第8話 人生を変えた1つの質問【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】
いつの間にか、窓から見える原宿の景色は夕暮れへと変わっていく。
まさくんと約束した時間は少し過ぎていた。
書き下ろしのお客さんが多かったら、少し遅れると言っていたのを思い出す。
たくさんお客さんが来たのかもしれないなぁ。
まさくんもいい日になったかもしれない。
そんなことを考えていると、カフェのドアが開いた。
カフェの入り口には満面の笑みのまさくんが立っていた。
片方の手に書き下ろしの道具がパンパンに入ったスーツケースを引きずって、
もう片方は大きく手を振っている。
まさくんは、今日一番晴れやかでとてもいい顔をしていた。
あれからどうだった?
ソペアモンコール(カンボジアの言葉で幸せという意味)だよ!!!
奇跡が起こったんだ!!!
今までで一番の売上だったんだ!
過去最高だったんだよ!!
高揚したまさくんの、大きな目はキラキラしていた。
今朝のまさくんのメルマガがよぎる。
ーもうここにいる意味は無いのか、宮城に帰ったほうがいいのか
そのあと紹介されていた、アルケミストという文字。
その数時間前、あべちゃんからもらって読み終わったアルケミスト
起きたての布団から出て急いで原宿駅に来た朝
まほちゃん、奇跡が起きたんだ!!まさくんの大きな目。
ー前兆に従ってゆきなさい
前兆の置き石が、少しずつ繋がっていく。
主人公の少年は、いつもハッピーエンドなんだ。
アルケミストがまた笑った気がした。
何かを少し信じれる気がした。
それが、まさくんとの最初の出会いだった。
まさくんの奇跡のその先
それからまさくんは、東京に残って原宿で毎日書き下ろしを続けていた。
お客さんは途絶えることなく、半年もすると、今度は路上に出られなくなった。
人気が出過ぎて、お店やイベントに来てほしいと呼ばれるようになったのだ。
でも、それはまたもう少し先のお話。
あれからまさくんは、私にとってかけがえない友人となった。
そして、私の人生に前兆の置き石を運んできてくれたのだ。
「観念」すること。
原宿のど真ん中、涙でぐちゃぐちゃの顔で私は天を仰ぎながら叫んでいた。
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