新型コロナで売上90%減!創業80年、老舗帽子製造卸の会社がサウナブランド「SAUNA&co.」を立ち上げた背景とこだわり
SAUNA&co.は「SAUNAのある日常を当たり前に。」をコンセプトに、サウナに関する情報の発信・サウナグッズ/サウナアパレル商品を通して、みなさんのサウナの世界を様々な角度から広げるためのブランドです。
SAUNA&co.は、2021年3月に株式会社HIT代表の石原健也(いしはらたけや)が企画し、立ち上げたブランドです。株式会社HITは先代会社から80年続く、帽子やマフラーなどの服飾雑貨製品を取り扱う製造卸売り販売の会社です。そんな老舗がなぜサウナブランドを立ち上げたのか、そこに至る経緯や想いを代表の石原に語ってもらいました。
日常でサウナを身近に感じられるサウナブランド「SAUNA&co.」
──サウナブランド「SAUNA&co.」について教えてください。
SAUNA&co.は、一言でいえば「サウナ」というコンテンツに興味を持ってもらうために作ったブランドです。「SAUNAのある日常を当たり前に。」をコンセプトに、「家を出る瞬間からサウナが始まる」という考えのもと、サウナで使うサウナハットなどのサウナグッズは勿論、日常でサウナを身近に感じられるような、サウナをテーマにしたTシャツや帽子などのアパレル商品の開発なども行っています。
サウナをよく知るサウナーの方にも、まだ経験の浅いサウナ初心者の方やサウナが苦手な方にも、「ちょっとこのデザインかわいいやん」となるような、手に取っていただきやすいデザインを心がけています。
また「世の中のサウナに対する接点を増やしたい」という想いから、メディアとしてブログで情報発信も行っております。
──「SAUNAのある日常を当たり前に。」というコンセプトの意図を教えてください。
もっと多くの方に、サウナに親しみを持ってもらいたいという想いを込めています。
最近は第三次サウナブームとも呼ばれる波がきて若い世代にも広まりつつありますが、以前は「サウナはおじさんが行くもの」というイメージが強かったと思うんです。そのせいもあってか、サウナ業界のトップには結構イカツイ男性が多かったりするんですが、そういった方たちが「サウナで汗かこう!冷たいけど水風呂入ろう!」と発信していても、"ハードルが高い"と感じる方もいるのではないかと思います。
そんな方々にもサウナに興味を持ってもらえるような、親しみやすいデザイン・ユニセックスなデザインでものづくりしようという想いからコンセプトが生まれました。
父の他界・新型コロナの流行も一筋の光明をサウナに感じた
──SAUNA&co.を立ち上げたきっかけは?
元々企画していた帽子の新ブランドが新型コロナウイルスの流行により頓挫したことが、1番のきっかけですね。
新型コロナが流行する少し前、一緒に仕事をしていた父が亡くなり、経理から営業から何から何まで全部自分でやらないといけなくなりました。当時の経営状況はあまり良い状態とは言えなかったので、既存事業に並行して何か新しいことをしなくては!と走り回っていました。
そこで帽子の新ブランドの準備を進めていたんですが、アレヨアレヨという間に新型コロナが流行してしまい、新ブランドどころではなくなってしまったんです。
──それは大変でしたね……。
はい……。既存事業の売上も9割近く落ち込み、かなりシビアな状況でした。先行してマスクを販売していたおかげでなんとか乗り切れましたが、とはいえ既存事業の売上が落ち込んでいるということは、まぁヒマなんです。めちゃくちゃヒマ。社会全体が為す術もないような状態だったので、打開策もなく……暇を持て余していたんですね。昼前には開店休業状態となり焦りだけが募っていくので、しばらくは早く仕事を終えてこっそりサウナに行っていました。
──ここでサウナに繋がるんですね。
新型コロナの以前に、ドラマの「サ道」に出てきた「サウナ・水風呂・外気浴」という入り方を実践してみたい!と友人を誘ってサウナに行ってみたところ、この時にいわゆる”ととのい”を体験しました。「これはすごいぞ!!」と感じたのを今でも覚えています。元々お風呂やサウナは好きだったのですが、父の死と新型コロナが重なって参ってしまっていたこともあってか、サウナにハマっていきました。
通い始めると俄然興味が出てきて、評判の良いサウナやグッズについて調べるようになり、「サウナハット」というものがあることを知りました。帽子をずっと販売してきた人間としてはサウナの中で帽子をかぶるというのは衝撃的で、すぐに試してみたんですがこれがものすごくよかったんです!
