街とビル、⼈が繋がり遊びはじめる。「建てない建設会社」の仲間が描く、築古ビルの再生ストーリー
株式会社KEYMANは2023年7⽉、シェア型複合施設「REDO JIMBOCHO」をオープンしました。
仕上げを剥がしたままのユニークな外壁が⽬を引くREDO JIMBOCHOビル
REDO JIMBOCHOは、1階がシェア型レストラン、2階がコワーキングスペース、3-5階がシェアハウスとなった【シェア(share/共有)型】複合施設です。
⻑く耐震補強工事を⼿がけてきたKEYMANが、創業30周年を機にスタートした「RE・do」事業。彼らが培ってきた技術を基盤とし、古い建物に加えて街や⼈の⼼のワクワクも再⽣させようという新しい取り組みです。
今回はその舞台となったビルで、彼らが模索する「築古ビルの新しく楽しい試み」を紹介します。
1階シェア型レストラン「10COUNTER」はシェフ循環型の新しいレストラン。1号店はフレンチ「annneu」が出店
耐震補強を30年。KEYMANが考える次のビジネスの形
株式会社KEYMANは1993年、⼤阪で創業しました。これまで30年に渡って⾼速道路等の公共施設から学校、集合住宅、商業施設に⾄るまで、数々の耐震補強⼯事を⼿がけてきた構造物耐震補強・⻑寿命化のスペシャリスト企業です。
現場で培ってきた知識とノウハウを活かし、⾃分たちで旧耐震ビルを購⼊・耐震診断・耐震補強を実施した上で新しいビジネスの形を創り出すべく動き始めたのが2018年でした。
代表の⽚⼭⽈く「新事業に適した旧耐震ビルがないかと探していたところ、⾓地で⾒た⽬が格好いい武⽥ビル(現REDO JIMBOCHOビル)を⾒つけた」ということでした。職業柄、数多くの築古ビルを⾒てきた⽚⼭ですが「武⽥ビルのように、柱が建物内に存在していることから、窓⾯が広く、且つ⾓に沿ってL字に配置されているビルは少なく、光が綺麗に⼊る」点が気に⼊って購⼊を検討し始めました。
建物の⾓に沿ってL字に配された窓が、光を多く取り込む構造となっている。
⾃社で耐震診断や補強計画、⼯事費や収⽀の算定を⾏い、武⽥ビルを購⼊したKEYMAN。本業の忙しさから⼿がつけられない数年を経て、本格的にプロジェクトが動き始めたのは2022年初めのことでした。
複数業界の専⾨家とタッグを組み、地域のニーズを探るところからスタート
開始にあたって渡邉明弘建築設計事務所、オクムラデザイン、創造系不動産がプロジェクトに参画。耐震補強に加え、建築デザイン・不動産コンサルティングの側⾯からもこのビルにどう付加価値をつけていくか、検討がスタートしました。
まず⾏ったのは、今プロジェクトの鍵となる建物前での街⾓アンケートでした。通⾏⼈100名以上に声をかけ「ビルの1階にどんなお店があったらいいか」をリサーチした結果、カフェ・ご飯系・パン屋など幅広いジャンルの飲⾷店舗が求められていることがわかりました。
街⾓で「この建物1階にどんなお店が⼊ってほしいか」アンケートを実施。ジャンルは違えど、飲⾷店ニーズが⾼いことが窺えた。
そこで当初、曜⽇毎に料理ジャンルが変わるレストランを企画したものの、システムが煩雑と判断し断念。その後もジャンルに縛られない形での飲⾷出店⽅法について検討を重ね、最終的に「各ジャンルの若⼿シェフに期間限定でオーナーになってもらう」シェア型レストラン案が採⽤される運びとなりました。
シェア型レストラン「10COUNTER」では、事業主であるKEYMANが、内装工事や厨房設備など店舗営業に必要な設備投資をあらかじめ実施し、設備投資費⽤の捻出が難しい有望な若⼿シェフに2年間限定で店舗を賃貸し、売上に対する歩合制でテナント料を⽀払ってもらう仕組みです。シェフは初期投資を軽減しつつ自分の店を持つことができ、運営側にとっては定期的にテナントが⼊れ替わることで、ビルそのものや地域コミュニティの活性化に繋がる効果を期待できます。
シェア型レストラン「10 COUNTER」。ワンオペでも営業できるよう、コの字型カウンターを採⽤した。
カウンター内はシェフが能⼒を発揮できるよう、しっかりとしたプロ⽤設備が整えられている。
⼊居した若⼿シェフは2年間しっかり腕試しができ、また全10席と取り回しのいいキャパシティで着実にファンを増やして巣⽴っていくという、シェフ循環型の新しいシステムを導⼊することになりました。
改修前の空間を利⽤した出展募集に応募が殺到
街⾓アンケートと並⾏して、改修に着⼯するまでの2ヶ⽉限定で1階部分(42平⽶)の出展者を募集。建築・絵画・服飾アーティスト等から応募が殺到し、各種展⽰やラジオの公開録⾳・企業のレクチャーに⾄るまで、共同出展を含む30名が出展(キャンセル待ち10名以上)、展⽰期間中に合計1200名以上が来場する結果となり、プロジェクトの事前認知向上に⼤いに貢献しました。
