“モノ”認証でオートロック解錠する宅配ソリューションで再配達問題に挑む。(株)PacPortの「Pabbit」が物流のラストマイル効率化に秘める可能性とは
近年、物流・運送業界ではドライバーの高齢化や高い再配達率がもたらす労働力不足の深刻化が進んでいます。2024年4月から発効する働き方改革法案によってドライバーの労働時間に上限が課されることで輸送能力不足が一層懸念されています。いわゆる「物流の2024年問題」への対策に物流各社は追われており、これまでPUDO/Amazon Hubの設置が進んだり、コロナの発生以降は「置き配サービス」の提供が拡大したりなど、さまざまなソリューションが市場に投入されてきました。一方、国交省の調査によると、2023年4月の再配達率は11.4%で、 都市部に至っては12.6%と、政府が目指す再配達率の2025年度削減目標7.5%まで大きな開きがあります。
市場が新しいソリューションを求めている中、 (株)PacPortと国内インターホン大手のアイホン(株)が共同開発した「Pabbit」が次世代型宅配システムとして、今、物流のみならず、EC・不動産開発や小売りなど多くの業界から注目を集めています。
2018年設立のスタートアップが国内市場6割以上を占めるインターホン老舗メーカーと戦略パートナー関係を結ぶに至るまでのベンチャーストーリーを、PacPort代表取締役社長沈燁(シェン・イェ)に聞きました。
(株)PacPort代表取締役社長沈燁(シェン・イェ)
社会課題の解決を目指したスタートアップから生まれた「日本初」。
2019年、”モノ”認証で物流のラストワンマイル問題に挑む「Pabbit」の原型が誕生!
聞き手:まず、起業の経緯を教えてください。
沈:僕は1997年に北京大学電子工学部を卒業して、最初に就職した会社から入社してすぐに「日本へ行け」と命じられました。気が付いたら人生の半分以上を日本で過ごしています。この間何度か転職しましたが、20年以上にわたり通信畑一筋でした。
来日20年目の2017年、投資会社に務める知人からあるビジネスアイディアについて意見を求められました。それが、日本初の「宅配荷物の伝票番号をボックス解錠キーとして利用するスマートロック」装着の宅配ボックスです。
丁度その頃、大手宅急業者が人材確保およびサービス品質維持のための値上げを発表したばかりで、長年通信業界で蓄積したノウハウと経験から、直感でデジタル技術を日本の一大社会課題である再配達問題の緩和に活かせられると確信しました。熟考した末、家族を説得して長年勤めていた通信機器メーカーを退職し、2018年5月に起業しました。そして、国内大手備品メーカーとの協業の下で、翌年9月、弊社開発のスマートロック「PP01A」搭載のスマート宅配ボックスを発表しました。
「PP01A」には、配送員が伝票番号を解錠鍵として利用することにより誤配送を防止する特長をもち、内蔵カメラが投函された荷物を撮影し、瞬時に写真を荷受人に送信する機能も備えているため、投函時の不正動作を防げるうえ、投函荷物の撮影と同一宛先の荷物であれば3つまで投函できるなど、それまでの宅配ボックスにない新機能を搭載しています。また、荷受人は複数のECサイトで購入した商品の発送から投函までの配送状況を専用アプリ「Pubbit App」で確認できる便利なサービスも提供しています。発表当初は戸建てと集合住宅をターゲットにしていましたが、工事いらず、複数のボックスを組み合わせることで後付け宅配ロッカーとして使用できる利点から、複数のシェアオフィスなどでも採用していただきました。
この商品がのちの「Pabbit」ソリューションに発展したのです。
2019年発表の「PP01A」搭載のスマート宅配ボックス
アイホンとの共同開発で生まれた「Pabbit」。
インターホンを介して “モノ”を認証してオートロックを解錠する宅配ソリューションが
荷受人不在の時、宅配ボックスに空きがない時でも「置き配」を実現。
聞き手:アイホンとの協業で誕生したオートロック解錠ができる新しい宅配サービスソリューション「Pabbit」を開発したきっかけは?