サウナハットをかぶると髪が痛むのを防いでくれますし、顔回りや耳の体感温度を下げてくれるので、いつもより長くサウナに入れてより"ととのう"ことができたんです。
「サウナハットすごい!」となった私はすぐに色々なサウナハットを探したましたが、当時はバリエーションが少なく、自分が欲しいものが正直見つかりませんでした。
「もっとカッコイイ・カワイイサウナハットが欲しい!!」「ないなら自分で作ってしまえ!」ということで試作品を作り始めました。そこがスタートですね。
──そこからSAUNA&co.が生まれたんですね。
当初は別のブランド名で進めていたのですが、試作を重ねる内に「もっと色んな人にサウナハットやサウナについて知ってもらいたい」という気持ちが強くなり、改めてブランドコンセプトから練り直し、リブランドという形で「SAUNA&co.」ができました。そのままでも良かったかもしれませんが、「SAUNA&co.」という名前をキッカケに蔵前にある同名施設「SAUNA&co」様とのご縁をいただいたりしたので、結果的にとても良い形でブランドができたと思っています。
メイドインジャパン、ユニセックスなデザイン。SAUNA&co.のものづくりへのこだわり。
──SAUNA&co.のものづくりについて教えてください。
SAUNA&co.のサウナハットのほとんどは、日本国内で縫製しています。生地も国内の質の高いものを使用しているので、品質には自信があります。
他のサウナブランドと比べると少し価格が高いと感じる方もいらっしゃるかもしれないのですが、初めてサウナハットを体験した方にも、「これはすごい!」「使いやすい!」と思ってもらえる商品にしたいと思っています。初めてのサウナハットは、レンタルや自分で購入することももちろんありますが、"プレゼントでもらう"という場合もありますよね。ご友人や大切な人へのプレゼントにも選んでいただけるような、サウナが好きになってもらえるようなサウナハットを作っていければと考えています。
一方でTシャツやトートバッグなどのグッズは、多くの方に手にとって親しんでもらえるよう、比較的お求めやすい価格で提供しています。
サウナ関連のグッズはストリート系やメンズライクなデザインのものが多い印象があり、若い方や女性の方にはハードルが高くなってしまうので、関連グッズは男女分け隔てなくゆるっと楽しんでもらえるユニセックスなデザインを心がけています。
まぁ僕自身がそんなにストリート系がそこまで好きじゃないっていうのもあるんですが…(笑)
他にも、女性の方が好まれるようなカラーバリエーションを用意したり、動物の刺繍やプリントを入れた商品も作ったりしています。様々な年代の方々やサウナに興味がない方々にも良いと思ってもらえるデザインを心がけています。
──商品作りのこだわりなどはありますか?
サウナハットは特にこだわって作っていて、試作の前に生地の切れ端をサウナに持ち込んで、生地の使用感をチェックしています。例えば、ポリエステル等の化学繊維はサウナ内では熱くなりやすいのですが、化繊と綿の混紡生地は実際に試してみないと熱くなるかどうかはわかりません。成分の混率はほとんど変わらなくても、熱くなる生地とならない生地があるんです。
かぶっていて耳にあたる部分が熱いと、サウナに集中できませんし、ストレスが溜まりますよね。ストレスを解消するために行っているサウナでストレスを溜めたくないので(笑)自分が使う時に快適にかぶれるかどうかという観点は、とても大事にしています。
あとは"手入れのしやすさ"も意識しており、SAUNA&co.のサウナハットは全て洗濯機洗いができるようになっています。サウナハットは水に濡れることも多いので、長く使うのであればこまめに洗濯したいですよね。洗濯機で手入れができないと、そもそも洗うのが億劫になってしまうと思うんです。自分が面倒臭がりなのが大きいんですが、サウナハットを気軽で身近なものにする為にも、手入れのしやすさは大事にしていますね。
──中でもオススメの商品はありますか?
