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あなたの物語を教えてください

人と地球への想いを乗せて走る。異業種とのタッグで取り組む、持続可能な「物流」

著者: キユーピー株式会社


マヨネーズやドレッシングといったキユーピーの商品が工場から出荷されてスーパーの店頭に並ぶまでに欠かせないのが「物流」です。しかし今、その物流が大きな課題に直面していることをご存知でしょうか。

小口配送の急増や労働人口減少によるドライバー不足。輸配送におけるCO2排出などの環境問題。お客様のもとへ変わらず商品を届けるため、さまざまな変化や課題への対応が必要です。

 

キユーピーはそれらの解決策のひとつとして、異業種との協業に踏み切りました。タッグを組んだのは、生活用品やトイレタリーを扱うライオン株式会社(以下、ライオン)やサンスター株式会社(以下、サンスター)、そして物流機器レンタルの日本パレットレンタル株式会社(以下、JPR)。日用品とキユーピーの食品を一緒に運ぶことで輸送効率をアップさせるとともに、従来トラックで運んでいた荷物の一部を船舶に切り替えるなど、環境負荷の低減にも取り組んでいます。

 

日用品と食品の共同輸送は、キユーピーに限らずこれまであまり耳にしたことがない事例。はじめは社内から「日用品と食品を一緒に運ぶなんてあり得ない」という疑問の声もありました。そんな固定観念を覆した異例のプロジェクトはどのようにして実現したのでしょうか?ロジスティクス本部の岩田真一に話を聞きました。

このままだと商品を届けられなくなる? 大きな課題を抱える物流業界

― まずは、物流業界全体が現在直面している課題について教えてください。

 

岩田:キユーピーに限らず、物流業界には今、大きな課題が山積しています。最も大きな課題となっているのが、労働人口減少に伴うドライバーの不足です。現役ドライバーの高齢化も顕著で、若手の担い手が不足していることも背景の一つと言えるでしょう。

 

次に挙げられるのが、大雪や台風、猛暑などの気象現象や異常気象が原因で交通網が乱れてしまうということ。ほかにも、昨今の燃料高騰や新型コロナウイルスをはじめとした未知の疫病への対応も物流業界に大きな影響を与えています。

 

― これらの課題をそのままにしておくと、私たちの生活にどのような影響が及ぶのでしょうか。

 

岩田:2024年には運ぶべき荷物の14%、さらに2030年には34%が届けられなくなると言われています。従来運べていた荷物が運べなくなれば、消費者の生活の利便性が低下することにもつながります。そして何より、キユーピーの商品を楽しみにされているお客様のもとにお届けできなくなるかもしれません。


キユーピー ロジスティクス本部 戦略企画部 岩田真一


― 一方で、CO2排出など環境問題への影響も無視することはできません。キユーピーでは物流面において、どのような取り組みを行なっているのでしょうか。

 

岩田:キユーピーは、サステナビリティ活動を重要視しており、グループの持続的な成長の基盤として推進しています。そうしたなかで当社では、原料の調達から消費までのバリューチェーン全体の輸配送に関するCO2排出の抑制に取り組んでいます。

 

また、世界的にはSDGsの流れもあり、私たちも「地球にやさしくなければ持続可能ではない」と考えています。CO2排出をいかに抑え、地球にやさしいものづくりや商品提供ができるかにこだわって活動しています。

ドライバー不足や環境負荷の課題に対応する、業種の垣根を超えた共同輸送

― ドライバー不足やCO2排出といった課題解決の打ち手として、キユーピーでは異業種との協業による共同輸送に取り組んでいます。なぜ、他社との共同輸送に着手したのでしょうか。

 

岩田:今回の取り組みはJPRが主催する勉強会での出会いがきっかけです。ライオンも含め、同じように強い課題意識を持つ企業同士で一緒に取り組んでみないか、と話し合いがスタートしました。

 

― では、あらためてこの3社共同輸送の仕組みを教えてください。

 

