街の印刷会社の2代目が考案。立体的な印刷が可能な「2.5次元フォト印刷」ができるまで。 フロンティアスピリットのハヤシ印刷のストーリー
株式会社ハヤシ印刷は仙台市中心部に拠点を置く、従業員15名の小さな印刷会社。社長は1999年に急死した先代から会社を引き継いだ2代目の「林克己」。あれから20数年が経ち、印刷業界を取り巻く環境は大きく変わった。引き継いだ当初から「紙だけではだめだな。」という想いで、従来の紙の印刷だけにとどまらず、看板、壁紙、立体印刷など、次々と新しい印刷の領域を広げてきた。そんな、フロンティアスピリット溢れるハヤシ印刷の、新商品「2.5次元フォト印刷」の開発秘話を振り返ってみたいと思う。
地元に愛される、街の印刷会社として
株式会社ハヤシ印刷は仙台市中心部の一番町に拠点を置く、従業員15名の小さな印刷会社。ほとんどの印刷会社は郊外の印刷団地などに工場があり、市街地とは無縁の存在だったが、ハヤシ印刷はその地の利を生かし、中心部の企業やお店等の名刺、伝票、DM、チラシ等を中心に活動を続けて、街の印刷会社として地元に愛されていた。
林克己、先代の急死により突然の二代目社長就任
1999年、先代社長が急死。当時、営業マンとして勤務していた長男「克己」を二代目社長に据えた。「克己」はまだ20代半ばであり、全く心の準備も整ってなく、突然の抜擢に、ただただ驚いた。
「あの時は、まだ若かったし、会社の経営とかも何もわかっていなかったので、本当に驚いたというか、不安でした。でも、専務がこの会社の経営についてはよく理解していたので、その意味では頼れましたし何とかなりましたね。感謝しています。」
しかし印刷業界はその当時、大きな変革の時でもあった。マッキントッシュによるクリエイティブワークが仙台市内でも定着しつつあり、印刷物の製作工程が変わりつつあった。いわゆる「版下」という、「版」の元を作る必要がなくなり、「製版」までの工程が早くなった。また、それに伴い、「写植オペレーター」「フィニッシュマン」という専門の職人達がいらなくなり、製作コストも見直されていた。
克己は徐々に会社の経営を覚えながら、全体的な流れや、取引先の要望や期待を肌身に感じつつも、印刷業界の未来に不安を感じていた。「このままコンピューター化が進むと、印刷はなくなるんじゃないか?。なくなることはなくても、減ることは間違いないので、印刷以外の何かを始めないとダメなんじゃないか・・・。」
「とにかく新しいことを始めないと」という思いで、印刷の周辺業務を取り込む
印刷機の技術はほぼ完成しており、どこの会社でも十分なクオリティの印刷物を提供できるようになり、価格競争がどんどん激しくなった。この状況を打破するために、印刷の付加価値づくりを本気で考えた。
セールスプロモーションの考え方やトータルコーディネート等、単なる印刷物にならないよう、お客様と一緒になって考えた。販売促進計画の立案や店舗のトータル的な装飾など、印刷にかかわる周辺の業務も積極的に取り入れた。
トータルプロデュースのハヤシ印刷、販売促進のハヤシ印刷とどんどん間口を広げていった。
小ロット&スピード印刷に対応するオンデマンド印刷機をいち早く導入
また、時代の流れで、資源の有効活用という考え方の元、大量印刷が減り、小ロット多品種印刷が求められ始めた。従来の印刷機は小ロット印刷は不向きであり、製版、刷版という2つの工程があり、スピード印刷にも不向きだった。
2010年頃になると、オンデマンド印刷機のクオリティが上がり、これまでのオフセット印刷と変わらないほどになった。ハヤシ印刷ではこのオンデマンド印刷機をいち早く導入し、スピード感のある小ロット印刷をスタートさせた。オンデマンド印刷はコンピューターによる印刷データ直結で、そのまま印刷ができるので製版、刷版という2つの工程が不要で素早く印刷できる。ここに、「印刷業界の剛速球!ハヤシ印刷」が誕生するのである。
ダイレクトUV印刷機導入で多様な用途を開発、新商品の開発にも着手
2014年には当時話題になっていたダイレクトUV印刷機を導入した。ダイレクトUV印刷機とは、簡単に言うと、プロ用のインクジェットプリンターみたいなものでUVインクを使用している。UVインクは、印刷した面に紫外線を当てることで定着するもので、日焼けによる色落ちがほとんどしないのが特徴。さらに紙以外の素材にも印刷が可能。
また、印刷ヘッドの位置がある程度自由に動かせるので、瓶やボールなどの立体にも直接印刷でき、様々な用途が考えられた。
