人と自然に優しいドイツの玩具を日本のフィットネス業界に根付かせたい。木製バランスボード「ダスブレット」販売の裏側と込めた想い
有限会社プロシードは元来マニュアルや取扱説明書を下請けで制作する会社でしたが、代表の藤田雅士が元々興味のあった輸入事業を始めようとドイツの展示会に商材探しに行き、出会ったのがダスブレットです。
はじめは「変わった形の板」との印象でしたが、メーカーのマティアスに勧められて乗ってみると「おー!楽しい!」とその虜になり、その場で輸入する決心をしました。
ただ、輸入する事と売る事は全くの別問題。販路を持たない私達は、コロナ禍はもちろんのこと当然のように色々な苦労をします。
このストーリーでは、このサスティナブルで楽しい商材を単なる輸入の一商品ではなく、如何に日本に根付かせていくのか奮闘する現状をお伝えしたいと思います。
本業の売上減少を機に、新規事業として「輸入」に取り組むことを決意
当社は創業18年になる「マニュアル・取扱説明書」の制作会社です。印刷では無く、家電製品を購入すると付いてくる所謂「取説」の中身を作る仕事です。
半導体や産業機械関係のメーカーから業務を依頼され、開発現場に出向き実際の機械の使い方やメンテナンス方法を取材して原稿作成や翻訳を行い、依頼先に納品します。
当初は順調だった業績ですが、発注元のメーカーの経費削減の流れは変わらず売上げの減少という大きな課題に向き合うこととなりました。
そこで新規事業として輸入に取り組む事を決意し、その一環としてドイツのフランクフルトで開催される世界最大級の見本市である「アンビエンテ2018」に商材探しに行きました。
「人と自然に優しい玩具」の普及をポリシーに活動するTicToysとの出会い
会場のフランクフルトメッセは巨大な展示場で、とても1日で見て回るのは不可能。3日かけて、ほぼ全てのブース(興味の無い商材は除く)をチェックしました。
色々と面白い商材はあったのですが、やはり気になった(楽しかった)のは「人と自然に優しい玩具」の普及をポリシーとしたTicToysというドイツのライプチヒの玩具メーカーでした。
紙を原料としたフリスビーやブーメラン、バイオマテリアルのリングを投げて遊ぶ「トゥアループ」という魅力的なスポーツ玩具、そして何より印象に残ったのはアーチ型をしたブナの木のバランスボード「ダスブレット」です。ドイツのブナの木は成長が早く、伐採しても森林破壊には繋がりません。
TicToysのオーナーはトニーとマティアスの2人。彼らは未だ30歳台と若く誠実で温かみを感じる人柄で信頼できると感じ、商品の魅力も相まって取引をしたいと思いました。
独占販売権の獲得を目指して交渉
輸入をするにも「すぐに一つ送ってください」という訳にはいきません。
当然予め決めておかなければならない重要な事があります。例えば掛け率や最低ロット数等がこれらに当たると思いますが、最も重要視したことは「独占販売権を得る」ことができるか否かです。独占販売権を取っておかないと他の輸入業者も販売する可能性が残るため、将来的に価格競争になってしまう恐れがあるからです。よって交渉は極力当社の負担が無い形で独占販売権を獲得することに注意を払いました。結果、「初めに最低50本購入する」等の条件は無しに独占販売権を得ることができました。この辺りは実際に展示会で顔を合わせて交渉したことでお互いの人間性を垣間見ることができたことが大きかったと思います。そして今になって思えば、こちらが本気で販売する気になっている、という意欲を見せたことも重要だったのかと感じています。
知識も経験もない状態で、効果と即効性を感じたのは「展示会への出展」と「クラウドファンディング」
何から始めるにしても、当社には輸入に関することも物販するための知識も経験もありませんので、本やインターネット、輸入仲間・コンサルの先生の助言を活かしてスタートするしかありませんでした。その中で、その効果と即効性を感じられたのが「展示会への出展」と「クラウドファンディング」です。
まず、独占販売権を得た時点で売るための準備として日本中からバイヤーが集まる日本最大級の展示会「東京ギフトショー2018」への出展を決めました。実際の展示会では商材への反応は非常に好意的で、多くの来場者から高い評価を得ました。100人以上のバイヤーと名刺を交換し、約30社と商談のアポイントメントが実現しました。また、展示会を通じて市場の動向やトレンドに関する貴重な情報を収集し、その後の販売戦略に役立てることができました。
(有)プロシード代表 藤田雅士(東京ギフトショーにて)
