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ストーリーの著者は、読者でもあります

島と親子をつなぐと日本の未来も変わる。離島で人間力を育む「シマ育」を推進するリトケイの想いとは。

著者: 特定非営利活動法人離島経済新聞社

2023年秋、特定非営利活動法人離島経済新聞社(以下、NPOリトケイ)は、島と親子をつなぐ『シマ育コミュニティ』( https://shimaiku.ritokei.com/ )を立ち上げました。



「シマ育」とは、「シマ(=互いに支え合える地域共生コミュニティ)の中で多様な人と関わり、本物の自然・文化にふれながら人間力を育む」こと。


活動と目的のかなめは、メディアや勉強会を通じて「シマ育」と出会う人を増やし、「シマ育環境」をアップデートするためのヒントを共有すること。2023年度に開催した全10回の「シマ育勉強会」は、累計200名の想定に対して累計430名余りが参加するにぎわいに。勉強会をきっかけに島への移住を決めた参加者も複数あらわれました。


都会のように多様なものはない小さな島を、子育て環境として推奨したい理由は何か。「シマ育」が持つ力とは何か。島にとって、親子にとって、日本社会にとっての「シマ育」の重要性を、NPOリトケイ代表理事・統括編集長の鯨本あつこが語ります。

子育てに必要なのは「支え合えるコミュニティ」


NPOリトケイは、全国約400島余りの有人離島地域を中心に、小規模コミュニティで生きる人々が心豊かに生きるためのヒントを届けるメディア運営と、地域振興事業を行なう民間のNPOです。


2010年、瀬戸内海の島で「この島は宝島なんだ」と話す島の人々に出会った私は、その言葉に惹かれ仲間と共にウェブ版『ritokei』を創刊。続く2012年創刊のフリーペーパー『季刊ritokei』は、約170島を含む全国1,300ヶ所で配布される国内最大級の島メディアに成長。島で生きる人の声や営み、文化や経済の話題を届けてきました。



2015年に私は親となり、生後3カ月から子連れの離島出張が始まりました。そこで感じたのは、大人だけで島を訪れていた時とは明らかに異なる、島の人々のまなざしとコミュニケーションの変化でした。


「大変じゃない?抱っこしてるからゆっくり食べて」


島の食堂で子どもを抱えたまま食事をしようとすると、初めて会った食堂のお母さんが声をかけてくれ、しばらくの間、子どもを預かってくれました。しかも1島だけでなく、5〜6島で同じことがあったのです。


集落の大人や子どもたちから声を掛けられることも増えました。子どもが中心にいるだけで、「どこからきたの?」「何歳?」と、取材相手だけでないたくさんの島の人々との交流が生まれていたのです。



一方、リトケイ本部のある東京を子連れで歩くと、声を掛けられることがめずらしいばかりか、ベビーカーを足蹴にされることも。島と都会と、子どもをとりまく空気の違いに愕然としたのです。


こうした経験で確信したのは、島には「子は宝」の価値観が根強く、子どもを中心に人と人が支え合うコミュニティがしっかりしているということ。それならば、子どもを育てる環境として、島には可能性があるのではないか?


そんな問いをもとに、2020年には「子どもは島で育てたい」特集を発行し、有識者や島の子育て経験者、島で育った人、島で子育てしてみたい人などの声を集め、子育て環境としての島の可能性を言語化。



2023年には『シマ育コミュニティ』の立ち上げと共に「シマ育のススメ」特集を発行。保育や子育て分野の有識者に、日本の子どもたちがおかれた環境に詳しい精神科医の意見など、多様な声を集めながら「シマ育」の価値を可視化し、「シマ育勉強会」により島と人に「学び」と「つながり」を提供しました。



『シマ育コミュニティ』は今、スタートアップ期にあります。しかしながら、これまでの取材や勉強会等により、この活動が、島・親子・日本社会の課題解決を支えるものであることがわかってきました。

子どもの学校適応力や自然環境にふれる機会を提供する「シマ育コミュニティ」


子育て中の親子にはさまざまな悩みがありますが、中でもこうしたケースは「シマ育」で解消できる場合が多いことがわかりました。


  • 子どもの性格と学校の雰囲気が合わない(特に大規模校に合わないケース)
  • 子育てに協力してくれる人や相談できる人が身近にいない
  • 自然や文化を体験できる環境がない


