アニメやゲームにハマる子どもに最適な学びとは?フシギへの探求心を育てる「教育ライブ・空想科学教室」の誕生秘話
現在の子どもたちは、コロナやGIGA端末の影響で、アニメやゲームなどのエンターテインメントに親しむ機会が非常に増えています。
内閣府の2023年調査(*1)によると、小学生高学年のネット利用率は平成30年85.6%→令和4年97.5%とほぼ100%近くまで上昇し、ネット利用平均時間も令和元年の129分から、令和4年には213分と2倍近くまで急上昇しました。小学生のインターネットの利用用途としては、動画を⾒る(88.1%)、ゲームをする(86.2%)といったエンタメ利用が上位にきており、よく見る動画ジャンルとしては、1位アニメ、2位ゲーム実況という状況です(*2)。
一方で、保護者は子どもたちの学びとエンタメのバランスで常に悩んでいます。上記の内閣府調査では、子どものインターネットを制限・管理している保護者は85%となっています。とある調査では、2023年6月に保護者対象に夏休みに入る前の悩みについて、1位が「Youtube視聴時間が長くなる」という結果に(*4)。
どこまでアニメやゲームを制限すべきなのか?この好奇心を何とか学習につなげられないのか?
そんな保護者の悩みに対し、累計880万部を誇るアニメやゲームを検証するベストセラー書籍『空想科学読本』と、子どもたちに楽しい学びをライブ授業形式でお届けする「スコラボ」がタッグを組んで、新しい形の教育を2023年9月からスタートさせます。
空想科学研究所 所長の近藤と、『空想科学読本』の著者 柳田理科雄、そしてスコラボを運営する株式会社MinedのCEOである前田とCOOの趙の4人が、「教育ライブ・空想科学教室」の誕生秘話を語ってくれました。
(左から、空想科学研究所の近藤さん、「空想科学読本」の著者 柳田さん、株式会社Minedの前田と趙)
*1 2023年2月 内閣府 青少年のインターネット利用環境実態調査
https://www8.cao.go.jp/youth/kankyou/internet_torikumi/tyousa/r04/net-jittai/pdf/sokuhou.pdf
*2 2022年11月 HugKum 小学生がよく見る動画ジャンル
*3 2023年8月 東京イベントプラス 小学生が選ぶ人気アニメ
https://tokyo-eventplus.com/column/ranking-children-anime
*4 2023年7月 株式会社パステル 夏休みに関する調査
空想科学研究所とスコラボの出会い
空想科学読本が生まれたのは1996年。架空の世界の出来事であるアニメ・マンガ・ゲームの内容を現実の科学で検証するという「子どもの夢を壊す本」というキャッチコピーで、知的好奇心を大いにくすぐるその面白さからあらゆる世代に愛されてきました。
前田(スコラボ):「通っていた灘中の図書館に、空想科学読本が一通りそろっていましたね。それはもう、当時は狂ったように読んでいましたよ。」
柳田(空想科学):「近藤と私は、鹿児島に住んでいたときの中学時代の同級生。ウルトラマンや仮面ライダーについてよく語り合っていました。その後、私が東大をやめた後、自分の理想を体現する塾を開いたんですが、『公式は覚えるものではない、自分で作りなさい』『勉強のコツをつかみたいなら勉強しなさい』なんてことばかりを言っていたせいか、倒産寸前になっていました。そんなとき、ずっと連絡を取り続けていた近藤から『中学のときに話していたことを本にしてみないか』と言われたのがはじまりです。
それから約30年近く書き続けています。最近も『瞳の星』の謎を解くためにために、【推しの子】を4周ぐらい読みましたよ(笑)」
一方のスコラボは、前田と趙の灘中コンビが2021年に立ち上げた、主に小・中学生を対象としたオンラインライブ型の教育サービスです。2022年には、ベンチャーキャピタルから1億円の出資を得て話題になりました。
前田(スコラボ):「両社ともまさかの中学同級生同士の立ち上げで、親近感を覚えています(笑)
子どもたちに自分が熱狂できる学びを見つけてほしいというのが、スコラボを立ち上げた理由です。子どもたちの発言を促しながらアクティブに授業を進めるために、少人数でのクラスを多く提供しております。一方で最近は、多人数でも子どもたちが一体となって盛り上がれるような授業を作れることがわかってきたため、人気のタカタ先生のクラスを中心にバリエーションを増やしています。今回の空想科学さんとの取り組みも、その一環ですね。」
そんな2社の出会いはどんなきっかけだったのでしょうか。
