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経験値ゼロからのスタート。オンリーワンのおいしさと、惹きつけるパッケージが魅力の缶詰スイーツ「横浜ハイカラ」大ヒットまでの軌跡

著者: 株式会社エクラスト

2014年創業の株式会社エクラスト(神奈川県・横浜市)は、コンテンツ提案を得意とする企画イベント会社。商業施設、住宅展示場などでおもにファミリー向けのワークショップやマルシェといった体験型コンテンツの企画提案・運営を行っています。創業から4年、缶詰タイプのスイーツ「横浜ハイカラ」の企画・販売を手掛け、オンリーワンのおいしさとパッケージ戦略に注目が集まり大ヒット。イベント業からスタートし、なぜ異業種の缶詰スイーツに着手したのか。成功までの紆余曲折と商品への思いを代表取締役社長の坂本奈緒子がお話します。


         株式会社エクラスト 代表取締役社長 坂本奈緒子

地産地消事業をきっかけに商品開発するも苦戦、企画開発者のアイデアで缶詰スイーツに踏み出す

缶詰スイーツ「横浜ハイカラ」の始まりは、弊社がマルシェの企画・運営を担当している横浜の商業施設で、地産地消の出店ブースを強化するよう要請を受けたことがきっかけです。いろいろと調べる中で、横浜市が地産地消に貢献する事業計画を支援する「地産地消ビジネス創出支援事業」を知り応募。弊社は審査に合格し、補助金を使って商品開発に着手しました。

最初の開発商品案は、粉状にした横浜産の野菜と果物をナッツに絡めたヘルシーな商品。紹介してもらった製菓メーカーの企画開発者に意見を求めたところ、賞味期限が短く流通に適さない、手作り感が強くクオリティに難ありと評価は散々……。そのとき開発者から代わりに提案されたのが缶詰めタイプのスイーツでした。横浜産の野菜を使ってケークサレ(生地に野菜などを加えた甘くない惣菜タイプのケーキ)を作ってみないかと言われ、これは行けるかもしれないと思い一歩を踏み出しました。

販売を始めるも在庫が増えるばかり、ガトーショコラとチーズケーキの商品改良へ

ケークサレはフランス生まれのおしゃれなケーキですが日本では馴染みが薄く、単体では売れないと踏んでガトーショコラ、チーズケーキを加えた3種類で展開することに。しかし結果は惨敗、まったく売れませんでした。多くの在庫を抱えてやり直すか、やめるかの二択を迫られます。不完全燃焼のまま終わるのが嫌でやり直すほうを選びました。同時に補助金事業が終了したので地産地消の枠にとらわれずガトーショコラとチーズケーキに絞って改良に踏み切りました。

自信のある味はそのままに、パッケージの包む方法を一新

改良にあたり味には自信があったので、中身はそのままで包材を見直し見栄えを変えようと思い、初めてマーケティング会社に市場調査を依頼。一番刺さったアドバイスは「マルを生かせ」でした。マルは人が好感を持つ形と知り、スリーブ式のパッケージから缶詰のマル型を生かした包装に切り替え、しかも低コストで作れるパッケージをデザイナーに依頼しました。

出来上がったのが、折り筋がたくさん入ったマル型の包装紙。折り筋に沿って手作業で立体的に折り込んで缶詰を包み、異文化が融合する横浜らしく西洋のケーキと東洋の折り紙の技を組み合わせた唯一無二のパッケージが完成しました。折って包む作業は百貨店でラッピング経験を積んだ女性スタッフが一人で行っていましたが、注文の増加に伴い「よこはま障害者共同受注総合センター わーくる」を通じて障がい者施設に作業を依頼。障がい者の中には手先が器用で繊細な作業が得意な方がいると思いお願いしたところ、きれいな仕上がりで感動しました。現在は、地域活動支援センター「はーと工房」をはじめ、横浜市内の2カ所の施設にお任せしています。


リニューアルした折り紙式のパッケージ

パッケージのリニューアルで感じたブレイクスルー、ギフト需要が大幅にアップ

パッケージリニューアル後、ホワイトデー直前に出展した百貨店の催事で確かな手ごたえを実感。パッケージが映える透明な袋に入れて個包装で販売したら、これが爆発的に売れたんです。「見た目がかわいく、そのまま渡せるギフト」としての需要が花開き、第一のブレイクスルーポイントになりました。

これまでを振り返り売れなかった原因を考えると、マーケットを拡大したくて用途を絞り切れなかったのが一つ。包材のデザインと仕様を変えてギフトに振り切り、手土産に、防災食にというその他の用途はプラスαの情報として付加させたことが功を奏したと思います。

迷う楽しさ、贈る喜びを刺激しさらなる飛躍となった「クリエイターズパッケージ」

第二のブレイクスルーは、単価アップを機に商品の魅力を高めるために考案した「クリエイターズパッケージ」です。ヒントにしたのが台湾スイーツブームを牽引したパイナップルケーキ。ケーキのフレーバーは一種類ですが、個包装のデザインを一つずつ変えてどれにしようか選ぶ楽しさを加味したことで人気が爆発しました。

