使いやすさと小ささの両立への挑戦。スマホサイズの小さい長財布「Loneo」の開発ストーリー
2008年設立の、香川県丸亀市の革製品メーカーVINTAGE REVIVAL PRODUCTIONS(ヴィンテージ リバイバル プロダクションズ、以下VRP)。「Created with purpose - “使う” を想像したデザイン -」をコンセプトに、現在のスタンダードを見直し、洗練されたシルエットと新たな機能性を融合した革製品を生み出しています。多くの革製品で意匠や特許を取得しており、企画デザインから製造まで一貫して自社で行っています。
10年以上、二つ折りのコンパクト財布を手がけてきたVRPが初めて、コンパクト長財布 「Loneo(ロネオ)」を開発・発売しました。幅165mm高さ87mm厚さ20mmと、スマホ程度の小ささなのに、ガバッと開いて使いやすい収納。Makuakeでの予約販売含め、販売から約2年半ほど経つ現在も商品完成後すぐに欠品となる状態が続いており、多くの方に完成をお待ち頂いています。「Loneo(ロネオ)」開発の経緯と、独自の使い心地の秘密をお話しします。
長財布とミニ財布の良いとこ取りをした財布を作りたい
VRP本社工房は店舗と一体となっていて、お客さまの声がダイレクトに届きます。“長財布”よりも“ミニ財布”が主流になりつつあった2020年頃、国内最小級の二つ折り財布を発表。当時店頭でも「収納力の長財布派」と「身軽なミニ財布派」に分かれている印象でした。それから本格的にキャッシュレス決済が進み、「お札は折りたくないから長財布が良いけれど、パンツのポケットからはみ出てしまうのが難点」「小さい財布にしたいけれど、中身が収まるか不安」といったジレンマに悩む声が増えたように感じます。また、以前はミニ財布は男性の購入者が圧倒的に多かったのですが、年々女性の需要が大きくなっています。誰もが使いやすい、長財布とミニ財布の良いとこ取りをした財布が作れないか、と考えるようになりました。
長財布の“長さ”の原因、カード収納を縮めることが課題
一見、長財布の“長さ”の原因は「紙幣を折らずに入れる収納」にあるように見えますが、一般的な「カードを2枚横並びに収納するポケット」が実は紙幣より2cmほど長さを取ってしまっています。
しかし、一般的なカードポケットはカードが見つけやすく、他収納と同じ上向きに出し入れができて使いやすいというメリットも。この使いやすさは損なわず、幅を紙幣サイズに縮めることが大きな課題でした。
ふわっと開くカードポケットの開発により、カード収納枚数と小ささを両立
ロネオの開発より少し前の2020年頃、長財布の中に入れてカード収納を増やす「カードストッカー」を設計していました。段を増やすには、財布の紙幣入れに入れられるよう、通常のカード段より短くする必要があります。
そこで開発されたのが、カードが中央で交互に重なるカード段。幅が短くなっただけでなく、カードを取ろうとするとふわっと開いてカードがサッと出し入れ可能に。中央の交互に重なるパーツが蛇腹のような役割を果たしているのです。
ロネオ開発当初に考えたのは、カードを縦向きに収納するカード段。幅を短くでき、カードも沢山入る財布になるのではと思いました。しかし使い心地を考慮すると、カードの高さ85.6mmに加えて10mm程の余裕が必要となり、財布全体の高さが大きくなってしまいます。また、カードをたくさん収納すると厚みが不均等に出てしまうというデメリットもあり「カードストッカー」のデザインを生かすことに決まりました。
また、不必要な革部分を除いた曲線のカードポケットは、カードの角が見えるため、探す必要がなく一目で見分けられます。また、革1枚分の隙間ができるため、指がスッと入って取り出しやすさも兼ね備えています。
この仕組みは、カード1枚につき革パーツ1枚が必要かつ、構造が複雑なため製作工数は大幅に増え、量産には向きません。しかし、ロネオに採用することで小ささはもちろん、使いやすさも一般的な長財布以上になると確信しました。尚、このカード段パーツは2021年9月に意匠登録をしています。
また、財布の使いやすさは各パーツの仕組みだけでなく、全体的な収納配置にも大きく左右されます。キャッシュレス化が進み、クレジットカードや会員証などカードの使用頻度が高くなったことから、前述のふわっと開くカード収納を一番手前に配置しました。4段のカードポケットですが、左右1箇所づつはカードを2枚重ねて入れることができるため、計6枚まで収納可能です。また、他にもカードを数枚入れるスペースがあります。このカード収納には、最もよく使うカードを収納するのがおすすめです。