沈:新型コロナウイルスの急速な感染拡大に伴い、ネットショッピング件数が急増すると同時に、集合住宅では既存の宅配ロッカーでは対応しきれず、空きがないため再配達を余儀なくさせられるケースも増えています。また、感染予防対策として「非対面・非接触」での受け取り需要も高まりました。しかし、現状ではオートロック付きマンションでの「置き配」の実現は難しいです。
既存のオートロックマンションでの「置き配」が可能なソリューションには通販サイト利用者限定、契約宅配事業者限定などのアクセス制限や、配達員情報の事前登録が必要であるためマンション管理会社にデータ管理の負担が課せられるなどの課題があります。インターホンとスマホアプリの連動による遠隔操作でオートロック解錠を行うサービスもありますが、利用者が会議中や携帯電話がそばにないなどの理由ですぐに解錠操作を行えない場合もあります。結果的に再配達サービスを利用することになります。
一方で偽装宅配員による犯罪が増えているなか、入居者や管理会社は配達員が自由にオートロックを解錠して居住区に立ち入ることに対して大きな不安を抱えています。
〜「グッドデザイン賞」に選ばれた安全性と利便性兼備のソリューション〜
こういった需要と課題を踏まえて、外出の時でも安心して置き配サービスを利用できるようにするには、入居者の安全性と利便性の双方を確保できるソリューショ提供が最重要条件と考えました。
そこで、国内インターホン最大手のアイホン株式会社のインターホンシステムと弊社のクラウドベース宅配ボックスサービスを連携させることで、入居者がインターホンで対応しなくても、宅配員が荷物ごとに振られた番号を利用してオートロックの解錠操作を行い、各住戸に荷物を届けることが可能になりました。これにより、多様な事業者のオペレーションへの対応がとれ、入居者がよりセキュアに、非対面で荷物を受け取ることができるサービスを実現しています。
こうして誕生した日本初(※1)のインターホン連動式荷物認証宅配システム「Pabbit」は2022年度「グッドデザイン賞」を受賞しており、現在、建設中の物件を含めて20以上の新築マンションに採用されています。もちろん、最近人気の着床制限エレベーター導入の集合住宅にも対応します。
※1 荷物の伝票番号をエントランスインターホンで認証して通行キーとするソリューションとして。アイホン調べ。
「Pabbit」連携のアイホンインターホンシステム「dearis」はセキュアな解錠を実現。
配送中の荷物を持った配達員のみ解錠できます。
近年、各階または各住戸専用の宅配ボックスを設置する新築マンションが増えています。アイホンインターホンシステム「dearis」と連動する「Pabbit Locker」はそういったニーズを満たします。
各お部屋に1台ずつの住戸前ボックス
各階住戸共用のフロアボックス
〜既設物件には後付けタイプの「Pabbit Lite」が対応〜
ただいま無償提供・設置キャンペーン中
聞き手:既設物件ですと「Pabbit」の導入は難しいでしょうか?
沈:既存物件の場合は、大掛かりな工事不要、後付け可能な「Pabbit Lite」をご利用いただけます。ここで朗報です。現在、弊社とアイホン社が1000台限定で、「Pabbit Lite」本体の無償提供および無償設置キャンペーンを実施しております(※2)。これを機に、マンション管理会社から入居者まで、より多くの方に次世代型宅配システム「Pabbit」の安全性と利便性を知っていただけたら幸いです。
※2 10戸以上のアイホン社製インターホンが設置されたマンション・アパートが対象となります。
「Pabbit Lite」
「Pabbit Lite」は既設のエントランスインターホンの横に設置いたします。
キャンペーンの概要について:www.aiphone.co.jp/services/inform-communicate/pabbit-entrance/campaign/
スーパーやクリーニング店の配送サービスにも応用可能。今後の拡張サービスに期待
聞き手:今後の展望について教えてください。
沈:高齢化・少子化が進んでいる日本では今後、宅配時の“非対面・非接触”が宅配業界のスタンダードになって行くでしょう。すでに「Pabbit」を標準宅配ソリューションとして採用決定している大手不動産開発会社もあります。「Pabbit」の普及は、政府が目指す再配達率の2025年度削減目標達成の一助となると期待しています。
PacPortのソリューションは宅配サービス以外の用途にも幅広く応用可能です。東北の大手ドラッグストアチェーンでは提携の小売ECプラットフォームを介して、消費者がスマホアプリから注文した商品を弊社のクラウドベースソリューション採用のスマートロッカーで受け取れるサービスを2021年10月から提供しています。また、最近竣工した関西の新築マンションでは「Pabbit」の導入と共に、備品レンタルサービスの無人運営に弊社のスマートロックおよび「Pabbit App」を採用しています。集合住宅敷地内で提供される備品レンタルサービスの初の無人化をPacPortが実現したのです。他にもスーパーやクリーニング店の配送サービスに弊社ソリューションの導入を前向きに検討していただいています。
弊社のクラウドベースソリューションは高い拡張性をもっています。これから新しい応用の可能性を見出すのが楽しみです。今後もさまざまな企業との連携を積極的に進め、宅配システムに留まらず、多方面から人々の快適な暮らしをサポートする新しい物流エコシステムを構築していきたいと考えております。
PacPort は、「課題先進国・日本発のラストワンマイルソリューションを世界へ」をミッションに、先端 IT 技術で宅配業界の人手不足や再配達問題の緩和に取り組むベンチャー企業です。将来的にこのソリューションを海外に広めて行く高みを目指しています。現在、事業拡大に伴いサービスマネージャーおよびソフトウェア開発者を募集中です。
「Pabbit」について:https://pabbit.cloud/
(株)PacPort ホームページ:https://pacport.co.jp/
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