「横浜ハイカラ」もデザインのバリエーションを増やし、クリエイターが思い描く「横浜・神奈川」のイラストを採用。贈る相手やシーンを思い浮かべて買いたくなるイメージ喚起型の商品を目指した結果、迷う楽しさは複数買いにもつながり手ごたえを感じています。宣伝はおもにSNSとホームページだけですが、SNSは女性スタッフの感性で世界観のある写真や、可愛らしいトッピング例を投稿し反響を集めています。


選ぶ楽しさが加わったクリエイターズパッケージ

大切にするコンセプトは世界観に共感し、理解してくださる方との取引

「クリエイターズパッケージ」が始動すると、注文先に変化が表れました。ご当地缶詰専門店「カンダフル」をはじめ、「蔦屋書店」「CHOOSEBASE SHIBUYA」などのセレクトショップから注文が入り食品系雑貨としての地位を確立。「横浜桜木町ワシントンホテル」では「横浜ハイカラ」がセットになった宿泊プランの展開、ギフトサイトへの出店など広がりを見せています。ディスプレイ一つで売上が大きく変わる商品なので、弊社としては商品の世界観に共感し、見合う売り方をしてくれる「理解者」と取引したいというのが本音。高飛車になるつもりはありませんが、媚を売る必要もないので商品価値が下がる売り方はしないと決めています。

また、災害対策への意識が高まる時期にはメディアからの取材依頼もあり、コンセプトの絞り込みは必要ですが、お客様が多様なシーンをイメージして購入してくださるのは喜ばしい事です。

パティスリー級のおいしさと長期保存へのこだわり、2年を費やした開発期間と製造工場との出会いで実現

「横浜ハイカラ」の魅力は、引き付けるパッケージデザイン、パティシエ監修の本格的な味わい、2年間の長期保存の3点です。ケーキ自体は大手缶メーカーの研究ノウハウをもとに同メーカーの女性研究者と製菓メーカーの企画開発者、そして有名パティスリーで修行した女性パティシエが2年かけて開発。生地の作製、充填、巻締、レトルト殺菌(高温・高圧による殺菌方法)に至るすべての工程で仮説を立て、検証を重ねてベストな仕上がりを探り当てた自信作です。

製造工程を減らせばコストを抑えられますが、味のクオリティにこだわりパティスリーと同じ工程で作っています。特筆したいのは、レトルト殺菌装置の熱を利用して殺菌しながら生地を焼き上げる日本で唯一の製造技術(特許第6338317号)。予め焼いた生地を缶に充填すると、その過程で菌が付着して缶の中で繁殖します。缶の中で殺菌と焼成を同時に行うレトルト殺菌の場合、完全殺菌が可能になり保存料を使わず常温で賞味期限2年を実現しました。


殺菌と焼成を同時に行う特許技術のレトルト殺菌の工程


昨年、製造にも積極的に関わりたいと思い一念発起。銀行から設備投資融資を受けて真空巻締機を購入し工場に導入しました。現在、製造は創業77年の製餡工場、株式会社野中(山梨県・甲府市)に依頼。洋菓子用の設備とレトルト殺菌装置が揃う工場は少なく、大手缶メーカーのバックアップと技術指導のおかげで前向きに取り組んでもらえる工場と巡り合えました。


充填後、巻締機で一つずつ真空状態にしていく作業


「レトルト殺菌の熱を利用して仕上げる方法の利点は、殺菌と焼成を一度に行えることです。通常、一度火を通した商品に再度熱を加えて殺菌すると風味が落ちてしまいますが、この方法なら加熱しすぎず食べ頃のおいしさに仕上がります。ちなみに、洋菓子をレトルト殺菌で仕上げるのは今回が初の試みです。ゼロからイチを生み出し、NO.1よりオンリーワンが信条の弊社としては、初めてだからこそおもしろく、またやりがいを感じています。滑らかな食感と本格的な味わいを出すために完全機械化ではなく手作業を挟み、効率よく手間をかけて品質維持に貢献できたら」(株式会社野中 専務取締役/三橋 東さん)


ガトーショコラは手作業で中心に「センターチョコ」を詰めて風味をアップ

次の販路は海を越えてシンガポールへ、事業成長を遂げた「横浜ハイカラ」の展望

経験値ゼロからスタートした「横浜ハイカラ」は、今や弊社の重要な事業の一つに成長しました。2024年の5月初旬に新フレーバーの抹茶ガトーショコラの発売が決まり、今後もフレーバーのバリエーションを増やすほか、各地の特産品を使った地域コラボレーション商品の開発も視野に入れています。またシンガポールでの販売も決定しており、折り紙スタイルのパッケージへの反響が今から楽しみです。


株式会社エクラスト https://eclatst.com/

横浜ハイカラ https://y-highcollar.com/

@yhighcollarcom








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