困難を抱えていても、ありたい自分を諦めない。障がいを乗り越え、エキナカに前例の無いコーヒースタンドが誕生するまで
一般社団法人ビーンズは、東京都千代田区でスペシャルティコーヒーの焙煎を専門とする福祉施設「ソーシャルグッドロースターズ千代田」を運営しています。
ソーシャルグッドロースターズの大きな特徴として、「障がい者でもできる仕事」を用意するのではなく、「社会に認められる一流の仕事」を障がい者自らがつくり、挑戦していける環境づくりを大切にしています。
2024年3月、ソーシャルグッドロースターズの新たな挑戦として、エキナカでスペシャルティコーヒーが飲める店舗をJR東日本上野駅のエキナカ商業施設「エキュート上野」にオープン。
これまでとは全く異なる形で、困難を抱える障がい者と社会が交わる新たな場が誕生しました。
2024年3月にオープンしたソーシャルグッドロースターズ エキュート上野店
今回は、ソーシャルグッドロースターズが福祉施設を飛び出し、“エキナカ出店”に至った背景にあるストーリーをご紹介します。
「バリスタに挑戦してみたい」当事者のひとことで、ゼロから一緒に仕事をつくることを決意
ソーシャルグッドロースターズ 千代田本店焙煎所
一般社団法人ビーンズ代表の坂野がソーシャルグッドロースターズを設立するきっかけとなったのは、自身がボランティアで関わる中で、障がいのある方やその家族から仕事についての相談を受けたことからでした。
企業の障がい者雇用などの求人は増える一方、業務内容の多くは軽作業や事務作業などが中心で、当事者やその家族の立場からすると「心からやりたいと思える仕事の選択肢が少ない」という悩みがあったのです。
そこで坂野は、障がいをもつ当事者やその家族と一緒に、自らやってみたいと思える仕事をゼロからつくることを決意。話し合う中で、コーヒーのバリスタに挑戦してみたい、そしてやるからにはコーヒーのプロフェッショナルになりたい、という想いを聞くことができました。
千代田本店焙煎所で使用している、GIESEN (ギーセン)焙煎機
そうして「ソーシャルグッドロースターズ」が設立したのは、2018年のことです。
世界大会で使われる焙煎機やエスプレッソマシンなどの機器を導入したのはよいものの、完全に手探りの状態で、初めから使える人は実は一人もいませんでした。
そこから失敗を繰り返しながら時間をかけて学び、今では30名を超えるスタッフがそのような機器を使いこなして、一流のコーヒーショップと並ぶクオリティのスペシャルティコーヒーを提供しています。
これまでの福祉の枠にとらわれない、エキナカへの出店という挑戦
福祉施設は、例えば障がいに起因して体調が不安定であるなどの様々な困難を抱える方にとって安心して働ける環境が整っています。
一方で、福祉施設が多くの人の日常と接点があるとは言えません。そのため、今回のように、より多くのおきゃくさまの目に触れる商業施設、それも駅という場所に出店することは大きなチャレンジでした。
このプロジェクトに挑むことになったのは、これまでの福祉の在り方から一歩踏み出して、社会に私たちの持つ価値を届けたかったためです。おきゃくさまはエキナカにあるコーヒーショップを見て、「障がいのある人が働いている福祉施設」ではなく、「スペシャルティコーヒーが飲める場所」として何の先入観もなく、利用されると思います。それは、福祉業界全体にとっても新しい試みです。
エキュート上野店の象徴であり、一番人気の「ウエノ・ブレンド」(写真右)
エキュート上野店では、本店でも提供しているブレンドコーヒーに加えて、エキュート上野店限定のブレンドも販売。また、エスプレッソがエキナカで飲めるのも珍しいとおっしゃっていただいています。
都内の福祉事業所と連携して作ったスイーツやビーントゥバーのチョコレートなども好評をいただいています。
満足していただけるプロダクトやサービスを通して、みなさまに新たな価値や体験をお届けすることが、障がい者や福祉に対するイメージを塗り替えていくことに繋がればと思っております。
構想から紆余曲折の1年間。不安視する声がある中、初心にかえって下した決断
多くの方のご協力やご理解があり、今回エキュート上野店をオープンすることができましたが、出店までは構想から1年ほどあり、たくさんの紆余曲折がありました。
その中で関係者が一番時間を割いたのは、「私たちのような福祉団体の利用者やスタッフが、人通りが多い場所で働くのはリスクが大きいのではないか」「本当に自分たちのコーヒーはおきゃくさまに受け入れてもらえるのか」という不安を解消するための話し合いでした。
前例が無いからこそ、その決断に至るまでに何度も何度も対話を重ねました。
得意とするコーヒー以外の商品の販売や、負担を減らすため営業時間を短縮することなど、様々な意見が出ましたが、最後には、私たちのミッションである「どんな困難を抱えていても、ありたい自分を目指す事を諦めなくても良い社会をつくりたい」という初心に返り、「やはりコーヒーで勝負しよう、今のままのスタイルでいこう」と決断。
私たちにとって、多くの方の目に触れる場所で、コーヒー一杯で勝負すると覚悟するまでには、十分に検討する時間が必要だったのです。
準備が進み、具体的にオープンの日が近づいてくるにつれ、私たちの心境にも変化がみられるようになりました。
初めは「本当にそんなことができるのだろうか」という不安が大きかったのですが、目に見えて進んでいることが実感できると、「ここで働きたい、仕事をしたい」という積極的な声が多く聞かれるようになりました。
多くの人に知ってもらえることが、福祉の新たな希望に
オープンしてからは、想像以上にたくさんのおきゃくさまにご利用いただいています。上野駅という場所柄、海外からのおきゃくさまも多くいらっしゃいます。エキナカでスペシャルティコーヒーが飲めるという新しいスタイルや、生産者や障がいのある方に利益が還元される私たちの取り組みに共感してお越しいただいているようです。
そのことは、障がいがあるメンバーをはじめとした、運営に関わるスタッフの大きな希望になっています。
連携している福祉施設の利用者さんからも、「こんなに多くの人が通る場所で、福祉施設発の商品を売っているなんて本当に嬉しい!」といった声をたくさんいただいています。
スタッフは「障がい者」ではなく「本格的なコーヒーを提供するプロ」である。ソーシャルグッドな社会を目指し挑戦は続く
ソーシャルグッドロースターズでは、エキュート上野店のコーヒーの売り上げを活用し、オープンから3年以内の2027年3月までに、10名の障がい者を雇用することを目標としています。
私たちのつくる高品質のコーヒーを体験していただきたいという想いのもと、私たちとおきゃくさまが日常的に関わることで、店舗に携わるスタッフは「障がい者」ではなく、「本格的なコーヒーを提供するプロ」であるという見られ方に変化していくと思うのです。
今後も私たちソーシャルグッドロースターズは、どんな困難を抱えていても活躍できる場所を増やし、夢を実現していける選択肢をつくることに挑みます。そして、コーヒーを通じて多くのみなさんとの関わりの機会を広げていきます。挑戦を続けることで、「ソーシャルグッド」な社会を自らの手で切り開いていきます。
ソーシャルグッドロースターズ公式HP:https://sgroasters.jp/
ソーシャルグッドロースターズ エキュート上野店
東京都台東区上野7-1-1 JR東日本上野駅改札内3F
営業時間:月~金 8:00~22:00/土日祝 9:00~21:00
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