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人の数だけ、物語がある

国内初の女性審査員による「美酒コンクール」、日本酒消費低迷打破、そして令和6年能登地震の北陸被災地復興のきっかけに!

著者: 一般社団法人日本のSAKEとWINEを愛する女性の会

(一社)SAKE女の会

#日本酒 #プロジェクトの裏側 #北陸復興  


一般社団法人日本のSAKEとWINEを愛する女性の会(通称:SAKE女の会)は、日本産のさまざまな酒類と食とその周辺文化を愛し、女性の感性を活かしつつ、国内外にその魅力を発信していくことを目的に2016年の発足。現在、約80社の賛助会員と約2000名の一般会員が在籍しています。

代表理事の友田晶子は北陸、福井県生まれ。飲食店経営の家庭で育ち、飲食に関わる仕事をしたいと、バブル経済真っ盛りの1989年にソムリエの資格を取りました。女性ソムリエとしてはかなり早い方です。また、フランス留学中に「あまりにも自国のことを知らない自分」に気づき、ワインのみならず日本の伝統酒を含めたすべての酒類の勉強も重ね「トータル飲料コンサルタント」という肩書で仕事を始めました。これらの経験が、国内初の女性審査員による日本酒コンクール『Japan Women’s SAKE Award~美酒コンクール~』のスタートにつながっていきます。このストーリーでは、国内の日本酒消費回復と北陸復興を目指すこのコンクール開催への想いをご紹介します。


日本酒の輸出は絶好調だが・・・。

トータル飲料コンサルタントの活動のなかで、酒類資格を持っているが活躍の場がない女性たちを多く見てきました。女性には市場を動かす力があることは周知の事実ですし、酒類の製造販売の場でもっと女性の感性を活かせるはずだという思いが(一社)SAKE女の会立ち上げのきっかけです。

2016年発足時からの事業のひとつに、フランスで開催されている女性ワイン専門家の審査によるインターナショナル酒類コンペ【フェミナリーズ世界ワインコンクール】への日本人女性審査員招聘があります。まさに、資格を持つ女性たちの活躍の場を広げることにつながるものです。翌2017年からは、同コンクールに日本産ワインをエントリーする業務が増え、さらに、第14回目にあたる2020年大会より日本ワインのみならず、日本酒、日本産蒸留酒、日本産リキュールの部門が増設され(2024年から日本産のシードルやビール部門も増設)、日本産酒の国内外PRという目標にピタリとはまり、鋭意運営をしてきました。

国際酒類コンペに日本酒部門ができるということは、世界の市場が日本酒に興味を持っている証です。現に、2013年に和食がユネスコ無形文化遺産になって以来、日本酒の輸出金額は約100億円から約500億円と5倍になりました。




国内消費低迷への挑戦。女性主導の日本酒コンクール開催


しかし、振り返ってみれば、国内の日本酒消費は激しい右肩下がり。日本人が最も日本酒を飲んだ昭和40年代と比べれば、その消費量はなんと3割以下です。私たち日本人が、日本の國酒でもある日本酒を飲まなくなっているのです。食事の洋風化、ワインやリキュール、ウイスキーなど洋酒の台頭、若い人のアルコール離れなどなど理由はいろいろあるにせよ、それにしても寂しいことと感じてきました。

そんな中、ワイン愛好家のSAKE女の会会員から、「今までワインばかり飲んできたけど、そろそろ日本酒も飲んでみたい。でも、何を選んでいいのかわからない、ラベルを見てもどんな味かわからない」と言われました。こういった声は実は前から上がっており、業界内でも様々に対策を講じてきましたが、消費を回復させるには至っていません。

回答として「コンクールで金賞受賞した銘柄を選んでみたら」と答えると、「え? 日本酒のコンクールなどあるの?」といいます。国内外でたくさんの日本酒コンクールが開催されていることを知らない、と。業界内では話題でも、一般の消費者には、そのことがまったく伝わっていないことに驚きました。

これをきっかけに「フェミナリーズのような、女性審査員による日本酒コンクールを国内でやろう」「そこから日本酒選びの指標みたいなもの提示しよう」と思いつきました。とはいえ、審査員の経験はありますが、コンクール運営の経験はありません。また、「男性社会の日本酒業界で女性審査員のコンクールは受け入れられるのか」、「コンクール乱立の業界で、新参コンクールに興味を持ってもらえるのか=エントリーしてくれるのか」といった心配がよぎります。でも、でもです。国内の日本酒消費がみるみる下がっていく様を見過ごすのは忍びない。ここは、今までの経験と女性の感性を活かし、一度チャレンジしてみるか…と怖いもの知らずの感性が首をもたげました。





