日立グループで進める「学びの場」づくりへの挑戦 |[イベントレポート]ツギステ 桜のどか氏×ドラッカー経営学者 井坂康志氏「ジョブ型の働き方が求められる時代のキャリア形成」
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技術革新、働き方の多様化、グローバル化など、企業を取り巻く環境が大きく変化する今、企業の人財育成のあり方が問われています。ジョブ型を基盤とした働き方が進展する中、「事業成長と従業員一人ひとりの成長をどのように実現するか」は、企業にとってますます重要な課題となるでしょう。
このような状況の中でキャリア意識や学びの姿勢に目を向けると、個人の内発的動機から自ら成長を求める姿勢も重要になると想定されます。そこで、日立グループのコーポレートユニバーシティである日立アカデミーは、「学習する組織文化の構築」に寄与すべく、主体性や興味に応える新たな学びの環境を整える方向で活動領域の拡大を進めてまいりました。(※Center of Excellence)
その一環として、当社は渋谷の共創施設「SHIBUYA QWS」にプロジェクトオフィスを設置し、2023年より、個人の好奇心を刺激し主体的な学びとキャリア形成を促す場の提供を開始。社会課題の解決に意欲的な各界の有識者やユニークな活動家と協力し、「能力や才能は経験や努力によって伸ばせる」というグロースマインドセットに基づく学びの機会を創出しています。
2月26日には、SHIBUYA QWSで「働き方の変化に伴い求められるキャリア意識改革への戸惑い」や「働く環境の変化への不安」に焦点を当てたイベントを開催しました。このイベントでは、アイドルのセカンドキャリア支援に取り組む株式会社ツギステの桜のどか氏をお招きし、その活動内容や思いを通じて、参加者が前向きな意識変容のヒントを得ることをめざしました。
ここでは、当日参加した方からの声を交えながら、学びの内容を紹介します。
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「ジョブ型の働き方が求められる時代のキャリア形成 〜自分にとって幸せな働き方とは〜」
ゲスト(左):桜 のどか(さくら のどか)氏
聴き手役(右):井坂 康志(いさか やすし)氏
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2024年2月26日、社会価値につながる種を生み出す会員制の共創施設「渋谷キューズ」にて、日立アカデミー主催のイベント【ジョブ型の働き方が求められる時代のキャリア形成 〜自分にとって幸せな働き方とは〜】が開催された。
ゲストの桜のどか氏は、インディーズ女性アイドルグループ「仮面女子」の初代メンバーだ。グループ卒業後は女優として活動を続けながら、アイドルのセカンドキャリアを支援する株式会社ツギステの執行役員に就任。桜氏と同じようにアイドルを卒業した人の就労支援を行っている。
芸能界やスポーツ業界など、独自の経歴を歩んできた人はその後のキャリアをどのように歩んでいくのか。本イベントが、自分自身の今後のキャリアを考える参考にもなった人も少なくないだろう。ここからは、当日の詳細をレポートする。
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元アイドルの肩書きを活かして、現アイドルのセカンドキャリアをサポート。
イベントではまず、桜氏のアイドル時代の活動について紹介。聴き手の井坂氏は「今日は元アイドルと大学教授という珍しい職種の組み合わせですね。しかし、だからこそ予想外なお話が聞けるのではないでしょうか」と、本対談に期待を寄せた。
「はい!ぜひいろいろお話させてください。アイドルはキラキラと輝いて見えるステージの裏で、並大抵ではない努力を積み重ねています。しかし、卒業後は頑張ってきた経験やキャリアがすべて泡のように弾けてなくなってしまう……そんな状況にずっと疑問を感じていました。そんな中、私と一緒にアイドル活動をしていた橋本ゆきさんが、アイドルを卒業した方を対象にキャリア相談やスキルアップ研修などを行うツギステを立ち上げたんです。彼女の想いに賛同し、私もメンバーとしてジョインしました。“ラストステージより輝く日常を”をテーマにさまざまな活動を行っています。」
