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【SDGsへの貢献】子どもたちとつながる 「出張授業」~次世代の子どもたちへ伝えたい水まわりの話~

著者: TOTO株式会社


こちらは2022年6月28日に岡山県の久米南町にある弓削小学校でTOTOが子どもたちに問いかけた質問のひとつです。ほとんどの人が一日に一度は使用する水まわり製品ですが、どれも日々の生活にはなくてはならないものだと思います。


ちなみに、子どもたちからは「トイレは無いと困る」という声が多く、ほぼ全ての子が①か②を選びました。


TOTOでは、毎日使う身近な水まわりの“意外と知らないこと”を通じて、次世代の子どもたちへ“環境”や“節水”そして“ユニバーサルデザイン”について伝える「出張授業」という活動をしています。“出張”という名前の通り、実際に小学校や中学校に“出張”し、子どもたちへ授業をしています。「出張授業」という活動について担当者から話を聞きました。



「出張授業」のはじまりと子どもたちへ“伝わる”工夫


TOTO株式会社 経営企画本部 ESG推進部 ESG推進第二グループ

萩原 卓人(はぎわら たくと)



(聞き手:TOTO株式会社 広報部 東京広報グループ 辛 繊麗)



――「出張授業」をはじめたきっかけは何ですか?


萩原:きっかけは、“教材”を作ることでした。


TOTOでは、まだSDGsが始まる前から“環境”や“節水”そして“ユニバーサルデザイン”について長年追究してきました。


2000年代、ショールームや工場など様々なところで、“環境”や“節水”をテーマにした学習イベントを実施していて、それぞれ個別のプログラムが作成されていました。そのような複数のイベントで共通して使える“教材コンテンツ”を作成することが「出張授業」の起源になります。社外からも“環境”や“節水”をテーマにしたイベントの要望が徐々に増加し、水道局や自治体等が主催するイベントに“教材コンテンツ”を提供してきました。


2012年 科学技術館 水道局主催のイベント



――その「教材づくり」で苦労した点は?


萩原:イベントは子供向けのものが多く、“節水”や“環境”にやさしい機能や商品をより分かりやすいことばで作成する必要がありました。学校の先生や自治体の担当の方から「これでは子どもは分からない」「専門用語が多すぎる」と何度も試行錯誤を繰り返して、やっと子どもたちに伝わる“教材”を作成することができました。


また、せっかくなら楽しんで学んでほしいという思いで、子どもたちが住んでいる地域で実際に設置されているトイレの写真を用意したり、壁掛けのトイレを見せて、掃除のしやすさを伝えたり、子どもたちに興味を持ってもらう工夫も行いました。


最新の教材の一部



――「教材づくり」から「出張授業」を行うことになったのはどのような経緯でしょうか?


萩原:様々なイベントに“教材”を提供してきましたが、次第にTOTOとして、水まわりメーカーとして“環境”や“節水”、“ユニバーサルデザイン”について自ら発信していきたいと思うようになりました。


イベントで子どもたちと関わるうちに、子どもの頃から環境、節水、ユニバーサルデザインについて身近に感じてほしいという思いで、2008年、小学生とその保護者を対象に“夏休み親子エコ教室”をショールームで実施することになりました。


翌年2009年からは、全国の約90箇所のショールームで実施することになり、水まわりと環境問題の関係を楽しく理解してもらうため、簡単な実験やクイズを行ったり、教材を使ってわかりやすく説明をしました。


2012年頃から、経済産業省・文科省を中心に、複数の企業やNPOなどで子ども向けの学習プログラムを民間として制作する動きが活発になりました。TOTOでも、夏休みに行う学習イベントでは、子どもたちが楽しく学べるものの、工場見学がメインになってしまったり、一日だけのイベントや体験で終わってしまうという考えから、より本格的な学校の教育プログラムに織り込まれた中で、「出張授業」を実施することになりました。


出張授業の様子



――ショールーム等で行っていた学習イベントと「出張授業」の違いは?


萩原:ショールームで行っていたイベントはあくまでも“イベント”ですが、「出張授業」は学校の学習指導プログラムに含まれた「授業」です。通常子どもたちが授業をする時間に、学校の指導要領に合わせて「出張授業」を組み込みます。そのため以前行っていたイベントよりも、さらに本格的な教育プログラムで「出張授業」を行うようになりました。


最新の教育プログラム概要の一部



――「出張授業」で、工夫した点は?


