伊丹十三監督作品『タンポポ』を再考することで浮かび上がる、食べること=生きることの尊さ。
伊丹十三監督作品『タンポポ』に特化した書籍『TAMPOPO 13』の出版ストーリー。映画『タンポポ』を再考することで浮かび上がる、食べること=生きることの尊さについて。
©︎伊丹プロダクション
2023年は昭和映画の名匠、伊丹十三監督が急逝して25年目の節目。今なお多くのファンを抱える伊丹作品の中で最も食欲をそそるラーメン映画「タンポポ」に特化した、ユニークな本が今年出版されました。『TAMPOPO 13』。13は監督の名前である十三を示唆しつつ、映画本編に差し込まれたサイドストーリーの数も表しています。
出版したのは編集プロダクションを営みながら年に1冊のペースで出版業に勤しむ株式会社コラクソー。このストーリーではこの本の編集者であり発行人でもある三浦信が自らの言葉でその制作背景について振り返ります。
きっかけは、なぜかサンフランシスコで見つけた海外版「タンポポ」のポスター
「タンポポ」は幼い頃テレビの再放送で観ることができたように、とても有名な作品で、同時にとても奇妙な映画でもありました。それは本編の間に差し込まれていくラーメンとはまったく関係ないサイドストーリーに起因します。大人になってちょっとしたグルメも趣味となり、米サンフランシスコからスローフードを提唱して“美味しい”革命を起こしたアリス・ウォータースや彼女のレストラン「シェ・パニース」の存在を知り現地を訪れるようになりますが、その「シェ・パニース」の卒業生が営むオークランドのラーメン店で海外版「タンポポ」のポスターを見つけました。とても意外でしたが、聞けばアメリカではすでに食映画のバイブルとしてリスペクトされているという。これが「タンポポ」について改めて知りたいと思ったきっかけでした。
Photograph_Aya Brackett
既存事業よりも大きな枠組みで企画。出版を通じて日本の文化発信がしたかった
編集プロダクションとしての業務はファッションのカタログ制作が中心になりつつありました。会社のポートフォリオという意味でも自社刊行物が必要になることは自覚しつつ、そのコンテンツはファッションよりも大きな枠組みで作りたいと思ったのは、歳を重ねるにつれアイデンティティについて考える機会が多くなったからです。自分にとって揺るぎたい大きなテーマを日本の文化発信と定めて、自分の感覚や経験の中から自然な形で表現したいと思っている矢先、「タンポポ」を通じて日本人の気質や文化を考察し、発信することは自分にとって最善の策となりました。
Photograph_Yusuke Komiyama(mobiile)
日米合作の様相から辿り着いたのは、普遍的なテーマ
きっかけがサンフランシスコだったので、制作にはアメリカ側からも多くの方に協力いただきました。英語版「タンポポ」のポスターを飾っていたオークランドの「ラーメンショップ」や、かつて日本でも成功し「タンポポ」好きを公言するニューヨークのアイバン・オーキンさんへのインタビュー。ほかにも「タンポポ」のUS版DVD制作に関わる評論家やイラストレーターも力を貸してくれました。もちろん日本側も豪華布陣。伊丹十三賞審査員を務める平松洋子さんほか、錚々たる面子がそれぞれのショートストーリーをコラムで語り、料理家の野村友里さんや女優の菊池亜希子さんもインタビューで参戦。バラエティ豊かな切り口で新たに「タンポポ」を長い時間かけて因数分解していきましたが、結局辿り着いた答えは、“食べることは生きることであり、それが人生”という普遍的なテーマでした。
Photograph_Kohei Kawashima
Photograph_Yoko Takahashi
伊丹十三監督自身が食べることをテーマに映画を作りたくて「タンポポ」に着手したことを認めています。そしてこの本を手にしてもらえれば、そのテーマが生きることに結びついていることに気づいていただけるはずです。種明かしのように、平松洋子さんがこの本に残したセンテンスを最後に引用します。井川比佐志さん演じる「走る男」のショートストーリーを振り返りながら、こんな言葉でご自身のコラムを締め括っています。
「食べ止むのはただ一度、死を迎えたときなのだ。そのときが訪れるまで人間がものを食べる姿は、愚直で、けなげで、滑稽で、切なくて、うれしい。だからこそ映画表現は成立するという確認を最大の原動力として、伊丹十三は『タンポポ』を撮った」
【商品概要】
書名:『TAMPOPO 13』(タンポポ サーティーン)
発売日:2023 年7 月4 日
定価:本体2,500 円+税
仕様:B5 224 頁 並製
ISBN:978-4910808024
アマゾン:https://amzn.asia/d/79KrmLO
出版元:株式会社コラクソー
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