前田(スコラボ):「スコラボを立ち上げる前、受験のコーチング事業をやっていました。学びに対してやる気がある子どもはいっぱいいましたが、なぜか決められた科目の学習となるとやる気を維持できなくなるんです。結局、好きなことをやっている人が一番伸びるんですね。そういった意味で、自分の興味をとことん追求する『空想科学読本』とその著者である柳田先生はずっと憧れの存在で、いつか一緒に仕事ができたらと考えていました。
そんなとき、スコラボでクラスを開いてくださっているタカタ先生から、運よく空想科学研究所の方々をご紹介いただきまして、今に至っています。実は、先ほど柳田先生が話された理想の塾の教え方なんですが、まさに私がスコラボで先生をやるときのスタンスも同じなので、共感できる部分が多いです。」
アニメ・ゲーム好きの子どもにとっての学びとは
我が子がタブレットを用いて、アニメ・ゲームを長時間楽しむ姿を見て、もどかしい思いを抱えている保護者は多いはず。「そんな時間があったら宿題をしなさい」と思わず口を出してしまう経験もあるかもしれません。アニメ・ゲームを楽しむ時間は、子どもにとって無駄な時間なのでしょうか。空想科学研究所のお二人の考えを聞きました。
柳田(空想科学):「私が住んでいた種子島は、ロケット発射場もありますし、見渡す限りの自然もあるので、理科や科学に触れるきっかけはたくさんありました。ですが、それよりも私が理科・科学好きになった原因として大きいのは、実はアニメやマンガなんです。ブラウン管のテレビの向こうでウルトラマンが戦っていたのを見たのはすごいインパクトでした。住んでいた種子島とは異なる世界がそこにはあり、いろんなフシギを体験させてくれたんです。
今の子どもは、自然に触れる機会が少なくなっていて、そこから科学の興味をスタートさせるのが難しい状況ですよね。だからこそ、アニメやマンガに興味を持ったら、それを逃す手はありません。アニメやマンガは、学びの原体験の宝庫と言えます。現実の世界と比べて、アニメやマンガの世界がどれだけ違うのか。そういったことをふと立ち止まって考えることで、自分の世界を広げることができます。」
近藤(空想科学):「そうそう、ちょっと立ち止まって考えてみるのが世界を広げるきっかけになりますね。例えば、最近話題の『ちいかわ』というアニメの中で、『草むしり検定』というものが出てきます。主人公のちいかわは何回も草むしり検定の5級に落ちてしまうのですが、ふと立ち止まって考えてみると『草むしり検定ってどれだけ難しいんだろう?』という疑問がわいてきます。合格発表の番号の出現頻度などから、実は解(答え)の1つを出すことができるんですが、解を出すことが重要ではなく、そこで疑問を持つことが重要なんです。また、そうすることで、その作品をさらに深く味わうこともできます。」
アニメやゲームを楽しむ時間は、子どもにとって学びの宝庫であり、立ち止まって考えることが自分の世界を広げたり、作品を深く味わうきっかけになるということでした。
さらに、スコラボの2人はこう続けます。
趙(スコラボ):「今はネットのおかげで小学生でも必要な情報にすぐアクセスできるので、フシギなことに出会ってもそれを解釈する余地がなくなってきています。このままだと大学や大学院に行って、研究において興味のあるテーマを解釈する必要性が出てきたときに、その技術が育っていなかったなんてことになりかねません。
私も幼少期はいろんなフシギに出会った記憶がありますが、中学受験の塾に入って正解ばかりを追い求める年齢になってからは、フシギな現象について考える余地が少なくなってしまいました。だからこそ、アニメやゲームのフシギを考察する時間は子どもにとって非常に大事な時間だと思いますね。」
前田(スコラボ):「例えば最近の教育の現場で『探究』の授業を見ても、きちんとわかりやすい結論が出せるようパターン化されているためハチャメチャな結論が出づらかったりします。ところがアニメやマンガから問いがスタートした場合、スタート地点は固定されていますがその後の想像や解釈の余地が人によって様々あるため、考える自由度が高いんですよね。正解や間違いがあるわけではないので、まさに探究的な活動かと思います。
すべての保護者がそうというわけではありませんが、保護者が子どもに解を出させることを急がせている側面もありますね。子どもが答えに詰まったり、問題に直面する前に、保護者が正解に連れていってしまうので、子どもが感じたフシギを子ども自身で解明していく機会がなくなってしまいます。」
アニメやゲームからフシギを見つけ、それを探究することは子どもにとって大事な時間です。保護者はできる限り子どものペースに合わせ、好奇心を尊重し、疑問を持つことを奨励する必要があるということでした。
「教育ライブ・空想科学教室」とは?
