第14話 1本の木と奇妙な夜 【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】
そうして今日の寝床もようやく決まった。
そして、なんとなく入ったこの宿で、この夜少し不思議な出来事が待っていたのだ。
不思議な出来事
目が覚めると、向こう側のベットにルカはいなかった。
私は移動で疲れて寝てしまっていたようだ。
そういえばルカはビールを買いに行くと言って出掛けたはずだ。
寝ぼけながら記憶をたどる。
夕方になると少し空気が寒かった。上着を羽織り、部屋を出た。
部屋を出ると、楽しそうな話し声が聞こえてくる。
あの共用のソファーのあるところからだ。
聞こえてくるルカの声は英語だった。
外国人の旅人と盛り上がっているようだ。
ソファーでくつろぐみんなに声をかけた。
ルカはもうビールの入ったコップを持っている。なかなかの上機嫌だ。
そこには、肩までの髪の可愛らしいアジア系の女の子と
ガタイのいい肌の白い男の子も一緒だった。
オーストラリア出身のマイクだよ。
ルカが説明してくれる。
そして今度は2人に、私と少し旅をしていることも説明してくれた。
mucho gust!(初めまして)
英語もスペイン語もほとんどできない私は、ペルーの挨拶をすることに決めていた。
アイリーンもマイクも、いい笑顔で握手とハグで応えてくれた。
二人共とても感じが良い旅人だ。
すぐ仲良くなれそうだった。
自己紹介も終わると、ルカとアイリーンとマイクは3人で話し始めた。
3人の会話は英語だ。早いテンポの英語が飛び交う。
話によると、アイリーンはボランティアで来ているみたいだった。
まだ長くこの辺りに泊まるようだ。
単語をつなぎあわせようやく理解する。
マークは残念ながらオーストラリア訛りの英語で何を言ってるか全く分からない。
ルカもたまに通訳してくれるけれど
だんだん3人での会話が盛り上がりそれどころではなくなっていた。
私も集中力が切れてきた。
そうなるともう英語が入ってこない。
会話よりこの雰囲気を楽しむしかなかった。
ーよし一旦休憩だ。
ビールが切れたのを理由に、お酒を買い足しに行くことにした。
こんなとき、どれだけ英語が喋れたら…。と思う。
語学堪能なルカが羨ましかった。
3人の楽しそうな雰囲気をみると、まだまだ夜は長そうだ。
私は大好きなラムを買うことにした。
アイリーンとマイクにも目配せをする。
みんななかなか飲める口のようだ。
私は宿を出て、近くのティエンダにラムを買いに行った。
※ティエンダ=小さなお店
◆
15分程してホテルに帰ってくると、もうあのソファーには誰もいなかった。
うるさいから部屋に入ったのかもしれない。
もうなかなかのいい時間だった。
ラムを持って奥の自分部屋の方へと歩く。
思った通り、部屋の中からはみんなの声が聞こえてきた。
ドアを開ける。
部屋の照明は大分薄暗く、部屋全体がぼけたオレンジ色に包まれていた。
旅の夜、という感じだ。
ルカは床に突っ伏していた。
大きな地図を広げて何か説明している。
その地図には彼が今まで辿った軌跡が書かれていた。
マイクもしゃがんで地図を覗き込んでいる。
ルカが少し首をこちらに傾けながら言う。
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