萩原:“教材”を作る時に苦労した点ともかぶりますが、“子どもたちに伝わる工夫”という点は特に難しかった部分でした。やはり機能やメカニズムを、子どもたちが理解できることばに変換していく作業は、何度も何度も考え、修正していきました。その他にも、基本的なことですが、学校で習っていない漢字にフリガナをふったり、家庭環境やジェンダーに配慮したことばをきちんと使うよう意識しました。


また、座学だけではなく、子どもたちが楽しく学べて分かりやすい仕組みを作ろうと考え、見て触って分かる「実験道具」を作ったのですが、それもかなり苦労した点でした。



――その「実験道具」はどのようなものですか?


萩原: トイレの水が“うずまき”状に流れて“節水”に繋がることを伝えるための実験用具です。


 












ペットボトル2つの口をつなげて、水の中に汚物代わりのビーズ、トイレットペーパー代わりの毛糸を入れています。


実際の実験用具を見ると、とてもシンプルで作るのも簡単に見えるかも知れませんが、これが完成するまでに、いくつもの試作品を作りました。


始めは便器の排水の形を再現しようとしましたが、余計に複雑になってしまい、子どもたちに“伝わる”シンプルな実験用具を作るため、試行錯誤を繰り返しました。ビーズの大きさや数、水の量も何度も微調整を繰り返して、最適な状態にしました。









試行錯誤した実験用具を作るための道具やパーツ



――子どもたちの反応はどうでしたか?


萩原:この実験の時間が一番盛り上がります。ペットボトルをぐるぐる回して“うずまき”状の水流を作り、ビーズを流していくのですが、うまく“うずまき”が作れないと、ビーズが早く流れてくれません。


うまく“うずまき”を作って、“汚物代わりのビーズ”、“トイレットペーパー代わりの毛糸”が早く流れた後に水が残ると、“少ない水で汚物を流せた状態”ということになり、“節水”の状態を再現できる訳です。子ども同士で、だれが一番うまく“節水トイレ”を再現して早く水を流せるか競ったりしていました。


「出張授業」の後、学校からアンケートを送ってもらうのですが、「“実験”と言っても小さな実験なんだろうなと思っていたら、思ったよりも面白い実験で楽しかった!」という回答がありました。








実験道具を使った実験中の様子



――「出張授業」後のアンケートで、他にも印象に残ったものはありますか?


萩原:たくさんありますね。「トイレにそんなに語ることがあるの?と思っていたけど、日本の技術、TOTOの技術って本当はすごい」と言ってくれていたり、「節水の重要性がよくわかった」、「アイディアを考えるには、他の人の立場になって考えることが大事だと思った」という声や、「将来はTOTOに入りたい!」というアンケ―トまで、本当に嬉しいことばに元気をもらっています。


たくさんの子どもたちからこのようなアンケートをもらって、やっぱりこの活動をやっていて良かったなと思います。



「出張授業」から「遠隔授業」へ ~「遠隔授業」だからできたこと~


出張授業についてご紹介してきましたが、今はリモートでつないで授業をする「遠隔授業」を行っています。「遠隔授業」はコロナ禍で「出張授業」ができなくなったからではなく、他に目的があり始めた活動だと言います。現在の「遠隔授業」の担当者に話を聞きました。


TOTO株式会社 経営企画本部 ESG推進部 ESG推進第二グループ

             松竹 博文(まつたけ ひろふみ)



――「出張授業」から「遠隔授業」に変わった経緯を教えてください。


松竹:出張授業では、実際に学校に足を運ぶので、授業ができる学校の場所に限りがあり、やはり都心部への授業が多くなっていました。教育の地域格差が生まれぬよう、都心部以外の子どもたちへも授業を行いたいという思いで「遠隔授業」を始めることにしました。


「遠隔授業」を開始してから、授業をする学校の範囲が広がり、より多くの子どもたちとつながることができました。TOTOの商品は、日本中どこでもある商品です。だからこそ、どの地域の子どもたちにとっても身近な「トイレ」を通じて、“節水”や“環境”、“ユニバーサルデザイン”について伝えられると思っています。



――「遠隔授業」の様子を教えてください。


松竹:まずは授業の前に、TOTOが事前に提供した資料をもとに、先生が子どもたちへ1~2時間の授業を行います。その後、子どもたち3~4人で1チームとなり、ワークシートに「みんなにやさしいパブリックトイレ」について考えてきます。