子どもにとって学びの宝庫である、アニメやゲームからフシギを見つけ探求していくということを、どう支援していくべきか。2023年9月からスコラボ内でスタートする「アニメやゲームを科学する教育ライブ・空想科学教室」というクラスがその支援に挑みます。
前田(スコラボ):「空想科学教室は、小学5年生以上であれば誰でも参加可能なインタラクティブなライブクラスです。子どもにとってのあこがれの存在である柳田先生と話しながら、好きなアニメやゲームをテーマに一緒に科学検証できます。また、一人で本を読む体験ではなく、興味を同じくする他の子どもたちと一緒にワイワイ意見を言い合いながら楽しく学べるという、今までになかった最高の教育体験を提供していきます。」
趙(スコラボ):「子どもが興味を持つアニメ・ゲームといったテーマを題材に、科学的な視点で『フシギ(問い)』をひとつ立てます。例えば、『ドラゴンボールの孫悟空が放つかめはめ波は、現実ではどの程度のエネルギーなのか』、『SPY×FAMILYのヨルさんがテニスラケットでボールを割るときのスピードは』といった具合です。
そのフシギに対して、中学や高校で習う物理を使って、子どもたちと一緒に解明していくという流れになります。
教科書的な物理の学習では、電気や運動エネルギーなどの定義や公式の前置きを学んだうえで問題を解いていきます。ところがそういったやり方は、自分が知りたいフシギと紐づいていないので、何のために学ぶのかわからず、自分の引き出しにうまく入らないんです。
空想科学教室では、自分が知りたいフシギがまずありきで、そのフシギを解明するために必要な物理の知識を学んでいくという順序なので、学びに向かうモチベーションが全然違いますし、学年もほとんど問題になりません。そういった興味ベースの学び体験というものが、今まではなかったんじゃないかと思います。」
近藤(空想科学):「これまでの空想科学読本は、あくまで『エンタメの読み物』としての位置づけだったので、物理現象を計算する数字をあまり長々と書かず、細かい計算部分を隠したりしていました。今回の空想科学教室は、そういった部分を隠さず出していけるので、柳田にとってはすごく嬉しいことだと思います。」
柳田(空想科学):「そうですね。私の空想科学教室のイメージですが、目の前にゴールとなるフシギが見えているが、その途中に川があり届かない。学校の勉強は、『この川はこういう橋をかけて渡るんだよ』と教えるんですが、なぜ渡らなければならないのかがわからない。でもフシギがその子にとってすごく面白くて興味深いものであれば、子どもは頑張って学んで自分で橋を作るんですね。それがたとえ小学生が学ぶには難しい内容だったとしてもです。」
前田(スコラボ):「それはすごく大事ですね。多くの小学生・中学生は、フシギを見つけて橋を作ろうと思っても、ベースの知識が少ないので川を渡ることができない、という経験をずっとしてきています。そこで『渡れた!』という経験を継続して得られれば、他の川を渡るときも自信を持って渡ろうとチャレンジできますね。」
最後に、これから始まる「教育ライブ・空想科学教室」に興味を持ってくださった皆さんへのメッセージを4人からいただきました。
趙(スコラボ):「自分が小学生・中学生のときに『こんなクラスを受けたかった』というものを作りました。アニメやゲームを見て感じたフシギを、子ども自身で解けるようにすることを目指して作っているので、ぜひ楽しみにしていてください。」
近藤(空想科学):「空想科学研究所として、これまでやっていない新しい取り組みになります。以前似たようなことができるか試したことがあったんですが、説明が必要な物理現象が多岐に渡りすぎていて手に負えなかった経験があります。今回はそのあたりを配慮して本質がわかるような設計にしてあるので、この新しいチャレンジをとても楽しみにしています。」
柳田(空想科学):「実は以前から、もっと理科的な内容をスパーンと出した方がお客様に喜んでもらえる場面もあるんじゃないかと夢想していました。今回は、それが実現できるのでワクワクしていますね。」
前田(スコラボ):「受けてくださるお子様や保護者様、そして我々関係者も含めてみんなが楽しめるようにしたいですね。先生と生徒という関係性はあるものの、受講者の皆さんと一緒に創っていきたいです。我々はもちろん一生懸命考えていきますが、受講者の皆さんもぜひ『どうやったら面白くなるか』ということを考えながらご参加いただけると嬉しいです。」
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