ぎっしり詰まった出展スケジュールが1階窓に描かれた。
建築・ファッション・アートなど、多⽅⾯から出展希望が殺到した。
ラジオ公開録音イベントが開かれた様⼦。
2階は地域に開かれるフレキシブルな空間に
更に地元の方々にヒアリングを⾏ったところ、皆さんも築50年のビルの今後を気にかけてくれていることがわかりました。そこで2階はコミュニケーション型コワーキングスペース「CO書斎」を企画。毎⽉1~2⽇間のリフレッシュデーを設けて交流イベントを催す等、地域に開かれた拠点とすることになりました。「コワーキングスペース」「個⼈」「⼩さな」「古い」等の意味が込められたCO書斎は、全て異なるデザインの椅⼦が配され、六⾓形のテーブルが連なるユニークな空間に仕上がりました。
ビルの特徴である広い窓際にも席が設置され、フロア全体に⼼地良い居場所が点在している。
六⾓形のテーブルは円形に配置して会議ができたり、いくつかの島に分けられたりとレイアウトの⾃由度が⾼いのが特徴です。
個⼈が好きな本を持ち寄って感想を書き合うシェア本棚や、メッセージをかけるコミュニケーションボードの設置、飲⾷・私語⾃由ルールなど、利⽤者同士が繋がっていける仕掛けが多く設定されています。
3階以上を日本人と外国人が暮らすシェアハウスに
3-5階においては階段幅が狭く、⼀⾒集客の難しさが懸念されたことから、企画段階から⼊居者を募集しつつ、内装の解体が済んだ段階でもイベントや出展を⾏って、じっくりと事業内容を検討していきました。その過程で、外国⼈と⽇本⼈が半分ずつ⼊居するコミュニケーション型シェアハウス「ボーダレスジャパン」の名前が浮上。⽇本語を学びたい外国⼈と、外国語を学びたい⽇本⼈が共に暮らす環境設定に⾯⽩さを感じ、運営会社に建築・事業計画段階から参画してもらう運びとなりました。
5階の共⽤リビングでは、⼊居者が料理や⾷事を共に楽しめる環境が整えられている。
2023年8⽉1⽇から⼊居募集を開始したシェアハウスは、1週間で満室となった。
⼀般的な賃貸物件にはないユニークな間取りにも注⽬。
これまで蓄積したノウハウを活かした、REDO JIMBOCHOビルの耐震補強計画
そんな数々のストーリーの上に出来ていったREDO JIMBOCHO ビルですが、今回の刷新にあたって⾏われた耐震補強⼯事には、KEYMANのこれまで蓄積したノウハウがしっかりと活かされています。
⼀般的に耐震補強⼯事では、制震ブレースや耐⼒壁を設置することで建物の内部空間や外観、使い勝⼿に影響が出てしまう例が多く⾒受けられます。今回は、まずビルの給⽔⽅式を変更し、屋上の⾼架⽔槽と棟壁を取り外してビル上層部分を軽量化、必要な補強⼯事そのものを簡素化することで、耐震⼯事にありがちな⾒た⽬の問題をクリアすると同時に、低コストでの新耐震基準適合化を実現しています。
柱4本のうち、2本を10cmずつ増し打ちすることで新耐震基準適合化を実現した。
⽊の型枠でデザイン性を出した点もポイント。
建物構造計算や耐震補強計画において、セカンドオピニオンを求められることも多いKEYMAN 。コストとデザインの両⾯から最適プランを計画・実⾏できる点は、同社ならではの強みと⾔えます。
仕上げを剥がした外壁はあえてそのまま、撥⽔剤を塗るだけに抑えた。浮かび上がったユニークなテクスチャーが、街並みに動きを与える。
完成内覧会には100名以上が来場
2023年6⽉25⽇(⽇)に⾏われた内覧会では、建築関係者をはじめ、ビルに興味のある⽅や近所の⽅、前年の出展参加者など100名以上が来場しました。(残念ながら1階部分の⼯事は内覧会に間に合わず、2〜5階部分のみの内覧会実施となりました)
当⽇は午前1部、午後2部と3部に分けて内覧会が実施され、初めに2階コワーキングスペースにてプロジェクトの説明・質疑応答を⾏った後、各⾃⾃由⾒学の流れで⾏われました。⾃由⾒学を終えた後、プロジェクトメンバーに話を聞きにくる来場者も多く、特に設計事務所や不動産オーナーの⽅々からはビルの構造や補強に関する質問が相次いだことから、「築古建物の再⽣」に対する関⼼が⾼まっていることを実感したそうです。
同時に「REDO JIMBOCHOのコンセプトが⾯⽩い!」と興味を持つ来場者も多く、各階のコンセプト設定や運営⽅法についても注⽬が集まりました。
⼈⼝減少や⾼齢化等、この国の抱える社会課題が浮き彫りになった今、REDO JIMBOCHOプロジェクトは、これからの社会にアジャストする提案として多くの⽅に受け取られたのでしょう。
⼤盛況のうちに終えた内覧会は、KEYMANにとって確かな⼿応えを感じさせるものとなりました。
2階「CO書斎」ではプロジェクト概要説明・質疑応答が実施された。