例えば、離島留学に子どもを送り出した親御さんはその経験をこう語ります。


「島はお互いが家族として助け合える場所。集落の皆さんは子どもたちを自分の子どものように見守って、ある時は叱り、ある時はほめ、応援してくれます」

「保育園から中学生までみんなが兄弟のように過ごし、いじめもありません」

「少人数のため様々な役割を引き受けることで成長し、人間力、生活力が身についた」


現在、離島留学制度を実施する学校は年々増えているものの、親御さんからすると「どの島に行けばよいかわからない」「まとまった情報がない」ことが悩み。


そこで『シマ育コミュニティ』に離島留学や子育て移住、体験プログラムの情報をまとめ、オンラインで定期開催中の「シマ育勉強会」で島の受け入れ団体の声を直接聞ける機会をつくったことで、シマ育勉強会をきっかけに離島留学先を決定した親子も出現。



2023年度に開催した離島留学モニターツアーでは、ツアーをきっかけに子育て仲間を得る家族もあらわれました。

離島に興味のある人たちへ向けた「学び」と「つながり」を提供ーー「シマ育コミュニティ」の役割と効果


日本の離島地域は1950年代より人口減が続き、ピーク時の10分の1の規模となった島も少なくありません。


子どもが減ると、保育園や学校は消滅してしまいます。しかし、子育ての基本インフラが消滅すると、子育て層が暮らせない島となり、価値ある文化も営みも途絶えてしまいます。


そのため近年は、「離島留学制度」や「子育て移住」を推進しながら、島で育つ子どもや親を増やそうという取り組みが増えていますが、リトケイには「広報の仕方がわからない」「運営方法に悩みがある」という悩みも届いていました。




そこで『シマ育コミュニティ』や「シマ育勉強会」を、「学び」を軸に「つながり」を提供するラーニングコミュニティとすることで、島外の親子を受け入れたい島の人々がより良い出会いを得られる場としました。



小さな島は人材も限られ、その声を社会に届けることも簡単ではありません。『シマ育コミュニティ』などリトケイの各メディアの中心読者は「島に興味のある人」のため、小さな島の声も効率的に届けることができるのです。


また、多くの島では保育士や学習塾の講師、寮のスタッフなど、子育て教育環境を支える人材不足も悩みの種です。人材不足が全国で深刻化するなか、海を隔てた島に渡る人材の採用は簡単ではありません。そこで「シマ育勉強会」を通じて「島の子育て教育環境」に興味のある人々に直接訴求することで、島に興味関心の高い人材が島につながることができるのです。

「シマ育コミュニティ」から学べる、日本社会の子どもたちの「生きる力」


人口減・超高齢化社会に突入した日本。今後その影響は社会のあらゆる場面に表れてきます。人数が減った高齢化社会の中、心豊かに生きるためにはどうすればよいか? そのヒントは、全国に先んじて、人口減・超高齢化社会を経験してきた離島地域にあります。


例えば、三重県の神島では島の子どもたちが冬場の「灯油運び」を担っています。階段が多く車の入り込めない路地の高齢者宅に、灯油を運ぶ役を担う子どもたちは、自らの活動が島の人々の役に立っていることを誇りに感じているといいます。



かつては日本社会のあちこちで、子どもたちが社会の一員として活躍する場面がありました。しかし、1970年代頃からの急速な近代化により、子どもたちをとりまく環境も変化。自然の中や、地域社会の中でたくましく育つ子どもたちは減っていきました。


島で育つ子どもたちは、地域の大人たちが向ける「子は宝」という温かな眼差しのもと、地域社会の一員として、さまざまな経験を得ることができます。



この経験は、子育て教育分野で求められている「生きる力」「人間力」「非認知的能力」を育むことにもつながることから「シマ育環境」は、今後の日本を支えるために必要な力を持つ人材育成の場としても重要なのです。


加えて、子育て教育環境の魅力化は、島の無人化防止にも直結します。離島は世界6位規模の広大な海を誇る日本にとって、重要な拠点。国境地域の島々は特定有人国境離島として、無人化を防ぐための多様な施策が講じられています。


島のかなめは「人」。特に、島の文化や営みを継承できる未来世代と島をつなぐ「シマ育」は、日本列島の宝を守る取り組みでもあるのです。


離島地域や企業協力による「シマ育コミュニティ」の活用と支援

「シマ育コミュニティ」は2023年度は日本財団の助成を受け、「島」を軸にたくさんの子育て層が集まる場をつくることができました。



2024年度からはNPOリトケイの単独事業となることから、「シマ育勉強会」や「モニターツアー」を活用くださる離島地域の市町村や団体、この活動を共に盛り上げてくださる企業スポンサーを募集しています。


島と親子がつながり、子育て教育環境が魅力化されることで、島・親子・日本の未来はプラスにかわる。リトケイまでお問い合わせください。





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