第8話 人生を変えた1つの質問【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】

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いつの間にか、窓から見える原宿の景色は夕暮れへと変わっていく。



まさくんと約束した時間は少し過ぎていた。

書き下ろしのお客さんが多かったら、少し遅れると言っていたのを思い出す。



たくさんお客さんが来たのかもしれないなぁ。

まさくんもいい日になったかもしれない。



そんなことを考えていると、カフェのドアが開いた。




まさくん
お~~~い!まほちゃん!まほちゃーーーん!!




カフェの入り口には満面の笑みのまさくんが立っていた。



片方の手に書き下ろしの道具がパンパンに入ったスーツケースを引きずって、

もう片方は大きく手を振っている。




まさくんは、今日一番晴れやかでとてもいい顔をしていた。




まさくん!!!お疲れ様!長かったねー!
あれからどうだった?



まさくん
うん!!まほちゃん!聞いて!!
ソペアモンコール(カンボジアの言葉で幸せという意味)だよ!!!

奇跡が起こったんだ!!!




まほ
えっ....!!




まさくん
あれからたくさんお客さんが来てくれたんだよ!
今までで一番の売上だったんだ!

過去最高だったんだよ!!




まさくん
まほちゃん!!ここにいる意味はあったんだよ!まだ東京にいられるんだ!




高揚したまさくんの、大きな目はキラキラしていた。




今朝のまさくんのメルマガがよぎる。

ーもうここにいる意味は無いのか、宮城に帰ったほうがいいのか



そのあと紹介されていた、アルケミストという文字。



その数時間前、あべちゃんからもらって読み終わったアルケミスト



起きたての布団から出て急いで原宿駅に来た朝



まほちゃん、奇跡が起きたんだ!!まさくんの大きな目。




ー前兆に従ってゆきなさい




前兆の置き石が、少しずつ繋がっていく。

主人公の少年は、いつもハッピーエンドなんだ。



アルケミストがまた笑った気がした。



何かを少し信じれる気がした。

それが、まさくんとの最初の出会いだった。




まさくんの奇跡のその先




それからまさくんは、東京に残って原宿で毎日書き下ろしを続けていた。

お客さんは途絶えることなく、半年もすると、今度は路上に出られなくなった。



人気が出過ぎて、お店やイベントに来てほしいと呼ばれるようになったのだ。




でも、それはまたもう少し先のお話。



あれからまさくんは、私にとってかけがえない友人となった。

そして、私の人生に前兆の置き石を運んできてくれたのだ。




「観念」すること。




まほ
神様ーー!!私はもうなんにもできません。お手上げです。たすけてくださいーー!



原宿のど真ん中、涙でぐちゃぐちゃの顔で私は天を仰ぎながら叫んでいた。

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