Logo

STORYS.JPは、2013年2月に誕生しました。

「 変化を拒まない心」を生んだ「アーティストとの協働」 をモノづくり経営者が語る

著者: 株式会社ニシナカユキト


京都法然院に創設された 世界初リサイクルガラスの枯山水。

×



アーティスト西中千人とガラスオブジェ制作の共同研究を行った

日本耐酸壜工業株式会社 代表取締役 堤 健さんに、無謀な挑戦とも言えるこのプロジェクトについてお話しいただきました。


-----------------------------------------------------------------------------------


アート×工場による 資源循環の啓発

日本耐酸壜工業株式会社 代表取締役 堤 健


■プロジェクトをはじめようと思った経緯


西中さんの作品を初めて見たのは、2010年頃でした。難波の高島屋です。色の違う、組成の違うガラスを継ぐという事ができるのかと驚きました。その技法を知りたくて、思わず声をかけたのが最初の出会いです。


話をするにつれ、西中さんのモノづくりに対する考え方を知り、私たちは同じガラスに関わっていてもこんなにも違うという事に気づかされました。そしていつか一緒に仕事をしたいという思いを共にした事を思い出します。しかし、あまりに違う為、私にはどうしたら融合できるのかわからず、時間だけが過ぎていきました。出会いから5年後、西中さんからご連絡を頂いたのです。




私の会社は90年間ガラスびんを製造しています。2つの工場、4つの窯で1日に500トン程のガラスびんを生産しています。その原料の80%程は市場から回収したガラスびんです。先程の西中さんからのお話は、そのガラスを使って工房では出来ない大きな作品が創りたいというお話でした。アートと日本のものづくり、そして資源循環のコラボレーションに挑戦することが決まりました。




■実際進めてみた感想


まず、会社の中でアートガラスプロジェクトチームを編成しました。主要メンバーは5名とし、すべて技術系の人間で構成しました。これまで、当社のモノづくりの基準は、良い品を量産することが最優先であり、そのための改善改良を怠らない気質があります。継続するためのノウハウや、技術向上のあくなき探求は得意なのですが、ゼロから出発するような新しいものを作り出すことは不得意に感じていました。ですが、時間の感覚もガラスに対するアプローチも違うアートの世界が、どう作用してどのような効果が出るかとても楽しみでした。




■困難に感じたこと


通常、1つの窯でびん製造のために溶けているガラスは140トンです。ですが、アート作品に必要なガラスの量は、1つあたり、わずか20〜500キロ。工場のスケールを手作業のアート作品に適応させるのは未知の世界です。皆戸惑いを隠せませんでした。そんな時、あっと驚く切り口を披露されるのが、西中さんでした。鋳造の技法や、ガラスを冷やし固める知識の深さに驚きました。そして、実行部隊の当社のチームは、表現を形にする熱意と高度な技術力を武器に、アート作品を成形するための様々な難題を乗り越えました。例えば、1500度のガラスが溶けている窯から、作品の型に流しこむ方法を考えているとき、樋で流す方法を思いつきますが、ガラスは温度が下がるとすぐに噛んで流れなくなります。温度を維持したまま型まで流す方法を見つけるまで試行錯誤でした。


×




■完成を迎え、その後をどう感じたか


私たちが最初に製造に成功したパーツが、京都法然院の西中さんの作品「ガラス枯山水:つながる」に含まれています。パーツを型から割り出した瞬間、チームメンバーは皆落胆したそうです。びん製品では欠点とされる歪みやヨレがあるガラスの塊に、複雑な気持ちになったようです。でも、西中さんが素晴らしいと称賛し偶発の美を喜ぶ姿に、私たちのこれまでの価値基準では計り知れない、芸術の領域を垣間見たようです。



 「唯一無二の作品」を造ることは、これまでのモノづくりの「当たり前」を変化させました。チームメンバーに新しい視点が加わったのが分かりました。次第に図面には落とせない造形美を自分たちの手で造ることで審美眼が育ち、偶然できる歪みやしわにオリジナリティを感じるまでになり、完成度も高まりました。


