TOEIC350点、貯金無し、今までパスポートすら作ったことの無かった大学生が実費0円で世界一周した話。
そして、ついに先輩から言われた。
世界一周に行くと大風呂敷を広げたのに、準備を進めようとしない自分を深く反省した。
有言実行出来ないのは多くの人たちに迷惑をかけることになる。自分に対する多くの周りの信頼を失うことを考えたら、海外に対する恐怖心なんてどうでもよくなった。崖っぷちに立たされた僕は本気で協賛活動に取り組むことにした。
出国前にいきなりホームレスになる。
フランスのおふくろの味
さらに追い討ちをかけるように、自分のアパートの契約が切れてしまい、3日後に家を出なければいけなくなってしまった。なぜなら、2014年の3月には大学を卒業して就職して新生活を始めている予定だったからだ。仕方なく家にあった荷物の9割をゴミに捨て、本当に必要なものだけを持って家を出た。家が無くなってしまったのだが、一つ当てがあった。すぐに携帯を取り出して、後輩に電話する。
そう言って、自分の全所有物を持って、びっくりする後輩の表情を思い浮かべながら、後輩の家に向かった。
そう言って荷物を後輩の部屋のど真ん中にどかーんと置く。
予想通りのリアクション。この理不尽な僕の振る舞いを受けてもなんだか嬉しそうだ。よっぽど僕のことが好きらしいw
そして、出国日までの残り2ヶ月間をこの小さくて汚い後輩の家で共同生活をすることになった。
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ブラジルのおふくろの味
崖っぷちに立たされた僕は、本格的に協賛活動を始める。リミットは2ヶ月。
協賛企業の条件は、以下の2つ。
1,食に関する企業
2,企業に対するリターンが自分のやりたいことと重なること。
いくらお金をいただくにしても、全く自分のやりたいことと反したことをリターンとして約束してしまえば、それは自分の旅ではなくなる。自分が旅を通して残せる成果を買ってくれる企業を探した。そして、どうせなら誰もが知っている有名な会社に協賛していただきたいと思った。
一つは、大手飲食チェーン店を経営する企業、もう一つは国内最大手の家庭料理レシピサイトを運営する会社、そして最後は食育の第一人者である服部幸應先生が校長を務める服部学園である。
また、提案書の資料作りも苦手ながら奮闘した。今までPower Pointしか使ったことが無かったが、今回初めてMacのKeynoteを使ってみた。そしたらめちゃくちゃ見栄えが良くなったのである。資料作りが苦手な人は、とにかく色んな資料を参考にして、Keynoteを活用してなるべくシンプルに分かりやすく作成することを勧める。
大手飲食チェーン店はとあるイベントで役員の方と知り合いになり、トップダウンで担当の方に繋いでもらって提案はしたが、色々と理由があり途中で断念した。残りの二つは、コネが無かったので仕方なくお問い合わせフォームからアプローチすることにした。営業手法は様々だが、こういった場合は意外と効果がある『お問い合わせフォーム営業』。なぜならお問い合わせフォームは顧客と企業を繋ぐ窓口なので、必ず見てくれるからだ。僕は、そこに送る一通に全ての想いを込めた。
すると、なんとどちらも返信があったのだ!興味を持ってもらえていることと自分の運の強さに声を上げて喜んだ。しかし、肝心なのはこれからだ。アポを取って後日提案に伺った。
学生であることがアドバンテージ。
ベルギーのおふくろの味
まず、レシピサイトを運営している企業に訪問した。オフィスはとても綺麗で、昼時は自社のキッチンで社員が料理をしているので、とても良いにおいがした。最近のIT企業はやはりオフィス環境に凄くこだわっているなと感じた。入り口にある電話で担当していただく部署に電話をかけると、物腰の良い女性の方がいらっしゃった。奥の部屋に行き、いよいよ提案スタートだ。
まずは、自己紹介を通して自分が今まで取り組んで来たこと、その背景を話して自分の人となりをPRする。
自分の取り組みがタイミング良く相手のニーズを押さえることが出来た。おかげで、多くの人が見るような大きいメディアに紹介してもらえることになった。
この調子でどんどんいきたいと思った僕は、次に代々木にある服部学園に向かった。担当者の方へのご挨拶を済ませ、会議室で待機していると担当者の方から思わぬ言葉が・・・。
しばらくすると、かなり厳格そうな方がいらっしゃり、名刺交換をすると肩書きが役員だった。
なぜ、私のような若者のいきなりの提案にここまでして下さるのかが疑問だった。先日の提案とは打って変わって、しーんとした会議室で厳かな空気が漂う中提案がスタートした。
僕は、先日同様今までの取り組み、自己紹介を通して自分の人となりを説明して、この旅を通して、どのようなことをしたいのかをプレゼンする。その間、先方は厳しい顔でただ頷くだけだった。
自分の伝えたいことを言い終えたあと、さすがにこれはダメだと思った。しかし、次に相手が発せられた言葉に耳を疑った。
一瞬何をおっしゃっているのか理解出来なかった。あまりの突然の言葉に口ごもってしまったが、とりあえずとっさに質問にお答えする。
担当の方も少しびっくりされているようだった。しかし、なによりもびっくりしたのは勿論僕自身で、協賛を取れたこと自体予想外だった。さらに目標より倍の金額をいただけることになったのは、まさに夢のようだった。
ここまで来たらせっかくだ。大御所の服部先生のアポが取れるとは思ってなかったが、ダメ元でお願いしてみた。
もう天にも昇るような気持ちだった。憧れの服部先生とお会い出来るなんて。服部学園を後にして自宅に帰るときは、終始テンションが上がりっ放し。早くこの喜びを応援してくれる皆様にお伝えしたかったが、服部先生とお会いするまで我慢することにした。
そして、後日いよいよ待ちに待った服部先生との面会日。めちゃくちゃ緊張しながら待っていると、テレビでよく見る黒いコック姿でお見えになられ食育についてお話をお伺いした。
30分ほどお話をさせていただき、最後に先生の著書【食育のすすめ】を頂戴し、記念撮影。時間が過ぎると次の面会の方が来ていた。本当に夢のような時間を過ごせた。
このように熱意さえあれば学生なら会いたい人に会うことが出来る。なぜなら社会人になるとどうしても会社の肩書きがあるので、ビジネスライクな関係になりがちだからだ。社会人も何の肩書きもない学生なら会いやすいと思ってる人も少なくないと思う。また、上記の理由で学生のうちに培った人脈は社会人になっても友好的に続くことが多いらしい。大御所の方とか有名な方とかに臆せず、勇気と熱意を持って社会人になる前に会いたい人に会ってみるのも良いと思う。
故郷への自分の大切な想いをこの旅に込めた。
大曲納豆汁旨めもの研究会HPから
この旅は僕だけのものじゃない。僕自身が大切だと思ってる人たちに喜んでもらえる旅にしたいと思ってる。この考えは、おそらく『原点を大切にしていきたい』というところから来ているのかもしれない。そういったことから、人生を生きる上で一生大切にしたいと思っているものに『故郷』がある。
僕は、秋田県の大曲というところで生まれた。大学に進学するときに秋田を離れ、いつか力をつけてこの街に恩返ししたいという想いを胸に上京することを決意する。そんな経緯もあって、この世界一周に地元も巻き込んでいきたいと思っていた。
コネは親でもなんでも使うことにした。後日、町おこしに取り組んでいる商工会青年部の方にお会いした。
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