「信頼できない」情報社会に、終止符を。SDGs18番目のゴール提唱の裏側に迫る
我々が日々閲覧するインターネット・WEB上に、「偏見」や「誇張」、「誤り」、「フェイク」等が存在するのは周知の事実です。この記事をご覧の皆さまも、口コミや公式サイトの情報にすら疑心暗鬼した経験があるのではないでしょうか。
加えて、2022年末頃からセンセーショナルに注目を集める生成AIの台頭。いとも簡単に「答え」を提示してくれますが、その情報もインターネットを参照・引用していることから、知らず知らずのうちに不確かな情報に触れる機会が増えていると言えるでしょう。また、SNSの投稿のように客観的な事実よりも個人の感情に訴える情報の方が、人の心を捉えて「バズる」傾向は2023年も顕著でした。
このように不確かな情報がまん延し、客観的な事実が軽視される状態を「ポスト・トゥルース(真実後、脱真実)」と呼びます。この課題は日本だけでなく、世界中で生じています。多くのミスリードや中傷に留まらず、選挙での不適切な情報操作が及ぼす民主国家形成への悪影響、さらには紛争での情報戦等に広がっており、深刻さが増していると考えられます。
2023年5月、私たち株式会社WAVEは、この「ポスト・トゥルース」という課題をより深刻なグローバル・イシューと捉え、SDGsの17個に加える18番目のゴール「信頼できる情報を社会へ:Decency in Information Society」を提唱しました。
情報を発信する立場としても一石を投じたいという思いから、この18番目のゴールは生まれました。今回、担当者の声を通してゴール策定の背景やねらいを紹介します。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
批判的な視点も交えて、SDGsを見つめる
1991年の創立当初から、経済価値と社会価値を備えた「共通価値」の創造を企業理念に掲げる株式会社WAVE。独立系マーケティング&クリエイティブ企業として、多様な事業や社会貢献活動に取り組む一方で、SDGs達成に向けた活動もいち早くスタートしました。
2019年には啓発推進のためのムック本を発刊し、2020年にはWAVE・SDGs研究室を設立。近年は「SDGs意識調査」等の研究成果・発表や高校生や企業に対する教育・研修、オウンドメディア『SDGsゼミリポート』を通じた情報発信に注力しています。
社内においては2019年に「SDGs推進プロジェクト」を立ち上げ、全社的に活動を進めています。SDGsの達成目標である2030年まで残り半分に迫った2022年、さらなる活動の促進を目指してアクションプランの見直しをする中で、「肯定だけでなく、批判的な視点も交える」という考え方をプロジェクトメンバー間で持ち得たことがすべての発端です。
私たちは、事業や活動において数多くの有識者への取材を行います。そこから得た「生の声」、産業界や教育業界の「現場のリアル」は大きな財産となっており、その見識をベースとしながら「いま、私たちにできること」をメンバーで吟味。結果、生まれたのが「WAVEオリジナルの『18番目のゴール』を提唱しよう」というアイデアです。
それは、現在の17個のゴールにおいて、含まれていない、もしくは軽視されている社会的な課題の存在を改めて問い直すという大仕事でした。
事業PRだけでなく、世界で本当に重要な課題の探求へ
「事業領域と現代社会を改めて見つめ、実情にあったゴール設定を模索する必要がありました」と担当者は原案作成時の苦労を語ります。山積するグローバル・イシューの解決とWAVEが目指す共通価値の創造、そのどちらも含むゴールとは何か。その問いに向き合いながら検討を進め、原案として挙がったのは「DESIGN for DECENCY(※1)『品位あるデザイン』から社会を豊かに」や「教育業界に新たな価値をもたらそう」といった3案でした。
毎年9月の国連総会の会期に開催されるGLOBAL GOALS WEEKに合わせて、全社員に原案に対するアンケートをとったところ「言葉の定義が見えづらい」、「何に困っていて解決すべきなのか、見える化した方が共感してもらえるのではないか」といった意見があがりました。まだ自信を持って世の中に公表できる段階ではないと判断し、一から見直しを行うことを決断したのです。
改めて基本に立ち返り着目したのが、初期に取り組んでいた他社事例の研究です。「18番目のゴール」を掲げる企業の多くは、事業発展につながるゴールを設定していました。私たちも当然のように自らの事業を活かす設定を想定していましたが、様々な知見を蓄積する企業として「いま、私たちにできること」を改めて熟考。そうするうちに「“事業PR のためのもの”だけでなく、“社会や世界で本当に重要な課題であり、SDGsのゴールとして然るべきもの”を目指せるのではないか」という想いがSDGs推進プロジェクトの中で膨らんできたのです。
※1…「DECENCY」は、株式会社WAVEのブランドコンセプト。品位、良識を意味する。2021年の創立30周年を機に企業ブランドを見直し、既存の行動基準に加える形で「考動基準:DECENT VALUE(品位ある価値創造)」と共に掲げました。
ポスト・トゥルースへの着眼
沸き上がった想いを大切にしながら、下記3点を前提に再び原案の作成に取り掛かかりました。
- 真にグローバル・イシューに対峙するゴールを検討する
- ゴールの対象は、社内といった限られた対象ではなく、クライアントや関係者、さらには一般社会の方々など、広く社会に発信できるものを目指す
- 全社員で「納得感」あるゴールを策定する
この発想の切り替えの効果は大きく、上記設定のもと行われた担当者による最初の議論で、最終的なゴールの課題設定である「ポスト・トゥルース」が候補として浮上しました。
ポスト・トゥルースは、米国大統領選やウクライナ紛争で繰り広げられる情報戦においても問題視される一方、事業を通じて様々な情報発信に携わる私たちにとっても「身近であり、世界と通ずるグローバル・イシュー」であることに気づいたのです。