私はシェットランドウールサウナハットが特に気に入っています。
ウールの生地、特にサウナハットでよく使用されるようなフェルト生地は断熱性が高く、サウナハットとしての効果は高いのですが、手洗いでしか洗えず、洗濯機で洗うと縮んで元に戻らなくなってしまう弱点があるんですよね。ところが、SAUNA&co.のシェトランドウールサウナハットに使用されているウール生地はポリエステルが混紡されているので、洗濯機でも洗濯が可能です。ウールの良さと手入れのしやすさを両立させたオススメの商品です。
また、とても軽くてかさばらないところもオススメなポイントです。
サウナハットは、まだまだ「苦手」「恥ずかしい」という人がたくさんいます。そんな方たちから聞くのが「持っていくのが面倒」「タオルで十分」という意見なんですよね。実際めちゃくちゃ気持ちがわかるんですよ、私もあまり物を持ち歩きたくないタイプなので(笑)
このサウナハットはたたみやすく少量であれば水も弾くので、濡れてしまってカバンに入れづらいとか、邪魔になるといったこともありません。
また、かぶっていることを忘れるくらい軽いので、「恥ずかしい」という方にも是非試してみて欲しいです。「サウナハット重いな」とか「首が疲れるな」と感じることもありませんので、サウナに集中しリラックスできると思います。
1番最初に試作したサウナハットもこの生地を使っていたのですが、コスト面で折り合いがつかずお蔵入りとなっていました。生地自体はとても気に入っており、どうしてもこの生地を使ったサウナハットが作りたいと再検討し、リメイクした商品です。他にも色々なサウナハットを作っていますが、このウールサウナハットは今でもかなり気に入っている商品の1つですね。
他には、最近クラウドファンディングを実施していた「lumi ääni (ルミアーニ)」というオリジナルタオルもめちゃくちゃ気に入っています。ものすごく吸水性があって、薄手で持ち運びもしやすいタオルです。
このタオルは、日本三大タオルとして名高い大阪の「泉州タオル」です。サウナ界隈では今治タオルが人気で私も好きなんですが、大阪の人間が今治でタオルを作ってそれを勧める……っていうのが全然ピンと来なくて、タオルを作るならやっぱり地元の大阪泉州で、自分がすごく良いと思える商品を全国の人に紹介したい、届けたいという気持ちが強かったんです。
運よく協力してくれるタオル工場さんと巡り合うことができ、そこでタオルの製造工程や種類について教えてもらったり、使用する糸を一緒に選び試作を進める中で、「サウナで使いやすいのはもちろん、サウナだけじゃなく普段の生活でもめちゃくちゃ使いやすいタオルができるぞ!」という感触がありました。
実際にできた商品は、普段あまり商品について意見しない従業員も「これめちゃくちゃいいです!!買います!!」と言うくらい良いものになりました。最近作った商品だとこのタオルが一番気に入っていますね。
サウナブームが落ち着いてきた今だからこそ、副次的な価値を提供。
──今後の展開を教えてください。
近頃は、しばらく続いていたサウナブームも少し落ち着いてきたかなと感じています。これは全然ネガティブなことではなくて、少し前には「混みすぎていてサウナに入れない」「サウナに裸で並ぶ」という話が実際に東京都内ではあって、それくらい加熱していた人気がちょっと落ち着いてきた今だからこそ、サウナが元々好きだった方や、今回のサウナブームでサウナを知った方が、ゆっくりとサウナを楽しめるタイミングがやってきたのかなと私は思っています。
そんなタイミングだからこそ、トレンドに頼らない、体験や価値を重視したものづくりを続けていくのはもちろん、サウナ以外の分野からもサウナへと繋がる、"サウナの入口"のようなブランドへ成長していければと思っています。SAUNA&co.はこれまで、「サウナの入り方」「サウナ体験記」「岩盤浴とサウナの違い」といったサウナを中心とした情報記事を発信してきましたが、これからはメディアにもより一層力を入れ、サウナがみなさんの身近なものであり続けるよう、色々な観点を持ってものづくりや情報発信に取り組んでいきます。
株式会社HITは、今までほとんど帽子だけをやってきた会社です。まさかサウナでブランドを立ち上げることになるとは思ってもみませんでしたが、「SAUNA&co.」を立ち上げたことによりサウナハットは勿論、Tシャツやバックの製造販売も手掛けることができ、すごくポジティブな動きができたと感じています。
冒頭でもお話したように、父が亡くなった当時は打ちのめされていたところがありましたが、サウナはモヤモヤとした気持ちや焦り、今後どうしたらいいんだろうという不安な気持ちをスッキリさせ、気分転換をさせてくれました。
そんなサウナに恩返しをするべく、これからもサウナーの方、サウナ好きの方、興味のある方、苦手な方、色んな方々に向けたものづくりや情報発信を続けていきたいです。
サウナ最高!!
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