経験者だからこそ気付き、寄り添えること。癌の闘病を乗り越え、同じ患者の方にもファッションを楽しんでもらうために生まれた「mon coeur」。治った後もおしゃれを続けられるように。
1993年に生まれたハットブランド「coeur」。デザイナーMichiko Uedaは、帽子デザイナー平田暁夫氏に師事し、5年の歳月を経てオートクチュールの技術を習得。その後、独立しcoeurを立ち上げます。
今年で30周年を迎え、今までも自身の技術を活かしたモノづくりが支持され、その長き歴史の中では様々なブランドとのコラボレーションも数多く手掛けてきました。今回立ち上げた「mon coeur」は、その華やかなファッションに身を置いたcoeurとは異なり、そのファッションという根幹は残しながらも、がん患者の方へ向けた帽子というコンセプトの中で誕生しています。
それはデザイナー自身の闘病がキッカケであり、本当に必要なものは何か?という疑問と、自身が過ごした闘病生活の中で生まれた悩みを解消するというところから始まりました。
上田道子/Michiko Ueda
1988年に帽子デザイナー平田暁夫氏に師事。
オートクチュールの技術を習得。
1993年にハットブランド「coeur」をスタート。
2014年に大阪・淀屋橋にショップ兼アトリエ「 CHAPELIER coeur 」をオープンさせる。
2022年に大阪・堺に「coeur Atelier&Gallery」を移転オープン。(不定期営業)
2023年に「mon coeur」をスタート。
https://www.instagram.com/chapelier_michikoueda/
何気ない日常の中、急に押し寄せた違和感。そして発見された乳がんの存在。
デザインと製作の多忙な日々に追われ、なかなか行けなかった健康診断。
2021年10月、自分の胸に違和感を感じ、すぐに病院へ向かいました。
自分では全く予期せぬ結果が返って来ます。
「乳がん」
母が乳がん闘病者だったこともあり、その可能性には危惧していました。
しかし、いざ自分もなるかということは、皆さんあまり想像出来ないものだと思います。
そこから私の闘病生活が始まりました。
家族への心配、仕事への心配。様々な悩みが自分の中で巡ったことを鮮明に覚えています。
自分の当たり前と思っていた日常の景色が一変しました。
抗がん剤治療と入院。当たり前だったものが無くなる瞬間に直面する。
家族とも話し合い、「家族みんなで向き合って、治療を受け入れていこう」という話になりました。その後、通院生活が始まります。
そして同年11月より、大きながんセンターを紹介していただき、より精密な検査が始まりました。そこにはたくさんの同じがん患者の方が来院されていたのです。皆さん、自分と同じように闘っている人たちなんだと思っていると、若い方も多く、その光景には考えさせられるものがありました。
そして抗がん剤治療のスタートです。
2回目の抗がん剤の点滴から、驚くほど突然に脱毛が始まりました。当たり前だと思っていたものが無くなる瞬間。それは悲しく、どこかみじめにも感じ、落胆としてしまいました。
それだけではありません。『その事実を家族が驚くのではないか...。より心配を掛けるのではないか...』。自分のこと以上に心配を抱き、私はその姿を3ヶ月以上、家族に見せないように生活しました。
自分自身で納得出来ないもの。それを受け入れられないまま、過ごす毎日でした。
ケア帽子との出会い。帽子職人として向き合った、自分自身の気持ち。
髪が抜けてからというもの、日常生活で被るコットンジャージ素材で出来たニットキャップのようなものが、必需品となりました。治療前にウィッグを作ることを勧められたこともあり、私は自毛で作ったウィッグを被るようにしたのですが、出来上がるまでは市販のウィッグを代用していました。
今のウィッグは昔のものに比べると非常に良いものですが、やはり今まで自毛で過ごしてきた感覚からすると、暑さや蒸れを感じたり、アジャスターの締め付けで頭痛がしてきたりと悩みは尽きませんでした。
『ウィッグか、ケア帽子しか選択肢がない』
ウィッグ以外の選択肢として着ることが出来るケア帽子は、明らかに自分の状態が伝わる為、外出には向かない。長い間、ファッションに従事してきた自分にとって、非常に苦しい時間となりました。正直に言えば、少しの間ですがファッションを楽しむことはもう出来ないんだと、楽しむ気持ちを放棄した時もありました。
ただ私は帽子職人です。
この経験を活かし、何か出来ないか。鬱々としていた気持ちから、沸々とした気持ちに変わり、それが今思えば向き合った瞬間なんだと思いました。
背中を押してくれる人の大切さ
そんな私の目に輝きと炎が戻って、その想いを形にしたいと思い始めました。
・外出するとき、気軽に被れるウイッグ以外の選択肢が欲しい。
・窮屈で蒸れるウィッグから解放されたい。
・日常に寄り添って一緒に頑張れる帽子。
・治療中でも素敵ねと褒めていただけ、気持ちが前向きになれる帽子。
新たな自分にしか出来ないケア帽子を作ろうと、先生に言って驚かれたのを思い出します。
「私、帽子屋なので、抗がん剤治療している皆さんの為に帽子作ります!」
この突然の宣言から手術に向かい、9時間半にも及ぶ大手術でしたが、手術は無事成功。手術を手掛けてくださった先生にも、自分にしか出来ないケア帽子を作ろうとしていることを伝えました。すると、その先生は、
「ケア帽子を被りたくないと言っている患者さんがいるのは事実です。嘆いている人が多いので、早く作ってください!待ってる人がいますから!」
と言ってくださり、私はそれに非常に心を打たれました。
必要とされるもの、今の私なら作れると確信した瞬間です。
mon coeur
そこからケア帽子の製作をスタート。髪の毛が抜けてから、何が気になるか。それは側頭部や後頭部の印象が大きく、そこに僅かに見える髪の毛の印象で、全体的に髪があると認識されます。
ただ私の中で特別なものを作る気はありませんでした。
いつものデザインのものを、がん患者の方が違和感なく被れるもの。
素材に配慮し、被り心地を考え、見えたくないところは隠しながらも、おしゃれを楽しみ、気分が上がる帽子。
coeurの世界観そのままに作り上げること。
男性も女性も、子供たちも、闘病中であれ、楽しむという気持ちをあきらめないで済むように。
治療が終わってからも、日常で被れる帽子であって欲しい。
それは治療が終わった後も人生は続く。
自分はそう思ったからです。
がんセンターで見かけたあのおしゃれな人に、あの時のあの人に、きっと似合うはず。
そう思い描きながら作った帽子です。
そして、私自身に似合う帽子たちを作っていきます。
がん。
若い人、それは子供にも訪れる可能性のある病気です。
苦しい闘いの中、少しでも向き合えるように出来るものを作りたい。
帽子職人として生まれた自分の人生を尽くし、人の為に役立つ帽子を是非皆様に届けられたらと思います。
Makuakeプロジェクト
外出が楽しくなる。帽子デザイナー自身のがん治療経験から生まれた帽子/モンクール
https://www.makuake.com/project/moncoeur/
mon coeur
HP
Instagram(mon coeur)
https://www.instagram.com/mon_coeur_hat/
Instagram(coeur)
https://www.instagram.com/coeur_official_/
mon coeurの資料請求やお取り扱い、ご相談に関しましては、下記にご連絡ください。
info@coeur-chapeau.jp
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