岩田:2018年にスタートしたライオンとJPRとの取り組みは、一つのトレーラーを3社でバトンタッチしながら荷物を運んでいくというものです。関東と九州、四国をつなぐ輸送ルートのなかで、キユーピーが関東~九州を、JPRが九州〜四国を、そしてライオンが四国~関東を走るという総移動距離2,811kmの共同輸送となります。

 

従来は各社が個別でトラックを手配していたために、帰りに荷物を積んでいない空車の区間が発生していたのですが、共同輸送により、空車の区間がほとんどないルートが構築できました。また、このときに船舶を利用した共同幹線輸送に初めて着手しました。


ライオン、JPRとの共同輸送のフロー


― 共同輸送により輸送効率を高めることで、どのように従来の課題解決につながったのでしょうか?

 

岩田:ライオン、JPRとの取り組みでは、従来、一度の輸配送に必要なドライバー数は10名でした。ですが、共同輸送に取り組んだことにより、関東・九州・四国エリアに各1名、計3名のみでの運行が可能になり、人員の有効活用につながっています。それだけでなく、船舶の活用により陸送トラックの運転時間を76%も削減することに成功しました。

 

また、これまで各社で走らせていたトラックを共通のトレーラーでの輸送に切り替えたこと、そして船舶の活用によって、CO2の排出を大幅に抑えることができました。個社単位での輸送時に比べ62%の削減になっています。このように、環境面の課題解決にも貢献できているのではないかと考えています。

 

― 2019年には、サンスター、JPRとの共同輸送もスタートしていますね。

 

岩田:サンスター、JPRとの共同輸送は関西と九州をつなぐルートで、往路はキユーピーとサンスターの荷物を、復路はJPRの輸送用パレットを運んでいます。特筆すべきは、一つのコンテナにキユーピーの食品とサンスターの日用品を「混載(同じトレーラーの中に一緒に載せて運ぶこと)」している点です。また、ここでも輸送経路の一部を船舶に置き換えました。


サンスター、JPRとの共同輸送のフロー


― サンスター、JPRとの取り組みでは、どのような成果が得られましたか?

 

岩田:輸配送能力と環境配慮の2つの課題に対して、ポジティブな成果を得られたのではないかと感じています。

 

まず輸配送能力の観点でお話すると、キユーピーのマヨネーズやドレッシングは1ケースあたりの重量が重く、トラックの重量制限に収まるように積むと、空きスペースが生じるという課題がありました。そこで、マヨネーズなどの食品と歯ブラシなどの日用品という、荷姿(1ケースあたりの大きさや重量)の全く異なる2種類の商品を混載することで、1車両あたりの積載効率を格段にアップさせることに成功しました。

また、環境配慮の観点では、船舶の活用によってCO2の排出を削減することができました。


1社ごとの輸送では重量や容積が有効活用できていなかったところ、2社を組み合わせることで双方の有効活用につながった

社内の常識を塗り替えた「食品と日用品の混載」

― 実際にこの共同輸送が、ドライバー不足やCO2削減といった課題の対応策になっているのですね。一方で、他社と協業して共同輸送を行なうには「壁」もあったかと思います。食品と日用品の混載という異例の取り組みには、さまざまな意見もあったのではないでしょうか。

 

岩田:昨今の急激な物流業界の変化に対応するためには、もはやキユーピー社内、同業種内だけでは対応しきれないという社内外の共通認識はありました。しかし、日用品企業との混載において、たとえば洗剤などの日用品特有の香りが当社の食品に移るリスクについては、最初から心配の声が挙がっていました。

 

口に入れる食べ物だからこそ、何かあってはいけないというのは当然の意見だと思います。まずはその懸念事項を解決し、社内の理解を得ることに尽力しました。

 

― 具体的にどのような方法で社内の固定観念を覆し、この取り組みを実現したのですか?

