"人の介在価値を高める仕組みづくり"を目指して―パーソルテンプスタッフのテクノロジー活用への挑戦
パーソルグループでは、中期経営計画2026において目指すべき方向性として掲げた「テクノロジードリブンの人材企業」への進化に向け、グループ各社がテクノロジー活用の取り組みを加速させています。
今回は、人材派遣・アウトソーシング事業を手がけるパーソルテンプスタッフにおいて、執行役員 デジタル推進担当を務める藻谷にインタビュー。人材派遣や紹介予定派遣などのサービスを扱う「Staffing SBU*」が掲げる中期経営計画と、このSBUの中核会社であるパーソルテンプスタッフにおけるテクノロジー活用の取り組みについて話を聞きました。
*SBU:Strategic Business Unitの略称。サービス事業領域ごとに分けた組織単位
パーソルホールディングスが運営するWebメディア「TECH DOOR」では、パーソルグループ内で取り組んでいるITプロジェクトを紹介しています。本記事と併せてぜひご覧ください。
「選ばれつづける、はたらく楽しさ創造パートナー」を目指して
―はじめに、藻谷さんのご経歴をお聞かせいただけますか。
新卒で飲食業界に入り、飲食店のオペレーションを経験した後、2001年4月にパーソルテンプスタッフに転職して今に至ります。
もともと「人の生活を支援したい」という思いで飲食業界を選択していたものの、マーケットの厳しさを背景に転職を考えるにあたり、同じ思いを軸に今度は“職”の領域で人々の支援に携わってみたいと、HR業界に目を向けるようになりました。
パーソルテンプスタッフ入社後は、営業職からスタートして、各エリアオフィス責任者、部長、本部長、執行役員、と徐々に多くの役割を任せてもらうようになりました。
2023年4月に現在の執行役員 デジタル推進担当に着任。テクノロジーを一つのツールとし、「クライアント企業のため、はたらく個人のため、そして社員のためにテクノロジーをいかに駆使するか」を考え、テクノロジー活用を加速させていくことが私の役割でありミッションだと捉えています。
―次に、パーソルグループにおけるStaffing SBUの役割について聞かせていただけますか。
Staffing SBUは、さまざまな業界・職種における人材派遣や、紹介予定派遣などの事業を展開する会社が集まるSBUです。私たちパーソルテンプスタッフがその中核会社として、テクノロジーを活用した新たな取り組みや基幹システムの整備、ガバナンスなどの各領域を牽引し、それらをStaffing SBU全体に波及させていくという形をとっています。
―ここからは、そんなStaffing SBUの中期経営計画についてお話を伺います。まず、中期経営計画で掲げる“パーソルテンプスタッフが目指す姿”について教えてください。
私たちパーソルテンプスタッフが2026年の目指す姿として掲げるのは「選ばれつづける、はたらく楽しさ創造パートナー」です。
現在の私たちは、多くの仕事をクライアント企業からいただき、そのはたらく場とはたらく人々を繋ぐ役割を担っています。
対して今後目指すのは、こうした“点”の繋がりではなく、個人のお客さまの人生に寄り添い、さまざまな選択肢や気づきの機会をご提供する、またクライアント企業の事業や環境の変化を捉えながら人材活用のご提案を行う、という“線”の繋がりを築くこと。それによって、いつでもまたパーソルテンプスタッフのもとに帰ってきていただける、つまり「選ばれつづける」存在になることを一つのポイントとしておいています。
そしてパーソルグループのビジョンである「はたらいて、笑おう。」の実現に向け、就業中の派遣スタッフさんや求職者の皆さんに充実感、楽しさを得ていただけるような価値をご提供できる存在になっていこうという思いを、「楽しさ創造パートナー」という言葉で表現しました。
はたらく人々やクライアント企業との“デジタルタッチポイント”を強化
―中期経営計画の実現に向け、藻谷さんが管掌される「DX推進」の文脈ではどのような戦略を掲げているのでしょうか?
