ヌーラボが採用候補者の“履歴書”を見ない理由
プロジェクト管理ツール「Backlog」をはじめ、チームのコラボレーションを促進し、働くを楽しくするサービスを提供するヌーラボ。2021年5月12日に、「採用活動でとるべきスタンス」「具体的なアクション」「人事が約束すること」などを記した採用ポリシーを社外にも公開しました。
・ヌーラボの採用ポリシー全文はこちら:https://nulab.com/ja/blog/nulab/nulab-hiring-policy/
このストーリーでは、ヌーラボが採用ポリシーの内容を通して伝えたかった「ヌーラボの価値観」や、策定を担当した人事担当者の思いをお話しします。
作ったのではなく、「ヌーラボらしさを明文化した」感覚
採用ポリシーの策定を主導したのは、人事担当者の安立沙耶佳(以下、アンヂェラ)。アンヂェラは、「採用ポリシーは、何かを変えるために作ったものではなく、ずっと前からヌーラボの文化として存在していた共通認識を明文化したもの」と説明します。
実際に、採用ポリシーは人事労務課で作成したものを一方的に社内に周知したわけではなく、採用に携わるさまざまな社員のレビュープロセスを経て社内に発表したうえで、「ここはこんなふうに表現するのはどうか?」「これだと誤解を招くかもしれないから、こうしたい」といった提案を反映し、多くの社員によって命が吹き込まれ、完成しました。
「人材業界の当たり前」とかけ離れているヌーラボの価値観
人材サービスを運営する企業の営業担当として、企業の外から採用活動を支援する立場からヌーラボに転職したアンヂェラは、当初、ヌーラボの「当たり前」に驚かされたと言います。
アンヂェラ:ヌーラボに人事担当として入社し、採用活動に取り組むため社員と話していると、ヌーラボの社員が持つ採用基準や価値観が、「人材業界の当たり前」とかけ離れていることに気付きました。たくさんの企業の採用を見てきた私ですが、固定観念が見事に打ち崩されたのです(笑)。
ここからは、入社当時のアンヂェラが驚いた「ヌーラボにとっての常識」をご紹介します。
ヌーラボの採用活動は「お互いを知る場」である
ヌーラボが公開した採用ポリシーの「採用活動でとるべきスタンス」の項で繰り返し強調されるのが、ヌーラボと採用候補者が「対等である」という姿勢です。
アンヂェラ:他社の採用活動と比べて最も違いを感じたのは、採用活動に臨む姿勢・スタンスです。ヌーラボには、私が入社した時点ですでに「採用活動は相互理解の場である」「お互いに選び、選ばれる立場である」という意識が根付いていました。たくさんの企業の採用をお手伝いし、企業側が持つ採用基準を確認したり選考の合否フィードバックを伺ったりしていた私にとって、「企業も選ばれる側だ」「企業と候補者の双方にとって、採用活動を良いものにしよう」という考え方が定着している会社は、とても珍しいと感じました。
ヌーラボは、技術コミュニティで出会ったエンジニアが創立した会社で、現在も社員の過半数がエンジニア。長い時間をかけ、コツコツと自社サービスを育ててきました。その気質が、「実態以上に良く見せることをせず、ありのままを知って、好きになってもらう」というスタンスに繋がっているのかもしれません。
アンヂェラ:採用活動は、ヌーラボが候補者を知るためだけに行うものではなく、候補者がヌーラボを知るためでもあります。ヌーラボを知り、もっと好きになってもらい、残念ながら社員になってもらえなかった場合も、引き続きヌーラボを応援してほしいと考えています。実際、あるタイミングでは入社が叶わなかった方が、別のタイミングでヌーラボに入ってくれたケースも少なくありません。一度関わったご縁を大事にしたいですね。
通常、KPI指標になりやすい「選考応募数の最大化」をヌーラボが重視していないことも、このポリシーに繋がっています。
アンヂェラ:ヌーラボに興味を持ち応募してくださった方に対し、丁寧に対応できないという事態は絶対に避けたいと思っています。だからこそ、採用サービスのスカウトメールをとにかくたくさん配信する、などの施策は行いません。それよりも、面談や面接のもっと前から、ヌーラボに興味を持ってくれた方がなるべく多くの情報をインターネット上で手に入れられるよう、積極的な情報発信を続けてきました。
人事担当者だけでなく、広報担当者やマーケティング担当者、開発者も巻き込んだ情報発信を行ってきたヌーラボ。ヌーラボの雰囲気や価値観が伝わるよう、「なぜ」の部分にフォーカスして福利厚生や制度を説明するブログ記事を書いたり、オンラインイベントを開催し、技術的な取り組みはもちろん、雑談のようなコンテンツを配信したりといった活動をしてきました。一見採用活動に直結しそうにない施策ですが、「実はずっと楽しそうと思って気になっていた」「入社の後押しになった」という声は少なくなく、社員へアンケートを行った結果、入社したメンバーのほとんどがそういった発信を「入社するかどうかの参考にしていた」と回答しました。
ヌーラボの採用活動に「履歴書」は不要
採用ポリシーの「具体的なアクション」には、「履歴書の提出は任意」と明記しています。
