「短い時間で、音だけでも楽しめる」「絵があるとさらに楽しめる」そんな作品が合うんじゃないか?と考えました。そのため「SEWING BROTHERS」はセリフの量(※2分の作品としてはセリフ量が多い)やBGM、声優さんなど、音にもこだわって作っています。
B山本:『GA!TOON』は従来のアニメと比較して大きく制作コストを抑えることができるというのも伺ってさらに関心を持ちました。
G:茂木:作品を見ていただくとわかると思うのですが、絵はアニメのように動かしていないんです。口パクなど最低限の動きとカメラワーク、フィルムワークを使って映像として見続けられるようにしています。映像制作の作画枚数など費用に関わるところは最小限に抑えられているのは『GA!TOON』の特長だと思っています。同じ時間(2分×50話=100分)のアニメを制作しようと思うと、数億円の予算が必要となり、5倍〜10倍以上の予算がかかります。
B山本:あとは、今だからこそ、この作品をブラザーとして協力したいというタイミングでした。
タイミングというと?
B山本:2020年から続く新型コロナウイルスの感染拡大です。新型コロナウイルス発生直後に、マスクが品薄になり、手作りマスクを作りたいというニーズから市場全体のミシン販売台数は大きく伸長しました。 マスクの型紙のダウンロード数も見たこともないような数字となり、社内の関係者で驚いていました。
コロナ禍のミシン需要の高さはよく話題になっていますね。
B山本:ミシン販売店さまからは修理やメンテナンス依頼もたくさん来たと伺っています。タンスに眠っていたミシンを再び手に取っていただけるのは、製品を長くご愛用いただきたいと考えていたブラザーにとって、とてもありがたいお話だと思っています。
G茂木:製品を長く使うという点に関してだと、ミシンは、嫁入り道具の一つでもあり、一生ものの道具だったと思います。大量消費時代へ問いを投げかけるテーマとして、そういうことも表現できると良いなと思って古いミシンも「SEWING BROTHERS」に登場させました。
B山本:まさか「コンパル」の精が出てくるとは思ってもいませんでした。歴史に残る名機なので「ありうるかも?」と受け入れましたが(笑)。
G茂木:そこは実写映像ではない漫画映像表現ならではのファンタジー要素ですが、「コンパル」はストーリー上もとても重要な役割を果たします。
「SEWING BROTHERS」の反響はいかがでしょうか。
G茂木:公開された「SEWING BROTHERS」へのコメントを見ると、登場人物の服部兄弟の声や音楽に癒されるという声が多かったです。男性メインキャラクターの声優陣として、昨今のアニメや女性に人気がある作品で活躍されている声優の方々を起用できてとても良かったと思います。
「SEWING BROTHERS」や(株)GATOONの今後の展開はどのようになるのでしょうか?
G茂木:現在、2021年11月の第1話公開から週2回のペースでYouTubeとTikTokで公開し、今年5月に全50話が公開され完結しました。「SEWING BROTHERS」ならびに(株)GATOONは、従来のアニメビジネスの枠にとらわれず、さまざまなビジネスパートナーとのコラボ企画にも柔軟に対応していきたいと思っています。こんなことを一緒にできるかも!というアイデアがあれば、ぜひお問い合わせいただけるとうれしいです。
B山本:今後、ブラザーとしても「SEWING BROTHERS」をプロモーションにも活用させていただこうと考えています。ブラザーの想いにも通じるのですが、何年か先でも「この作品を見てミシンの良さを改めて知ってほしい」と伝えられるような取り組みにしていきたいと思います。
SEWING BROTHERS配信概要
YouTubeチャンネル「SEWING BROTHERS」にて全50話公開配信中(各話2~3分)
https://www.youtube.com/channel/UCeRF0574E-XmiooKq40KYsg
●主なキャスト
服部向 役:伊東健人
服部績 役:峯田大夢
安井翔 役:河西健吾
真中結 役:古木のぞみ
真中弥生 役:今井麻美
中田英斗 役:酒井広大
木浦希 役:寺田晴名
糸川美智子 役:大下洋子
●公式SNS
・公式Twitter:https://twitter.com/sewingbrothers
・公式TikTok:https://www.tiktok.com/@sewingbrothers
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