ハロウィンと新しい事の話

著者: は な
母はわたしに言いました。
『10月31日はね、仮装をして良い日なのよ。』



ハロウィン。そう聞いてみなさんは何を思い浮かべられるでしょうか。
ドンキホーテに並ぶ仮装グッズの数々でしょうか。カボチャのランプでしょうか。はたまた渋谷六本木に溢れる仮装をした人々の嬌声でしょうか。

溢れる仮装グッズにハロウィン関連のお菓子。テーマパークには人が殺到し、トリックオアトリートをそこかしこで聞く。いずれにせよ今やハロウィンは日本人にとってとてもメジャーなお祭りになりました。




時は遡ること十数年前。


当時小学生だったわたしは母から『10月31日はね、仮装をして良い日なのよ。』という衝撃的な言葉を聞きました。
手先が比較的器用でイベント事が大好きだったので嬉々として衣装作りに取り組み、見事31日にはホウキ片手にマントを翻して小学校に行くことに成功したのです。

小学校に着くなり先生達が駆け寄って来て次々になんやかんやと言われました。中でもとても覚えているのは『そんなことしてたら警察に捕まるわよ』と嫌味を言われたことでした。

当時ハロウィンは日本であまりメジャーなお祭りではなく、もちろん知っている人は沢山いるけれど、そんなに盛り上がるものでもなかったような気がします。

その次の年も、またその次の年も、31日、私は毎年違う手作りの仮装で小学校に行き続けました。毎年同じ嫌味も言われ続けました。
中学校に上がると制服があったので、毎年31日は学校から帰ると手作りの仮装で街を歩き続けました。もちろん1人でした。

高校生になると制服が無かったので、やっぱり31日は手作りの仮装で学校に通いました。
1年目。1人で仮装をしてカボチャの手作りお菓子を沢山持って学校に行きました。
2年目。クラスの半分が仮装をして、放課後にはお菓子を持ち寄って教室でハロウィンパーティーをしました。
3年目。全学年が思い思いの仮装をしていました。この年、私が1人で始めたハロウィンパーティーは学校行事になったのです。

もう高校を卒業してから5年以上が経ちますが、今でも毎年10月31日は仮装で登校するのが母校の恒例行事だそうで。


そんな私は高校卒業後、大学で仮装をしてもなんだかつまらなくなり、毎年本気の仮装でパレードに出ています。


何事も人がまだあまりやっていないことを始める時、周囲は良い顔をしないかもしれません。
誰も賛同してくれないかもしれません。
けれどもずっと気持ちを曲げずに真摯に取り組めば、いつかは大体認められるのだ。ということを、ハロウィンという一つの行事で学んで来たような気がします。

毎年『警察に捕まるわよ』と言ってくれていた先生。お元気でしょうか。
私自身、ハロウィンがこんなにメジャーなお祭りになるなんてあの時思っていませんでした。




とびきりの笑顔でホウキ片手に小学校に通った10歳の私に敬意を示しながら、10月31日の今日、私は仮装をして街に出ます。

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