三井住友カードがAIスペシャリストの野口竜司氏とともに目指す、AI活用による「新しい金融企業&ビジネス」のカタチ <後編>
2023年6月、三井住友カード株式会社(以下、三井住友カード)は、株式会社ELYZA(以下、ELYZA)の取締役 野口竜司氏をHead of AI Innovationとして迎えました。そしてこれ以来、全社をあげてAIによる業務変革などを促進、同時にAI人材の育成支援をスタートしています。今回はこの連携ついて、野口氏と三井住友カードの執行役員 マーケティング本部 副本部長兼データ戦略部長の白石寛樹氏による対談を実施。対談<前編>では、野口氏をHead of AI Innovationに迎えた理由、二人のキャリアストーリーや野口氏から見た三井住友カードについて語っていただきましたが、<後編>では、進行中の「AI活用プロジェクト」の全体像や、二人の見据える未来について対談していただきます。
サービスの開発と人材育成&社内業務改革を同時に進行する、三井住友カードの「AI活用プロジェクト」
Q では改めて、お二人が一緒に進めている三井住友カード「AI活用プロジェクト」の内容と、目指す風景について教えてください。
白石:先ほどからお話しをしてきた通り、三井住友カードがさらなる成長、進化をするためには「AIの活用が必要不可欠」、そんな時代が来ています。その中で進めるべきは、「AIを前提とする各種サービスの開発」「生成AIの活用による社内業務変革」「AI人材の育成」だと私たちは考えました。そしてそれらの取り組みを総合して「AI活用プロジェクト」と呼んでいます。
生成AIについては、現在、野口さんはじめ、ELYZAのメンバーの皆さんと連携して、「当社のどの課題に、どうAIを活用できそうか」を具体的に検討しているところです(スコープ設定)。決定した内容についてはプロトタイピングを行い、PoCを実施。効果が得られたものに関しては実運用を目指して実務実装を行う予定です。例えば現状では「コールセンターの業務削減と改善」や「各種社内業務、営業の高度化」などについて、具体化に向けて着々と進めています。
また、生成AI以外でも、すでにAIの活用範囲においては「カード利用の不正検知」や「パーソナライズ」などの予測系AIのプロジェクトなども進行しています。
野口:「AI人材の育成」についても、「文系AI塾」の第1期生の受講が完了しました。これは私が講師となって実施するオンライン塾+リアル会場でのAI企画ワークショップです。第1期生として、約400名もの人数が参加してくださいました。皆さんとても積極的で、分からなければどんどん質問をしてくれますし、興味を持って前向きに課題にも取り組んでくれていますね。
白石:野口さんの塾は、課題もあり、かなりインタラクティブな内容になっているそうですね。
野口:ええ。目指すのは「当たり前にAIを使える人」の育成なので、講義を聞くだけの塾ではありません。まずはAIの手触り感を覚え、身近なものに感じてもらう。そして、これを経てインプットとアウトプットを繰り返し、自身の業務の中で自然にAIを使っていただけるような学びを用意しています。AI活用の様子を実感してほしいので、ChatGPTの実演やプロンプト(AIへの指示文)の具体披露なども出来るだけ多く実施していますね。
白石:野口さんは3年前に「文系AI人材になる」という本を執筆され、そこには「AIはExcelくらい誰もが使うツールへ」というコピーがありました。まさに、その時代が今来ている気がしますね。
野口:ええ。実は、当時は「ちょっと言い過ぎかな?」と思いつつ採用したコピーだったんですが、今はもうそれを上回る勢いですね。だからこそ、「AIをどう実務に活用するか」を考え、実行の旗振り役を任せられる人材の育成は急務です。また、社員全員が「能動的にAIを活用するぞ」というスタンスになっておくこともとても大切。今、その土台づくりをしているところです。
白石:現在進行中の「AI活用プロジェクト」は、横軸に「AI人材の育成・社内リテラシーの向上・AIと共に働く環境の実現」を置き、縦軸に「重要スコープでのビジネスへのAI活用」を置いています。そして、それを同時に進行中。個々メンバーの成長が事業の成長につながり、企業そのものの姿を変えていくこのプロジェクト。これが実現できれば、AI時代を先導する新しい三井住友カードになることができると、期待をしています。
自治体の観光PRで手ごたえ。今後も多様な企業とコラボレーションし、AIを活用したデータビジネスで、お客さまの成長を加速させたい
Q 今後、三井住友カードはどのように成長していくのでしょうか。Head of AI Innovationとして数カ月間活動してきた野口さんは、今、どう感じていらっしゃいますか?
