『ひとを応援していたらいつしか応援されていた』物流応援され団長 誕生秘話
悔しさが込み上げ、体がピクピク震えたが、ただただ頭を下げ続けた。
屈辱だった、しかし、自分が蒔いた種。
結局、その1名の方以外は、とりあえず全員次の会社さんへの転籍雇用は成立した。
仙台空港からフライトした後、眼下に拡がる仙台の町を見ながら、
悔しいやら、申し訳ないやら、これからの不安やらで、涙が止まらなかった。
しかし、これは序章に過ぎない、これから、混乱した現場、悪化した
業績を建て直す為には、並大抵のことではないことは、大方予想がついた。
しかし、どうやって建て直していくかの具体策は未だなかった。
悶々、混沌とした日がつづいていた。
そんなある日、一つの転機がおとずれた。
久しぶりにばったり会った先輩に、創業から今日までの話しをしたら、
「ヤマちゃんは独特の個性と我流で仕事をしてきて、これまでたまたま
上手くやれてきたけど、やっぱりちゃんと勉強しなあかんと思うよ。
そうしたら、ヤマネットは立ち直ると思うよ。一緒に経営の勉強をしようよ」
という誘いを受けた。
藁をも縋る思いの私にとって「ヤマネットが立ち直る」の言葉は、
私を即、動かした。
翌月から、研修や経営者の学校に通い始め、勿論実務を行ないながら、
猛勉強が始まった。
心理学、リーダーシップ、自社分析、経営計画書作成、財務・・・・
これまでの自分の経営は本来のやり方の真逆のやり方をしていた!
そのことに気付くまでにそうは時間を要しなかった。
経営資源の少ない中小零細は特に、全てに及び“集中化”が必要である。
要は「ターゲットの絞込み」である。自分自社の強みに集中し、勝負する。
決心した。
事業所も業務も集中させよう!
かっこ悪いけど、不採算の事業所を全部閉めよう、皆に頭をさげよう!
そして、自分の力不足を開示し、みんなの力を貸してもらうよう、お願いしよう!
半年、1年と時間がかかるかもしれないが、とにかくそうしよう! と、
決心した。
しかし、現実はそんなに甘くはなかった。
それから事態が収束するまでに、3年の時間を要した。
勉強、実践、、勉強、実践、・・・・
3年間の猛烈な戦いが始まった。
●第7話 どん底
猛烈な戦いが始まってまもなく。
一つ目の苦しい障害が襲い掛かってきた。
元々、慢性的な腰痛持ちではあったのだが・・・
とある朝、目が覚め、起き上がろうとした時、腰に激痛が走った。
起き上がれない。
家の中を這って移動するという体になってしまう。
杖をつき嫁に抱きかかえられ行った病院で診断されたのは、椎間板ヘルニア。
2週間程の間、整体や病院へ行くもなかなかよくならず、自宅の布団の中から、
電話やパソコンで仕事の指示をする、自分で靴下を履くことも洗面所で顔を洗う
こともできず、嫁や娘に手を貸してもらう有様。
こんな時に限って何故!このままでは、本当に会社が潰れてしまう。
考えた末に手術を決意する。
1時間ほどの手術の後、麻酔が効いていたようで、気が付くと
3時間程時間が経過していた。
恐る恐るベットから起き上がろうとすると、3時間前抱きかかえられて
病院に来たのが嘘の様に、痛みがとれていた。
手術は成功したものの、ドクター曰く「無理は禁物」。
て、云われても、無理せなしゃーないやん!猛烈な戦いは始まったばかり。
約3週間のブランクを埋めなければと、翌日から出社、仕事に就いた。
決めたとおり、事業所の閉鎖を一つ一つ着手していった。
次に襲い掛かってきた障害は、お金 であります。
事業所が減る~売上が減る であります。
それと同時に人を切っていくことは簡単には出来ません。
すると、当然の如く、固定費過多になってまいります。
その時のお金のなくなり方は、まるで手裏剣の如くでありました。
口座からどんどんお金が飛ぶように出て行くという印象です。
本当に恐くなりました。
体が壊れ、お金がなくなり、もう銀行も相手にしてくれない、
社内では幹部達の様子も少しずつ冷めた感じになってきている、
誰か助けてくれぇ、ダメだ全て自分が蒔いた種だ、
これでもう本当に終りだ、万策尽きた・・・
破産して、一から(否、ゼロから、否、マイナスから)やり直そうか、
家を手放し、アパートへ移ろうと、嫁と子供にいつ話そうか、いつ話そうか
と、毎日考えるのだが、帰宅して健気で罪の無い、子供の顔を見ると
言い出せない。
営業で静岡からの帰り道、東名高速下り線。
あらゆることが頭の中を巡る、答はない、しんどい、辛い、苦しい・・・
楽になりたい。
牧の原の長い下り坂のカーブ、アクセルを踏み込む、このままあのガードレーへ、
と、一瞬頭をよぎった。 子供の顔が浮ぶ、アカン!!
タイヤから煙を出しながら、車はドリフトし、走行車線に戻った。
ルームミラーで自分の顔を見た、青い顔をして目だけが赤く充血していた。
夜遅く、家に戻ると、何も知らずスヤスヤ眠る子供達の顔を見る、
逃げたらあかん、逃げたらアカンのや。何が何でも建て直す!
でけへん思たら、でけへん のや。
その後、驚くような最大の転機が訪れたのは、それから数日後のことだった。
●第8話 報恩
「でけへん思たら、でけへんのや!」
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