社会に存在する偏見を取り払い、新たな選択肢を提案したい。障がい者が活躍する再生パソコン事業の立ち上げと、社会課題解決プロジェクトの裏側とは
株式会社ポンデテック(以下、ポンデテック)は、使用済みパソコンの再生販売事業を通じて障がい者雇用の拡大に取り組む、関西電力100%出資のベンチャー企業である。障がい者を多く雇用する特例子会社と連携し、企業で使用されたパソコンに部品交換や清掃等の再生措置を施し、新品と同等のスペックを持つ再生パソコンとして、1年間の保証を付けて販売。これにより新たな障がい者雇用モデルを作ろうとしている。
財津「 "障がい者" や "中古品" という言葉には、ネガティブなイメージの思い込みや決めつけが根強くあります。先入観からくる偏見をなくし、障害のある生き方そのものや、社会の価値観を変えていきたい。そんな思いを込めてパソコンのキーボードに貼りつけた1枚のシールが、傍観者であった人々の行動を変えつつあります」
本記事ではポンデテック代表取締役社長の財津氏に、障がい者雇用を拡大する再生パソコン事業の誕生秘話について聞いた。そこには意外な社会課題解決の仕組みがあった。
遊休資産の可能性を感じ、試行錯誤の末にパソコンの再生リユース事業に参入
スタートアップ企業は、若者層や新しいものに感度が高い人々を中心に、社会をよりよく変えていく力がある。一方で大企業発の社内ベンチャーは、既存の価値観を強く持っている人々や既得権益者なども巻き込み、より多くの人々に影響をあたえられる可能性を秘めている。
ポンデテックは2019年、「企業が保有する遊休資産には社会課題を解決する力がある」という仮説をもって、ベンチャー企業として設立。
財津「大企業である関西電力の外に出て、全くのゼロから事業を立ち上げるというハードルの高いチャレンジでした。設立当初はサービスを作っては試し、ただひたすらに顧客と向き合い続けました。しかし結果は残酷で、事業を作るも売上が上がらず、失敗の連続。半年間で6つの事業を作っては潰すことを繰り返しました」
そして試行錯誤の果てにたどり着いたのが、使用済みパソコンの再生リユースという事業だった。
障がい者雇用という社会課題にも同時に挑戦。教育に苦戦しつつも大企業との連携が突破口に
ようやく手応えをつかんだパソコンの再生事業は、関西電力の倉庫の片隅からスタートした。そして、たまたま同じ敷地内で業務を行っていた特例子会社との出会いから、障がい雇用という社会課題に着目し始めた。障がいを持つ方は世界中で10億人、日本国内でも936万人にのぼる。企業で働く障がい者の平均賃金は、健常者の半分以下。就労支援B型事業所に至っては月額賃金1万6千円程度というのが現実だ。
財津「2020年当時、コロナ禍の影響による求人減少や解雇など、障がい者雇用の現場は大きなダメージを受けていました。障がい者雇用において一番の課題は、仕事を作る難しさと言われています。私たちは、パソコンの再生作業を障害を持つスタッフの新しい活躍の場にできないか、と考えるようになりました」
障がい者雇用の現場では、オフィスの清掃業務や事務サポートといった定形業務を担うケースが多い。一方で使用済みパソコンの再生業務となると、パソコンは機種ごとに内部の構造が微妙に異なり、定型化しづらい。そのため、覚えなければならない知識が膨大になり、障がいを持つスタッフの習熟度が思うように上がらない。新しい仕事の産みの苦しみに、現場では疲弊が溜まりつつあったが、ついに突破口が見え始めた。
財津「突破口になったのは、大企業との連携です。大企業の場合、パソコン導入にかかる作業コストを抑制するために、同じ機種のパソコンを導入しているケースが多いことに気づきました。大企業から一度に同じ機種のパソコンを大量に買い取らせていただくことができれば、作業を定形化でき、スタッフが覚えることも少なくて済むのではないかと思ったんです」
結果的にこれが功を奏し、品質を保ったまま作業効率が大幅に向上。現在では、株式会社かんでんエルハート、ヤマハモーターMIRAI株式会社など、多数の特例子会社と連携し、障がい者の新しい活躍の場をつくっている。2023年12月には障がいを持つスタッフによるパソコン再生台数も6,000台を突破した。
先入観やネガティブなイメージを払拭するために、もっとハードルが低い誰もが賛同しやすい仕組みが必要だった
財津「私たちが、障がいを持つスタッフと共に働く中で、日々肌で感じるのが、この社会には目には見えない分厚い壁があるんじゃないかということです」