ドラッカー学会の共同代表でもある井坂氏は「ドラッカーは、“会社というものはお客様を見るとよくわかる”と語っています。ツギステでは、どんなお客様がいらっしゃるのでしょうか」と、ドラッカーの提唱した理念や考え方などを交えながら桜氏へ質問を投げかける。
「基本的にはアイドル活動を続けてきた方です。ご相談いただく内容は、“ずっとアイドルとして活動してきて、いざ卒業したら次に何をしていいかわからない”や“自分のキャリアを職務経歴書にどう書いていいかわからない”といったものがほとんど。20〜30代の方を中心に幅広い方が相談に来られます。」
また、「アイドルというキャリアを持つ人はどんな特性や強みを持っているのか」という質問に対しては「コミュニケーション能力」だと答えた。
「アイドルはステージに立つ以外の時間、握手会や撮影会を通じてファンの方と1対1のコミュニケーションを築いています。自分の魅力を数十秒で伝えられるよう活動しているので、自然と対人スキルが磨かれていくんですね。その経験は、営業などのお仕事で活かせると思います。あと、精神面・肉体面共にタフな方が多いですね。彼女達は睡眠時間を削ってまで、撮影や取材、練習やリハーサルなど毎日びっしりと詰まったスケジュールをこなしますから。それと、基本的にスケジュール管理はすべて自分で行うので、そういったスキルもかなり鍛えられています。」
桜氏は、ツギステに相談へ来る人とのエピソードや自身のアイドル活動を振り返りながら、元アイドルという経歴を持つ人の強みを紹介していく。他にも、彼女がアイドルを始めた経緯や地下アイドルとはどんな存在なのかなど、さまざまな話題が繰り広げられた。
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第一線を離れて新たなキャリアへ。その決意にもっと自由な選択肢を。
現在はツギステの執行役員としてセカンドキャリアを築いている桜氏だが、彼女もまた、アイドル卒業時にはツギステへ相談に来る人と同じ悩みを抱えていたと話す。
「私自身、グループの卒業を考えたとき、“その次をどうするか”でとても悩みました。でも当時、その悩みを相談できるところがどこにもなかったんです。私はたまたま自分で自分のやりたいことを見つけ出せましたが、もしもあのときアドバイスをもらえる場所があれば、キャリアの選択肢はもっと広がったのではないかとも思います。ツギステへのジョインを決めたのは、そうした想いがあったからというのも大きいですね」
井坂氏によると、アメリカなどの諸外国では戦闘機のパイロットやプロスポーツ選手、芸能人といった特殊な職種に就いていた方が一線を退いた後、自身で新たなビジネスをスタートする割合は非常に高いそうだ。しかし日本では、それらの職種に就いている人が引退後・卒業後に選べるキャリアの自由度はかなり低いと話す。
「井坂さんのおっしゃる通り、現状は全力でアイドルを頑張った後、次のステップに進めないで悩む人が大半です。卒業後のキャリアについて、マイナスイメージを持っている人も多いでしょうね。このままでは、“やりたいことがあるけど将来が不安でチャレンジできない”そんな若者が増える一方だと思います。私は、その状況を変えたい。自分のやりたいことを全力で頑張った後、“他に選択肢がないからこの仕事を選ぶ”ではなく“たくさんある選択肢から自分のやりたいことを自由に選ぶ”そんな社会をつくりたいと考えています」
桜氏の言葉に対して、参加者も大きく頷いて共感を示した。
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人生のピークを何度でも迎えられるよう、新たなカーブを描き続ける。
イベントの後半では、井坂氏がアメリカの実業家ボブ・ビュフォード氏が提唱したあるグラフを提示。そこには人生の経過を示した表に、S字型の曲線が描かれていた。
