「そんなんじゃ一生結婚なんてできないよ。さよなら」さすが失恋物語
と処女の利恵のはずが、妙に耳年増らしい口で慰めてくれた。
その晩、そのまま帰って体制を立て直そうと思った和樹だった。しかし、その次はなかった。
第12章 体験談の会、こもれび
体験談を語る会に参加したときの世話人の大沼さんに和樹はメールを書いていた。
「先日は体験談を語る会、お疲れ様でした。今度、体験談を語る会の会を作ろうと思います。体験談を本にまとめたりしたいと思ってるです。どうかお力を貸してください。電話ください。」
「よーし、これでいいな。」
「あ、返信が来た来た。なになに、体験談を語る会お疲れ様でした。聞いた人の評判も良かったです。あとで喫茶店で話しましょう。
例の作業所の喫茶店だ。
「ああ、こんにちは。お疲れさま。メールみたよ。体験談を語る会の会を作るんだって??どういうこと?」
「それは、メンバーで働いている人とか卒業した人で働いてる人がこれから働こうって人に体験を語るって会で、それをまとめて本にするんです。」
「ふうん、なんかよくわかないけど、体験談を話すはいいことだと院長も言ってる。私もそう思う。どうだ。会の名前でも考えようか?」
「そうですね。花とか木の名前なんかよくありますよね。ひまわりとかどんぐりとか」
「そうだなあ、木じゃ平凡かなあ。」
「木の陰で木陰の会は??」
「こかげかああ。こもれびならどうだ?」
「いただき。こもれびの会にします。」
「よし、こもれびの会だ。会長は酒井さんで。」
「会長かあ、まだだれも会員いませんよ。」
「いや、体験談を聞いた人全員が会員だよ。」
第13章
「また君に恋してる」って歌あるだろ。この前の紅白で坂本なんとかって演歌歌手が歌ってた。あれだよ、おれの気持ちは。それか、ファンキーモンキーベイベーズの大好きだ大好きだ大好きだって言葉をもっと上手に伝えたくてえええ。ってヤツだよ」
「ふふふ、歌わないで。」
3年ぶりにあって二回目のデートでもう夢中で口説いてるつもりの和樹だったが、利恵はあんがい冷静だった。
「わたし、お見合いして、すごく好きになった人がいたの。それが三菱の人で。私は好きになったのに、その人は断ってきて。それで和樹を思い出したの。なんか似てるんだよね。」
「そうか、じゃあ、その三菱に感謝しとかないとな」
「ははは、面白いね」
「じゃあ、映画でも行くか」
「うん。」
と映画館の横を黙ってとおりすぎてホテルへ手を握って連れて行こうとする和樹。
「えええ、映画は?」
「映画はまた今度。」
「わかった。じゃあ、ホテル行こっ」
部屋に入ると利恵は最初からそのつもりだったように楽しそうだった。
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