単なる効率化や生産性向上にとどまらず、「いかに個人のお客さまを豊かにするか」「いかにクライアント企業に新たな価値を提供するか」という視点でテクノロジーを活用し、個人やクライアント企業とのデジタルのタッチポイントを増やしていくことを方針としています。
そしてこの取り組みの柱として「AA(オールオートメーション)構想」と「Flexibleコネクテッド構想」という二つの構想を掲げています。
―二つの構想について、それぞれ詳しく教えてください。
AA構想は、先にお話しした“点”の繋がりではなく“線”の繋がりということを意識し、クライアント企業向け、派遣スタッフ向け、パーソルテンプスタッフの社員向けにそれぞれデジタルのタッチポイントを設ける構想です。
このタッチポイントを通じて、派遣スタッフに安心して仕事を選び、就業していただけるように、クライアント企業に派遣プロセスのスピードや品質の高まりを感じていただけるように、そして社員が質の高いサービスをご提供できるように、支援していきます。
―「Flexibleコネクテッド構想」についてはいかがですか。
AA構想にもとづいて設けたタッチポイントと、協力会社が手がけるデジタルサービスとを連携し、“はたらく”とそれを取り巻く多様な領域とのゆるやかな繋がりを築く、というのが「Flexibleコネクテッド構想」の概要です。
たとえば現時点では、はたらくに紐づく「給与」や「貯蓄」というテーマでデジタル銀行である「みんなの銀行」さんと提携を行い、さらにこの貯蓄を「投資」に活かすという観点で「大和コネクト証券」さんのデジタルサービスとの提携も行っています。
こうした繋がりによって、派遣スタッフやクライアント企業に付加価値を提供するのはもちろん、パーソルテンプスタッフもサービス提供者も少しずつメリットを享受し、このゆるやかな繋がりの価値を高めていきたいと考えています。そしてその結果として、私たちが目指す「選ばれつづける」「はたらく楽しさ」の創造という像に近づいていければと考えています。
―二つの構想を推進するにあたり、「ビジネス貢献」「俊敏性・柔軟性の向上」「組織力強化」という3つの注力テーマを定めて取り組んでいると伺いました。これらのテーマについて、ポイントをお聞かせいただけますか。
まずテクノロジー活用が全体の事業としっかりと接点を持ったものであるべきだ、との思いで「ビジネス貢献」をテーマとして置いています。中でも重点施策となるのはAI活用で、組織内にある膨大なデータを整備し、社内外に向けていかに活用していくべきか、検討を進めています。
「俊敏性・柔軟性の向上」は、大規模な基幹システムを持つ私たちにとって、一つひとつの開発におけるスピードが重要であるという意図で設けたテーマです。スピード感を持って開発を進めるために、クラウド化やアジャイル開発体制の構築を進めていきます。
そして各構想やこれらのテーマを着実に形にしていくために、人材育成や採用などによって「組織力強化」を図ることを第三のテーマとしています。
―重点施策として挙げられたAI活用については、どのような方向性や期待、課題感を持たれていますか?
AIの活用には「人に取って代わる」と「人をアシストする」の二つの要素があると考えています。
前者の「人に取って代わる」については、これまで営業社員が担っていた個人のお客さまやクライアント企業への一次的・二次的な対応を、人の代わりにAIが対応することが時間の短縮とサービス品質の向上に繋がり得ます。そしてすべてのプロセスをAIが代替するのではなく、クロージングの段階には人が介在することで、全体の生産性をより高められるのではという期待を持っています。
後者の「人をアシストする」という観点では、営業社員による個人のお客さまへのアドバイスやクライアント企業へのご提案などにおける「ハイパフォーマーとは何か」をAIで分析することで、社員の活動を均質化し、さらにその“平均値”を高めることにつなげます。またその先で、一人ひとりの営業スタイルの違いや魅力が発揮されるようになるのではと、期待しています。
このように人の介在価値を高めるという観点で期待の大きなテーマではありますが、やはり情報の取り扱いが重要な課題となります。さまざまなAI活用の可能性を描きながらも、それに伴うリスクをしっかりと認識し、倫理感を大切に活用の道を探していきたいところです。
人材派遣という仕組みの価値をさらに高め、“当たり前の選択肢”に
―ここまでお聞きしてきた構想やテーマにもとづく取り組みについて、現在地を教えてください。
現在は、単に個人と仕事をマッチングするだけではなく、「楽しさ創造パートナー」としてタッチポイントを持ち続けていくことが価値なのだと認識を置き直し、ではどのタッチポイントをテクノロジーの力で強化していくべきなのか、さまざまな可能性を比較しながら検討・企画している段階です。
―テクノロジーを活用したタッチポイントの強化について、具体的に構想されていることはありますか?
あくまで一例ではありますが……就業中の派遣スタッフへのサポートにおいて、「問題はありませんか?」という確認にとどまらず、「その方がどのようなスキルをつけてクライアント企業の力になっているのか」「その仕事によって何が変わったか」までデータとして収集・把握することで、このデータを活かして根拠のある給与交渉ができるようになると考えています。
またクライアント企業に対しても、「このような派遣スタッフが就業している」「この部署でこのような業務を行っている」といった就業中のデータを、業務や就業環境のコンサルティングなどに活かせる可能性があります。
今後は、こういった事業における可能性を具体的に描くとともに、そのために必要なデータの蓄積の仕方を考え、システムの構想を練っていくことが重要になると捉えています。
―今後、さまざまなプロジェクトが始動し、加速していきそうですね。
そうですね。一つひとつのプロジェクトが“点”で走るのではなく、それぞれにしっかりとつながっているということ、そしてテクノロジー活用の目的が単なる効率化や生産性向上にとどまらず、“人が介在することの価値を高めるための仕組みづくり”にあるということを強く意識し、それぞれのプロジェクトを前進させていければと思います。
―それでは最後に、今後の展望をお聞かせください。
パーソルグループ、そしてStaffing SBUとして、マーケットにおいて高い存在感を発揮できているからこそ、今後はより一層お客さまとの関係を強化していかなければなりません。パーソルテンプスタッフとしては変わらず、そのためのベースとなるものを整え、SBU全体へ波及させていける存在でありたいですね。
また20年ほど前、私がパーソルテンプスタッフに入社した頃と比べて、“人材派遣”という仕組みが広く知られるようになったことが非常に嬉しく、今後はこの仕組みの価値をさらに高め、人々にとって“当たり前の選択肢”にしていきたいという思いがあります。そしてその結果として、多様性を重視する時代の要請に応えるとともに、労働人口の減少という社会課題にも対応していければと思います。
※2024年1月時点の情報です。
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