「遠隔授業」当日、TOTOから業務紹介や「トイレがお客様に届くまで」など、クイズを交えて子どもたちに分かりやすく伝えます。


TOTOからの説明が終わると、子どもたちが事前にワークシートに描いてきたものをTOTOに向けて発表します。


チーム別の発表の様子



あるチームでは、「重さを感じるトイレ」というタイトルで、「障がい者」や「車いすに乗っている人」に向けて「重さを感じて自動でドアが開く」という仕組みのトイレを考えてきてくれました。


障がいを持った人だけではなく、非接触にもなる仕組みや「車いすの人も入れるよう広くする」と今ある多目的トイレで必要なことについても、子どもたち自ら気付き考えられています。


他にも、「手をかざすと自動でトイレットペーパーが出てくるペーパーホルダー」や、「30分に一度スプリンクラーで部屋全体をアルコール除菌してくれるトイレ」、「音声でどこに何があるか案内してくれるトイレ」等々、たくさんのアイディアが出できました。



このような子どもたちのアイディアに対し、TOTO側から感想を述べ、子どもたちが出してくれたアイデアに近い実際にあるトイレや、そのトイレが開発される裏側について紹介します。例えば「ユニバーサルデザイン」の研究で、目の不自由な人やお年寄りに近い体験ができる“スーツ”を着用して、その人たちの立場でトイレを実際に使ってみる実験を紹介したりします。



多様な観点からつくられた多様なトイレを通して、子どもたちへ「ユニバーサルデザインの重要性」について伝えたいと思っています。



――「遠隔授業」に対する先生や生徒の反応はどうですか?


松竹:「遠隔授業」の事前打合せの時に先生がおっしゃっていた言葉が印象的でした。


「この地域には大きな会社も無く、普段子どもたちが接する大人は我々教師や親族くらいです。それ以外の大人と触れ合う機会もなく、企業の人と接する機会にとても期待しています。」


実施後のアンケートでも、「プロの方に自分たちのアイディアを伝えるということは、子どもたちにとってとても緊張することだったようですが、発表した後に『ほめてもらえたー!』と嬉しそうにしている姿を見て、子どもたちの自信につながったようでした。ありがとうございました。」ということばをいただきました。


また、子どもたちの反応で印象的だったのは、岡山県の小学校ということで、岡山県出身の社員に授業に出てもらい、岡山弁で話してもらったのですが、子どもたちの笑い声と安心したような顔を見ることができてとても和みました。



全国の子どもたちと全国の“トイレ”をつなぐ


“教材”づくりからショールームでのイベント、「出張授業」そして「遠隔授業」…今後どのように活動を進めていくのかについて、最後に話を聞きました。


松竹:毎回少しでも変化をつけるよう心がけています。


それは必ずしも授業の内容だけではなくて、小学校の地域に合わせて近くにある変わったパブリックトイレを紹介したり、近隣の商業施設にあるトイレを紹介したり…実際に「遠隔授業」の冒頭に、TOTOの事務所がある東京の浜松町のビルから東京タワーが見える様子を紹介したり…、少しでも親近感を持ってもらって、距離はあっても“つながる”工夫をしたいと思っています。


特に最近は小学生側もこちら側もマスクをしていて、顔や表情もよく見えないし、人との関わりが希薄になってきている中、全く違う場所に住んでいる子どもたちと“つながる”というのはとても嬉しく楽しいことです。過去に授業をした沖縄の竹富島や、種子島はなかなか行けない! 日本中どの地域にもあるトイレを通じて、そういういろいろな地域の人たちとつながっていきたいです。


そして、全国にあるいろいろな部門、開発部門や研究室、トイレだけではなくウォシュレットやお風呂、キッチン等、たくさんの部門からも「遠隔授業」ができればと思います。次世代の子どもたちに少しでも、楽しく身近に新鮮に感じてもらえるよう工夫を続けていきたいです。


TOTOでは、SDGsの目標達成に貢献することを企業としての重要な役割と捉えています。事業やCSR活動を通じて、TOTOのマテリアリティ「きれいと快適」「環境」「⼈とのつながり」についてお客様へ伝えていきたいと思います。





今回ご紹介した「出張授業」の様子については以下のページでも紹介しています。

https://jp.toto.com/company/csr/csractivity




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