野口:白石さんの話にもあった通り、今、三井住友カードは多くの社員の方々と共に、「AI活用への意識改革」に取り組んでいます。大きな企業だからこそ、社員の大半が同じ方向を向いた際の力は強い。本格的なAI活用時代を前に、その力を蓄えておくことで、さらなる飛躍ができるのではと感じています。
また、一緒に動く中で、「新しいことに取り組める組織づくりが、すでに成されている」とも感じました。例えば生成AIをビジネスに活用するとなると、様々な部署をまたぐ動きが必要になります。ここで動きが鈍ってしまうことも多いのですが、三井住友カードには、すでにアジャイル組織でプロジェクトを動かす文化があり、スピード感のある組織づくりが可能。こうした文化は、今後の成長における強みになっていくはずです。一方であるべき姿として、大手金融企業ならではの「踏むべき手順の多さ」も持っています。そこを理解したうえで、どのルートで、どう進めるべきなのかを、白石さんをはじめとするチームメンバーと一緒に考えながら、より早く確実に成果を出していきたいですね。
Q 白石さんの今後の展望についても教えてください。
白石:野口さんがおっしゃったように、部をまたがってプロジェクトに取り組み、スピーディに成果を出すための制度などは最低限整っていると思っています。だからこそ、それに則り、新しい挑戦に果敢に挑む人がたくさん出て来てほしいですね。事業や新しいサービスを立ち上げる人が誕生しやすい土壌を作っていくことが、これからの私の役割だと思っています。
また、私の担当であるデータビジネス領域においては、生成AIの活用によって「カードデータの価値」を見出し、決済データを活用したデータ分析支援サービス「Custella」をさらに幅広く展開していきたいと考えています。
これまでも「カードデータには価値がある」と考えられていましたが、膨大な個々のデータを読み込むことは不可能だと、利用が諦められていました。しかし、AIを活用することで、あたかも明細をすべて読んだように、AIがそこから価値を導き出してくれる時代になった。だからこそ、今後は、さらに多様な企業と手を組んでデータビジネスを展開できるのではと考えています。
野口:その点においては、本当に面白い展開が期待できそうですよね。例えば三井住友フィナンシャルグループが提供する総合金融サービス「Olive」などを起点にしていけば、もちろん消費者の皆様の同意をいただきながらですが、三井住友銀行を含めたグループ各社の膨大で奥行きのあるデータを創り出すこともできます。ここにAI活用をしていくことで、大きな経済効果を生み出すことができるだろうと考えています。
白石:早くそうした動きを実現したいですね。三井住友カードがブランドキーメッセージにしてきた「Hava a good Cashless.」に集約されるんですが、私たちは、ずっと日本のキャッシュレス化を牽引し、キャッシュレス社会をつくろうとしてきました。それを経て、キャッシュレスデータで思い浮かべる、第一想起の会社になれたのではと感じています。
そのうえで、次のステップは「そのデータを使って、より多くの企業とコラボレーションすること」だと考えています。これまでにも「USJ×三井住友カード」で年間パス購入者の特徴を抽出し、有望層の予測モデルを作成したり、熊本県や大分県と連携し、カードデータを活用して観光誘客プロモーションに取り組んだりしてきましたが、こうした事案をさらに増やしていきたいですね。
野口:新型コロナウイルス関連の規制が緩和されたことで、観光庁も観光資源を活かした消費の拡大・単価向上を推進していますし、今後は自治体や観光関連企業の連携ニーズが高まりそうですね。
Q すでに成果が上がっている熊本県や大分県とのコラボレーションは、どのような内容だったのですか?
白石:熊本県の案件は、「高単価の消費が見込まれる温泉を軸にプロモーションしたい」というものでした。求められていたのはデータドリブンかつ検証可能なプロモーションの実施です。これ対し、私たちはカードデータを用いて「温泉の関連消費」に絞った分析を行い、ペルソナ像を抽出。これに沿って広告のターゲティングを設計し、各種広告を配信することを提案しました。データ分析は私たちが担い、広告配信は協業パートナーと連携。その結果、無事に成果を出すことができました。
大分県の案件は、より効果的な観光Webプロモーションを実施するために、「実際に大分県へ来訪した人数」そして「県内で消費された額」を把握したいというニーズから始まりました。私たちは、コロナ禍前後の観光客の消費動向変化をキャッシュレスデータから紐解き、属性別の消費実態やトレンドを明らかにすることによって、現状把握・戦略策定・施策立案を支援する提案を実施。お客さまからは「観光プロモーションの成果を可視化するにあたり、消費金額は最適な指標。データの精度面で三井住友カードへの依頼を決めた」と言っていただけました。また、案件を進める中で「誰が見てもわかるデータと言葉で課題の発見や打ち手の提案をしてくれた」との評価もいただきました。
野口:なるほど。ともにカードデータの活用でより根拠のある観光PRを実施し、成果を出した例ですね。
白石:はい。観光だけでなく、私たちは「キャッシュレス決済」という接点で、業界問わず、ほとんどの企業や団体との連携可能性を持っています。今後は私たちがHUBとなって、幅広い企業とコラボレーションし、各社のサービスの幅を広げ、成長を支えていく世界を構築していきたいと考えています。野口さん、ぜひ一緒にそんな世界を作っていきましょう。どうぞよろしくお願いします。
野口:リーディングカンパニーとして、新しい金融企業のビジネスのカタチを目指している三井住友カードだからこそ構築できる世界があるはずです。その挑戦を一緒に実現していきましょう!
― 対談 <後編> 終了 ―
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
三井住友カードの決済データ分析支援サービス(Custella)について、詳しくはこちらの「導入インタビュー」をご覧ください。
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