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「日本まちづくり大賞」を受賞したこども参画まちづくり(宮崎県都農町)の裏側。過疎地で起業したまちづくり会社イツノマがこどもたちと試行錯誤してきた3年間

著者: 株式会社イツノマ

宮崎県都農町で「こども参画まちづくり」を実践する株式会社イツノマは、10月7日、日本都市計画家協会賞の最高賞となる「日本まちづくり大賞」を受賞しました。



明治大学で開催された「全国まちづくり会議」で、日本都市計画家協会賞優秀賞・支部賞を受賞した8団体による各10分の公開プレゼンテーションが行われ、5名の審査員による審査によって日本まちづくり大賞が選定されました。



イツノマが「過疎地の未来は自分で創る、こども参画まちづくり」のプレゼンテーションに至るまでの3年間、都農町のこどもたちとのまちづくり秘話を紹介します。

1.都農町の課題


まず最初に、過疎地のまちづくりにこどもが参画するメリットについて考えました。


高齢者40%の町にとって、まちづくりプレイヤーはおじさんばかり、こどもが参画することでまちづくりが未来志向になるメリットが1つめです。

2つめは、プレイヤー不足のまちづくりの担い手が増えること。

3つめは、いまのこどもたちが大人になってからUターンを考えるきっかけになるということです。


一方、こどもにとってのメリットは、総合的・探究的な学びにつながること。

2つめは自らコトを起こし、人やまちを動かす起動力が養える。

3つめはいろいろな大人との交流を通して多様性が身につくことです。


いままで分断されていたまちづくりと教育を重ね合わせることにつながっていきます。



よくある人口減少のグラフをみていても「減っていくな」ぐらいしか感じず、ほぼ思考停止、自分ごとにはなりにくいのではないでしょうか?


ぼくらは町に対し、現時点の小学6年生89人をターゲットに、実際何人が町内唯一の中学校に進み、何人が大人になっても町に住み続け、さらに町で働くのか、を自ら記入するワークシートをつくり、自分ごととして考える問題提起をしています。


ぼくが当事者に聞く限り、いまの20代で、町に住み、働く人の比率は5%以下。実数にしたら2,3人ぐらい。

リアルなファクトベースで共通認識をもったうえで課題に向き合います。



愛着教育や人のつながりだけでは、Uターンには至らず。必然をつくる必要があり、自分で仕事をつくれることやまちを変えれる原体験が必要なのではないでしょうか。



未来を主体的に変革していくための手段として、「キャリア教育」「まちづくり教育」「小中学校の魅力化」の3つの切り口で考え、実践してきたのが「こども参画まちづくり」です。



3つの活動のアウトプットの1つが、商店街再生のイベント「みちくさ市」です。

2.つの未来学


町内唯一の都農中学校で、各学年、年間15時間の総合的学習の時間の枠をいただき、独自のプログラム「つの未来学」を3年ほど実践しています。


特に教育を専門としていない一民間ベンチャー企業がこれだけの時間数、継続的に関わらせてもらっている事例はあまり聞いたことがありません。



各学年のプログラム共通の流れとして、町の当事者が直接、中学生に町の魅力や課題を出し、関心のある課題ごとにチームをつくり、課題解決の企画をし、最後は当事者に提案します。


今年の6月には、つの未来学の様子をNHK宮崎で8分以上特集いただきました。中学生が「自分のまちを自分で考えるのはいい」とアドリブでコメントしていたことに少し手応えを感じ始めています。



2021年、2年生の「つの未来学」では気候変動対策をテーマに300個のアイデアを出し、当時の町長に共有したところ感動されて、そのこともきっかけとなり、県内では4番目の速さで都農町は「ゼロカーボンタウン宣言」を表明しました。


中学生のアンケートで、「自分たちの出した案が町に影響させたのはすごい」という意見が出ていました。


このように、自分たちで考え意見を出せばまちを変えていける、という実体験を増やすことは「つの未来学」が目指していることの1つです。

3.GreenHope


ゼロカーボンタウン宣言を受けて、町には「ゼロカーボンU-18議会」を創設いただきました。2050年には、いまの町長、議員、役場課長など現役は退いており、当事者はいまの10代になるため、ゼロカーボンの施策は10代から提言しよう、という趣旨で提案しました。


毎年3月の本議会終了後、議場を使い、小中学生の選抜チーム「GreenHope」より施策提言を行なっています。


自分たちで30時間以上の時間をかけて議論し、パワーポイントをつくり、議員からの一般質問に対する回答案も準備して臨んでいます。


おもな提言は「木と花を植える」。具体的には町内に2万本の木と花を植え、町にはそのお世話をするボランティアチームを組成してほしいという内容です。

自分たちはボランティアとして友達や高齢者とWin-Winを目指してお世話をしたり種や苗を配ることを提案しています。



翌年のGreenHope2期生からは、さらに具体的に、商店街の中心地に花を植え、そのために必要な予算として100万円を申請。全会一致で可決され、現在、3期生が100万円の予算運用もはじめています。