クラウドファンディングでは「家の中での簡単エクササイズ」という点を強調して、約140万円の資金を集めることに成功。やはり、ダスブレットはフィットネス関連の商材として普及させていくことが正解だと確信しました。
コロナ禍による業界への打撃。巣篭もり需要で一時好調も、コピー商品によるユーザー離れが深刻に
世界中の経済に打撃を与えたコロナ禍ですが、当社も例外ではありませんでした。大きな市場として期待していたフィットネス業界が大きなダメージを受け、自社の存亡さえを危うい中とても設備投資をする余裕は無くなってしまったのです。前年にはスポーツの展示会に出展し大きな成果を上げる手応えがあっただけに悔しい状況となってしまいました。
一方、所謂「巣篭り需要」のお蔭で様々な企業から「扱いたい」との声が挙がり、一時的に通販やインターネットでの販売は好調に推移することになります。グッドデザイン賞を受賞したことも追い風になりました。これがコロナ禍におけるメリットとはなるのですが、あくまでボーナスステージのようなものだったと後で気付くことになります。
フィットネス業界の不振に加えて大きなデメリットとなったのが、このコロナ禍で足踏みをしていた期間に多くのコピー商品が現れたことでした。もちろん品質や特徴は異なるのですが、外見上は区別が付かない中国製の類似品が廉価で多く販売されるようになってしまったのです。廉価な商品は、ダスブレット特有の“しなり”が無く重いものがほとんどなのですが、ネットでは消費者は判断が付きませんので多くのユーザーが他社に流れていってしまいました。そしてこの流れは既に歯止めが利かない状況に陥ってしまっています。
ダスブレットの柔軟性テスト
エクササイズの普及と指導者育成を目的に、「日本ダスブレット協会」を設立
コピー商品の影響とコロナ後の巣篭り需要の衰退により、通販やネットでの売上は減少していきました。このままではジリ貧状態になるのは避けられず、販売を継続することが難しくなると考えた私達は、商品を売るだけではなく「事売り」を取り組むことに決め、そのための第一歩として“日本ダスブレット協会”を2021年に当社主導で設立しました。
協会の目的は、ダスブレットを使ったエクササイズの普及とその指導者の育成です。
ダスブレットの特徴はそのシンプルな形にあるのですが、単に上に乗ってバランスを取ることしかイメージできない方が多く、有酸素運動から筋力アップ、体幹トレーニング、ストレッチ等の多岐にわたるエクササイズを効果的に行ってもらえることを1人でも多くの方にお伝えしたいと思っています。
協会の設立当初、関係者を中心に数名のインストラクターを育成しましたがフィットネス業界の不況は継続しており、なかなか販路を広げることはできない状況が続いていました。
現在も大手のフィットネスクラブは厳しい経営環境に置かれている所が多く、設備投資には積極的ではありません。
その中で我々は、特色を出したいパーソナルトレーナーやヨガ講師、サスティナブルに興味を持たれてる方をターゲットとしてインストラクターの育成を進めています。
富山のフィットネスクラブが定期レッスンに使用して頂いているのですが、そのフィットネスクラブの関連チームである、独立リーグの富山GRNサンダーバーズのトレーニング器具として正式に採用されました。採用理由としては「乗ってバランスを整えたり、ストレッチに使ったり、さらには肩回りのトレーニングに使える」とのこと。富山GRNサンダーバーズは阪神の湯浅投手をはじめ、今年も3人の選手がNPBプロ野球のドラフトに選ばれる等多くのプロ野球選手を輩出している強豪チームです。その選手達がダスブレットのトレーニングで成果を上げていることは喜ばしいニュースです。
また、最近では介護・リハビリ業界にも需要があると感じています。
広島のリハビリ施設では、ダスブレットを取り入れたエクササイズで下腿の発達や歩行速度の向上などの成果が数値化されており、今後の大きな市場として前向きに取り組んでいきたいと思っております。
【協会概要】
日本ダスブレット協会
理事 藤田 雅士
広島市中区鉄砲町1-18 佐々木ビル8F
TEL: 082-556-7570
info@japan-dasbrett.com
【ダスブレット輸入総代理店】
有限会社プロシード
代表 藤田 雅士
広島市中区鉄砲町1-18 佐々木ビル8F
TEL: 082-556-7570
https://www.tictoys.jp/dasbrett/
trade@proceedjp.com
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