生きるという事の意味をホームレスから学んだ話

著者: 佐藤 良行
十代の頃の夢は
三十五歳くらいで
死ぬ事だった…
小学生の頃から
早く死にたくて仕方がなかった
今思うと…
死にたい理由は
くだらない事ばかり
お年玉を親に没収されたとか
ファミコンを買ってくれないとか
本当にくだらない…
相変わらず早く死にたいと
思いながらも
生きるという事に
楽しさを感じ始めた
二十代後半
軽い気持ちで
上野公園で野宿をしようと
駅の階段に腰を下ろし
ビールを飲んでいると
一人のホームレスの
オッさんが話しかけてきた
「お兄さん、すいませんが
タバコを一本もらえませんか?」
タバコの箱を見ると
残り二、三本しかなかったし
面倒くさかったので
それを箱ごと
あげると
調子にのったそのオッさんは
「お兄さん、すいませんが
私にもビールを
飲ませてくれませんか?」
ときやがった
さらに面倒くさいし
早く離れて欲しかったので
小銭入れに入っていた
三百円をあげると
「ありがとうございます!
これで吉野家で牛丼食べてきます!」
⁇⁇
あれ?
ビールじゃないの?
と思いつつ
オッさんが
いなくなって
ホッとしていたのも
束の間
満足そうな顔をして帰ってきた
オッさんが
またまた俺の横に座って
「お兄さん、今日はこれからどうする
んですか?」って
えっ⁇
もしかして
ホームレスのふりをした
どこかの大企業の創業者で
後継者を捜していたとか?
突然目の前に
リムジンが来たりとか
マンガみたいな展開?
って淡い期待をしながら
「今日はこの辺で野宿するつもりです」
と答えると
「新人さんは
寝ている間に荷物を
盗まれたりするんで
気を付けた方がいいですよ」って
‼︎‼︎
なんかもしかして俺の事
ホームレスの新人だと思ってる?
確かに同級生からは
「お前は将来
絶対ホームレスになる」
と言われた事はあるけど…
まあまあとりあえず
先輩の話は聞いておこうと
オッさんがホームレスになった
経緯を聞くと
そのオッさんは
在日朝鮮人の方で
若い頃に覚せい剤に手を出し
逮捕され
職を転々とし
家族とも別れ…
俺だったらとっくに
自殺してるんじゃないか?
って話を色々してくれた…
お年玉やファミコンごときで
死にたいなんて考えていた
自分が恥ずかしくなった…
本当に生きるって意味を
それまでの俺は知らなかった…
ホームレスなんて
社会の底辺だと…
それまでは思っていたけど
底辺だと思っていた
そのオッさんに
何があっても
恥も外聞も捨てて
生きていくと決めた人間の
強さを教えてもらった
どんなに
死にたいくらいの
辛い事があっても
生きてさえいれば…
その辛さに耐えて
生きてさえいれば…
誰かの力になれる
誰かの勇気になる
名前は知らないけど…
オッさん
ありがとう
俺に命を与えくれて
ありがとう













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