こうしたGreenHopeの取り組みは、「IDEAS GOR GOOD」や「J-WAVE」など全国的なメディアでも紹介されています。

4.みちくさ市


GreenHopeの具体的な動きとして、商店街の再生に取り組んでいます。商店街の人たちとワークショップを実践しています。


自分たちも気軽に立ち寄りやすくなるように、という思いをこめて名づけた「みちくさ市」は、商店街の真ん中にあるあきち(町有地)を使って、「花とみどりで商店街を元気に」をコンセプトに、毎月1回、イベントを開催しています。



今年の1月からはじめ、GreenHopeの小学生は「商店街に人が集まる」「木と花を植えることでCO2を吸収する」ので両方にとっていいイベントにしたいと、主催者の一角として主体的に関わっています。




花の事業者の協力を得てスイートピー1,000本をつかったフラワーアートを多世代でつくることからはじめました。




みちくさ市第3回では、都農町で初めて道路アートを実施。町道につの未来ツリーが道いっぱいに描かれました。




商店街の通りに名前がなかったため、町民公募を250件ほど募り、町民投票によって「一之宮通り」に決定。みちくさ市第4回ではお披露目会として町長、商工会長、自治会長も勢揃い。都農中学校の吹奏楽部がファンファーレを演奏し、都農町のマスコット、つのぴょんも祝福に。

5.まちづくり部



今年の5月から、国内でもほぼ前例がない、中学生の地域クラブ「まちづくり部」を創部しました。


これまで、都農中学校の「つの未来学」などで、まちづくりに関心のある中学生が何名かいましたが、もっと活動を、と誘うと決まって「部活が忙しく」という断り文句でした。

ならば逆転の発想で、と提案したのが部活としての「まちづくり部」


教育長に即決いただき、中学校の校長も大賛成。具体的には縛りの多さや時代の流れをくんで、部活ではなく「地域クラブ」として創部しました。


現在、部員は1年生が5名。動機は「先輩がいないから」「他に面白そうな部活がなかった」など、中学生らしい素直な気持ち。でも、協力してまちをつくっていくことには楽しさを感じてます。


月火木金と週4日、放課後になるとぼくらのオフィスを部室として集まり、いろんな話をして、アクションも起こしています。


その一つがみちくさ市への出店。これまで3回出店、いずれもオリジナルの商品やゲームを考案、いいなと思うところは、ちゃんと売上をあげて、費用も計算し、現在、黒字なところです!


GreenHopeの小学生と一緒に、最近では町外の人との交流も増えています。夏休みには、京都市立日吉ヶ丘高校の高校生26名と、廃校になった都農高校の活用案を「地域共生社会」をコンセプトに6時間ワークショップをして町に提案しています。


9月には、サントリーや三菱重工グループなど大企業のビジネスマン12名とも一緒にワークショップ。「サーキュラーエコノミー」のビジネスモデルづくりに、小中学生たちも積極的に参加。名刺交換も慣れてきました。



ぼくらが経営するHOSTEL ALAに訪れるゲストたちは、オフィスに中学生がいて部活やってます、と言うと結構な比率で会いたがってくれます。

中学生たちにとっても小さな町のハンデになりえる出会える人の数を増やせるのでWin-WIn。積極的につなげています。

6.これからの展開


この動きが、持続的に発展していくように、まず一つは、いま毎月1回開催しているイベント会場を広場として常設化しようと企画中です。みちくさ市でも町の人に模型を見せたりして、あおぞら座談会を開催しています。


さらにその先には、商店街全体の再生にもつなげていく予定です。



最後に、持続させていくために一番重要なのが人やお金の体制です。


都農町の強みは、ふるさと納税を原資に10年間で10億円の未来投資を民間とスピーディーに実践していくことをミッションとするつの未来財団があることだと思っています。


さらに、教育長、都農中学校の校長先生が都農町出身ということもあり、また厳しい教育環境を踏まえ、総合学習やまちづくりとの重なりにとても価値を持っていただいている関係で、スムーズに運営することができています。


今後、さらに都農町内にある小学校へも定期的、継続的に関われるよう、これから積極的に企画提案していきたいと準備を進めています。


「こども参画まちづくり」にゴールはありません。これからのまちづくりの標準、日常的なしくみになるよう、都農町で日々実践を重ねていきます。




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