「シニア顧客とのコミュニケーションの取り方」はNPOのシニア男性との飲み会から生まれた。新たな市場の開拓に成功した研修サービス開発の裏側
株式会社自分楽(東京都)は、中高年世代に特化した、法人向け人材教育コンサルテーション・研修を、行っています。特徴は「Gerontology」という人間の心理・身体・社会性の加齢変化を研究する学問に基づいたコンテンツ開発をしていることです。2000年から代表取締役﨑山みゆきが大学院で研究活動を継続しています。
このストーリーでは、従来の「シニア社員とのコミュニケーションの取り方」という社内の問題を、「シニア顧客とのコミュニケーションの取り方」という社外向けに視点を変えたことによって新商品となり、今までとは違う業種の顧客をつかむことができた市場開拓の事例をお話いたします。
株式会社自分楽が「シニア世代の年上部下とのコミュニケーションの取り方」という研修を「シニア世代のお客様とのコミュニケーション」として提供し、成功した事例です。
当社は2003年の創業時から「高齢社会には、働くシニア世代が増加する」という前提で教育事業を展開してきました。法人設立当時は「御社の考え方は、日本企業には受け入れられない。定年後は年金もあり、みな満足だ」と他の経営者の方たちに言われ、苦戦しましたが、2021年の「高齢者雇用安定法」の改正、少子化による人材不足、SDGsへの関心の高まりなどが追い風になりました。他社も同様に「年部下上の指導」という研修を売り出しましたが「Gerontology」というアカデミックな裏付けがあるという当社の強みが生きました。特に「産業Gerontology」という企業の中高年人材マネジメントは、教育事業業界では、唯一です。
飲み会の場でのシニア世代への接客方法に、サービスのヒントを見出した
再雇用・雇用延長制度の導入が進むにしたがって、研修業界では「年上部下」というキーワードを入れた研修がどんどん増えました。特に大手企業では、広告宣伝費をかけてインターネット広告をだす、説明会を開催したりなどと、弊社のように小規模事業者には難しい方策を講じてきました。同時期、コンテンツの盗作も起こりました。書籍の出版をしていたため、同業者がそれを読み、研修コンテンツを作成することは、難しくありません。東京商工会議所で受講した「高齢者活用」という講座では、他社の女性講師が、弊社の書籍をそのままパワーポイントにして使っていました。
そんな折、代表 崎山が顧問を務めているNPOの会員から「ジェロントロジーの勉強をしたい」と連絡があり講座を開催しました。終了後、飲み会があり、たまには皆と話もしたいという気持ちから、そちらにもに参加しました。当会は、設立10年以上となり、会員の平均年齢も60代前半となりました。総勢20数名のシニア世代の飲み会です。みな、よく食べ、よく飲み、よく笑います。その時、ふと、これからの接客業は、シニア世代の顧客を抜きには成り立たないのではないかと思いました。
その時、幹事が注文を確認をするために、復誦している店員さんに、こう言いました。
「一つずつ、順番にゆっくり言って。一度に言うとわかんなくなるから」
これは弊社が「年上部下に対する教え方」で伝えていることです。高齢期になると多くの情報を一度に処理することが苦手になるため、情報提供は一つずつしなくてはいけません。
「そんなに大きな声を出さないくてもいいですよ。響きすぎて聞こえないから」
これも、高齢期になると大きな声は耳の中で反響してしまうため、聞こえにくくなるのでやめましょう、という研修内容と同じです。
シニアに対するコミュニケーションというのは、社内も社外も、共通部分が多いことを発見
翌日、年上部下に対する説明の仕方、話の聞き方、注意の仕方などをすべて、接客のシチュエーションに置き換えてみました。
すると‥‥ほとんどのコンテンツが変換できました。
以下に、上段に年上部下、下段にシニア顧客をあげて、例をあげてみます。
1.白内障になると視野が狭くなるので、資料は机上いっぱいに広げない。
→ 商品カタログの説明時に、沢山あることをアピールするために机上に広げてはダメ。
一つずつ、順番に目の前に置く。
2.スマホが苦手なのは、皮膚の乾燥から。動作が遅い・覚えが悪いと決めつけない。
→タッチパネルが苦手なのは、指そのものが乾燥しているため。店頭のタブレット入力は、イライラせずにまつ。
これは、他社にはない視点の接客ノウハウと考え方でした。
弊社だけの主観的な視点手はないことを裏付けるため、60代のシニア世代の方に集まっていただ経き「若い方たちからの接客で、気になったこと・こうしてほしいこと」をテーマとした座談会を行いました。また、同時に、この接客コンテンツを見ていただき、意見を伺いました。
結果は、上々です。
「そうそう、これがして欲しいのよね」
「私たち、外見は若く見てもらうけれど、実は…なのよね」
しかし、いざ営業を開始するとシニア顧客が増えるという理解はしていただいても、導入には進みません。
よくよく聞くと、以下の二つの壁がありました。
1 「コミュニケーション」は、マナー教育をしているからできる。いらない。
2 高齢者対応としては、認知症の研修をしているから、理解している。
これらとの違いや必要性を説明するには、どうしようかと困っていた時に、
金融機関の30代の女性から、こういわれました。
「高齢者の資産運用の相談力強化と言われて、認知症についての研修を受けました。
確かに、認知症の方の対応は理解できました。
でも、私のお客様に、該当者はいません。
困っているのは、一般シニアの方に対しての記憶力低下や体力に対する気配りなんです。
マナーとは違うものなのですが…」
この事例を、営業時にトークとして紹介し始めたところ、金融機関の方が納得。
発注をしてくださいました。
続いて、不動産や土地など、対面でしっかりとした説明責任を要する業種や
団体からの受注が舞い込みました。
いずれも、今までなかった業種です。
大手企業も多く、会社の信頼度も向上しました。
リリースを出した結果は、堅実なメディアに掲載されました。
法人向け研修・教材販売という性質のため、
即時に、大ブレイクというものではありませんでしたが
関心を持ってくださる顧客の市場リサーチができました。
現在は、顧客信頼度の獲得のために対面説明が必要になる。
アクティブシニアの消費行動が活発になるなどの効果にご期待をいただいてで
少しずつ 発売導入件数が伸びています。
シニア世代の感じている「若者にはわかってもらえない、もどかしさ」を
解決できつつあることは、とても嬉しいことです。
お客様からは、以下のご意見をいただきました。
「今後、ますます必要になるサービスだ」
「具体的な実技指導も、受けたい」
残念なのは、以下のご意見です。
「産業ジェロントロジーというアカデミックな裏付けがあるものの
受けてみなければ、良さがわからない」
これに関しては、体験型の説明会を増やす、
顧客インタビューを公開することなどを考えています。
今後の弊社の課題です。
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