普通のサラリーマンだった僕が10km以上走ったことないのに1週間分の自給自足の荷物を全て背負って灼熱のサハラ砂漠で250kmを走って横断することになった理由
僕はゆりっぺがくれたメッセージを思い出しながら、グッと涙をこらえた。
___サハラマラソン 2nd ステージ 31.1km。
2015年4月6日。
レース後のテントで日本からの応援メッセージを受け取る。
一緒に Our Garden をやっているゆりっぺからメッセージが来ていた。
De:yurippe-le:05/04/2015 22:40:49
fight!. ippo ippo. trust your self.
___サハラマラソン 4th ステージ 91.7km。(オーバーナイトステージ 2日目)
2015年4月9日、AM7:00。
痛み止めは効いているのか効いていないのかよくわからない。痛みはまだある。
仮に効き始めたとして効果はどのくらいだろうか。
それに今日の分の行動食は全て夜中に使ってしまった。明日の分はあるが、それを使えば明日がもたない。
熱中症防止の為に大会本部から支給されている塩タブレットも残りわずか。ここからの灼熱地獄に耐えられるだけの体力も食料も塩分もない。
それにこの足ではいつ歩けなくなるかわからない。
どうすればいいんだ?
どうしたらいい?
___サハラマラソン 4th ステージ 91.7km。(オーバーナイトステージ 1日目)
2015年4月8日、AM10:40。
De:yurippe-le:08/04/2015 10:40:50
gogo!. go go go!. nihonkara,minnade ouenshiteruyo.. anatanaradekiru.. trust yourself.
___サハラマラソン 4th ステージ 91.7km。(オーバーナイトステージ 2日目)
2015年4月9日、AM7:30。
痛み止めが効いて来たようだ。と言っても痛みが無い訳ではない。痛い、痛いが激痛ではない。
いつ歩けなくなるかわからない足。灼熱地獄に耐えられるだけの食料、塩分がない状況。
走るしかない。
今から走れば9:00頃にはゴールできるかもしれない。その時間であればまだ辛うじて涼しさが残っている。塩タブレットを使わずに行けるかもしれない。
僕は賭けに出た。
走る。
この大会で初めて、僕はサハラの大地を走り始めた。
___サハラマラソンスタートまで、あと154日。
2014年11月2日。
今日は神田でゆりっぺのトークイベントだ。僕はスタッフとしてここにいる。
千春さんに頼まれて Our Garden の撮影をしたのがゆりっぺとの最初の出会い。その後、僕が台湾に行っている3ヶ月の間は全く連絡を取ることもなかったが、帰国直前にご飯を食べに行く約束をして、そこからの一週間が怒涛の一週間だった。一緒にラフティングをしたり、読書会に出たり、なぜだか顔を合わせ続けて、話してみると似ている所が多々あって盛り上がり、いつの間にか兄弟のような仲になっていた。ゆりっぺがしっかりものの妹で、僕は頼りないお兄ちゃん。
そうこうしているうちにゆりっぺが創設した女性限定のコミュニティ Our Garden を手伝うことになった。
ゆりっぺは本当にすごいなと思う。
どんなに抵抗を感じても、壁にぶつかっても、上手く行かなくても、絶対に一歩一歩前に進み続ける。本当に不器用だけれど、それが彼女の魅力だ。その姿に僕は惹きつけられるのだ。
彼女じゃなければ、ゆりっぺじゃなければ、Our Garden を手伝おうとは思わなかった。
___サハラマラソン 5th ステージ 42.2km。(マラソンステージ)
2015年4月10日、AM7:10。
昨日は賭けに勝った。痛み止めが効いている間に走り切ることが出来た。ビバークに着いてすぐに杉ちゃんに足を診てもらった。オーバーナイトステージの経緯を話すと「歩くときに使う所を痛めてるから走る方が楽やと思うわ」ということだった。少しでも楽になるようにとテーピングもしてくれた。
痛み止めも飲んだ。とにかく行ける所まで行くしかない。今日で最後だ。
スタートと同時に僕は走り始めた。痛みで顔が歪む。それでも僕は走り続けた。
___サハラマラソンスタートまで、あと4日。
2015年4月1日。
飛行機の中で僕はパートナーのめいこにもらった手紙を開けた。応援のメッセージと一緒に手作りのお守りが入っていた。
丸い刺繍に文字が裏表に入っている。表にはふたりの名前、裏には we とだけ書いてある。縁が黄色になっている。
そう言えば数日前に聞かれたっけ。何色が好き?どんな形が好き?と。
フランスのホテルに着いてすぐに、僕はそのお守りをバッグのサイドポケットのチャックに取り付けた。
___サハラマラソン 5th ステージ 42.2km。(マラソンステージ)
2015年4月10日、PM2:30。
僕は今日一番の難関に差し掛かっていた。
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