 

岩田:まずはサンスターの協力を仰ぎ、混載する荷物は香りの出にくい商品に限定していただくことにしました。とはいえ、混載は過去に事例のないケースでしたので、お客様に心配を与えることがないよう、品質保証の担当者も交えながら実際に一緒に運んで匂いを嗅いだり、科学的なテストを行なってエビデンスを得たりしながら問題がないことを確認し、合意形成を図っていきました。


岩田(右)とキユーピーの物流を担う株式会社キユーソー流通システムの桑田賢一(左)

「物流なくしてはお客様に届かない」。物流の仕事に感じるやりがい

― 異業種との協業だからこそ得られた成果や手応えはありますか?

 

岩田:今回の取り組みを機に、共同輸送以外の相談ができるなど、協業相手と良い関係性が構築できた点が挙げられます。作業の手順や商品管理の方法など、食品業界にいると思いつかないようなアイデアをいただくこともありました。

 

異業種の方と仕事をすることで、商品特性の違いから積載する荷物の組み合わせにバリエーションが生まれ、積載効率の向上につながる。そして、船舶や鉄道貨物などの輸送がしやすくなるというメリットが見えました。また業界によって原料・資材の調達エリアが異なることも多く、お互いに物量の多いルートでの輸送のマッチングが組みやすいことが判明した点も大きな収穫でした。業種を超えて輸配送能力を広げていく可能性を実感できました。ライオンでも食品業界との取り組みは異例だったようで、同社の社内報で紹介していただきました。



― 2019年にキユーピーが『サプライチェーン イノベーション大賞』を受賞するなど、3社共同輸送は社会的にも高い評価を得ています。「物流」という仕事のどのような点にやりがいを感じていますか。

 

岩田:お客様からすれば、キユーピーの従業員は「マヨネーズやドレッシングを製造・販売している人たち」というイメージが強いと思います。私が担当しているのは、そのような仕事ではありませんが、日本全国のお客様に商品をお届けするために物流は重要なプロセスを担っているんです。

 

お客様が商品を手に取り、食べて、喜んでくださるまでの過程の一部には物流の力があるはず。「物流なくしてはお客様に届かない」というのはやりがいとして大きなポイントですね。スーパーなどで商品を手に取っているお客様の姿を見ると、ちゃんと貢献できているな、と実感します。


従来のやり方を疑い、人と環境にやさしい物流へ

― さまざまな試行錯誤を経て実現した共同輸送の取り組みですが、キユーピーが目指す「これからの持続可能な物流のあり方」について教えてください。

 

岩田:冒頭にも申し上げた通り、ドライバー不足などによる「輸配送能力の低下」は産業界全体が取り組むべき喫緊の課題です。さらには、異常気象、新型コロナウイルスのような疫病の流行など、物流を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。そうした状況への対応に加えて、環境に配慮しながら、確実に商品をお届けすることが私たちの使命だと考えています。

 

これからは、共同輸送のような会社単位での協業にとどまらず、業界や行政と連携しながら物流におけるルールなどの見直しに着手していくことが必要です。実際に当社では、行政と連携したプロジェクトにも取り組んでいます。

 

― どのような取り組みを進めているのでしょうか。

 

岩田:一つが注文から納品までの時間を指す「納品リードタイム」の緩和を活用した納品作業・待機時間の削減です。具体的にはリードタイムを1日延ばし、事前出荷情報(ASNデータ)の作成時間をつくることで、納品にかかる作業効率を上げる取り組みです。

 

ASNデータを活用すると、納品作業そのものの時間を削減できます。その結果、荷物を待つドライバーの待機時間が減り、ドライバーの負担軽減につながります。また、積載効率を向上できるので、より多くの荷物を積んだ状態で車を走らせることが可能になります。CO2の排出もより抑えられるという意味では環境配慮にもつながります。

 

こうしたドライバーにも環境にもやさしい物流のポイントになるのは「商慣行の見直し」です。ドライバーも含めて物流の担い手が減少しているいま、従来のやり方を疑い、必要に応じて業界や行政と連携する。そんなアクションを今後も続けていきたいと考えています。


※ 内容、所属、役職等は公開時のものです


【キユーピー公式note】https://note.kewpie.co.jp/n/nfc9b5436aa8d







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