シェア型レストラン「10COUNTER」の第1号店「anneau」レセプションパーティーを開催
2023年8⽉4⽇(⾦)には、1階シェア型レストラン「10COUNTER」の第1号店となるフレンチレストラン「anneau」のレセプションパーティーが開催されました。出⼊り⾃由の⽴⾷形式・フード無料(ドリンク1杯1,000円)にて告知し、夜の開催にもかかわらず7〜80⼈の来場者で賑わったそう。プロジェクト関係者やシェフの知⼈に混ざって、近所の⽅や地域を担当している宅急便の配達員の⽅がふらりと⽴ち寄る姿も⾒られ「10COUNTER+anneau」が早くも地域に溶け込みつつある様⼦が⾒て取れます。
店内から漏れ出る光が通⾏⼈を誘う、シェア型レストラン「10COUNTER」の1号店「annneu」。1つ1つのアイテムに⼼がこもる。
「annneu」の早川歌輪シェフが作るのは、フレンチをベースとした繊細で優しいお料理。
ユニークな取り組みとして各種雑誌・コラム等への掲載へ
REDO JIMBOCHOビルプロジェクトには旧耐震ビルを補強・改修した建築的視点、新たな付加価値を⽣み出す資産運⽤の視点等、様々な⾓度から関⼼が寄せられており、各種雑誌・コラム等でも、そのユニークな取り組みが紹介されています。
- プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000111767.html
- 雑誌「新建築」2023年8⽉号
- サンデー毎⽇ 2023年版 会社の流儀 厳選100社
- 不動産投資と収益物件の情報サイト「建美家」賃貸経営/リノベ・修繕 ニュース
2023/07/24 配信
https://www.kenbiya.com/ar/ns/for_rent/renovation/7008.html
2023/08/21 配信
https://www.kenbiya.com/ar/ns/buy_sell/property_choose/7090.html
- 建築リノベーションアーカイブ.com
https://renovation-archive.com/2023/09/15/redo-jimbocho/
等
築古ビルの良さを活かした多様なプロジェクトを展開
KEYMANではREDO JIMBOCHOビルを⽪切りに、築古ビルの良さを活かした多様なプロジェクトを展開していく予定です。
2022年にはREDO JIMBOCHOに先⽴ち、⼤阪・天保⼭で⾼級貸切宿「今昔荘」をオープン。古いビルを改修し、天保⼭の観覧⾞が間近に⾒える露天⾵呂を設置するなど「ここにしかない」体験をプロデュースしています。
REDO JIMBOCHOプロジェクトと並⾏して進められた、⼤阪・天保⼭の⾼級貸切宿「今昔荘」。古いビルを改修し、天保⼭の観覧⾞が間近に⾒える⽴地を存分に活かした露天⾵呂など「ここだから出来る事」にこだわった価値を⽣み出している。
⻑期ステイ需要を満たす広々としたクリーンな空間。各部屋に明確な特徴を持たせ、全2室の⾼級宿にしました。
古いビルを再⽣し、街を再⽣し、⼈の⼼を再⽣する
建物構造計算から耐震補強計画、施⼯まで⼀気通貫で提案できる技術とノウハウを活かし、コストと空間の両⾯から最適な提案をするKEYMAN。建物と地域コミュニティ、そこに暮らす⼈々の⼼のワクワクを再⽣する「RE・do」事業では、パートナーと協業して共に新しい価値を⽣み出していきたいと考えています。築古ビルの保存・再⽣計画、新しい付加価値の創造にご興味のある⽅は、ぜひお気軽にKEYMANまでご連絡ください。
◆施設概要
REDO JIMBOCHO(リド ジンボウチョウ)
所在地:〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-37-1
構造:鉄筋コンクリート造
階数:地上5 階 塔屋1 階
敷地面積: 70.72m²
建築面積 : 61.20m²
延床面積 :287.68m²
インスタグラム:https://www.instagram.com/redojimbocho/
◆1階 10COUNTER
https://www.instagram.com/10counter/
◆1階 レストラン「anneau(アノー)」
https://www.instagram.com/anneau_jimbocho/
◆2階 コワーキングスペース「CO書斎(コショサイ)」
https://www.instagram.com/coshosai/
◆3-5階 シェアハウス
https://www.borderless-house.jp/jp/sharehouse/jimbocho1/
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