ガバッと開いて一目で分かる小銭収納
「“使う” を想像したデザイン」というコンセプトの通り、開発の際のこだわりは、小ささ以上に”使いやすさ”にあります。ロネオは、財布の内部がガバッと大きく開いて、中身が一目瞭然。お会計時に慌ててあれこれ探さずスムーズに出し入れできます。
財布内部の一番大きいスペースが小銭収納。それは、財布をスリムで快適に保つには、使いやすい小銭入れであることが必須条件だから。どんなに小さく設計した財布も、小銭を溜めてしまうと重く、分厚くなってしまいます。ロネオの小銭入れは広く使えるから、端数の小銭をすぐに見つけられ、自然と財布を軽く薄く保つことができます。
小銭いれの手前と奥には“仕切り”があります。手前が予備カードや領収書を入れるスペース。後ろは紙幣入れです。ロネオの仕切りは両サイドを縫製せず、底面だけで留まっている独特の仕様。この仕切りのおかげで、指一本でそれぞれのスペースが小銭いれまでガバッと開き、大きく使うことができます。
“折り”で奥まで取り出しやすい紙幣入れを実現
紙幣入れには、仕切りの他にも工夫があります。通常、紙幣入れは幅に余裕を持たせないと、出し入れの際に引っかかったり、折れたりしてしまいます。
そこで、ロネオの紙幣入れは“紙幣30枚ほどがすっぽり収まる箱”をイメージした収納を考案しました。財布を横から見ると、紙幣入れ部分の横マチに「折り」が。同様に底部分の仕切りフラップにも折り加工を施すことで、小さくてもゆとりのある、快適な出し入れを実現しました。
また同時に、紙幣入れの両端に縫い代の幅が生まれず、より紙幣に近いサイズ感を実現しています。この紙幣収納の仕組みも、意匠登録をしています。
機能美を実現するための数々のこだわり
製品デザインのこだわりの一つに、外装に余計な装飾やステッチなどの跡をつけないことがあります。それは、あらゆる人がビジネスシーンでも普段使いでも使いやすい財布でありたいから。さらに、引っかかりなどのストレスを最小限に抑えることで、製品が傷みにくくなり、毎日触れる手にも優しく仕上がります。
例えば、ICカードを入れれば財布を開かず支払いができる“背面ポケット”。まず思い付くのは、財布の外側にポケットをつけるデザインでしょう。しかしロネオは財布の内側に縫い付けており、ステッチも外からは見えない仕様。製作の工数は増えますが、革の質感を存分に楽しめるシンプルな仕上がりになりました。また、ポケットを内装に付けたことでカードが落ちる心配がない他、免許証や予備の名刺など普段出す機会の少ないカードを忍ばせるのにも最適になりました。
その他にもよく触るフラップ部分のステッチの膨らみを叩き抑えることで手触りを良くしたり、小さい1パーツの中でも部分によって厚みを変えるなど、小さな工夫が潜んでいます。貼り合わせ、ステッチ、コバ仕上げなど、一つひとつの手仕事の積み重ねで、ロネオの使い心地と洗練されたデザインが成り立っているのです。
現代の生活スタイルに寄り添う“新しいスタンダード”となる製品を生み出していく
ロネオは香川県のVRP本社工房で少人数の手仕事によって製作しています。累計1000個以上販売していますが、現在も需要に追いついていない状況です。「やっと理想の財布に出会いました」と連絡くださる方や、「この財布しか使いたくない」と既に2個目を購入されるお客さまもいらっしゃいます。
2023年7月から、より多くの方にお手にとって頂けるよう「ロネオ ベーシックモデル」も発売開始しました。ベーシックモデルは国内工場と提携して製造していますが、複雑な構造のカード段や、仕上げ・検品はVRP本社工房で行っています。今後もより幅広いニーズにお応えできるような、新たな展開も考えています。
“ロングウォレット・ネオ”の略称から名付けられた「Loneo(ロネオ)」。「小さい」だけでなく、現代の生活スタイルに寄り添う使い心地にこだわりました。これからも“新しいスタンダード”として多くの人々に根付く、長くご愛用いただけるものづくりを追求していきます。
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