現状、障がいを持つ方々が担っている仕事の中には、(もちろん全てではないが)無理やり作り出した単純作業も多く存在する。仕事の意義や、やりがいをとても感じづらい仕事も少なくない。では障がいを持つスタッフは、そういった仕事しかできないのかと言われると、決してそんなことはない。特定の領域では驚くほど高いアウトプットを生み出すこともある。
一例を上げると、知的障害を持つスタッフの中には毎日をルーチンで生活している方がいる。そのスタッフは、ルーチン化された仕事であれば、その品質は極めて高いレベルで揃っている。また始業開始の最初の1分から終業前の最後の1分まで、作業のスピード・品質が全く落ちないのだ。ただそういった事実は、現場で実体験をしなければ、なかなか見えてこない。
財津「障がいを持つスタッフに対して、社会から向けられる目は、先入観からくる偏見のようなものもあります。『よく知らないが、難しいんじゃないか』といった、ネガティブなイメージの思い込み、決めつけ、社会の空気感。そういったものが、あらゆる可能性を奪っています」
障がい者が身内や職場に居ない人からすると、どうしても実感や当事者意識を感じづらい。社会全体の空気感を変えていくには、障がい者が身近に居ない人も含めて、もっとカジュアルに、ハードルがとにかく低い、誰もが賛同しやすい仕組みが必要だった。
財津「私たちは『先入観で敬遠せずに、少し違った選択肢を選んでみよう』という活動を、『ちがえら』という名前でスタートしています。パソコンの左下にあるALTキー、これはオルタナティブという意味で、ここにピンク色のシールを貼ることが、この活動への賛同を意味します。例えるなら、赤い羽根募金の赤い羽根のようなものです。その賛同してくれる仲間を『ちがえら』と呼んで、一人ずつ仲間を増やしています」
この「少し違った選択肢を選ぶ」というのは、とにかくハードルが低く、たとえば、いつものコンビニでお弁当を買うのではなく、地元地域の小さな手作り弁当店で購入してみるとか、そういう行動も含んでいる。毎日仕事で使っているパソコンに「ピンクのALTシール」を貼り付けることで、そのシールが目に入るたびに「今日もちょっと違う選択肢を選んでみるか」と感じてもらう効果がある。
財津「賛同してくれる仲間である『ちがえら』の人数が増え、ポンデテックの思想が少しずつでも広がっていくことで、障がいを持つ生き方そのものや、社会の価値観そのものを変えていき、すべての人の人生がカラフルな選択肢であふれるような、そんな未来を皆さんと一緒に作っていきたいなと思っています」
障がい者雇用を皮切りとして、様々な社会問題の傍観者を支援者に変えていきたい
社会課題を根本的に解決していくには、商品・サービスを生み出すだけでなく、社会の価値観を変えていくことが間違いなく重要だ。ポンデテックは「ちがえら」と呼ぶ仲間を一人、また一人と増やしていき、傍観者をうまく巻き込み支援者に変えていく。「ちがえら」が100万人、1,000万人という規模になる頃には、障がい者雇用だけでなく、多くの社会課題に光が差し込むのではないか。近い将来に、そんな日がやって来ることを願ってやまない。
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再生パソコンECサイト PC next
中古品に対して漠然とした不安を感じている人こそ、ポンデテックが運営する PC next にアクセスしてほしい。再生パソコンのECサイトをちょっと見てみる。今すぐにできる小さな「ちがえら」だ。
https://pcnext.shop/
ポンデテックの再生パソコンは、新品SSDに部品交換し、丁寧に清掃されており、ユーザー満足度も96%と非常に高い。しかも業界最長クラスの1年保証付きだ。購入者の60%は「初めて中古品を購入した」という顧客である。レビューでは「起動が早い」「想像以上に綺麗」などの声も多い。初期設定済みであり、最短翌日配送に対応している。
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株式会社ポンデテック 代表取締役社長 財津和也
2011年、ITエンジニアとして関西電力入社。エネルギーDX推進のジョイントベンチャー K4Digital社の立ち上げに従事し、業務外では2016年にイノベーション活動団体 k-hack を立ち上げ。同団体発でTRAPOL社、ゲキダンイイノ社が事業会社化、2社の0→1での事業化に従事。現在は株式会社ポンデテック代表取締役。再生パソコンを通じた障がい者雇用の選択肢拡大に取り組む。
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株式会社ポンデテック
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