「人生のキャリアはS字カーブの様に表されます。生まれてから小学校、中学校、高校と少しずつ修練を積み、そこで培ったものを活かして獲得の人生を歩んでいく。獲得とは、自動車を買う、家を買う、結婚して子どもを育てるといったことですね。そしてピークに達した後は、カーブが少しずつ下がっていきます。平均年齢が今よりも低かった時代はS字カーブが1本あれば十分でしたが、人生100年時代と言われる現代では、35〜45歳で第2のカーブのつくるべきだと考えられるようになってきました。そうしないと、人生の後半が下降するだけの時間になってしまいますからね。人によっては第3のカーブ、第4のカーブが必要になってくるでしょう」
井坂氏の話を聞いて桜氏は「とても勉強になります!S字カーブの話、正にそうだなと感じました。私もちょうど今、第2のカーブを描き始めているところだと思いますが、第3、第4と言わず第5、第6……と、新しいカーブをたくさん描いていきたいです」と、感心した様子を見せた。
桜氏のように、若い内からアイドルやスポーツ選手として第一線で活躍してきた人は、最初のS字カーブのピークも必然的に早くなる。2本目のS字カーブを描かないままでいると、人生の大半が下降する状態になりかねない。しかし、桜氏の言うように次々と新しいカーブを描いていけば、人生の大半をピーク状態で過ごすことが可能なのだ。
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チャレンジを恐れず進み続ける。その先に、イキイキと働く自分が待っている。
途中、司会から投げかけられた「先程、アイドルを卒業して新しいキャリアを築くときに活かせるスキルの話がありました。反対に、アイドルを卒業したら捨てなければいけないものはあるのでしょうか」という質問に対して、桜氏はこう答えている。
「アイドル活動を通じて培ってきた自信やスキルは、基本的にすべて次のステップに活かして欲しいと思います。あえて捨てるべきものがあるとすれば、新しいものや価値観を受け入れずにストップしてしまうことでしょうか。所属する企業によってルールは異なりますし、職種によって求められる知識も違います。そういったものを素直に受け入れ、自分なりに勉強して身につけていくことが大切なので、変化を恐れず進んで欲しいですね。でも、アイドル経験のある方はみなさんチャレンジ精神が豊富なので、自分が一度やりたいと思って始めたら、どんなキャリアを選んでも前向きに、楽しそうに取り組まれていますよ。最初は“会社に勤めるイメージがまったくできない”と話していたある女性も、現在は事業承継に関する会社でイキイキと活動されています」
また、ツギステではキャリアの相談に来た人へ「こうしましょう」と決まった選択肢を提示することは決してないと話す。相談者本人が自分のキャリアを考え、自ら決断することを大切にしているそうだ。井坂氏は、その姿勢をドラッカーのコンサルティング手法と非常によく似ているとも話した。
最後に設けられた質問コーナーでは「自分は現在大学3年生で少しずつ就職活動を始めてはいますが、まだこの道に進みたいというものが見つからない。たくさんのアドバイスをもらうが、さまざまな意見をどう活かせばいいのか」や「自分がこれまで培ってきたキャリアとはまったく異なる第2のカーブを描く場合、どのような考えを持てばいいか」といった質問が投げかけられた。
他にも、「ジョブ型という働き方が浸透してきているが、アイドルという働き方こそジョブ型の走りだと感じた」という感想や「日立グループには、現役時はプロスポーツ選手として活動し、引退後はオフィスで会社員として働く人が一定数います。その人達が抱える課題と桜さんのおっしゃることがリンクしているように感じました。ツギステでは社会人として必要な一般教養が学べる勉強会やマナー研修会などを実施しているということなので、ぜひ日立グループでも開催してもらいたいですね」という期待の声も寄せられた。
アイドルを卒業する。その言葉だけを聞くと、「夢の終わり」そんな印象を持つ人がいるかもしれない。しかし、ツギステで自分自身のセカンドキャリアを築いている桜氏の表情は、ステージの上に立っているときと同じように輝いている。セカンドキャリアを考えることは、決して夢の終わりではない。次の夢を追いかけるという、非常にポジティブなチャレンジなのだ。
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株式会社 日立アカデミー
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