克己社長はこの印刷機に幅広い可能性を感じ、色々な新商品を考案した。「これまで提案できなかった新しい印刷商品なので、思いつくがまま色々な新商品を考えていました。」
新商品第1弾は「リフォームオーダークロス・リクロス」。自由な絵柄が印刷できる壁紙印刷で、続いて「花粉症ですマスク」「コーポレートマスク・オリジナル印刷」「落ちないポスター」「超光沢!!シャイニング看板」「落ちない絵馬」「オリジナルシャンパンボトル印刷」等、矢継ぎ早に市場投入した。
ダイレクトUV印刷機メーカさんのふとした言葉がきっかけで、インクを盛り上げた「立体」印刷を開発
2023年の年初に、大判UV-LED印刷機のメーカーの方が、弊社事務所を訪問した時に、会話の中で「この印刷機は、設定を変えれば、インクを盛り上げて印刷できるんですよ。何か、新しい使い方ないですかね?。」と言われ、新しい印刷方法に興味がわき、商品化を探るべく、担当者と協議を重ねた。
とりあえず、メーカーの方の言われたとおりにやってみたが、ことごとく失敗。仕事の空き時間を見つけて、色々と試行錯誤を繰り返した。当初は立体に見せるために12階層で試作を始めたが、全くダメ。次に20階層でやってみたが、これもダメ。商品として売れるようなクオリティにならない。次に48階層で施策したところ、何とか商品として出せるレベルにはなった。また、機械的な問題で、インクを重ねると、印刷ヘッドの高さも変えなければならず、その数値を割り出すのに苦労した。
流行も考慮してネーミングを考案、「2.5次元フォト印刷」が誕生
新商品として販売するには、ネーミングが必要だ。今流行っているもので、関連性のあるものはないかと探していたところ、最近「2.5次元舞台」が流行っていることが分かった。これは2次元の漫画やアニメを原作とした作品を3次元である舞台で再現しているもの。克己社長は「これと考え方が似ているなと思った」。そこで、2次元である印刷データを、3次元で出力できる印刷手法で再現するので、特徴をそのままストレートに表し、「2.5次元フォト印刷」と名付けたそうだ。
何に使えるのか分からないが、とりあえず製品化!?
このネーミングでとりあえず新商品として2023年の4月に販売を開始した。これまで、チラシ、PR TIMES、自社サイト、自社Facebook、自社インスタグラム、自社tiktok、自社YouTube、営業担当者への指示など、様々なPR活動を行ってきた。
反響はいいのだが、実際の販売にはあまり結び付いてはいない。一番難しいのは、いくらチラシを渡して説明しても、良さというか凄さがほとんどお客様には伝わらないことだった。「印刷見本を見て、触っていただければ、簡単にわかるのだが…。」と、克己社長。
もう一つの問題は、印刷技術としてはある程度確立しているが、これを何に使えばいいのか、利用法がわからないことが大きい。「とにかく、印刷してみると、インパクトがあっていいのですけれど、お客様に、これに使えますよ、と提案するのは難しいんですよ」と克己社長。
「知育玩具や絵本など、可能性は無限大」(印刷現場の担当者のコメント)
「今はまだ、何に使えるのか模索しながらの状態ですが、実際に印刷してみて評判が良かったのは看板ですね。なので、今後は2.5次元看板や、立体チャンネル文字、内装などにも使用してみたいですね。また、触る感覚が面白いので、知育玩具としての触って遊べる絵本とかもいいんじゃないかな?。可能性は無限大ですね。」
「2.5次元フォト印刷のクオリティは大変高いので、是非会社に来ていただいて、見て触っていただければ、良さはわかると思います。ご連絡をお待ちしています。」
社長の言葉 今後の展望について
「もうすぐ弊社は小さな会社ながら創業50周年であり、変わりゆく社会環境の中でよく続いていると思います。その原動力は、新たなものへの挑戦ですね。従来のオフセット印刷だけにとどまらず、オンデマンド印刷、リクロス壁紙印刷、看板印刷、立体印刷、2.5次元フォト印刷等、様々なものに印刷して、幅を広げてきたことが弊社の特徴でもあり強みでもありますので、今後とも、どこよりも早く印刷の未来を開拓していきたいと思っております。」
街の印刷会社ハヤシ印刷の大きな野望は、まだまだ続いていきそうです。
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