アンヂェラ:人材業界にいた私は、「採用要件」として年齢や学歴の話が出てくることを当然だと感じていました。ヌーラボに入社してすぐの頃、「この方は技術レベルは高そうですが、年齢が少し高すぎるかもしれません」と私が発言した際に「業務を遂行できるかどうかを知るために年齢は関係がないから、話してみたい」と社員に言われ、ハッとしたことをよく覚えています。
ヌーラボには現在、幅広い年齢の方が在籍し、活躍しています。ある社員は、「自分の学歴では、他社の選考を受けることすらできなかった」と笑いながら話してくれました。その社員はヌーラボにはなくてはならない存在です。
アンヂェラ:学歴、年齢、性別(ジェンダー)、証明写真を含む容姿、思想・心情など、ヌーラボでお願いしたい業務の遂行には必要のない情報がたくさんあることに気付きました。そこで、履歴書の提出を任意にしたのです。
筆者(広報担当者)が取材を受ける際など、たまに、「ヌーラボではどんな人が活躍しているか」と聞かれることがあります。社員の傾向・タイプを分析し、活躍している社員と同じ属性の人を採用する…といった採用アプローチを行っている企業もあるようです。ヌーラボはこの点も異なる考え方を持っています。
アンヂェラ:ヌーラボは、経験や出身業界などのバックグラウンドが散っている(異なっている)ほど良いと考えています。海外メンバーと日常的に協働するということもあり、社員の多様性があればあるほど組織は強くなると考えているためです。「怒りっぽい人はヌーラボには合わない」といった根幹の価値観のすりあわせは行っていますが、それ以外は個人の特性。活躍できないとしたらそれは、活躍できる環境を用意してあげられない会社にも責任があるということです。また、たとえば他社の選考基準としてよく聞く「コミュニケーション能力」についても、笑顔でノリよく話せることがコミュニケーション能力だとは考えていません。
人事担当者の最も重要な仕事は「社員が働きやすい環境を作ること」だ
採用ポリシーは、採用活動におけるスタンスや人事担当者としての約束ごとを記したものですが、その背景には「社員が働きやすい環境を作るのが人事担当者の最も重要な仕事である」という考えがあります。
アンヂェラ:採用活動の業務を担う人事担当者は、つい媒体ごとの応募数や採用単価など、目先のスコアを気にしてしまいがちです。人材業界で外から企業のお手伝いをしていた私自身も、そのような採用活動を無意識のうちに当たり前だと思っていました。ヌーラボに入社してから、なによりも大事なことは「良い会社をつくる」こと、そしてそのあとに「届けたい相手に届ける」という順番だと気付いたんです。良い会社をつくることは一朝一夕ではできません。社員がパフォーマンスを最大化できるよう制度や評価を見直し、必要であれば新たに作ったり廃止したり。当然、経営陣に自ら働きかける場面もあります。
結果的に、高い内定承諾率や、業界では桁違いに低い採用単価を実現できたことで、さまざまなメディアにも注目を頂いているヌーラボの採用活動。今回の採用ポリシー公開にはどんな思いを込めたのかも聞きました。
アンヂェラ:ヌーラボに入社してから5年が経ち、入社時に驚いた「人材業界の常識とのギャップ」が自分のなかでいつしか当たり前の価値観になっていました。世間では、よく「採用広告と現場の実情はまったく違う」といった嘆きも聞きますが、ヌーラボではなんの建前もなく、社員にとって働きやすい環境、社員にとって良い会社を作るために動き、誠実に候補者に向き合い採用活動を行うことができています。これはとても幸せなことだ、自慢できる文化だ、と改めて思いました。ヌーラボの出発点は、経営陣がオープンソース(*)のコミュニティで一緒にものづくりをしていたこと。であれば、採用ポリシーもオープンにして、他社の人事担当者や人材業界の方々にどんどん複製、カスタマイズ、利用してもらったらいいんじゃないかと考えました。
* 筆者注:オープンソースとは、ソフトウェアのソースコードを公開し、誰でも自由に利用、変更、配布することができる開発手法。
ヌーラボの採用活動のこれから
採用人数計画の増加に伴い、面接などの採用活動に関わる社員や、人事担当者も増えたヌーラボ。これからの採用活動に対する思いも聞きました。
アンヂェラ:ヌーラボの基本的な価値観と、だから当然こういうスタンスになるよね、という内容を「採用ポリシー」という形で明文化し、社内外にお知らせできたので、ここからますます「ヌーラボらしさ」を伝えていきやすくなると期待しています。大事にしたい、これからも残したいヌーラボの価値観を「いいな」と思ってくださる社外の方々と相互に良い影響を与え合いながら、ヌーラボの採用活動だけでなく、日本全体の採用活動が企業にも採用候補者にも良いものとなっていけばいいな、と考えています。
・聞き手・執筆:メギー(広報担当者)
・ヌーラボの採用ポリシー全文はこちら:https://nulab.com/ja/blog/nulab/nulab-hiring-policy/
・採用ポリシー公開に関するプレスリリースはこちら:https://nulab.com/ja/press-release/pr-2105-nulab-hiring-policy/
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