さらに「一人ひとりの情報発信において、これまで以上に品位や良識が不可欠となる世の中になるのではないか」という担当者の意見から、私たちのブランドコンセプト「DECENCY(品位)」へつながると気付いたことも決め手となりました。
事実かどうか定かでない情報が力をもち、世の中を動かしてしまう時代。その中で、情報を受け取る側のメディアリテラシー(情報の真偽を見抜く力)はもちろん、発信者側の意識改革の重要性を見出し、ポスト・トゥルースの解決につながるゴール策定に向けて舵を切りました。
DECENCYへの帰結
課題設定はできたものの、ゴールを示すコピーワークに苦戦をしました。「一般の方もイメージしやすい『情報発信』や、私たちにとって思い入れのある『品位・良識』といった言葉を当初は用いていました。しかし、前者は事業PRの延長として受け取られる可能性があり、後者は抽象的でイメージしづらいという課題がありました。伝えたい内容がわかりやすく伝わり、誰もが同じ受け取り方をする言葉選びに時間を要しました」と担当者は振り返ります。
最終的にたどり着いたワーディングは、「信頼できる情報を社会へ」というシンプル、かつわかりやすい言葉。その他の案も含めて再び全社員にアンケートを取った結果、満場一致で決定しました。一方、英語のワーディングにおいても和文とは異なるハードルがありましたが、多くのフレーズ案を検討する中、最終的には私たちのブランドコンセプト「DECENCY」に帰結したのです。
「英語のニュアンスを含めて検討するのは、非常に難しかったです。英語圏の国に長く在住した経験がある社員や、留学経験が豊富な社員に現地の英語話者が受け取るニュアンスの確認を行いつつ、じっくり検討しました。その結果、“DECENCY IN INFORMATION SOCIETY”というフレーズは、端的でわかりやすいという意見が多く、決定に至りました」
アイコン作成、カラーの検討においても社内アンケートを実施。その上で、人の手から羽ばたく蝶を「情報」に見立てるイラストが採用されました。「人のこころが通った情報発信」を想起させながら、一人ひとりの努力がやがて世界に波及する「バタフライエフェクト」の願いを込めています。カラーは、UIデザインにおいて「信頼・安全」を意味するミントグリーンを使用することに決定しました。
18番目のゴールは、通過点の一つ。実質的なアクションを
2023年5月、この18番目のゴールを提唱・公開し、目にした方々より良い評価をいただきました。改めて担当者に策定後の想いを聞きました。
「インパクトのある見出しがついた情報が目立ち、真実でなくても面白ければいいといった情報発信の在り方はいかがなものか、という漠然とした課題感を以前から抱いていました。『ポスト・トゥルース』を課題として捉え、発信者側の意識の変化も含めたメッセージを伝えることにやりがいを感じていましたし、情報が溢れる社会、誰もが発信者となる現代において、意義のあるゴールになったと思います。策定して満足するのではなく、具体的にどのようなアクションを起こすべきなのか、私たちなりに今後も考え続けます」
「多くの方がこの18番目のゴールを目にして『自分がいまできること』を見つめ、その人なりのSDGs達成に向けた動きが広まると、社会全体としてSDGs達成を推進できるのではないかと思います」
2024年1月に世界経済フォーラムが発刊した『グローバルリスク報告書2024年版』において、地球規模の課題・リスクの内、最大の短期的リスクとして「誤報と偽情報」が指摘されました(※2)。また、2023年11月のユネスコ総会で50年ぶりに改正された『ユネスコ国際教育勧告』においても、「disinformation(偽の情報)」「misinformation(誤報)」「ヘイトスピーチ」「オンライン・ハラスメント」の世界的な増加が留意され、メディア・リテラシーと情報リテラシーを高める必要性を強調しています(※3)。
今回のゴール策定は一つの通過点に過ぎません。重要性の高まりを考慮し、今後は当18番目のゴールを国際連合のSDGs関連部署へ提言し、より多くの方々への共有・拡散をいたします。また、これからも社員一人ひとりが「DECENCY」ある行動・姿勢を心掛け、良識ある情報を発信していくことで、信頼できる情報社会の構築に貢献していきます。
◯お知らせ 当18番目のゴールのご利用について
当18番目のゴールに賛同していただけるすべての皆さまは、アイコン(和文・英文2種)を自由に活用いただいて問題ございません。当18番目のゴールのテーマ、及び背景情報の設定、ストーリーは、株式会社WAVEオリジナルであり、ロゴマークやアイコンの著作権は株式会社WAVEに帰属いたします。ですが、ぜひ良識の範囲で自社の活動や学習、研究等でご活用ください(今後の参考まで感想や反響を、問合せフォームまでお知らせくださいますと幸いです)。
※2…出典:世界経済フォーラム プレスリリース『グローバルリスク報告書2024年版: 環境の脅威が激化する中、「偽情報」がグローバルリスク2024のトップに』
https://jp.weforum.org/press/2024/01/guro-barurisuku-2024-no-ga-suru-gaguro-barurisuku2024notoppuni/
※3…出典:(英文)『ユネスコ国際教育勧告(国際理解、国際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び基本的自由についての教育に関する勧告)』
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
■株式会社WAVEについて
株式会社WAVEは、CI/UI開発を源流としつつ、コンセプト&プランニング、マーケティング&リサーチ、Web・X-Tech マーケティング&デザイン、グラフィックデザインという4つの機能で、新しい価値を創造しています。
公式Webサイト:https://www.waveltd.co.jp/
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