「特定名称」など専門用語なしの新審査基準、消費者に寄り添う「美酒コン」


やると決めてからは、さまざまな人にアドバイスをもらいました。心配事の一つであった「女性審査員は受け入れられるのか」に関しては、フェミナリーズへのエントリーが増加している現実と、「女性には酒類マーケットを動かす力がある」と認識する新しい感覚のメーカーさんの声が後押しになりました。ただし、「審査は、審査能力のある女性にしてもらう必要がある」という声を重視し、日本酒やワインなどの公的資格を持つ女性の審査員起用に特化することにしました。これは協会発足時の目標、資格を持つ女性の活躍の場の創生にもばっちりつながることでもあります。

「新参コンクールにエントリーしてもらえるか」また「消費者からも支持を得るようなコンクールにするには」と考えた時に、今までとは全く違う価値観で審査を行う必要があると感じました。着目したのは「特定名称」です。

特定名称とは、純米大吟醸、純米吟醸、純米酒、本醸造…といったラベルに書かれているカテゴリーです。これは製造の専門用語であり、今までコンクールはこの特定名称別に行われてきました。しかし、これらは商品の香りや味わいを表すものではないので、金賞銀賞と言っても、消費者はどういった香味で金銀なのか見当がつかない点が問題でした。

私たちの新たなコンクールでは、ワインやウイスキーやリキュールのように香りと味わいでの部門設定にすると決めました。具体的には、「フルーティー部門」「ライト&ドライ部門」「リッチ&ウマミ部門」「エイジド部門」「ロウ・アルコール部門」「スパークリング部門」といった、まさにワイン的な表現の香りや味わいの部門に設定にし、とにかく消費者に分かりやすい指標となるよう考えたのです。これは全く新しいコンクール形態です。

ただ、こういった香味別のコンクールにメーカー様は慣れていません。平成4年から続く特定名称の歴史にも真っ向から対立します。対策は、メーカーさんの声を聴くことでした。答えは、「消費者にとってわかりやすい点がいい」「しかし、我々造り手にとってもチャレンジだ」「いろんなことを言われるかもしれないが、まずはやってみよう」でした。業界初の試みで関係者みなに迷いがあることを感じましたが、それでも前向きな声を頂戴したことで、この形態で進むことを決めたのでした。

日本酒選びに役立つ新しい部門、女性審査員。そしてもう一点、日本酒は全国各地にある伝統の地酒でもあることから、地域の活性にも結び付けることができます。これも基本理念に盛り込みました。

コンクールの名前は「Japan Women’s SAKE Award~美酒コンクール〜」(通称:美酒コン)です。





日本酒への情熱とボランティア精神、美酒コンの成功と素人挑戦


事務局チームにコンクール運営の経験者は一人もいませんでした。スタッフは、ただただ、日本酒の消費を盛り上げたい、もっとたくさんの人と日本酒で乾杯したいという日本酒愛のみでこのコンクール運営に参加してくれました。原資はありませんので、完全なボランティア参加です。時には、日本酒の現物支給もありましたけれど…。スタッフ各人の技術と知恵を持ち寄って、結果的には見事コンクール運営ができたことは、奇跡だと思っています。

スタッフ間の第一の心配は「エントリーが集まるか」です。運営資金はエントリーフィしかありません。人気の国内日本酒コンクールは2000アイテムという規模のものもありますが、業界の専門家や醸造の先生方からは100〜200アイテムがせいぜいだろう。最初から目標を高くしないこととアドバイスとフェミナリーズの実績である、ワイン・リキュール・蒸留酒含めて約500アイテムということから、目標300アイテムと割り出しました。

力になったのは、海外における日本酒普及に尽力する平出淑恵さんをアドバイザーに迎えたことでした。世界で最も歴史と権威のある酒類コンクール「インターナショナルワインチャレンジ」にSAKE部門を創設し、世界中に日本酒文化を広めている実力者です。全国の蔵元の出さんの参加はスタッフの励みになりました。

