普通のサラリーマンだった僕が10km以上走ったことないのに1週間分の自給自足の荷物を全て背負って灼熱のサハラ砂漠で250kmを走って横断することになった理由

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2015年4月4日。


いよいよ明日のスタートを控えて、今日は荷物チェックの日だ。スタッフに預けてしまう荷物と、レース本番で使う荷物を分けてチェック会場へ向かう。


まず最初に本番で使わない荷物を預ける。現地民のスタッフがトラックにどんどん荷物を積み上げていく。日本ではあり得ないような積み上げ方で、とにかく2tトラックの荷台に荷物を放り込んで行く。どんどん上に重ねて行くので一番下のスーツケースは壊れてしまってもなんの不思議もない。


荷物を預けたら、次はレース本番で使う荷物や心電図などのチェックだ。列に並んでいると自分の番が来た。


受付
Passport please.


と言われたのでパスポートを出そうとして、はっ!と気がつく。


あ、さっき預けた荷物の中だ、、、。


その旨を受け付けの女性に伝えて、預けた荷物の所へ戻る。


事情を話して対応してもらえば問題解決、と思っていたのでゆっくりと最初に荷物を預けた場所へと戻る。


いましょう
スーツケースの中にパスポートを入れたままにしてしまったので、出してもらえる?

と現地民スタッフに伝えるが英語がわからないらしい。


しょうがないので少し離れた場所にいるスタッフで英語を話せる人を見つけて事情を話す。


「OK!ちょっと待ってな!」


と返事が返ってくるとしか思っていなかったので、そのスタッフの発言が一瞬理解できなかった。


スタッフ
トラックに登って荷物を見てもいいが、見つからなければもう無理だ。

え、、、。


見つけるって、あの山積みの荷物の中から、、、?


とりあえず急いでトラックの荷台に登ってはみたものの、荷物の山に愕然とする。


こんな中から見つかる訳がないじゃないか、、、。


しかも荷物を積み込む手が止まることはなく、次から次に新しい荷物が積み上げられて行く。


ちょっと待ってくれ!

絶対にパスポートが必要なんだ!

こんなところで失格する訳にはいかないんだ!


英語で叫んでも彼らには通じない。


青ざめながら荷物を漁っていると、同じテントのメンバーが全員駆け付けてくれた。


じゅんちゃん、がんちゃん、三浦さん、そして平井さん。


平井さん
どうした?大丈夫か?

と声をかけてくれた平井さんに僕は必死に叫ぶ。


いましょう
平井さん!助けてください!


今思うとあんなに必死に誰かに助けを求めたのは初めてかもしれない。


平井さんは英語がペラペラなので状況を把握するとすぐにスタッフの元へ飛んで行き交渉を始めてくれた。


じゅんちゃん、がんちゃん、三浦さんは一緒に荷台に登り、膨大なスーツケースの山の中から僕のスーツケースを探してくれている。


と、そこへスタッフのひとりがやって来た。


スタッフ
荷物を見てもいいが、触るのはダメだ。今の時点で見えない荷物はもう諦めろ。


そんな、、、。


本当にここで終わってしまうのか。


今までの準備は、トレーニングはなんだったんだ。日本で応援してくれているみんなに何て言えばいいんだ、、、。


ふと、パスポートのコピーならあるかもと思いついた。フランスもモロッコも決して治安が良い国ではないので、もしものときのためにパスポートのコピーを2部持って来ていたのだ。


いましょう
コピーなら持ってるかもしれません。

と、駆けつけてくれたメンバーに告げ、リュックを開く。


リュックのポケットを漁るがコピーはなかった。そうだ、昨日アルケミストに挟んでスーツケースに入れてしまったんだ。コピーは2部ともスーツケースの中だ。


もう終わった、、、と思ったそのとき、三浦さんがリュックの中を見ながらポツリとつぶやいた。


三浦さん
あっ・・・。


そこには僕のパスポートがあった。


昨夜、平井さんが「パスポートは絶対必要だからな〜」とみんなに言っているのを聞いてすぐにリュックに移したのをすっかり忘れていた。


テントメンバー全員に全力で謝りながらお礼を伝えてパスポート事件は終了した。



サハラマラソンへの参加を決めたときから、僕はこう思っていた。サハラで何が見つかるのだろうか、と。



しかし、もうこれで3度目だ。

同じメッセージ。



いい加減気づけ!


大切なものはお前の目の前にある。

すぐ側にずっとあるんだ。



誰かが僕にそう言っているとしか思えなかった。



___サハラマラソン 4th ステージ 91.7km。(オーバーナイトステージ 2日目)


2015年4月9日、AM6:30。


食事を詰め込み痛み止めを飲んでチェックポイントをすぐに出発した。


じゅんちゃんと平井さんは少し休んでから出るとのことだった。


しかし、僕の速度は本当に遅かったので後から出発したふたりにすぐ追いつかれた。


もう明るくなり始めていたし、風も止んでいた。ひとりでも大丈夫。


ふたりにもそう伝えて先に行ってもらった。


去り際に平井さんが言葉をくれた。

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