×


■プロジェクトから得たもの


私達はこのプロジェクトから多くの事を学びました。イノベーションの大切さと、変化を拒まない心です。チームメンバーが目を見張るほど会社の技術力を飛躍させたわけではありません。しかし、ガラスを美しく見せるのは光だとする、今までに無かった叙情的な感覚を西中さんとの共同研究から得たのは確かです。これは、工場の中だけでは決して辿りつかない価値観だと思っています。美しいびんとは何か、新しい視点が生まれたと感じています。


この先も、今回の美術作品に携わるような、ガラスびんを違った形で表現するようなプロジェクトを進めたいと思っています。私たちはガラスびんを造り、回収し溶かして、再利用として美術作品を造る。そんなリサイクルを啓発できる活動を進めるのは、常に資源保持による持続可能な社会の実現を目指す高い意識からです。これからもガラスびんの可能性を求め、様々な挑戦をしていきます。


日本耐酸壜工業株式会社

〒503-8506 岐阜県大垣市中曽根町610番地


×

株式会社ニシナカユキト

ニシナカユキト GLASS STUDIO

〒299-4104 千葉県茂原市南吉田2967











行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ
STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。

この他の企業のストーリー

4min read
株式会社TBWA HAKUHODO
SNSから見えてくる未来がある。今と兆しを捉えた観光復興ガイドの裏側。
SNSから見えてくる未来がある。今と兆しを捉えた観光復興ガイドの裏側。 皆さま初めまして、株式...
10min read
一般社団法人イドベタ
【6トンの廃棄漁網を使い切る決意】I do better から We do better へ
【6トンの廃棄漁網を使い切る決意】I do better から We do better へ ...
5min read
株式会社GLAD JAPAN
柔道整復師が目指す、信念を盛り込んだ温故知新の技術承継。整骨院・整体院事業を手掛ける株式会社GLADJAPANの創業ストーリー
柔道整復師が目指す、信念を盛り込んだ温故知新の技術承継。整骨院・整体院事業を手掛ける株式会社G...
3min read
コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス株式会社
コカ・コーラ ボトラーズジャパンとファミリーマートの両社社員が、製造工場周辺エリアの清掃で協働
コカ・コーラ ボトラーズジャパンとファミリーマートの両社社員が、製造工場周辺エリアの清掃で協働...
6min read
bravesoft株式会社
1年で売上6倍へ!たった一人で立ち上げたアンケートサービス「Live!アンケート」が "会社の収益の柱"となった理由
1年で売上6倍へ!たった一人で立ち上げたアンケートサービス「Live!アンケート」が "会社の...
6min read
タカラベルモント株式会社
「美しい人生」を照らす「希望の光」を タカラベルモント パーパスショートムービー
「美しい人生」を照らす「希望の光」を タカラベルモント パーパスショートムービー 理美容や医療...
4min read
積水ハウス株式会社
家の中に “お気に入りの基地” コアが実現する遊び心のある住まい
家の中に “お気に入りの基地” コアが実現する遊び心のある住まい 積水ハウス株式会社は積水ハウ...
7min read
株式会社デジタルホールディングス
次回開催の希望者は98%!社員とともに探求する、デジタルホールディングスの社員総会「New Value Forum」が実現するまで。
次回開催の希望者は98%!社員とともに探求する、デジタルホールディングスの社員総会「New V...
7min read
WANAWANA
愛着を持って長く着てもらえる、おしゃれでサステナブルなダンスウェアを。ダンスアパレルブランドWANAWANAの誕生ストーリー
愛着を持って長く着てもらえる、おしゃれでサステナブルなダンスウェアを。ダンスアパレルブランドW...
3min read
株式会社農心ジャパン
「辛ラーメン」でおなじみの農心ジャパンから初めての日本オリジナルブランドが登場して1年。目指したのは有名店の味ではなく、韓国人にとって「心に残る思い出の味」
「辛ラーメン」でおなじみの農心ジャパンから初めての日本オリジナルブランドが登場して1年。目指し...