また、エントリーの蔵元すべてに役立つよう、審査員のコメントを無料でフィードバックすることも表明しました。そういったコンクールはいまだかつて存在しません。

結果、2023年6月から始めたエントリー募集は317エントリーを集めました。資格保持者の女性審査員は、自薦応募を経て81名の方々にお願いをしました。この方々は美酒コンクールHPにて全員をご紹介しています。



審査会は2023年9月。準備期間は、審査基準を精査し、317アイテムをきちんと審査できるように順番を整え、温度管理し、審査員の方々の交通整理を行い、当日発覚した審査票の不備などのミスにも何とか対応し、バタバタの中、審査そのものはしっかりと終えることができました。

そして10月には表彰式と入賞酒大試飲会。会場には、名誉会長を引き受けていただいた、日本酒を愛する女性国会議員の会会長の野田聖子衆議院議員にもお出ましいただき、また、各国女性大使4名をプレゼンターにお迎えし、華やかな表彰式と試飲会を開催できました。

表彰には、6部門それぞれの金銀入賞の他、6部門のTop of the Best、客室乗務員(CA)賞、女性ソムリエ賞、Z世代賞、人気ラベルランキング(WEB投票)、そしてすべての中で最高得点だった「美酒 of the Year2023」の表彰を行いました。

なお、会場のご提供は、女性活躍推進企業のトップでもある株式会社パソナグループ様より。客室乗務員(CA)賞のご協力にはANAあきんど株式会社様。協賛企業として、株式会社オールアバウトライフマーケティング様、株式会社サンギ様、株式会社小林順蔵商店様にお力を頂戴しました。これらがなければ第1回を終えることはできませんでした。心より感謝申し上げます。



第2回目2024年の開催地は、北陸・福井、地酒と被災地支援への貢献


初めての開催としてはまずまず合格点ですが、問題は、日本酒選びの指標となる6部門や特別賞のPRがまだまだ足りないことです。せっかくわかりやすい部門で選ばれた日本酒たちを、もっともっと消費者に知ってもらわなければいけません。それには、入賞酒のPRをはじめ、美酒コンクールそのもののブランド確立が必須です。これからたくさんの山を越えなければならないと感じています。


第2回目となる2024年は、審査も表彰式&大試飲会も場所をかえ福井・北陸大会として開催します。基本理念の一つである地域活性を見据え、コンクールは毎年地酒の産地で行うことを目標としているためです。福井の理由は、2024年北陸新幹線福井敦賀開業記念となることと、なんといっても友田の故郷であることです。現在、福井県、福井市など関係各所と連携をとって鋭意開催に向けて準備中です。

不安材料としては、福井という地方都市で、はたして条件に合う審査員の方々が参加できるのか、第1回目の実績317エントリーを越せるかです。相変わらず運営原資はほぼなく、エントリーを増やすこと、協賛者を募る営業に注力することが不可欠です。そして、美酒コンクールのブランドを確立すること、コンクール結果が日本酒選びの指標になると知ってもらうこと、ひいては、日本酒消費回復になること。今はこれらを達成するために何をすべきかを日々考えています。

なお、令和6年1月1日に発生した能登半島地震では、美酒コンクールでお付き合いさせていただきました蔵元様がたくさん被災されました。心よりお見舞い申し上げます。はからずも、第2回大会は福井・北陸大会です。なんとしても被災地復興のお手伝いになるよう誠心誠意運営していく所存です。これをお読みの皆様、ぜひ、表彰式&試飲会には福井・北陸にいらして、地酒の魅力をお楽しみください。それが被災地応援になります。心よりお願いをいたします。



●第2回美酒コンクール2024 ~福井・北陸大会~

2024年

6月 1日(土)~ 8月31日(土):出品エントリー募集期間

9月 8日(日):審査会(ハピリンホール)

10月25日(金):表彰式&大試飲会(ハピテラス/ハピリンホール)

                          ガラディナー(コートヤード・バイ・マリオット福井)

10月26日(土):酒蔵ツーリズム(福井とその周辺県の蔵を巡ります)

 ※変更することもございます。


▼美酒コンクールHP

https://bishucon.com/


▼(一社)SAKE女の会HP

https://omotenashi-sakejo.com/


▼フェミナリーズ・ジャポンHP

https://feminalise-japon.com/












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